【悲報】宇宙人ワイ、小学生屋根ゴミに拾われた模様【助けて】   作:鳩胸な鴨

29 / 113
10スレ目 空虚の王

「な、なにが、どうなっている…?

あんな機能など、吾は知らぬ…っ!」

 

脱出し、大きく旋回するケロロロボのコクピットにて。

愕然とするダークケロロをアルコーンが一瞥し、鼻で笑う。

 

『ふんっ。既に我が体内より逃げ出していたか、先代の王』

「先代、だと…?違う、吾は…っ!」

『違わない。象徴たる我が貴様に代わってやったのだ。それが民意。

我が民の声を、貴様が支配していた愚鈍なる人類どもの声を聞くが良い』

 

ダークケロロの反論を押し殺し、淡々と告げるアルコーン。

と。影時間で象徴化している人類の暗い声が、あちこちから響いた。

 

────ケロロ様がいなくてもいいよね。新しい王様がいてくれるし

 

────別に王様ってケロロ様じゃなきゃダメってわけでもないじゃん

 

────ねぇ、ケロロ様って誰だっけ?

 

────前の王様だよ。もう顔も思い出せないけど

 

そんなバカな。

そう叫ぼうとしたダークケロロの喉奥からは、空気だけが漏れる。

冬樹たちにもその声は聞こえたようで、顔に怒りを滲ませ、アルコーンを睨め付けた。

 

『王は誰でもいい。ただ支配されたいという欲望が、この星の人類には存在する。

が。貴様は小さな綻びで王座を失った。

だからこそ、我が代わりの王として君臨したのだ。

貴様はもう、「王様だった誰か」でしかない。

ないも同然の存在が何を為せる?』

「ないも、同然………」

 

徹底的に心を折り、踏み躙る言葉の数々。

ただでさえズタボロだったダークケロロのプライドは今、粉々に砕け散った。

茫然自失となったダークケロロの肩を強く掴む冬樹を横に、ケロロは怒鳴り声をあげる。

 

「なーに訳のわからない屁理屈捏ねてるでありますか、このバケモノめ!

ないも同然!?そんな訳ないでしょうが!

もう一人の吾輩は今、きちんとここに存在しているのであります!!」

「そうだよ!この軍曹は、空っぽの王様だった誰かじゃない!

これから何にでもなれる、一つの命、一人の人なんだ!!」

 

冬樹たちの叫びに、ダークケロロの表情が小さく動く。

今まで感じ取れなかったもの。

今まで知ろうともしなかったもの。

それが満たされたような気がして、ダークケロロは冬樹たちの手を握った。

 

「ゲロっ…」

「軍曹…」

「…吾をあの空中都市まで戻してくれ。

アイツを…、キルルを止めに行く」

 

声から鋭さが抜け落ちる。

冬樹たちはそれに目を丸くするも、即座に頷いた。

 

「了解であります!!」

「うん、行こう!!」

『なら、私たちが殿を務める』

 

ケロロロボに迫っていた弾幕が、見慣れた呪怨属性のブレスに打ち消される。

皆がそちらを見ると、ウォリアースタイルで空を駆けるバルルと、その上に乗ってペルソナを操る蓮が見えた。

 

「大佐殿!蓮殿!」

『無事を喜ぶのは後にしよう。

ケロロ軍曹。制御装置とコアの場所は把握しているんだな?』

「わからんな。アレに乗っ取られた以上、どちらも場所が変わっている可能性がある」

『やはりか。手を打って正解だった。

……出来れば避けたい手段だったが』

 

バルルはため息を吐くと、冬樹たちにも聞こえるよう、双葉に念話を繋いだ。

 

『双葉、加勢は来たか?』

『こっちはもう大丈夫!

アイツの解析に集中する!』

『若葉にまとまった休暇とボーナスを出す。

旅行にでも連れてってもらえ』

『うん!!』

 

一週間は休憩無しのデスマーチだな、と思いつつ、バルルは迫る弾幕を再びブレスで薙ぎ払う。

それによりいくつかの砲身が崩れるも、即座に新たな砲身が突き出て、様々な属性弾を放つ。

魔法扱いでも、物理扱いでもない、耐性無視の攻撃。

それを前にして、蓮はいくつかの仮面を合わせ、新たなペルソナを作り出す。

 

「醒めろッ、アザトホース!!」

 

顕現したアザトホースが放つ波動が、属性弾を軒並み消し去る。

これだけでごっそりと気力が削られた。

もっと精神的に鍛えておくべきだったか、と悔やみつつ、蓮は残り少ない御卵を噛み砕く。

ウボ=サスラも生成してミックスレイドを決めたいところだが、回復される恐れがある以上、実行には移せない。

アレは1日に一度きり。

撃った後の1日は一切戦えなくなるという無視できないデメリットがある。

使うとすれば、トドメの一撃。

蓮は思考を巡らせながらも、ケロロロボに流れ弾が飛ばないよう、アザトホースを操る。

 

「……これが、『特別な繋がり』の力か…」

 

広がる光景を前に、呟くダークケロロ。

自分にない「特別な繋がり」の力で、巨像と戦う皆を見つめていると、ケロロが首を横に振る。

 

「いいや、それは特別でもなんでもないのであります」

「そうだよ。友だちを思う気持ちに、ケロン人も地球人も関係ないんだ」

「友だちを…、思う、気持ち…」

 

ペルソナは心の力。

心は良くも悪くも他者と関わることで成長、変化していくもの。

今まさにダークケロロたちを守るアザトホースも、ケロロと蓮が繋いだ「当たり前の絆」の産物なのである。

幾つにも重なった絆により生まれた力を目の当たりにして、何を思ったのだろう。

ダークケロロは小さく笑みを浮かべ、声を張り上げた。

 

「ミルル、聞こえるか」

『はい』

「あのバケモノを止める。手伝え」

『…アレを止めることは、あなたの消滅を意味します。それでもいいのですか?』

「構わん。それもまた王としての責務…いや、これはただの建前だな」

 

目を瞑り、思考を巡らせる。

反芻する冬樹の声。

ダークケロロは表情からも剣呑な雰囲気を霧散させ、告げた。

 

「友だちを助けたい」

『……承知しました。お待ちしております』

 

からん、と何かが地面に転がる音と共に、ミルルとの通信が切れる。

どうやらアルコーンが邪魔をして、こちらへと来られないらしい。

ダークケロロは窓越しでも聞こえるよう、バルルに語りかけた。

 

「そこの竜!制御装置は要塞部の地下一階に転がっている!あとはわかるな!?」

「バルル、俺が繋ぐ。飛ばせ」

『承知。舌を噛むぞ、口は閉じてろ!!』

 

がしっ、とアザトホースの触手がケロロロボとバルルの胴体を繋ぐ。

バルルは翼を傘のように折り畳み、呪怨属性のエネルギーをその内部へと集中させた。

これぞスレ民たちの知識から得た技の一つ…擬似ジェット噴射である。

きぃぃいん、と甲高い音を立てて、溜めていたエネルギーが放出される。

一瞬にして肉眼で認識できないほどの速度に達した彼らは、真っ直ぐにキルルの要塞部分へと突っ込んだ。

 

「んぃいいい…っ!?」

「………っ!?」

「ゲェロォォォ…!?」

 

呪怨属性の防壁を展開し、赤黒い彗星となったバルルが要塞を穿つ。

アルコーンがその衝撃に揺らぐと同時に、シヴァヴァが空に打ち上がり、ドルルが装備ごと爆発した。

 

『……愚かな』

 

アルコーンが忌々しげに呟く。

キルルの無力化は、奴にとってかなりの痛手らしい。

その考えを肯定するように、空中都市中のシャドウが要塞の残骸へと殺到する。

様々な属性の攻撃が雨霰と要塞跡地に降り注ぎ、さらに原型を破壊していく。

 

『ダメーーーーッ!!』

 

ソレを防いだのは、双葉の叫び。

思考のリソースを無理やりにそちらに回し、防壁を展開する。

と。防壁により止まったシャドウの群れ目掛け、ペルソナのスキルが飛んだ。

 

「ペンテシレア!!」

「ポリデュークス!!」

「カストール!!」

「アリアドネ!!」

 

冷気が。雷が。衝撃が。猛獣が。

あらゆる攻撃が絶え間なく撃ち込まれ、シャドウが殲滅されていく。

シャドウの群れに隙間が出来ると、赤黒い影がそこから飛び出した。

 

『双葉、コントロールルームは!?』

『そこから五時の方向21km先の地下!』

『よし…』

「待て。バルル、お前…」

 

翼を再び折り畳みかけたバルルを、表情を歪めた蓮が止める。

その視線の先には、ところどころ鱗が焼け爛れたバルルの翼があった。

攻撃をもらってない以上、先程の負荷に耐え切れなかったとしか思えない。

蓮が心配を向けていると、バルルは口を開いた。

 

『蓮。宝玉をもらえるか』

「………わかった」

 

口へと放り込まれた宝玉を噛み砕き、再び翼を折りたたむバルル。

翼が完全に治癒するのを待たず、一気にエネルギーを放出し、加速する。

が。ソレを阻むかのように、数匹の警備員型シャドウが地面からせり出た。

 

『これ以上好きにはさせん!!』

『止まれ、俗物どもめ!!』

 

かなり強大な個体なのだろう。

赤いオーラを放つソレが弾け、天使のような姿を取る。

彼らはそれぞれマカラカーン、テトラカーンといった障壁を展開し、迫るバルルに備えた。

 

「オラ行けタマ公!!」

 

と。ソレより先に、障壁を飛んできた何かが打ち破る。

天使たちがそちらに視線を向けると、ボールを投げ終わったかのような体勢の桃華と目が合った。

では、彼女が投げたものはなにか。

彼らがそちらを見ると、大きなたんこぶを作ったタママの血走った瞳に目を剥いた。

 

『な、なんだ!?』

「やってることえげつない癖に『自分は正義の味方でーす』って言いたげなそのツラもありがたげな後光もうざったいんじゃゴルァ!!とっとと消えやがれェ!!」

『ぐ、ぅおおおっ!?!?』

 

手のひらに漆黒のエネルギーを集め、近場にいた天使の体へと叩きつける。

日頃抱えた恨みつらみや嫉妬といった黒い感情をエネルギーとして凝縮し、放出するタママの奥義…嫉妬玉。

黒が天使を穿ち、障壁の一つが消える。

と。そのタイミングを見計らったかのようにもう一人の天使の額に投擲された二つのエネルギーブレードが突き刺さり、その場に崩れ落ちた。

 

「ミッションコンプリートね…!」

「いや、まだだ!あと一体来る!」

 

ギロロが叫ぶと共に、先ほどより一際巨大なシャドウが迫り出した。

 

『もう堪忍ならん!主人の慈悲を理解できぬ愚か者どもに裁きの光を!!』

 

現れたのは、先ほどまでの天使たちより遥かに眩い威光を放つ大天使。

天使は手に持った槍を振い、幾重にも光を展開する。

バルルの展開する呪怨属性のバリアを破壊するつもりなのだろう。

クッションの役割を担っているバリアを失えば、バルルの体は速度に耐えることができずに自壊する。

天使は…否。アルコーンはソレを理解していたのだろう。

迫り来る光の大雨を前に、蓮が悔しげに眉を顰めたその時だった。

 

「零次元斬!!」

「氷柱手裏剣!!」

『なっ…!?』

 

その光の雨を、二陣の風が打ち払ったのは。

天使が驚愕に目を剥くのも束の間、天使の体に衝撃が走る。

 

『間も無く到着するぞ!

封印の手筈は整っているな!?』

「ああ」

 

言って、制御装置を抱えるダークケロロ。

と。ケロロロボのハッチを開けようとする彼に、冬樹が問いかけた。

 

「……本当に、やるの?」

「元より吾が招いたことだ。ケジメはつける」

「でも、君が消えることなんて…!」

「冬樹……」

 

冬樹の押し殺した叫びに、目を丸くするダークケロロ。

彼はその視線をケロロへ向け、優しさを込めた声を漏らした。

 

「もう一人の吾よ。冬樹のことを頼んだであります」

「ゲロっ……」

 

別れは済ませた。

ダークケロロはハッチを開け、空中都市へと身を投げる。

と。ソレに続くように蓮が飛び降り、アルセーヌを顕現した。

 

「道は開く」

「………かたじけないであります」

「こういう時はありがとうだ。

奪えッ、アルセーヌ!!」

 

叫ぶと共に、アルセーヌが膨大な量の光を空中都市に叩きつける。

暴かれたのは、マチュピチュの地下で見たあの結晶体。

ダークケロロがそこに着地すると、アルコーンの叫びが響いた。

 

『やめろ、やめろ!!象徴たるこの像が崩れてしまえば、人は道標を失うのだぞ!?』

「そんなものがなくとも、彼らはここまで歩いてこれた。

吾の侵略は…、この支配は間違っていたのだ」

 

王による王の否定。

ダークケロロは今なお戦う彼らの姿を思い浮かべ、微笑む。

運命は受け入れた。これで全てが終わる。

ダークケロロが制御装置を振りかぶると共に、アルコーンが絶叫した。

 

『やめろぉおおおおおおっ!!!!』

「さらば!!!」

 

がきぃんっ、と制御装置を突き立て、回す。

瞬間。コアの周囲から装置が迫り出し、眩い閃光を放った。

 

『ぬがぁああああっ!?』

 

ソレと共にアルコーンの体…顔以外の中身をすっぽり覆っていたケロロ像が崩れていく。

消滅していく空中都市。雪崩のように落ちていくガラクタ。

残されたのは、中身であった空虚の王のみ。

蓮はガラクタを伝ってバルルの背に飛び移ると、仮面を燃やした。

 

『笑い物だな。王という外殻に隠れていた本性がソレか』

「お前の方がよっぽど空っぽじゃないか」

『な、なんだと…、貴様らァァア…!!』

 

顕現するは、アザトホースとウボ=サスラ。

その二つが手を取り合うと共に、その中心に形容し難い色彩の光が迸る。

蓮はその光に銃を構え、奥に佇むアルコーンを睨め付けた。

 

「失せろ」

 

たんっ、と音が響く。

刹那。世界の壁すら壊すほどの大爆発が巻き起こった。




ダークケロロ…このあと、瓦礫の山から「ふぅ!死ぬかと思った!」して復活。どこか遠くの星へと旅立ち、冬樹そっくりの友だちと蓮そっくりの友だちが出来た

バルル大佐…無茶のしすぎで丸三日寝込んだ。スレも開けないほどに疲労困憊だったため、スレ内での状況報告が遅れた。回復してすぐに桐条の相手をする予定なので胃がキリキリしてる
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。