【悲報】宇宙人ワイ、小学生屋根ゴミに拾われた模様【助けて】 作:鳩胸な鴨
「……これが私の戦闘服…。
全く、自分の性分に嫌気がさす。これでは仕事気分が抜けんではないか」
ウォリアースタイルを解いたバルルが自分の体を覆う黒い軍服をまじまじと見つめ、辟易を漏らす。
これが自分の反逆者としてのイメージなのだろうか。
まさかここまで軍人思考が滲んでいるとは、と思いつつ、倒れたブラックスターに目を向ける。
「処理落ちか…。蓮、そっちはどうだ?」
「本を取り上げた。
…バルル。ケロン文字じゃないか、これ?」
「どれ…。かなり古い文法だな。
地球で言えば、古文でも習わないくらいの古いものだぞ」
「こぶん?」
「中学に上がれば嫌でもわかる」
嫌いだったなぁ、古文の授業。
そんなことを思いつつ、バルルは竜の書をパラパラと捲る。
「落丁がひどいな。
解除法がごっそり抜けてる」
「バルル、読んだことあるのか?」
「あるにはあるが、ケロン軍が保有しているデータも落丁がひどい。ウォリアー化については一部しか書かれていなかった。
これは逆にウォリアー化の手法と…、宇宙竜の育成法が残っているな」
「宇宙竜…、地球竜じゃなくて?」
執事を制圧した夏美が問いかける。
どうやらケロロから話を聞いたらしい。
シオン含む皆から向けられる訝しげな視線に、バルルはため息を吐く。
「こいつもこいつで処理が面倒なんだ。
ただ生きてるだけで大迷惑と言わざるを得ない生態をしていてな。
コイツは星を養分にして、孵化の準備を始めるのだ。
わかりやすく言うと、あのアーチは地球の養分を吸うための根。ドラゴンウォリアーはソレを守るための防衛隊と言ったところか」
「あ、あのー、大佐殿?
このままだと、ペコポンはどうなるんで?」
ケロロが恐る恐る問いかける。
想像はつく。だが、現実を見たくない。
そんな優柔不断なケロロに現実を突きつけるかのように、バルルは淡々と告げた。
「終わりのない氷河期に突入する」
「シェーーーーッ!?!?」
それは世代の人が見たら感涙を流すほど見事な「シェー」であった。
こんな時でもふざけていられる余裕があるのか、はたまたそうでもしないと余裕が持てないのか。
呆れた目でケロロを一瞥し、バルルは倒れ伏したピエールへと目を向ける。
「ピエール殿。私の予想が正しければ、おそらく緊急のものです」
「あ、あぁ…、失礼…。
もしもし、こちらピエール…。
……なんだと!?それは本当か!?」
「ピエール…?どうかしたの…?」
殴られた頬が痛むのだろう。
頬を押さえながらシオンが問いかけると、ピエールは「即座に撤退しろ」とだけ言って電話を切った。
「実は、各地のドラゴンウォリアーが勝手に移動を始めたようでして…」
「最終段階に入ったな。
孵化寸前、地球滅亡間近だ」
「僕たち、何回こういう目に遭えばいいんだろう…?」
「え…?冬樹さんたち、頻繁にこういう目に遭ってるんですか…?」
「これから君も遭うわよ、灯くん」
「えぇー…」
嫌すぎる宣告に肩を落とす灯。
その横で、タママも桃華からことの次第を聞いたのか、「どぇえ!?」と声を漏らした。
「現場に行けばまだやりようはある。
モン・サン・ミシェルの頂上。そこにある隠し扉から地下に通ずる階段があると書かれてるが…、まあ間に合わんな。
卵もこの段階だと硬度を増して、破壊することも叶わん。
唯一の方法は、ほとんど賭けになるが…」
言って、バルルはシオンに視線を向ける。
その瞳からは、哀れみが見てとれた。
「フェリシタシオン殿。
あなたの事情はよく知りませんが…、このようなものに頼りたくなるほどに追い込まれていたのでしょう。
ポール殿と渡り合うピエール殿のようなお方が、主人だからというだけであなたの凶行に付き合うとは考えられません」
「バルル。でも、こいつは…」
余程いい印象を抱いてないのだろう。
不機嫌そうに言う蓮に、タママが声を上げる。
「シオっちは悪い子じゃないですぅ!
ただ、その…、ちょっと方法を間違えちゃっただけで…!」
「そ、そうです!シオンは両親を亡くして、縋るものが欲しかっただけで…」
「………!」
タママと桃華の訴えに、ハッ、と申し訳なさを表情に乗せる蓮。
バルルはソレを横目に、蓮の背をさすった。
「一方的に罪人を悪と断ずることもまた罪となる。
口酸っぱく言ってるだろう、蓮。
人を罪だけで判断するなと」
「…ごめん。大人げなかった」
「………蓮くんって、小学生とは思えないほど聞き分けいいわよね…」
「双葉だったら二度と会いたくないって言うレベルで怒ってるわ…」
「そこ。真面目な話してるんだから茶々入れるな」
ボソボソと話す秋と若葉にバルルの叱責が飛ぶ。
とてもケロロと同い年とは思えない。
タママが感心と呆れを込めた視線を交互にむけていると、バルルが咳払いし、シオンに向き直った。
「蓮の言う通り、罪は罪。
罪は犯した本人が禊がなければならぬもの。
あなたには相応の行動をもって、責任を取っていただきたい」
「責任…?」
それはそれ、これはこれ。
首を傾げたシオンに、バルルは冷たい顔を向けた。
「蓮が私にやろうとしたことと、同じことをしてもらう。
文字通り、死ぬ気でどうにかしろ」
♦︎♦︎♦︎♦︎
「……行ったか」
再びウォリアーと化し、空を駆けるバルルの背を見送るポールがつぶやく。
と。力士のような出立ちのピエールがその側に歩み寄り、同じくバルルの影を見やった。
「ポール。フェリシタシオン様を殴り飛ばしたあの子供、もしやお前の…」
「謝りはせんぞ。フェリシタシオン様は一度、叱られることを覚えるべきだった」
「…だから止めなかったのだな」
いくら親交のある家の令嬢とはいえ、今回ばかりは容認しきれない部分が多くあった。
だが、西澤家の執事という立場の自分では、シオンの間違いを正すことはできない。
故に、自分が持つ技術の殆どを叩き込んだ弟子にその役目を託した。
「あの子は誰かを想うために怒り、誰かを想うために戦う。
誰が相手だろうと、心の奥底から嫌うことはしないだろう。あの子はそういう子だ」
「……そうか」
二人の間に沈黙が流れる。
語りたいことはある。だが、何を言っても言い訳にしかならない。
ピエールが苦痛に顔を歪めていると、ポールが口を開く。
「ピエール。ご両親を亡くされて、縋るものがアレしかなかったという事情はよくわかった。
だが、フェリシタシオン様の暴走には看過できないものがあったことも事実。
残念だ、ピエール。お前ならもっと、やりようがあっただろうに」
「……そう買い被るな。
フェリシタシオン様が得た生き甲斐を、私も盲目に信じ過ぎてしまった。
情けない。間違いを正すのも、我々従者の役目だというのに…」
猛省しているのだろう。
男泣きを見せるピエールに、ポールは言葉を探す。
少しばかり逡巡し、ポールは何気ない世間話を切り出すかのように口を開いた。
「…少し前、初めて桃華お嬢様を叱ったのだ。
恋心を抱くのは良いことだ。ただ、努力すべきことを間違えてはいけないと」
「……桃華様はなんと?」
「しばらくは落ち込んでいたが…、言ってくれてありがとう…と、言葉を賜った」
─────悪いことは悪いって言わないとダメじゃないか?そうじゃないと、何が悪いかもわからない。
脳裏に響くのは、蓮の言葉。
あの言葉がなければ、従者である自分が桃華を叱ることはなかったかもしれない。
そんなことを思いつつ、ポールは言葉を続けた。
「お嬢様たちはまだ子供だ。
いくら地球の危機に立ち向かおうと、根っこは一人で立とうと足掻く子供なのだ。
我々大人がすべきは、手を取り、支えることだけではない。
人生の先輩として、立ち方を教えてやることだ」
ポールは「バルル殿からの受け売りだが」と付け足し、執事服を羽織る。
ピエールもまた、ソレを横に腹をサラシで押さえつけた。
バルル…怪盗服は軍服、仮面はペストマスクに近い。叱る時はきっちり叱るタイプ。
フランスの不思議ちゃん…自分が何をしでかしたのかをバルルと秋、若葉の大人3人により懇切丁寧に説かれ、地球竜の声と罪悪感の板挟みに潰されそうになってる。
地球竜…もうすぐ生まれることができる。もうすぐシオンに会える。楽しみ