【悲報】宇宙人ワイ、小学生屋根ゴミに拾われた模様【助けて】   作:鳩胸な鴨

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今回もスレないよ


8スレ目 母の抱擁

「あれは…夏美さん…!?」

「ナッチー、どうしちゃったですか!?」

 

ナイトメア、及びシャドウを撃退した遊撃部隊の全員が目を見開き、佇むイブへと視線を向ける。

と。ケロロロボの背に乗っていたラビリスが声を張り上げた。

 

「こ、これ、あかん…!

アンリ・マユとおんなじくらい…、いや、ちゃう!多分それよりもっとヤバい!!」

「ラビっち、それマジですか!?」

「マジもマジや!!なんであんなバケモンが、夏美ちゃんの姿に…!?」

 

見れば見るほど夏美としか思えない。

皆が動揺してる隙にも事態は動く。

異形が足元に手を翳す。ただそれだけの所作が、街を捲る大爆発を引き起こした。

 

「あそこは…!?」

「嘘…。冬樹くーーーーんっ!!」

「軍曹さーーーーんっ!!」

「おじさまーーーーっ!!」

 

皆が想い人の名を叫ぶ中、ドロロは冷静にその瞳をイブと名乗る怪物へ向ける。

鑑定眼力。相手の力量を図るために用いる、ケロン星のアサシンが修める技術の一つ。

だがしかし、その能力をもってしてもわかるのは、イブが規格外の存在であるということのみ。

ドロロがそれに冷や汗を流していると、その視界に見覚えのある影が映る。

 

「皆、あれを!!」

 

翼を広げた竜の影が、イブを周りを飛び回っている。

間違いない。バルル大佐だ。

よくよく見ると、その背には数人の人影がある。

あの大爆発の前に離脱していたのだろう。

皆がほっと胸を撫で下ろしていると、脳にバルルの声が響く。

 

『皆、無事だったようだな。

こちらはギロロ伍長の奪還に成功。

夏美、メール王子とやら以外は全員が無事だ』

「そんなことより、大佐殿!

あの巨大な夏美殿は一体…?」

『それなんだが、少し説明が難しくてな…。

わかりづらい、納得しづらいかもしれんが、そういうものとして受け入れてくれ』

 

ドロロが問うと、バルルが珍しく言い淀む。

どう説明すれば良いのかわからないのだろう。

バルルはイブが放つ数々の攻撃を避けつつ、情報を噛み砕き、念話を送る。

 

『アレは夏美じゃない。

誰もが持つ「寂しい」、「心細い」と思う心が生み出した怪物だ。

自らのことを聖書に書かれた原初の女性…、イブと名乗ったアレ本人がそう言った』

「なぜ、そんなものが夏美さんの姿に…?」

『夏美を取り込んだからだろうな。

このままいけば、アレは世界すらも飲み込むぞ』

「な、夏美さんは無事なんですか!?」

『生体反応はあるが…、精神がどうなっているかはわからんな。

なんにせよ、あの中からメール王子諸共引き上げる必要がある』

「であれば、私が…!!」

 

ギロロに負けず劣らず夏美に重い感情を向けている故か、小雪が立候補する。

が、しかし。それを制するように、バルルの鋭い声が響いた。

 

『やめろ!ミイラ取りがミイラになりに行くようなものだ!!』

「じゃあ、どうすれば…?」

『俺が行く』

 

響いたのは、決意を秘めた蓮の声。

視界の奥に小さく見える竜の背に、立ち上がる小さな影が見える。

それを制するべく、冬樹、ケロロ、ギロロが声を張り上げるのが念話に乗って届いた。

 

『蓮くん!?ダメだよ、君一人なんて!』

『そ、そうであります!小さい蓮殿に全てを押し付けるわけにはいかないであります!』

『そうだ!それに夏美でさえ抗えない支配に、まだ幼いお前が耐えられるわけが…』

『可能性があるのは、特殊なペルソナ使いである俺だけだ』

 

言うと、蓮は「バルル」と竜に促す。

竜は暫し逡巡したのち、諦めたように彼が飛び移りやすい位置に前足をやった。

 

『……了解した。頼んだぞ』

『大佐殿!?』

『バルル大佐、正気なのか!?』

『蓮には私の持てる全てを叩き込んできた。

賭ける価値はあると思うが』

 

バルルにそう言われては弱いのか、抗議を続けようとした全員が押し黙る。

そうこうしているうちにも攻撃は止まず、爆炎は勢いを増し、バルルたちに襲いかかった。

 

『ヒナタ ナツミは既に私の子供…。

あなたたちは子供から親を取り上げると言うのですか?』

『違う!!お前なんか姉ちゃんの…、いや!僕たちのママなんかじゃない!!』

『ママ殿を騙る不審者め!とっとと心の海とやらに帰りやがれであります!!』

『『日向夏美は我々が頂戴する』』

 

言うと同時に、バルルが蓮を乗せた手を振りかぶり、思いっきり投げ飛ばす。

黒の一閃は爆炎を掻い潜り、イブの純白の中へと吸い込まれた。

 

『……っ、ええい、俺も行く!!』

『なっ…、待て!ギロロ伍長!!』

 

それを追うように飛び出した赤も同じように、白へと沈んだ。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「……っと」

 

なんとも幾何学的な紋様が走る空間にて。

放り込まれた蓮は勢いを殺すべく受け身を取り、即座に得物を構える。

影時間に見えるあの塔のような趣だ。

見ていて気分が悪くなる、毒々しい印象を受ける場所。

蓮がそんなことを思っていると、その脳天に、ごちんっ、と衝撃が走る。

 

「だっ」

「ゲェ!?」

 

皮膚は非常に柔らかいが、頭骨が硬い。

その感触に覚えがあることに気づくと、蓮は頭に突き刺さったソレを引っこ抜いた。

 

「……ギロロ?」

「い、居ても立っても居られんくてな…」

「…まあ、だろうなとしか…」

 

ギロロ伍長の恋煩いは明後日の方向にぶっ飛んでいる。

不器用と生真面目が化学反応を起こし、これまでに致命的なまでのポンコツっぷりを何度となく晒してきたのだ。

今回もその恋心の暴走と捉えれば、納得できる行動であった。

 

「ぐずぐずしてる暇はない。

夏美を探すぞ、蓮」

「それはいいけど…、得物は?」

「……二丁くれ」

「わかった」

 

蓮は言うと、コートの中に隠していた銃を二丁取り出し、投げ渡す。

ギロロはそれを受け取り、即座に撃てるよう、安全装置を外した。

 

「ペコポンの粗末な銃が通用するとは思えんが…、贅沢など言ってられんか…」

「粗末なって…、一応、強いペルソナを電気椅子で処刑して作った銃なんだが」

「…………何故に電気椅子で処刑したら銃になるんだ?」

「俺もよくわかってないけど、そういうものなんじゃないか?」

 

軽いやり取りを交わし、慎重に歩み始める二人。

ここは敵の体内。

何が起きても不思議ではない。

二人が警戒心を露わにしていると。

ふと、その視界の隅に、見覚えのある人物が磔にされているのが見えた。

 

「あれは夏美と…、あとメールとかいう…」

「夏美ーーーッ!!」

「あー…」

 

暴走をなんとか抑えていた理性も、想い人の前では無力だったか。

駆けていくギロロを追いかけるべく、蓮も同じように駆け出す。

と。ソレを阻むように地面から白の飛沫が上がり、異形の影が姿を見せた。

 

『やめなさい。彼女らはもう私の子です』

 

深海都市に佇むイブとはまた違う、のっぺりとした女性の異形。

ソレを前に、ギロロと蓮は銃口を向けた。

 

「貴様ッ…」

「我が子を磔にする母親がどこにいる」

『磔ではありません。

これは母の抱擁なのです』

「抱擁…だと……?」

 

白の壁に飲み込まれた夏美たちに目を向け、ギロロが声を低くする。

正直、今すぐにでも引き金を引きたい。

しかし、今の夏美がどのような状態かわからない以上、彼女の話を聞くほかない。

ギロロは苛立ちを隠そうともせず、こめかみに青筋を走らせた。

 

『ええ。彼女らは抱擁により、母に抱かれる幸せを享受しています。

世俗の辛苦など何一つ経験することなく、母の腕の中で生きる…。

これこそがこの子たちの…、いえ。人類の幸せなのです』

「違う!夏美の幸せを、ぽっと出の貴様が勝手に決めつけるな!!」

『決めつけてなどいません。

ヒナタ ナツミとメールが強く望んだからこそ、私は顕現したのです』

「なにっ…?」

 

イブの言葉に眉を顰めるギロロ。

イブは踵を返し、その両手で磔にされた夏美とメールの頬を撫ぜる。

異形に撫でられたことで、まるで赤子のように安堵を浮かべる彼女らに、ギロロは目を丸くした。

 

「な、夏美……」

『わかったでしょう?

彼女らは望んでこうなったのです。

寂しい。心細い。帰りたい。母に会いたい。ずっと母に甘えていたい。

その願いを私が叶えているのです』

「そんなもの、紛い物だ。

お前は秋さんじゃない。秋さんの代わりは、誰にもできない」

 

断固とした否定。

凛と響く声に、ギロロたちが視線を蓮へと向ける。

仮面越しに佇む瞳には、青く燃え上がる反逆の炎が揺らめいていた。

 

『では、こうしてヒナタ ナツミが安堵を浮かべるのは何故です?』

「お前がそう思わせてるだけだろ。

夏美姉さんは望んだわけじゃない。

ただ少し、寂しくなってしまっただけ。

迷子のメールたちを、迷子になった自分に重ねてしまっただけだ。

拡大解釈もいい加減にしろよ、理不尽。うざったいぞ」

 

誰よりも子供であるはずの蓮からの拒絶。

その言葉がイブのプライドを刺激したのか、鉄仮面のような顔が歪む。

と。ギロロがふっ、と息を吐き、笑みを浮かべた。

 

「ああ。誰もお前を望んではいない。

この場で誰よりも子供である蓮にすら拒絶される、母親モドキのお前などはな」

 

ギロロとの絆が揺るぎないものへと変化するのを感じる。

ソレと共に、脳裏に言葉が響いた。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

我は汝…汝は我…

汝ここに、契りを血盟の絆へと転生せしめたり

 

絆は反逆の翼となりて

魂のくびきを打ち破らん

 

今こそ汝、「戦車」の究極なる秘奥に目覚めたり

無尽の力を汝に与えん

 

「戦車」:コープMAX

恋煩い宇宙軍人「ギロロ伍長」

 

合体解禁 戦車「ヨグ=ソトース」

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

『……いいでしょう。

我が子となる幸せをあなたたちにも…』

 

意識が戻ると共に、イブがその姿をより醜悪なものへと変える。

蓮は手元にいくつかの仮面を並べると、ソレらを一つへとまとめた。

 

「ギロロは夏美姉さんを」

「ああ。頼んだぞ」

 

仮面が青い炎へと変わり、鎖を放つ。

顕現するのは一にして全なる者。

蓮は不適な笑みを浮かべ、吠えた。

 

「潰せ…ッ!ヨグ=ソトース!!」

『さあ、母の元へと還るのです!!』




ヨグ=ソトース…アザトホースから漏れ出た「無名の霧」より産み落とされた神性。初期Lvは79。専用スキルは敵全体に万能属性中ダメージを6〜8回与える「窮極の虚空」。

現在のコープ
0.愚者…ケロン地球同盟軍→ランク7
Ⅰ.魔術師…日向冬樹→ランクMAX
Ⅱ.女教皇…日向秋→ランク7
Ⅲ.女帝…西澤桃華→ランク9
Ⅳ.皇帝…ケロロ軍曹→ランクMAX
Ⅴ.法王…ポール森山→ランクMAX
Ⅵ.恋愛…日向夏美→ランク9
Ⅶ.戦車…ギロロ伍長→ランクMAX
Ⅷ.正義…ドロロ兵長→ランク8
Ⅸ.隠者…クルル曹長→ランク6
Ⅹ.運命…ラビリス→ランク5
Ⅺ.剛毅…ラヴェンツァ→ランク7
Ⅻ.刑死者…アリサ=サザンクロス→ランク4
ⅩⅢ.死神…アンゴル=モア→ランク9
ⅩⅣ.節制…プルル看護長→ランク4
ⅩⅤ.悪魔…北城睦実(サブロー)→ランク6
ⅩⅥ.塔…東谷小雪→ランク7
ⅩⅦ.星…タママ二等兵→ランク9
ⅩⅧ.月…お観世(幽霊ちゃん)→ランク7
ⅩⅨ.太陽…ガルル中尉→ランク5
ⅩⅩ.審判…バルル大佐(イッチ)→ランク6
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