【悲報】宇宙人ワイ、小学生屋根ゴミに拾われた模様【助けて】 作:鳩胸な鴨
「雷管抜いたので、もう起爆しませんよ。
軍用のシンプルなプラスチック爆弾で助かりました」
「早すぎません…?」
「この世界で生きるには必要なスキルですから」
「いや、そんなしょっちゅう爆弾があってたまるかってのよ」
「そんな能天気なセリフが吐けるほど平和ですか、この世界?」
「…………」
青筋を浮かべ、どす黒く光を失った瞳を向ける志都児にたじろぐ園子と蘭。
万引きのような間隔で殺人が起きるのだ。
彼が世界に対して失望を向けているのも頷ける。
その危機を身をもって味わっている2人が返す言葉を失っていると、おろおろと困惑する山女が問いかける。
「志都児サン、これ警察に言わなきゃ…」
「爆弾が仕掛けられた喫茶店…なんて悪評を山女様のご親族に背負わせるわけにはいきません。
これは店に関連しないやり方で処理します。
無論、警察には届けますよ。物騒で間抜けな落とし物としてね」
言って、喫茶店から離れる志都児。
物騒なことに巻き込まれてきた経験がある彼女らも、その悪評が広まる危険性がわかっているのだろう。
携帯をしまい、去っていく志都児の背を見送る。
「デキる執事…、いいわね…」
「そんなこと言ってる場合!?
早くコナンくんたちを追いかけなきゃ…!」
「あ、ああ、そうだったわね」
「おでも手伝うど!」
爆弾があったことなど知らず、喫茶店でのひと時を楽しむ人々を横目に、3人がコナンたちが消えた森の中へと向かった。
♦︎♦︎♦︎♦︎
「ヴゥゥゥ…ッ!」
「おい、コロマル…!」
時は少し遡り。
コロマルの背を見つけ、駆け寄るバルル。
途中でつけてきていたコナンを撒いてしまったが、ここまで深く進めば諦めもつくだろう。
そんなことを思いつつ、バルルはコロマルが睨め付ける先へと目を向ける。
そこに居たのは黒のスーツに身を包んだ男。
爆弾もコイツら絡みか、と呆れつつ、バルルはコロマルに問いかける。
「シャドウの匂いはあれからか?」
「ワンっ」
「なるほどな…。この世界では、死の匂いが濃い場所に発生するわけだ」
この世界では、多発する事件の原因がシャドウだったりするのだろうか。それとも逆か。
そんなことを思いつつ、かちっ、かちっ、と何度も何かしらのスイッチを押す影に近づく。
「くそっ、何故だ、何故…」
「爆弾なら解除したぞ。動物OKの店に仕掛けたのは失敗だったな」
「!?」
ばっ、とこちらを向き、目を剥く男。
ヨーロッパ系らしい顔つきではあるが、その目は怪しげな金色に染まっている。
シャドウと同化したりしてるのだろうか。
そんなことを思いつつ、バルルは唸るコロマルを抑え、とぼけようとする彼に問いかける。
「な、なんのことだ…?お、俺は…」
「遠隔操作型だろう、あれ。
各国の軍が使っている主要なものだ。
お前が持っているそのスイッチ、あの爆弾とセットだろ。同じキットのものを何度か見たことがある」
前世の経験を踏まえ、逃げ道を潰す。
自作の爆弾でなかったあたり、あの組織の一員というわけではないのだろう。
眼前の男は薄く笑い、バルルに問いかける。
「連れてくるのは犬コロだけでよかったのか?」
「お前よりは優秀だからな」
「……犬どもが」
彼が吐き捨てると共に、カッ、とその足元に青い炎が吹き上がる。
現れたのは、粘性の怪物。
既存のペルソナで言えば、近いものは「アバドン」だろうか。
本人の精神性をそのまま形にしたものがペルソナだが、これを見るに碌でもない人間なのは確定。
男は笑い、蠢くそれをバルルらにけしかける。
「得られる『経験値』は本来より少ないだろうが…、仕方ない。俺の強さの糧になれ」
唾を撒き散らし、吠えるペルソナ。
咆哮と共に放たれる攻撃は、ギガントマキア。
それなりに経験を積んでいるのか、それとも本人の自信を反映した強さなのか。
考察を広げる中、バルルは怪盗服へと姿を変え、仮面を燃やす。
「ペルソナ」
「ヴゥ……、バウッ!!」
ラヴクラフトの斬撃と、コロマルのペルソナ…ケルベロスによる呪怨の一撃が、迫る攻撃を打ち消す。
その余波が相手のペルソナに当たるも、ダメージはそれほどなく。
べた、べた、と這って迫るそれを前に、バルルは軽く舌打ちする。
「ふむ、物理はどうかわからんが、呪怨はダメらしいな」
「ワンッ!」
「俺と同じバケモノ使いか…!
これは、経験値も期待できるな…!!」
笑い、デスバウンドを広げる男。
どうやら相手のことを「経験値」として見ているらしい。
ペルソナの力を見るに、余罪はゴロゴロありそうだ。
邪悪を前に辟易を浮かべた2人は、広げる衝撃を飛び越え、うごめくそれに斬撃を叩き込んだ。
が。てんで効果はなく、反撃が彼らを襲う。
彼らはそれをペルソナで受け止め、暴れるそれから距離を取った。
「ふむ、物理もダメか。
…コロマル、作戦変更だ。私が一気に叩き潰す」
「ワンっ!」
コロマルが吠え、ケルベロスが三色の光を暴れるペルソナに浴びせる。
ランダマイザ。敵の能力を極端に下げるその光により、ペルソナの動きが鈍重なものになる。
操る男からすれば大したものではないように映ったのか、彼は嘲りを浮かべ、叫ぶ。
「そんな光で止まるものか!」
迫るペルソナの顎門が大きく開き、バルルへと迫る。
バルルは避けるそぶりもなく、コンセントレイトをかけ、仮面を「別のものに替える」。
それが世界に解けると共に、凄まじい威圧と湿気があたりに放たれた。
「均せ、クトゥルフ」
べだっ、と、大地を触手の塊が踏み締める。
水を支配し、海に眠る旧支配者。人が思う恐怖の形が、そこにあった。
クトゥルフがその剛腕で迫る顎門を容易く止めると、触手で覆われた口で呪文を紡ぐ。
「は…?な、なんだよ、それ…!?
なんでいくつも使えるんだ…!?」
「ゲームオーバーだ。お前の言う『経験値』になった者たちに懺悔してこい」
─────クトゥルフの呼び声
光芒が不定形のペルソナを穿つ。
ペルソナのダメージは本人に返ってくる。
そのことを知らなかったのだろう、男は声にならない絶叫を響かせ、その場にのたうち回る。
「ひぎっ、ぎゃっ、ぎゃぁあああっ!?
い、痛いっ、痛いっ、なんで…!?」
「なんでって…、お前、この力をなんだと思ってたんだ?」
少なくとも、かなり自分に都合のいい見方をしてるのは確実だろう。
バルルが呆れ混じりに問うも、男はそれを無視して譫言を繰り返す。
「お、俺は、世界に選ばれたんだ…。
だから、あのクソ上司を殺した後、こんな力が目覚めたんだろ…?
経験値もかなり貯めたはず…!
それがなんで、なんでこうなって…?
ま、まさか、負けイベなのか、これ…?」
「……その口ぶり、今回のような無差別大量殺人は何件か起こしてると言う意味か」
「い、いや、あり得ない、あり得ない…。
そうだ!きっとこの後、覚醒イベントがあって…」
「…………こいつ、自分を全肯定するだけの傲慢な精神性が変な方向に転がって目覚めたパターンか…。
コロマル。どうする、これ?」
「クゥーン…」
「俺に聞くな」と言わんばかりに麻呂眉を顰めるコロマル。
影時間内で活動していたペルソナ使いも居たのだから、この世界でもそういう人間が居るというのは有り得ない話ではない。
しかし、この世界の地獄じみた事件発生率を鑑みるに、目覚めるペルソナ使いのほとんどはストレガに近いものと見ていい。
怪盗服を解き、ふんじばって警察に突き出そうか、と考えた、その時。
「春夏さん、コロマルくん、無事!?」
「むっ」
葉っぱに塗れたコナンが姿を見せた。
あと少し遅ければ危なかっただろう。
バルルはコロマルとアイコンタクトを交わすと、茫然自失となった男を顎で指す。
「ああ。犯人らしき男もこうして見つけたんだが…、よっぽど恐ろしい目にあったのか、来た時にはこうなっててな」
「ワンっ」
「そ、そうなんだ…。無事でよかった…」
「私からすれば、君の方が心配なのだが」
「えっ?」
バルルが言うと、ぱちくりと目を丸くするコナン。
と、その時だった。
「ひ、ひ、ひぎゃあああっ!?」
男がそんな声をあげ、蒼炎と衝撃に飲まれたのは。
「危ないっ!!」
「わぷっ」
コロマル、コナンを抱き寄せ、盾となるバルル。
が。彼らの体は呆気なく衝撃にさらわれ、大きく吹き飛んだ。
「ぐっ…」
「な、なにが…!?まさかまだ爆弾が…」
「見るなッ…!君のような子供が見るようなものじゃない…!」
コナンが状況を見ようと顔を出そうとするも、バルルはそれを抑える。
中身は高校生といっても、まだ子供。
あんなものを目の当たりにして、冷静でいられるかわからない。
そんなことを思いつつ、バルルは横目で衝撃の中心にいたモノを見やる。
『あば、ばばぁ……』
そこに居たのは、デロデロに崩れ切り、歪な形となったペルソナ…否、シャドウ。
倒れた主人を飲み込もうと近づく様は、まさに人類の脅威そのもの。
コナンにこれを見せるわけにはいかない。
普遍的無意識が現象として反映される世界を知れば、彼は好奇心からどこまでも踏み込んでいくだろう。
イタズラに刺激すれば、何が起きるかわからない。それは志都児も避けたいはず。
どうしたものか、とバルルが顔を顰めた、その時。
「あそこだど!!」
「結べッ、アモル!!」
破魔の光が巨体をかき消した。
♦︎♦︎♦︎♦︎
「みんな無事みたいでよかったど」
「山女から聞いたどー。
お客さんたちどころかおでたちまで守ってくれて…、本当にありがとうだど」
気絶した犯人を警察に突き出し、店に戻ってきたバルルに頭を下げる夫婦。
手柄のほとんどは志都児のものなのだ。自分たちが受け取るのは違う。
バルルが遠慮しようとすると、志都児がその耳元で囁く。
「春夏さん、こういう感謝は素直に受け取るべきですよ」
「……では、お言葉に甘えます」
手柄を横取りしたようで気分が悪い。
そんなことを思いつつ礼を受け取ると、コロマルが「自分は?」と言いたげに夫婦に視線を向ける。
「コロマルくんも大活躍だったって聞いたど。
また今度来たら、サービスしてあげるど」
「ワンっ!!」
「よかったな、コロマル」
爆弾及び犯人発見の功労者だ。
ちょっとくらいの贅沢なら美鶴たちも許すだろう。
ふりふりと尻尾を振って喜ぶコロマルを一頻り撫でると、バルルは志都児へと目を向けた。
「……ところで、お前、解体した爆弾を麓の警察署にまで届けに行ったんだろ?
なんであのタイミングで来れたんだ…?」
「屋根を走ってきただけですが?」
「…人間、辞めてないか?」
「しばらく滞在してみます?
その理由が分かると思いますよ?」
光を失い、どす黒く染まった瞳でこちらを見る志都児。
激しく遠慮しておこう。
そんなことを思っていると、コナンを連れた蘭と園子が歩み寄る。
「あの、本当にありがとうございました…!」
「ほら、ガキンチョ」
「あ、えっと…、助けてくれてありがとう、春夏さん」
トラブル体質だけが玉に瑕か。
頭を下げ、感謝を述べるコナンの頭をわしわしと撫でる。
コナンが気恥ずかしそうにその腕を掴むのを前に、バルルは優しく微笑んだ。
「志都児から無茶をする子だとは聞いていたからな。考慮しなかった私が悪い」
「ご、ごめんなさい…」
「ワンっ」
「コロマルくんも『もっと自分を大事に』って言ってるどー」
「ホントだよ、コナンくん!心配したんだから!」
「春夏さんに感謝しなさいよ!」
心配を向けられ、反省を露わにするコナン。
これで少しは懲りたらいいのだが。
そんなことを思いつつ、バルルは踵を返そうとし、止まる。
バルルは威圧を纏い、コナンに向けて低い声を漏らした。
「大人としては、子供の無茶は許せない。
だが、それは子供が憎らしいってわけじゃない。大人は子供を守ることが仕事なんだ。君が傷付けば、悲しく、悔しい。
君の周りにいる大人が大人で在るためにも、君を守らせてあげてくれ」
「………うん」
それだけ言うと、「長居した」と頭を下げ、店から出る。
と。続くように店から出た山女が声を張り上げた。
「春夏サン!コロマルくん!
また来て欲しいど!」
優しい声に、顔を見合わせる2人。
期待に満ちた顔を向けるコロマルに、バルルは苦笑を返した。
「来週あたり、また行こうか」
「ワンっ」
コロマル…大活躍ワンちゃん。帰ったら風花や天田にめちゃくちゃ叱られたものの、バルルが取りなしたことで許された。定期的にバルルとあの世界に行っては、事件に巻き込まれるようになる。
犯人の男…いわゆる野良ペルソナ使い。はずみで人を殺して開き直ったらペルソナが覚醒した。殺人を繰り返すごとに自信を得て強さを増していたものの、バルルに敗れたことでその自信が崩れ、制御を失う。その後は二度とペルソナを出せなかった。
江戸川 コナン…子供扱いされながらもきちんと諭されたことに反省。それでも無茶はする。
モンスター執事長…転生者の中でぶっちぎりの狂人。守りたいものがあまりに多いが故に狂わざるを得なかった。異名は「核を殴り飛ばすタイプの核シェルター」。