【悲報】宇宙人ワイ、小学生屋根ゴミに拾われた模様【助けて】   作:鳩胸な鴨

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時系列で言えばゴールデンウィークあたり


?スレ目 春先の日常

その1.日向家での勉強会

 

「お邪魔しまーす」

「はーい、いらっしゃーい」

「久しぶり、皆」

 

ゴールデンウィーク。

日向家に訪れた竜司、杏、真、春の4人に夏美が声をかける。

部活だったりイベントだったりと忙しく、予定の合わなかった面々のことを惜しく思いながらも、皆との再会を喜ぶ蓮。

その様子を尻目にキッチンへと引っ込んでいく夏美を見て、竜司が鼻の下を伸ばす。

 

「アレ、お前の親戚の姉ちゃん?

スッゲー美人じゃん」

「色目使わない方がいいぞ。銃弾が飛ぶ」

「……なんで?」

「そこにあるテントの中身がな…」

 

言って、焚き火が上るテントを指差す蓮。

竜司がそちらを見ると、銃を磨きながら芋を焼くギロロと目があった。

 

「あれか、初恋拗らせたっつー宇宙人…」

「踏み込めばいい線いくんだろうが、なかなかその気になれないみたいでな。

それに、夏美姉さんがサブロー先輩…、623ガチ恋勢なのが痛い。

恋は届かないものと思っているからな…」

「ポエマーの?」

「そう、それ」

「あー…、厳しいね、それ…」

 

何人かそういう人間を見たことがある。

テントに向けて同情を送る杏と竜司に、菓子折りを渡し終えた真が咎めるような声音で問いかけた。

 

「雑談してる場合?竜司たちは蓮に勉強教わりに来たんでしょ?」

「久々の再会なんだから忘れさせて!」

「なんで中間テストってゴールデンウィーク明けにあるんだろ…」

「一学期の中間だからじゃないかな」

「や、わかってるから…」

 

今日は遊びに来たわけではない。

いや、遊びには来ているが、それだけではないと言った方が正しいか。

成績が危ない2人が縋るように蓮に目を向けると、彼は困ったと言わんばかりに眉を顰めた。

 

「…秀尽のテストはマニアックな問題が多いから、力になれるかわからんぞ」

「だよな!?」

「志帆も言ってたなぁ…。転校先、秀尽で覚えたとこそんなに出ないって…」

「基礎も踏まえた上の応用問題が主だから…」

「つか、真と春も受験で愚痴ってたろ。過去のテストがてんで参考にならないって」

「…………」

「…………」

 

竜司の一言に押し黙る2人。

確かに、秀尽で出される問題の大半は雑学の域だ。

特に過去のテストで覚えたところなど、受験で役に立った記憶がほぼない。

珍しく竜司に言い負かされた2人が絶妙な敗北感に打ちひしがれていると、人数分のコップを盆に乗せた夏美が声をかける。

 

「だからって手を抜いていいわけじゃないわよ。後悔したくなきゃ、きちんと勉強しなさい。はい、ジュース」

「あ、どもっす」

 

興味に全力で生きてきた冬樹も泣きを見ていたっけか。

過去の惨状を思い返し、蓮は仲間と共に勉強道具を広げる。

と。ノートを開いて数秒もしないうちに、竜司が廊下を見やった。

 

「……そういや、ここの地下にあるんだよな。宇宙人の基地」

「あるにはあるが…、見にいくなよ。ろくなことにならない。な、モルガナ」

「ワガハイ、もうあそこ入らない…」

「なにがあったんだよ…」

「虎柄ビキニになった挙句、語尾が『だっちゃ』になった」

「なにがあったんだよ!?」

 

死んだ目で遠くを見つめるモルガナに思わず絶叫する竜司。

刹那。話題を逸らしたことを咎めるように真が視線を送り、竜司は即座に縮こまった。

 

「蓮も中間もうすぐなのよね。

どこかわからないところとかない?」

「特には」

「そういやお前、ずっと学年一位か…」

「私らばっか肩身狭くない…?」

「そう思うんならきちんと勉強しなさい」

 

ぴしゃり、と真に叱られ、肩を落とす2人。

もう叱られるのは勘弁だと思ったのだろう、2人がペンを握ったその時。

ノートにペンを走らせていた蓮の動きが止まる。

 

「………皆、荷物と一緒にテーブルに乗って」

「えっ?」

「いいから」

 

蓮の忠告に従い、皆がテーブルの上に乗る。

瞬間。リビングの戸を突き破り、いきなりダンゴの濁流が押し寄せてきた。

 

「ゲェェェロォォォオオオ!?!?」

「うぉわぁああっ!?」

「きゃああっ!?」

 

パレスの中でもそうそう見ないような地獄絵図を前に戦慄く怪盗団の面々。

蓮は慣れた手つきでその濁流に手を突っ込むと、緑のバカを引っこ抜いた。

 

「よっと」

「た、助かったであります…」

「本当にそう思うか?」

「ゲロ?」

 

蓮の一言に振り返る緑のバカ。

そこには、修羅となった女が並んでいた。

 

「ボーケーガーエールー…!!」

「これが噂に聞いてたトラブルね…。

確かに、これ以上なく馬鹿馬鹿しい上に腹が立つわ…」

「食べ物を粗末にするの、よくないと思う。すごく」

「………え、えっと、吾輩にも悪気はなくてですね…。ガンプラ買いすぎて小遣い足りなくなったから補填しようとして…」

「そんなこったろうとは思った」

「続けなさい」

「ふ、フルパワーで増産体制に入ったら勢いよく出ちゃったというか、ちょっ、あの、ごめんなさい、謝りますんでまっ、げ、ゲロォォォオオオ!?!?」

 

結局。その日は勉強どころではなく、いきなりダンゴを片付けるだけで終わった。

 

 

その2.その頃の犯罪のことが大大大大大嫌いな1人の執事と探偵王子

 

「旦那様たちのデートを邪魔しやがって!!法で裁かれる程度で許されると思うなよ!!」

 

「遊園地に爆弾仕掛けやがったバカはテメェか!!ぶっ殺してやる!!!」

 

「奥様に罪を被せる気だった!?

殺すぞ殺人犯(カス)!!!!」

 

「うるせー!!殺人犯(てめーら)が居なけりゃ万事解決なんじゃ責任転嫁するんじゃねぇ滅べ!!いや滅ぼす!!!!」

 

「うちの羽香里(めいっこ)泣かせた殺人犯(バカ)はどこのどいつだァァァァアアアッ!!!」

 

このような狂気に満ちた怒号が連日響き、犯罪者が須く泣いて土下座する街、梳杉(すきすぎ)町にて。

バルルに連れられ、数日を過ごした吾郎は、膝に乗せたコロマルを撫でながら呆れを吐き出す。

 

「…世話になった身で言うのもどうかと思うんだけどさ、アレが本当に一番弟子なわけ?」

 

吾郎の視線の先にいるのは、あまりにも悍ましい形相で殺人犯の逃亡を抑え込む志都児。

普段の物腰柔らかな態度はどこへやら、ふしゅー、ふしゅー、と怪物のような吐息を漏らしている。

最初こそは、バルルに似て理知的で素晴らしい人格者だと思っていた。

 

が、しかし。ここ連日発生する殺人犯への対応を見て、その評価はひっくり返った。

 

殺人犯を暴いた途端、徹底的に糾弾し、二言目には「殺す」と宣告する。

それだけならまだよかったのだが、怒りが極まると所かまわずペルソナを出しかける始末。

「育てたのか?これを?」と言いたげな瞳から逃れるように、バルルは顔を逸らした。

 

「家族を守るという使命感に加え、あまりにも犯罪に巻き込まれるもので、頭のネジが吹き飛んだらしくてな…」

「止めなくていいの?

サタン・神罰(メギド)のオーラが一段と濃くなってる気がするんだけど」

「大丈夫だ、警察が来たら大人しくなる」

 

果たして、それは大丈夫と言えるのだろうか。

影も形も残らず蒸発させかねない勢いで怒りを撒き散らす志都児を横目に、周囲の様子を見やる吾郎。

生憎、サイレンの音はまだ聞こえない。

ここの警察はとりわけ忙しいのだろう。獅童に飼い慣らされていた警察官僚たちに爪の垢でも飲ませて欲しいくらいだ。

そんなことを思っていると、一陣の風が目の前を通り過ぎた。

 

「ごめんなさい、ごめんなさい!!

もう足洗う!!足洗うから…」

「ブチ殺ゔぐごがががぎごがるぐごぁぁあああああアアアッ!!!」

「ひぃいいいいっ!?!?」

 

その正体は、志都児以上の怒気を放つモンスターから逃げ惑う、黒づくめの男。

淡麗な顔をぐちゃぐちゃに歪め、全力で逃げ惑う様は、シンジケートの一員とは到底思えない。

あまりに現実離れした光景を前に、バルルは咲き誇る桜に目を向けた。

 

「桜が、綺麗だな…」

「いつまで春なんだろうね、この世界。

あ、違法スケボーのガキ」

 

 

その3.異世界ルブラン

 

「喜多川 祐介。貴様との対談、脳が震えた。また来る」

 

ある日の昼ごろ。

ひょろりとした男がコーヒーを嗜む祐介に告げ、ルブランから去る。

かれこれ何分語り明かしていただろうか。

様子を見ていた惣治郎はため息を吐き出し、祐介に声をかけた。

 

「……お前さん、あの兄ちゃんと長いこと話してたな。変な奴同士、気でもあったか?」

「ああ。本人曰く、『他の宇宙を巡る絵描き』だそうだ。生まれは昭和だと」

「どう見ても20代だったぞ」

「長いこと時間のない空間に引きこもっていたらしい」

「………俺は頭のかてーおっさんなもんでよ。お前らみたいに柔軟に受け取れねーわ…」

 

現実離れした話題は若葉の研究だけでお腹いっぱいだ。

そんなことを思いつつ作業に戻る惣治郎に、祐介は少しばかりの少年心を見せた。

 

「マスターは気づいていないだろうが、この店には他の世界からやってきた人間がそれなりに来店しているぞ」

「…………いや、冗談だろ?」

「バルルが言っていたぞ。『マスターに礼を言っといてくれ』とよく頼まれるそうだ」

 

まさか異世界からも客が来るとは。

惣治郎は眉間の皺を指でほぐし、祐介に問いかける。

 

「なんでウチよ。自慢じゃねえが、年がら年中閑古鳥が鳴いてるような寂れた店だぞ」

「恐らく…、あれだ」

 

祐介の視線の先。

カウンターの端の席に座るのは、「ペコポン人スーツ」と呼ばれる着ぐるみを纏い、露出した顔でカレーをかき込む影。

真っ黄色の顔に薄気味悪い笑みを浮かべた彼は、嫌がらせのように声を漏らした。

 

「く、くく、くーっくっくっくっ…」

「……そこの宇宙人がどうした?」

「バルル曰く、彼は地球のカレーとボルシチに並々ならぬ情熱を抱いているらしい。

自作したレトルトカレーが西澤家シェフに修行を決意させるほどの出来だとか。

そんな彼が足繁く通い詰める程のカレーと聞いて、興味を抱いたのだろうな」

「俺がレシピ考えたわけじゃねぇんだがな…」

 

今頃は西澤家で働くであろう若葉を思い浮かべ、苦笑をこぼす。

と。そんなひと時を邪魔するように、かっ、かっ、とスプーンの音が鳴った。

 

「くーっくっくっくっ…。くーーーーっくっくっくっくっくっ…」

「…………くっ…、画材を仕入れたばかりだと言うのに、腹の虫が…」

「……賞取ったら払いに来い」

「恩に着ます」




雨宮蓮…両親が海外で働いてるため、日向家で生活してる。たまーに侵略作戦に巻き込まれるものの、試験などの大事な日には何故か邪魔が入らない。弁護士志望。

明智吾郎…怪盗団騒ぎから離れたかったのと、探偵としてのスキルを磨きたかったのでバルルについてった結果、地獄を見た。ほんの少しだけ態度が柔らかくなった。

絵描き…引きこもっていた絵描き…に転生した男。ガワに引っ張られすぎた承認欲求のバケモノだが、バケモノなりに絵に向き合っているため祐介と馬があった
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