【悲報】宇宙人ワイ、小学生屋根ゴミに拾われた模様【助けて】 作:鳩胸な鴨
深海に顕現した街にて。
マロン人が駆使する生体兵器…ナイトメアに扮したシャドウたちが跋扈する中、いくつかの影が物陰に隠れて移動する。
シャドウがそれを訝しむより先に、その仮面に誰かが触れた。
『な、何をする!?』
「ここが弱いと聞きましたので!!」
少女…東谷 小雪が叫ぶと共に、ベリベリと肉が千切れるような音を立てて仮面を剥がす。
シャドウはナイトメアの姿を保てず、ドロドロに溶け、その醜悪な姿を現した。
馬の顔に人の体。
真紅に染まる毛並みを見せつけるようにポーズをかますそれを前に、小雪は顔を顰める。
「うぉわっ…、な、なんです、これ…?」
「小雪さん、退いてくれ!」
その叫びに小雪が飛び退く。
瞬間。シャドウ…破産を知るウマ男を凄まじい冷気が包み込んだ。
ダイアモンドダスト。
氷結属性最大威力の攻撃に晒されたオロバスは悲鳴をあげることができず、氷像となって砕け散る。
飛び退いた小雪が着地すると、いつの間にやらペルソナを顕現させていた蓮と目が合った。
「ご苦労様です、蓮くん。
…あの、その可愛いのは……?」
「ジャアクフロスト。強くて重宝してる」
「はぇー…。ペルソナも見た目によらないんですねぇ」
「ひほーっ!」と自慢げに胸を張るペルソナ…ジャアクフロストを仮面に戻し、周囲の警戒へと移る蓮。
それを遠巻きに見ていた冬樹は、訝しげに顔を顰めながら口を開いた。
「……馬の顔に、男の体…。
…もしかして、オロバス?」
「冬樹くん、あれを知ってるの?」
「うん。ソロモン王が使役してた悪魔の一体だよ。
でも、なんでシャドウがその姿に…?」
「それだけじゃない」
冬樹の疑問に被せるようにして、険しい面持ちのバルルが口を開く。
皆がそちらに視線を向けるより先に、バルルは言葉を続けた。
「あのシャドウは、蓮がペルソナとして使っていたこともある。
正直、たいして強くはなかったが…、シャドウがペルソナと同じ姿を取るなどというケースは初めてだ。
一体ここで何が起きている…?」
認知世界というわけでもあるまいに、と心の中で付け足すバルル。
徘徊する警備員型のシャドウ。
踏みしめるたび、赤黒い波紋が広がる地面。
この特徴はまさしく、歪んだ欲望が生み出す認知世界…パレスそのもの。
何が起きているのか全員の理解が追いつかない中、蓮が口を開く。
「ラヴェンツァなら何か知ってるかもしれない」
「らべんた?どちらさんで?」
「俺のペルソナを強くしてくれる子」
ケロロの疑問に答え、蓮が辺りを見渡す。
いつもはそこらにオーラを放つ群青色の扉が顕現しているはずだが。
だがしかし、そんな浅い経験則は外れ、一向に群青色のオーラは見えない。
ここら一帯が安全地帯ではないことの証明なのだろうか。
そんなことを思っていると、視界の隅に群青色の蝶が見えた。
「ゲロっ…?」
「蝶々…?深海なのに…?」
桃華が疑問をこぼすと同時に、その蝶が光を放つ。
皆が眩しさに一瞬視線を逸らすも、異質さから再び視線を蝶が羽ばたいていた場所に向ける。
そこには、群青色の服を纏う、銀の髪を伸ばした童女が佇んでいた。
「ごきげんよう、マイトリックスター。
それと、その御友人方」
「君がラヴェンツァ…?」
「はい。ベルベットルームにて、マイトリックスター…雨宮蓮のペルソナ合体と、処刑を行なっております」
「しょけ…!?」
「武器を作る時にこう、ペルソナを電気椅子に縛って、バリバリっと…」
「言わんでいい」
「あ、あいかわらず、小学生とは思えない胆力でござるな…」
そのショッキングさと言えば、一生のトラウマになりそうなものだが。
ドロロがそんなことを思う横で、タママが問いかける。
「ラヴェっちはどうやってここに来たですか?」
「ラヴェっち…?
…なるほど、『あだ名』というものですか。
マイトリックスター、今後私のことはラヴェンツァではなくラヴェっちと…」
「ラヴェンツァ。今はそれどころじゃない」
「……では僭越ながら…。現在何が起きているのか、ご説明させていただきます。
そのためにも、安全な場所へと移動しましょうか」
「そんな場所あんのかァ?
俺のレーダーでは、そこらじゅうシャドウだらけだぜェ?」
陰湿さを全面に押し出した声でクルルが問い詰めるも、ラヴェンツァはそれに笑みを返し、あるデパートを指差す。
「大丈夫です。『安心』の認知が根付いた場所が、あちらに」
「認知…?」
「……あそこ…。昔、姉ちゃんが迷子になったデパート…?」
「それがなんで『安心』…?」
「てゆーか、理解不能…?」
それぞれが疑問を浮かべる中、ラヴェンツァはデパートへと足を進める。
わからないことは多い。
だが、ここで足踏みしていても仕方がない。
皆は疑念を抱きながらも、ラヴェンツァの後に続いた。
♦︎♦︎♦︎♦︎
「簡潔に申し上げると、ここはナツミなる者の認知が生み出した世界…。
私たちベルベットルームの住人は、こういった世界を『パレス』と呼んでいます」
「パレス…。影時間とは違うの?」
無人のデパートにあるファミリーレストランにて。
蓮の隣に座ったラヴェンツァの言葉に、冬樹が問いかける。
「ええ。影時間のように、決まった時間に訪れるようなものではありません。
パレスとは、『歪んだ欲望』という色眼鏡を通して見た現実の世界。
核がある限り、いついかなる時も存在しているものなのです。
…ですが、今回はいろいろと特殊でして。
便宜上、近しいものがパレスしかなかったので、今回はそう呼ばせていただきます」
「夏美さんに、歪んだ欲望…?」
「想像もつかないでありますなぁ…」
日向夏美という人間は、良くも悪くも直情的である。
それこそ、パレスを生み出すようなことはないと思ってしまうくらいには。
ケロロたちがそこに違和感を覚えていると、バルルが口を開いた。
「……なるほど。人間は子供だけという今の状況が悪かったのか」
「ええ。このパレスは、強い孤独感に満ちています。
恐らくはナツミなる者が感じていた心細さが、メアボールという兵器によって形にされてしまったことで『認知世界と現実世界の局所的な融合』と言う現象が起きたのでしょう」
思いつく限り最悪のパターンを引いた。
いつもながら引きが悪いな、と嘆きながらも、バルルは情報を噛み砕く。
「夏美は普段から気丈に振舞ってはいるが、心根はまだ育ちきっていない子供…。
メアボールの心に干渉する機能と、夏美の認知…というより、心の暴走が重なった結果、『夏美の心の世界』と『記憶から再現された世界』が混ざってしまった…というわけか」
「せ、世界の融合って、まずいでありますか…?」
ペルソナ式普遍的無意識の恐ろしさをよくわかっていないケロロが、恐る恐るバルルに問いかける。
バルルは呆れを見せながら、諭すように答えた。
「まずいに決まってる。
最悪の場合だと、アンリ・マユのような存在が出るかもしれないんだぞ」
「どェエエーーーーッ!?!?」
「ま、まさか、そんなこと…」
「くーっくっくっくっ…。
大佐ァ、どうやらその最悪を引いちまってるみたいだぜェ?」
「なにっ!?」
モニターを見ていたクルルに、バルルが驚愕をあらわにして視線を向ける。
クルルはそのままパソコンを皆の方に向け、宙に浮かぶ画面を見せた。
「ちょいと解析してみたが、こないだのアンリ・マユに似た反応が出てる。
こりゃ明日にでも助け出さなきゃまずいことになるぜェ」
「チッ…。ただでさえマロン人による海面上昇が迫ってると言うのに…」
「……そ、そのー、また蓮殿にすんごいペルソナ出してもらうってわけには…?」
ケロロが手を擦り、蓮に媚びる。
蓮は仮面越しでもわかるほど申し訳なさそうに眉を顰め、首を横に振った。
「すまない、あれはまだ使えないんだ。
前のは力を前借りしてただけで、今回はその支払いができるくらいの対価がない」
「ゲロォーーーッ!?」
「じゃ、じゃあどうするですかぁ!?
またあんなヤバいのが出てきたら、今度こそペコポンが…!!」
「てゆーか、危急存亡…!?」
前回、キルルを媒体にして顕現したアンリ・マユを想起し、戦慄する一同。
と。それを一喝するように、ラビリスが立ち上がった。
「やれることやるしかあらへんやろ!!
夏美ちゃんも連れて帰る!!
邪魔してくるやつはぶっ飛ばす!!
そんだけのことや!!」
ごちゃごちゃ考えていても始まらない。
やるべきことは何も変わらないのだ。
そう主張するラビリスに、バルルが冷ややかな視線を向けた。
「……言ってることは立派だがな。
いい加減脱げ。気が散る」
「よくここまでバレなかったな…」
ラビリスはゴテゴテしたスカートこそ引きちぎってあるものの、未だに小林○子衣装のままだった。
ナツミパレス…■■ ■■のパレスと同じく、本人のシャドウが存在しない、現実世界と融合を果たしたパレス。夏美が強く感じていた心細さが肥大化し、それを形にされたことで生まれた。徘徊するシャドウの強さはピンキリで、Lv.15〜60の間のシャドウが見られる。シャドウはメール、マール、夏美には危害を加えない。オタカラは■■。
ギロロ伍長…捕まってるのでシャドウとパレスのことは知らない
日向夏美…捕まってるのでシャドウとパレスのことは知らない