【悲報】宇宙人ワイ、小学生屋根ゴミに拾われた模様【助けて】 作:鳩胸な鴨
「祐介、少しいいか」
ルートを確保し、予告状を突きつける前日。
予告状作成へと向かおうとした喜多川祐介…コードネーム「フォックス」の背に、バルルが声をかける。
祐介はその歩みを止め、訝しげにバルルへと視線を向けた。
「どうした、ばる…、いや、春夏」
「予告状作成に時間がかからないのであれば、少し話したい。構わないか?」
「別にいいが…、先ほどの集会では話しづらいことだったのか?」
彼がアジトでの集会で話題を出さなかった理由を考えるならば、それ以外にあるまい。
祐介が問うと、バルルは首を横に振った。
「私が…というより、祐介以外に聞かせるべき話ではない話題だ」
「……俺の決心が鈍るような話か?」
「いや。それは万にひとつもない。
…場所を移そう。店を予約してあるんだ」
「行こう」
「切り替え早いな…」
美を探求するがあまり、切り詰めた生活をしている反動だろうか。
そんなことを思いつつ、バルルたちはアジトを離れていった。
♦︎♦︎♦︎♦︎
「ふぅ…。久々にまともなものにありつけた。感謝する」
とある料亭の個室にて。
空の皿を前に腹をさすり、満足そうに息を吐く祐介。
新しい画材を仕入れたとかでここ数日はそこらの雑草で飢えを凌いでいたらしく、かれこれ三人前は食べていたような気がする。
「若い身で自ら食を切り詰めようとするな。
過ぎたる餓えは思考力を鈍らせるぞ」
「忠告は受け取ろう。
…それで、話とは?」
改める気はさらさらないらしい。
わかりきっていたことだ。今更目くじらを立てて怒るようなことでもない。
バルルは落胆を見せることなく、祐介に話を切り出す。
「君のご母堂のことだ」
「母さんの…?」
「体が弱く、早くに亡くしたと聞いた。
斑目はその縁で、画才溢れた君を引き取ったとも」
「ああ…」
祐介への確認を経て、机にもたれかかるバルル。
その瞳には、祐介にも負けぬほどの強い怒りが滲んでいた。
「当時3歳の子供に画才を感じて…、という部分が引っかかってな。
ダメで元々というのは承知で聞くが…、斑目と会う前に描いた絵などは保管しているか?」
「すまないが、残っていない。…それが?」
祐介の問いに対して返ってきたのは、やはりか、とでも言いたげな顔。
バルルはその表情を元の仏頂面に変えると、淡々と続けた。
「彼が画才を感じたと言うのならば、それ以前に斑目の前で絵を描いたことがあったのか?
それは確実に、斑目の目に留まるような絵だったと言えるか?」
言われて、気づく。
自信を持って頷くことができない。
漠然とした不安に、冷や汗が肌を伝うのを感じる。
隠された真実が何かはわからない。だが、残酷なものであることは確実だろう。
思考が巡っては、出ない答えに苛立ちが募る。
答えを求めようと口を開く祐介を遮るように、バルルは彼の名を呼んだ。
「祐介。明日、我々が対峙するのは、斑目の中にある『制御できていない心』だ。
崖っぷちまで追い詰められたシャドウは、斑目本人が永遠に言うつもりのなかった真実を突きつけるだろう。
実行を決めた以上は野暮になるが…、今以上の覚悟をしておいて欲しい」
忠告に礼を言うことも、頷くことも、祐介にはできなかった。
♦︎♦︎♦︎♦︎
『お前のおかげで思いついたんだ。感謝しとるよ』
シャドウ斑目の嘲笑が黄金の美術館、その中庭に響き渡る。
バルルが知る世界の通り、祐介の母は斑目によって見殺しにされていた。
完成した絵を前に発作を起こし、倒れた女。顕示欲ばかりが肥大化した芸術家の前に座す、金の塊とも言える絵…「サユリ」。
本来であれば祐介に遺されるべき母の愛は、虚飾の悪魔に奪われた。
描かれていた赤子は塗りつぶされ、愛に満ちた顔は「演出」へと加工された。
その全てを聞かされた祐介…フォックスは、くっくっ、と喉を鳴らし、仮面越しに斑目を睨め付けた。
「礼を言うぞ、斑目…!お前を許してやる理由が、たった今、全て露と消えた!
貴様は『腐った芸術家』じゃない!芸術家の皮を被った、世にも卑しい悪鬼外道だ!!」
怒りをぶつけ、吠えるフォックス。
それを前に、斑目もまた怒りをぶちまける。
『どいつもこいつも…!人の美術館に土足で入って好き勝手して…』
ずずず、と赤黒い波紋がシャドウ斑目を中心に広がっていく。
鴨志田の時にも感じた、変貌の予兆。
それを前に、皆が得物に手を添える。
『この世は持てる者がルールを作り、持たざる者は支配される!
まして絵画の価値など全ては「思い込み」!
美術界のルールはワシだ!ワシこそ至高!ワシこそ美術界の神なのだ!!』
自分勝手にも程がある理屈をぶちまけ、その姿が黒と赤に溶けていく。
軈て現れたのは、目、鼻、口と四つに分かれた絵画の顔。
グロテスクに蠢くそれを前に、ソルジャーは呆れたようにため息をついた。
『塗りつぶしてやるぞぉおおおおっ!!』
「どれだけ老いさらばえてもこうはなりたくないな。芸術のカケラもない下品な金だ」
『黙れ!ワシが放つこの輝きの価値もわからん愚か者めが!』
ばしゃっ、と音を立ててソルジャーの体が塗りつぶされていく。
虚空から絵の具を精製できる力でもあるのだろうか。
そんなことを思いつつ、ソルジャーはいつにも増して黒く染まった自分の姿をまじまじと見つめた。
「やばいよ、ソルジャー!全属性弱点になってる!時間経過で解除できるけど…」
「耐えられるくらい強くあればいいんだろ?」
めぎ、めぎっ、と音を立てて、ソルジャーのシルエットが変貌していく。
雄々しく伸びるツノ。地を割く鉤爪。揺らめく鋭い尾。口腔から漏れ出す呪怨属性の炎。
その様を一言で表すならば、ドラゴン。
黒の絵の具に塗れたそれを前に、フォックスが声を漏らす。
「機能美を突き詰めたフォルム…、美しい…」
「そこかよ」
スカルのツッコミが飛ぶや否や、ソルジャーが盾のように構えた翼に炎が着弾する。
弱化した状態でも、竜の体であれば耐え切れるだけの耐久を誇るらしい。
ソルジャーは焼かれてもなお付着する絵の具を見て、少しばかり口角を上げた。
人の状態であれば、きっと誰もがこう言ったことだろう。
あれはまさしく、悪魔の笑みであった、と。
ソルジャーは扇状に翼を広げると、そのまま斑目の顔にビンタをかました。
『ぐわっ!?き、貴様ッ!この斑目の顔をなんだと…!』
『ビンタ専用サンドバッグ』
『バカにしとるのか貴様!!!!』
『してる』
『なっ…、なんという礼儀知らずだ!!』
ソルジャーの言い分に目をひんむいて怒る斑目。
その顔にはベッタリと黒い絵の具が付着している。
やはり、こそこそと私腹を肥やすだけに留まるパレスの主人は単純だ。
激昂のままに属性攻撃を繰り出す斑目。
しかし、ソルジャーに意識を向けていたせいか、接近する怪盗団の面々に気づかなかった。
「こうも単純だとは…、つくづく失望させてくれるな、斑目」
フォックスの罵倒と同時、彼の「ゴエモン」をはじめとしたペルソナが一気に属性攻撃を叩き込む。
斑目は堪らず悲鳴をあげ、絵の具を免れた右目以外の全てを地面へと落とした。
『ぐ、貴様らァ…ッ!!』
『戦闘のセオリーも知らんバカの相手ほど楽なものはないな。
まあ、年がら年中贋作作りに夢中になってるジジイが新しいものを頭に詰め込めるわけもあるまい。余生はデイサービスで中身のない自慢話を延々続けて職員に嫌われてそうだ』
『ぬぐぐぐぐぐぐっ!!!』
口撃によりヘイトを集め、冷静さを削ぎ落としていくソルジャー。
と。斑目の残った目に、フォックスの刀が突き刺さった。
『ぐぎゃああっ!?』
「安心しろ…!そんな場所にぶち込むより前に、俺が引導を渡してくれる!」
斑目の絵が全て地に落ち、地面へと染み込んでいく。
と。それに入れ替わるかのように、先ほどまで講釈を垂れていたシャドウ斑目が姿を見せた。
『くそっ…!ワシはあの斑目だぞ…!
個展をひらけば満員御礼の、斑目だぞ…!』
「まだ言うか!!」
「おじいちゃん、ボケるのやめてくれる?」
「はいはい飯な。くっせぇのが待ってるぜ」
パンサー、スカルの煽りを皮切りとして、いくつもの影が斑目を中心に駆け回る。
が、しかし。どこまでも心が腐りきっているのか、はたまた強烈なプライドが許さないのか。
斑目はその攻撃に膝をつくことなく、怪盗団に怒鳴り散らす。
『このワシをボケた老人扱いしおって…!
ワシは大家「斑目」だぞ!?それがわからぬなら、貴様らに見せてくれる!
我が最大にして最高の妙技をな!!』
斑目が手を掲げると同時、黄金の束が彼の周囲に収束していく。
金の奔流が弾け、現れたるは『贋作の斑目』。
それぞれが属性に応じた姿へと変貌した斑目を前に、ジョーカーはポツリと呟いた。
「贋作戦隊マダラメンジャー」
「なんか喘ぎ声みたいな戦隊になったな」
「AVにありそう」
『聞こえとるぞ!!』
「聞こえるように言ってる」
『ぐぎっ…!!わ、ワシをここまでコケにしおった虫ケラどもは貴様らが初めてだ…!
望み通り、跡形もなく塗りつぶしてくれるわ!!』
斑目が叫ぶと共に、周囲に現れた贋作の斑目たちが属性攻撃を仕掛ける。
その狙いはどれも、怪盗団の弱点を突くもの。
皆が迫る弱点属性弾を避ける中、ナビが叫ぶ。
「贋作戦隊は大したことない!
揃って吹けば飛ぶようなみそっかすだ!
こかしてタコ殴りにしてやれー!」
「…こういうボス戦だと無限湧きするってことじゃないか、それ?」
ジョーカーの疑念に呼応するように、斑目が手を掲げる。
瞬間。先ほどと同じように黄金の奔流が集い、新たな贋作斑目が生み落とされた。
『『『ふははははっ!
我が芸術に押し潰されるがいい!!』』』
「おわっ!?ちょっ、多い多い多い!!」
「間違ってもマハ系撃つなよ!同じ属性だと反射してくるぞ!」
「んじゃどーしろってんだ!?
倒し切る前にワガハイたちに限界が来るぞ!?」
ナビが告げた情報にモナが自棄気味に怒鳴る。
よくよく見ると、核熱、念動をはじめとした、「本来ならば存在しないはずの属性」を纏う斑目がちらほらと見える。
こうなってしまっては下手に攻撃できない。
しかしだ。幸いというべきか、物理や銃撃を反射するであろう個体は見当たらない。
通りは悪いだろうが、物理や銃撃の全体攻撃を繰り出せば押し切れるだろう。
そんなことを思っていると、斑目がさらに手を掲げてみせる。
『まだまだぁ!!』
「増やすな増やすな埋まる埋まる埋まる!!」
「か、加齢臭で頭痛くなってきたぜ…」
「どいつよ!?私の胸触ったの!?
ひゃっ!?こ、今度はお尻…!
もう許さないんだから!マハラギオ…」
「やめろ!ワガハイたちまで丸焦げにする気か!?」
溢れんばかりに増えた斑目に飲まれ、地獄絵図と化す中庭。
流石、あれだけのサユリの贋作を生み出してきただけはある。
斑目の波を免れたのは、咄嗟に飛び立ったソルジャー、その背に乗ったジョーカーとフォックス、元からペルソナに乗って浮遊しているナビの4人のみ。
仲間が飲み込まれている以上、下手に全体攻撃は撃てない。
どうしたものか、とジョーカーが思考を巡らせていると。
ソルジャーの尾が、金色の着物を纏う斑目のみを掴み取った。
『……………は???』
『贋作というのなら本物そっくりに作れ』
そういうと、ソルジャーは器用に尾を操り、ジョーカーとフォックスの前に斑目を垂らす。
流石の斑目も危機感を覚えたのだろう。
斑目は咄嗟に手を掲げ、バルルの背に贋作を顕現する。
『なっ…!?』
しかし、現れたのは明らかに力が抜けているであろう贋作。
召喚時点で動けないほどに息を切らしている者、その場で寝惚ける者など、まともに行動できそうな贋作が見当たらない。
それを前に、フォックスはその表情を怒りに染め上げる。
「贋作作りすら失敗するか…!
これ以上、俺を失望させるな!!」
『ぐ、ぐぅううっ…!このっ、離せ!
この斑目の実力はこんなものではない!貴様が締め付けているからしくじったのだ!』
『はて。我々はお前の実力がわかるようなものを見たことがないんだが』
『バカを言うな!!何度も個展を開き、その全てが満員御礼の斑目だぞ!?』
『オタカラ含めて全部盗作だろうが。お前が描いた絵どこだよ』
『何度言わせれば気が済む!?
日本画の世界では贋作は肯定されて…』
何度目かもわからない言い訳をぶちまけ、もがく斑目。
と。ソルジャーを遮るように、フォックスが冷ややかな声で問いかける。
「斑目。貴様の本来の実力がわかるものを見せてみろと言ってるんだ。
着想から色使い、構想に至るまで、お前が考え尽くしたオリジナルを見せてみろ。
個展に展示している作品の中で、一つくらいはあるだろう?」
『…………………そ、それは、その…』
「ないのか。一つも」
言い淀む師の姿があまりにも哀れで、言葉をかける気にもならない。
フォックスはその仮面を燃やし、怒りを変換した冷気を叩きつける。
「来たれよ、ゴエモンッ!!」
『ぬがっ!?』
尾の中で氷漬けになった斑目。
美しさのカケラもない出立ちで固まったソレを前に、ジョーカーが銃口を向けて告げた。
「他人の才能に寄生する虚飾の悪魔、斑目一流斎。その歪んだ欲望、我々が頂戴する」
ジョーカーの啖呵を皮切りに、斑目の周囲を二つの影が駆け回る。
その猛攻に斑目が耐え切れるはずもなく。
その体力が尽きると共に、生み出した贋作の海すらも枯れ果てた。
虚飾の美術館が崩壊したのは、それから間もないことであった。
斑目…号泣会見をかまし、十数年先も定期的に使われるようなMAD素材にされた。
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