【悲報】宇宙人ワイ、小学生屋根ゴミに拾われた模様【助けて】 作:鳩胸な鴨
墜落し、そこに駆けつけた桃華たちに保護されて数分後。
彼らは桃華の友人だというフェリシタシオン・ドゥ・ドラクーンが住まう屋敷へと訪れていた。
皆が客室に向かう中、パシャパシャと夢中になって黄金のザクレロをカメラに収めるケロロに、残っていた蓮がため息を吐く。
「……都合よく置いてるな、ケロロが興味を持ちそうなのが」
「そうそう!都合よく置いてるんだよね!
………ん?都合よく???」
「なあ、ケロロ。タママが行方不明になった場所であるこの屋敷と、この家の名前…。
それに、廊下で見た鎧と比べて明らかに新品のザクレロとギャン…。
なにかあると思わないか?」
怒り過ぎて逆に冷静になる、という現象を初めて目の当たりにした気がする。
そんなことを思いつつ、ケロロは聳えるモビルスーツの像…ギャンとザクレロ、そして周囲に立つ鎧を見比べる。
確かに、経年劣化が見られない。
まるでこの日のために急ピッチで仕入れてきたかのような違和感がある。
ケロロが冷や汗を滲ませていると、蓮がその手を握った。
「冬樹も気づいてると思う。
ケロロ、一度皆のところに行こう」
「そ、そうであります…な……」
瞬間。ケロロの瞳が怪しく光り、蓮の手を振り払う。
「ケロロ…?」
蓮が問うも、ケロロは答えることなく、屋敷の中を駆けていく。
まるで、何かに突き動かされるかのように。
蓮は疑念と共に服を怪盗服へと変え、ケロロを追う。
幸い、ケロロの走る速度はそこまで速くない。
追いかけていくと、火のついてない暖炉の横にある隠し扉に入っていくケロロの姿が見えた。
「やっぱり、何かある…!」
物音を鳴らさないよう、石造りの階段を降りていく。
ドロロに音の消し方を学んでよかった。
そんなことを思いつつ、階段を降りていくと。
何事かを言い合うケロロ、そしてこの屋敷の主人たるフェリシタシオン…シオンの声が響いた。
「ギロロ伍長、ドロロ兵長…、クルル曹長…、そしてバルル大佐…。
みんなして、ドラゴンになってしまったのでありますか…!」
「これが竜の戦士…ドラゴンウォリアーなのです。
ケロロさん。あなたも私の力で、ドラゴンウォリアーになる運命なのです」
「……」
やはりか。そんな気はしていた。
心構えをしていたからだろうか。
あまり驚きはなく、驚くほど頭は冷静だ。
腹の中で暴れ回る怒りだけが抑えられない。
だがしかし、今優先すべきは感情ではなく、情報。
蓮は物陰に隠れ、二人の応酬を見やる。
「せからしか!ドラゴンなんかになって…、ドラゴン、なんかに…。
…………いや、それはそれでアリかも?」
「そうなのです!」
言うと思った。
シオンに抱えられ、妙な魔法陣の上に乗せられたケロロに冷ややかな視線を向けつつ、蓮はシオンの言葉に耳を傾ける。
「ご理解いただき感謝なのです」
「あ、あの…、動けないんですが…?」
「よろしいですか?
生まれ変わるためにまず、それまでの記憶は失われます」
「どしぇっ!?」
ぶっつん。
そんな音が脳裏で響く。
ああ、ダメだ。こいつは許せない。
心の奥底から湧き上がる衝動に身を任せ、蓮はシオンへと駆ける。
「えっ…?蓮さん…?」
「うたるぞぬッしゃぁあああああッ!!」
「きゃっ…、ぐぅっ!?」
速度を乗せた全力のドロップキックが、シオンの胴体を穿つ。
吹き飛ぶシオンの体をよそに、蓮はケロロの体を抱き上げ、踵を返した。
「れ、蓮殿…。助かったであります…」
「ここから逃げるぞ!
ぶち抜け、アルセーヌ!!」
顕現したアルセーヌの斬撃により、天井に穴が開く。
蓮はそのまま強化された身体能力を駆使し、屋敷へと戻った。
「逃しはしないのです…!」
が。シオンの執念は一度のドロップキックで挫かれるほど脆くはない。
逃げられると踏んでいたのだろう。
待ち構えていた執事たちが、次々と蓮に迫った。
「ゲェロォーーーっ!?
れ、蓮殿、囲まれてるでありますよ!?」
「問題ない!マカーブル!!」
仮面を切り替え、布で顔を覆った死神…マカーブルを顕現させる。
繰り出すのはデビルスマイル。
一部の執事たちはその姿を目の当たりにした途端、強い恐怖に支配され、腰を抜かした。
「お前たち!何をしている!」
「ひ、ひぃっ…!?だ、だって…」
「何をしたのでありますか?」
「ちょっと怖がらせただけだ!すぐ治る!」
腰を抜かした執事の横を通り抜け、屋敷の外を目指す。
入ってきた経路は覚えている。
バルルが「通った道は覚えておけ」と口酸っぱく言っていた理由がようやく理解できた。
そんなことを思いつつ、蓮は玄関ホールへと飛び降りる。
と。待ち構えていた巨漢…、執事長であるピエールが、出入り口の前に立ちはだかった。
「お戯れもほどほどに。
ムッシュケロロ、そしてムッシュ蓮」
「……退いてくれ。余裕がない」
「お断りさせていただきます」
ピエールの拒絶に合わせるよう、どこからともなく現れた執事たちが蓮を取り囲む。
蓮はそれを前にケロロを離し、忌々しげに舌打ちした。
「それは殺してくれという意味か?」
青い炎が吹き出し、執事たちを牽制する。
蓮は人相手にペルソナの力を振るうような真似は極力避けてきた。
もしその力を使うことがあるならば、ケロロたちがバカな真似をやらかしたなど、よほどの緊急事態だけ。
が、しかし。今は話が別。
相棒とも、もう一人の親とも言える存在が記憶を抹消され、名前も今日知ったばかりの女に操られるだけの傀儡と化した。
どんな聖人だろうが、怒らないわけがない。
ぐつぐつと煮えたぎる衝動に身を任せ、仮面を剥がそうとしたその時だった。
「どけどけどけどけどけェ!!
シャドウラビリス様のお通りだァ!!」
「蓮くん、ボケガエル、居る!?」
壁をぶち破り、シャドウへと切り替わったラビリスが声を上げたのは。
蓮がそれに目を白黒させていると、ガンダムに酷似した装備を纏う夏美が飛び出す。
ケロロが趣味全開で開発したガンダム型地球人スーツだろう。
執事を薙ぎ倒しながら駆けつけた皆に、蓮は緊張を少しばかり解く。
「皆、どうして…?」
「こっちはこっちでまずいことになってんの!ほら、アレ!!」
「ゲロ?」
夏美が指差す方に目線を向けた途端、爆風が彼らの体を襲う。
転がったのは、白兵戦に特化したギロロスタイルへと変身した新ケロロ。
蓮がその体を片手で受け止めると、黒い影がそれに向けて拳を引き絞った。
「退け、ペコポン…」
「ややこしい時に来るな!!!」
「じんっ!?!?」
ずごぉんっ、と黒い影をアザトホースの触手が叩き落とす。
咄嗟のことで一切の加減が出来なかったのだろう。
ものの見事にシルエット状の穴が空いた地面を前に、蓮は鼻を鳴らした。
「ぽっと出に構ってる暇はない!!」
「…出オチで終わらせていいやつじゃない気がする…」
「なんかこのシルエット、本隊くんそっくりでありますなぁ」
「まさにそうなんだよ、軍曹。何か知って…」
「お話はそこまでなのです」
別件がこうも立て込むとは思っておらず、苛立ちをあらわにする蓮。
と。皆が困惑をあらわにするのを諌めるように、シオンの声が響いた。
「運命から逃れようとしても、詮無いことなのです」
「しつこっ!!あーもー、アンタねぇ、我輩たちをドラゴンにして何がしたいのよさ!!」
「地球竜誕生のため、一人でも多くのウォリアーが必要なのです」
彼女は持っていた本…失われたウォリアースタイルのマニュアルである「竜の書」を開き、淡々と内容を読み上げる。
竜の尾を出現させ、資格あるもの…ケロン人をドラゴンウォリアーと化す。
ウォリアーたちに守られ、星の化身たる地球竜は古き命を一身に吸い上げて誕生するという。
その字面から推測される最悪を前に、蓮はドスの効いた声を漏らす。
「お前…、そんな理由でバルルを…!!」
「だって、地球竜…、私の心の友が今も叫んでいるのです!
暗いの嫌!ひとりぼっちは嫌!新しい世界に生まれたいって!」
「だから、俺たちの友だちを殺しても許されるっていうのか!?」
アザトホースからアルセーヌへと切り替え、怒号を放つ蓮。
怒りを向けられたシオンはその意味がわからないのか、心底不思議そうに首を傾げた。
「………?殺してなんかいないのです」
「だったら戻せ。皆はお前の人形じゃない」
「彼らは地球竜誕生のため、その力を貸してくれているだけ。
人形という言い方は不適切なのです」
「ふざけるな!!皆を返せ!!」
ぐっ、と拳を握り、駆け出す蓮。
それだけで何をするか悟ったのだろう。
ピエールや執事たちが蓮へと向かおうとした、まさにその時だった。
「いやァァアアアアア!?!?」
双葉の悲鳴とともに、がしゃぁああん、と車が窓ガラスを突き破ったのは。
数回のバウンドと共に車が着地すると、その中から秋、一色親子、ポールの四人が顔を見せる。
「じゅみょうちぢんだ…。たましいでた…」
「秋…。その、もうちょっと気を遣った運転してくれないかしら…?」
「だって、ポールさんがピンチで急ぐし窓突き破ってもいいって言うから…」
「桃華お嬢様!遅れましてございます!
不祥ポール、只今参りました!」
「わー、状況が整理しきれない…」
冬樹が半目で呟いた、まさにその時だった。
天井を突き破り、見覚えのあるドラゴンが降り立ったのは。
「これ以上抵抗すると言うならば、このウォリアーがお相手するのです」
「………バルル」
最も敵に回したくない竜が、そこに居た。
ブラックスター…地上に向かってる途中。今作の異変全てを単独で解決できるポテンシャルがあるものの、思考回路がクソガキなので事態をややこしくさせることしかしない。
雨宮蓮…ガチギレ中。感情の昂りに呼応して、ペルソナも強化されてる。怒り散らしてはいるものの、頭は至って冷静。
バルル大佐…タママだけでは心許なかったので、もしもの時のためにと駆り出されていた