【悲報】宇宙人ワイ、小学生屋根ゴミに拾われた模様【助けて】 作:鳩胸な鴨
「…いつまでこんなコソ泥のような真似を続ければいいんだ、美鶴」
「影時間でも動くトラップはあるわ、ペルソナもないのにこっちを一方的にボコボコにしてくる爺さんはいるわ、それらをなんとかしても見つかるのはアホみたいに予算かけた『ラブラブ作戦』とかいうアホ全開のくだらねぇ企画書くらいだわ…。
もうやめたほうがいいだろ。
いい加減虚しくなってきた」
西澤 桜華とウォリアースタイルとなったバルル大佐が拳を交え始めた頃。
虚な目をした仲間…真田明彦と荒垣真次郎の視線に、桐条美鶴もまた虚な目をして答える。
「私もそう思ってはいるのだが、理事長が『西澤グループにも影時間にまつわる情報はきっとある』と言って聞かなくてな…」
「まあ、そう疑うのも無理ないけどよ…」
「あそこまで適性のある人間が揃っているとな…」
影時間に対する適性のある人間を人工的に生み出しているとしか思えないほどの警備の数を思い浮かべ、3人揃って息を吐く。
もう調べても何も出ないだろう。
薄々そう感じている3人の思考を切るように、覚えのある咆哮が響いた。
「この声…、あのドラゴンか?」
「西澤邸の敷地内に巣を作っていたのか…?
それとも気まぐれに降り立ったのか…、竜の生態は流石にわからんな…」
「美鶴、どうする?あの竜に影時間への適性があったら、調査どころの話じゃないぞ」
アリサ=サザンクロスをものの数秒で下し、SEESの3人を歯牙にもかけなかった竜の姿が、3人の脳裏をよぎる。
まだまともに対峙したことはないが、その力はタルタロスを徘徊する「死神」にも匹敵するであろう。
流石に今夜は断念するべきか。
いや。撤収の指示を出そうにも、すぐに影時間に入ってしまう。
ここまで入り込んでしまった以上、引き返すこともできない。
美鶴がそう判断を下すより先に、世界が影時間へと覆われた。
「どうだ…?」
「せめて象徴化してくれてたらありがたいんだが…」
が。そんな願いも虚しく、竜の影が空を飛ぶのが見えた。
「やはりダメか…」
「いや、待て…?
あの竜、誰かと戦っているのか…?」
「何っ…!?」
明彦の言葉に、美鶴が思わず空を見やる。
確かに戦っている。
月明かりに照らされたそれは女性だろうか。
竜の繰り出す一撃をその身一つで跳ね除け、果敢にもその鱗に拳を突き立てる。
「バカっ!そいつに物理は…」
「………いや、待て?効いてる…?」
「は……?」
繰り出された拳の一撃に、竜の体が揺らいでいる。
バカな。奴には物理への耐性があったはず。
まさか、ただの拳がそれを貫通してダメージを与えたとでも言うのか。
事実その通りなのだが、あまりに現実離れした光景を前に思考が追いつかない3人。
揺らいだ竜はその顎門を開け、女性へと視線を向ける。
「あれはまずいっ…!カストール!!」
「ペンテシレア!!」
「ポリデュークス!!」
ペルソナでどこまで防げるかはわからないが、庇わないわけにもいかない。
三体のペルソナが女性を守ろうと向かうのに対し、女性は声を張り上げた。
「邪魔をするなァ!!!!」
びりびりと響いた怒号に、思わずペルソナが止まった。
その隙にと言わんばかりに放たれた呪怨属性のブレスが、女性へと迫る。
女性はそれに慌てることなく、その拳を引き絞った。
「これだ、これを待っていたんだ…!
我が拳がこれを打ち払った時…、俺は更なる高みへと行ける!!」
(この人だけ世界観違いすぎるってば…。
SEESのペルソナ、声だけで制しちゃったし…)
ブレスと拳が激突する。
本来、魔法スキルは質量を持たない。
炎や雷と言ったなにかしらの現象により、対象にダメージを与えるのが魔法スキルの原理なのだ。
が。西澤 桜華はその法則を軽々と飛び越えた。
本来ならばあり得ない魔法スキルへの物理的な干渉。彼女はそれを、己が拳ひとつでやってみせた。
もう語るまでもない。
桜華の拳は、バルルの放った呪怨属性のブレスを打ち払ったのだ。
(えーーーーー………???)
「な、なんだあの女は…!?」
「あのブレスを…、拳ひとつで…?」
「あり得ないっ…!西澤邸を軽々と破壊するブレスだぞ!?」
あまりのことに全員が引いている。
放ったバルルでさえも驚きと呆れが隠せず、竜の顔面からでもわかるような複雑な表情を浮かべた。
「ふははははっ!!
やはりいいものだな、お前との闘争は!!
ストリートファイトに明け暮れていたあの頃を思い出させてくれる!!」
(ほんとマジ勘弁してつかぁさい…。
こっちからしたら心臓保たんのです…)
厄介ごとが迫ってくる中、どうしてこんなバケモノと戦わねばならないんだか。
そんなことを思いつつ、バルルはブレスをいくつか放ち、宙に球体として停滞させる。
通称「ファンネル」。
別世界にてモンスターに転生してしまったスレ民から教わった技である。
「ほう、なかなか面白い使い方をする。
見た目が獣だからと言って、頭まで獣というわけでもないらしいな」
(これ、その獣が使ってた技だけどね…)
果たして、あれを獣のカテゴリに入れていいかは謎だが。
バルルがそんなことを思っていると、ふと、桜華が視線を逸らす。
「不届きものが6人…?
まさか、私の襲来を見越してか…?」
(6人…。いやストレガも居んのかよ!?)
どうしよう。最終防衛ラインである自分が桜華にかかりきりな以上、残ったのはタママと桃華のみ。
せめて桜華がテストを取りやめ、侵入者の排除に向かってくれれば。
そんな望みを胸に、スレ内でアドバイスを得たバルルは勝負に出た。
─────ストレガを二重人格お嬢様の命を狙う暗殺者にしたら、桜華様そっち行かんけ?
『桜華様!その輩のうち半裸の男、白いドレスの女、緑のジャージの男は桃華様の命を狙う暗殺者です!!
以前撃退したのですが、此度の侵入を見るにまだ懲りていない模様!!』
「なにっ…!?桃華!!」
ストレガ終了のお知らせ。
そんな文言が脳裏をよぎる中、バルルは屋敷へと駆ける桜華を見送る。
これでストレガは封じたも同然。
バルルは息を吐くと、その瞳をSEESの3人に向けた。
『……おい、貴様ら』
「………!?!?」
「な、なんだ…、この声は…?」
「あのドラゴンからか…?」
これぞスレ民たちの無い知恵により生み出された、諦めの悪い連中を制すとっておきの一手、「人類が届かない圧倒的上位者ムーブ」である。
キタローや岳羽ゆかりが居ない以上はあり得ないが、「それでも立ち向かう!」となりませんように、と祈りつつ、バルルは言葉を続ける。
『縄張りに性懲りも無く忍び込みおって…。
これまではコソ泥のような真似をするだけだから許していたが、今回ばかりは許さん。
よくも我が闘争の邪魔をしたな…?』
「逃げるぞ、美鶴!!」
「わかっている!!」
驚愕のあまり初動が遅れた彼女らに、バルルが停滞させたままだったファンネルが襲いかかる。
当てる気はなかったが、それでも脅威だと感じたのだろう。
降り注ぐファンネルから必死に逃げ惑う彼女らの前に降り立ち、バルルは口腔を見せる。
『許さん、と言ったはずだが?』
「来やがれ、カストール!!」
顕現したカストールが、バルルの開いた口を無理やりに封じ込める。
バルルは口の中に溜まった呪怨属性のブレスを喉に押し込め、口を押さえ込むのに必死になっているカストールを片手で制した。
『…姿を偽っていたとはいえ、まさか恩を仇で返されるとはな』
「は……?」
その言葉の真意がわからず、呆けた声を漏らす荒垣。
バルルはそれに構わず、極限にまで加減した呪怨属性のブレスをカストールに浴びせる。
これで死にはしないだろう。
断末魔の如き叫びを上げ、倒れる荒垣を前に、真田が召喚機を額に押し当てる。
「ポリデュークス!!」
『予備動作がわかりやすい。
せめて隙を無くす工夫をしてから使うようにしろ』
「がっ…!?」
召喚されたポリデュークスの頭を掴み、何度も地面に叩きつける。
ペルソナのダメージは本人にフィードバックされる。
いくらボクシングで殴られ慣れているとはいえ、ペルソナ使いとしての練度が低い真田はその衝撃に耐え切ることができず。
10秒ほど経った頃には、既に地面に倒れ伏していた。
『さて…、残るはお前か』
「……っ、ぺ、ペルソ…、あっ…!?」
美鶴が構えた召喚機を奪い、自身の足元に置く。
バルルは表情をより凶悪に変貌させ、戦う術を無くした美鶴を威嚇した。
『いいか、これは最終警告だ。
次、ここに足を踏み入れてみろ。骨も残さず殺してやるからな』
言うと、バルルは召喚機を彼女に返す。
呆けた顔をする美鶴を一瞥し、バルルは踵を返した。
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539.元ケロン軍人
…てな具合に追い返しといたわ
540.名無しの転生者
………やり過ぎてね?
541.元ケロン軍人
自覚はある。侵入はしてこんくなったけど、多分余計に西澤への疑い深まったわ
542.名無しの転生者
ダメじゃん!!
桜華様…ストレガはワンパンで沈めて敷地外に投げ捨てた。ペルソナ使いに対する評価は「なにするかはわからんが、予備動作が派手だからわかりやすい」。今回の一件で、二週間ほど桃華の周りを警戒していた。
バルル大佐…モンハンモンスター転生民から技を教えてもらい、ファンネルが使えるようになった