【悲報】宇宙人ワイ、小学生屋根ゴミに拾われた模様【助けて】 作:鳩胸な鴨
なんだこの地獄
『続いては、エントリーナンバー3番!漆黒の美女、明智
あの哀愁でまともなアピールができるのか。
皆が不安に思う中、呼ばれたバルルが前に出る。
瞬間。先ほどまでの哀愁は跡形もなく霧散した。
それだけではない。恥じらいを見せるように頬を赤らめ、それでいてボディラインがわかるように背筋を伸ばしている。
司会者もその変貌に驚いたのだろう。暫し惚けたのち、はっと声を張り上げた。
『こ、こほん、失礼。
苗字で察した方も多いでしょう!なんと、彼女はこの見た目でかの有名な二代目探偵王子、明智吾郎くんの育ての親だそうです!』
『息子の名前は出さないでくださいって、私言いましたよね?』
『あっ、ご、ごめんなさい!ついうっかり…』
ざわっ、と周囲がどよめく。
そんな中、変装することでなんとか誤魔化していた吾郎が、無言で涙を流し始めた。
「……………」
「無言で泣かないでよ…」
「この地獄いつまで続くんすかね…?」
「いや、吾輩に聞かれても…」
ケロン人にも地獄っぷりは伝わっているらしい。
明らかに感涙ではない男泣きを垂れ流す吾郎を冬樹たちが慰めている間にも容赦なくインタビューは続く。
『今回初参加ですが、意気込みのほどはどうでしょう?』
『無論、優勝を狙っています』
「お、言った」
「あー…、あれ、『言っちゃったなぁ。何言ってんだろうなぁ、自分』って顔だ」
「レンレン、たまに大佐さんへの解像度高すぎて気持ち悪い時あるっすよね」
「タママ」
「………さ、サーセン」
蓮に睨まれ、縮こまるタママ。
付き合いが長いから伝わってくるだけで、それを気持ち悪いと言われたことがよっぽど腹に据えかねたのだろう。
青い炎を目元から燻らせる蓮だったが、その一瞬で彼の意識は即座に壇上へと戻る。
タママがそれに胸を撫で下ろした直後、「後で覚えてろ」と言わんばかりの殺気がその背に突き刺さった。
『挑戦的な水着選びですが、それも戦略のうちなのでしょうか?』
『ええ。見ての通り、私は体型に恵まれておりません。真正面から挑んでは、とてもではありませんが勝ち目がない。
ですので、そこを工夫で乗り越えていけたら、と思っております』
『なるほど…。研ぎ澄まされた一太刀、というわけですね?』
『そんなたいそうなものではありませんよ』
ふふっ、と口元を隠し、笑むバルル。
その仕草の色香にやられた観客たちを尻目に、祐介が吾郎に問いかける。
「…あのコメント、全部お前が考えたのか?」
「流石にそこはノータッチだよ。あれはおゃ…、お袋が適当喋ってるだけ」
「適当であれか…」
前もってカンペでも用意していたのかと疑ってしまうほどの受け答えだ。
怪盗団の面々がそれに舌を巻いていると、暇を潰していたケロロ小隊の面々が口を開いた。
「口先ひとつで数多の星を落とした男っすよ。あの程度だったらポンポン出てくるですぅ」
「須く合意の上での条約締結で星を侵略していたが、中身はほぼ全部こっち有利の完全支配だったな」
「あんなんを口先だけで取り付けられるバケモンが同期にいるモンだから、ギロロも吾輩も父上から圧かけられてたでありますなぁ…」
「……『バルルくんば頑張っとる間、おまんはなんばしよっとね?』」
「ドギィッ!?」
ギロロの声真似に激しく動揺するケロロ。
どうやら当時のことがトラウマになっているらしい。ガクガクと震え、冷や汗を撒き散らすだけのスプリンクラーと化してしまった。
「そ、そんなヤバい宇宙人だったんですね、明智先生…」
「有能と不憫が同居してるおもしろかわいそうな宇宙人だと思ってたわ」
「私も」
気のせいか、ぐさぐさと何かが刺さる音がした。
恐らくは聞こえていたのだろう。バルルは一瞬だけ冷たい眼差しを竜司たちに向け、すぐさま微笑みの仮面をかぶって見せた。
『では、三分間のアピールタイムに入っていただきましょう!
3番、明智 春夏さんです!!』
その声に合わせて胸元を寄せ、見せつけるように少しばかり前屈みになる彼。
刹那。海岸にどよめきが走った。
「お、おおっ、おおお…っ!?」
「ぐ、くっ、み、みえ…、ないっ…!」
「おいもうちょっと頭下げろよ…!」
「俺が見えないだろうが…っ!」
腕で隠された胸元をなんとか見ようとする観客同士で争いが起きてしまっている。
確かに、寄せたことで少しばかり膨らんでいるように見えるが、それだけでここまで観客が食いつくわけがない。
怪盗団や日向家、果ては参加者のモデルすらも、その肢体に視線が吸い込まれている。
そんな中、ケロロがふと何かに気づいたかのように、彫りの深い顔に変わった。
「『
「知っているのかケロロ!?」
「うむ!あれぞペコポン人が提唱する『カリギュラ効果』を最大限に利用した魅了術!
『見えないもの』をあえて『あれ?頑張れば見えるんじゃね?』くらいに露出することで、ペコポン人どものセクシーな想像力を掻き立てて虜にしてしまう、げに恐ろしき術よ!」
「機械を通さずとも、会場の凄まじい熱気が伝わってきます!てゆーか、効果覿面?」
「男塾かよ」
「た、確かに、不思議と目が離せない魅力はあるわね…」
魅せ方を完全にわかっているとしか言えない。本職でもあるまいに。
続いて、腰を覆うパレオから足を晒し、徐々に根元まで開いていく。
その仕草だけで大半の観客が唾を飲み込み、水着の中を一眼見ようと食い入るように見つめる。
まさかそれをやっているのが男だとは、誰も思っていないだろう。
異様とも言えるその光景を前に、双葉、吾郎、蓮は顔中に皺を寄せ、苦悶の表情を浮かべた。
「何、その顔?」
「育ての親があれやってんの、キツいなって…」
「育ての親にあれやらせてんの、キツいなって…」
「去年の古傷が疼いて…、ゔ、ゔぁ、や、やめろ、やめろぉ…」
「……………」
会場のボルテージが上がる中、「取調室での拷問のがまだマシだった」と付け足し、視線を逸らす蓮。
吾郎がそれにつづき、「もう2度とこんな機会がありませんように」と十字を切り。
トラウマを幾度となく抉られた双葉が「ばぶぅ」と溶けた顔を晒す。
その地獄が終わるまでの三分間は、彼らにとっては永遠にも等しく感じられた。
バルル…「何やってんだろ自分」と自己嫌悪に苛まれながら地獄を耐えてる。「有能と不憫が同居するおもしろかわいそうな宇宙人」という評価に甚大なダメージを受けた。前の人のアピールタイムが別の意味での地獄だったためか、その反動で想定以上に票が集まっていることを彼は知らない。
女装被害者の会…バルルほどではないにしろ、深刻なダメージを受けている。特に双葉。