【悲報】宇宙人ワイ、小学生屋根ゴミに拾われた模様【助けて】 作:鳩胸な鴨
「SHOWTIMEに頼りすぎだ。
分断策を選んだことは褒めてやるが…、自らの戦力をも分散させたのは減点だな。
最低限の人数で他を押さえて、1人だけを集中砲火でタコ殴りにすればすぐに済んだだろ」
「い、いや、2人がかりじゃなきゃ無理な強さしてたし…」
「練度不足なだけだ。ペルソナスペックのレベル差はそこまでない。
今日でその差を埋めろ。死ぬ気でな」
容赦ない評価にしょぼくれる怪盗団。
それを前に、先ほどまで戦っていた3人はもちろん、これより戦う寧桜ですらも引き攣った表情を浮かべる。
身内にすら容赦しないのか。
そんなことを思っていると、バルルが場の雰囲気を払うように手を叩いた。
「…とまあ、批評はこの程度にして。
次は圧倒的な物量攻撃への対策をその身で掴んでもらおうか」
「……えっと、起動しろって意味?」
「やれ」
「あ、うん。…その、皆。ごめんね」
言って、小さく何事かを口ずさむ寧桜。
瞬間。彼女の体が光に包まれ、そのシルエットが変貌していく。
彼女の周囲を漂う、幾つものスピーカー。
白いコートはどこかへと消え、残ったのは黒のアンダースーツだけ。
そのところどころを彩るように水色の装甲が覆う。
あまりにも唐突でいて、怪盗服とは違う変貌を前に、皆が驚愕をこぼす。
「おわっ…!?変身した…!?」
「えーっと、これは私たちの世界の兵器で…、すんごいパワーがあるファンタジーアイテム」
「説明アバウト過ぎない?」
「私もよくわかってないの」
専門用語があまりに多すぎるし、と付け足し、ため息を吐く寧桜。
彼らにとっては、今後必要になる知識でもあるまい。
説明するのが面倒くさい、と言わんばかりに雑にまとめた彼女に皆が呆れていると。
1人だけ神妙な面持ちを浮かべた双葉が、重々しく口を開いた。
「オタク知識で言うが、ああいう装着兵器はだいたいデタラメだぞ…。
トンが基本単位の攻撃がポンポン飛ぶ…」
「流石にフィクションよね、それ…」
「ごめん、私の世界だとノンフィクション」
「死ぬじゃねぇか!!!」
軽く小突くだけでもトラックに轢かれるのと同等の大惨事である。
戦慄が皆に走る中、蓮があっけらかんとした態度で口を開いた。
「理不尽はもっと殺意に溢れてるぞ。存在丸ごと消す消すビームとか放ってくる」
「なんだその頭悪そうな技名!?」
「かするだけでも存在丸ごと消されるから適当にそう呼んでるだけ。
世話になってる親戚と一緒に旅行した時、たまたま出会した土地神がそういう理不尽になってて…」
「あれは生きた心地しなかったなー…。
誰だったっけ、当たったの…?」
「ドロロ」
「ドロ沼かー。忘れるわけだわ」
「ひどいよ…」と泣き言が聞こえた気がする。
うんうんと頷く理不尽経験者に戦慄し、補給した水分を出す勢いで冷や汗を垂らす怪盗団。
その中でも何かに気づいたであろう真が、錆びた歯車のように首を回し、バルルを見やった。
「まさかとは思うけど、私たちもそんなのと戦う羽目になるってこと…?」
「なるな。ペルソナ使いの宿命だ」
「バルルくらいの巻き込まれ体質になると週一で来るぞ」
「そんな頻度で!?!?」
「死ぬ気で鍛えろと言われるわけか…」
「死ぬもんな」
「ワガハイ、そんなのと戦わされんのなんてゴメンだぜ…?」
「残念。どれも存在認知された時点で強制エンカ逃走不可な上に条件無敵ギミック持ちのクソボスだぞ。しかもピンポイントでペルソナ使いばかり狙ってくる」
「運命のクソ野郎!!」
双葉のトドメに叫ぶモルガナ。
その大半に彼を生み出した存在の上司が関わっているのだが、言わぬが花か。
緊張すればいいのか、緩めばいいのか。
怪盗団に蔓延する混迷した空気を打破すべく、寧桜が軽く息を吐く。
「さて…、いい感じに気もほぐれただろうし、そろそろ始めようか。
ここから先は会話もできないからね」
「そのくらい余裕がなくなる、と言う話か?」
「いや、これ『カラオケ機型戦闘兵器』なの。
歌いながら話すなんて私できないから」
纏う雰囲気が変わる。
紡がれる歌に聴き惚れる暇もなく。展開されたスピーカーから数多の光輪が放たれ、その場を駆け回り始めた。
「うぉわぁっ!?」
「な、なにこの丸いの…!?」
「やっば…!?絶対当たるなよ!?ジョーカーでも一発で4割持ってかれるぞ!!」
「三発当たったらアウトじゃん!?」
10や20どころの騒ぎではない。
歌声により生み出された50もの輪が、場を蹂躙していく。
一度に操れる限界だとしても、数が多すぎる。
挙げ句、その一つ一つが壮絶な威力を誇ると言うのだから手に負えない。
エアホッケーのように縦横無尽に動くそれに皆が悲鳴を上げて逃げ回る中、ジョーカーだけが冷静にリングの隙間を縫い、寧桜に迫る。
「物量攻撃を名乗るなら、ガトリングを数台積んでこい」
「この程度がそうだとでも?」
息継ぎの合間、吐き捨てる寧桜。
その眼前には、見覚えのあるタロットが降りている。
ジョーカーが仮面を燃やすと同時、タロットが砕け、影が現れた。
「ペルソナ」
「潰せ、ヨグ=ソトース」
顕現するは、大地そのものとされた女神…ガイア。
女神が放つ命の根源たる波動と、ヨグ=ソトースが放つ限りない空虚が激突する。
その一つ一つがパレスを丸ごと飲み込み、消し去ることだろう一撃。
そんな攻撃が複数回激突したことで巻き起こった旋風が、命からがらリングを避け切った怪盗団の体をさらう。
「うぉぉおおおっ!?!?」
「これがジョーカーの本気なの…!?」
「ヨグ=ソトースの攻撃を相殺!?どんなバカスペックしてんだあのペルソナ!?」
根源たる恐怖から生まれたペルソナと渡り合うなど、バルルの言う「カスども」の戯れによって魔改造された「刈り取るもの」や理不尽クラスしか覚えがない。
少なくとも、彼女は単独でその討伐を成し得るだけの力がある。
あるいは、すでに何体か倒しているのか。
皆が戦慄していると、スピーカーが淡く光った。
「『リフレクション』」
「ミックスレ…、無理か…ッ!」
再び光輪がばら撒かれ、ジョーカーへと襲いかかる。
これを乗り切るミックスレイドならば何種かあるが、どれも使おうとするたび、脳に「使用不可」を知らせる激痛が走る。
新造ベルベットルームはまだ3割も完成しておらず、当然ミックスレイドの威力、効果、使用可能数はそれ相応の分しかない。
ジョーカーが慌てて距離を取るのを確認し、寧桜は己がペルソナの名を叫ぶ。
「飲み込め、ガイア」
命の根源たる波動が、ジョーカーへと向かう。
慌てて距離を取ろうにも、光輪がそれを許さない。
ジョーカーはヨグ=ソトースに防御姿勢を取らせ、その衝撃を受け止めた。
「ぐぅうう…っ!」
「ジョーカー!!」
「回復と補助!ジョーカーの負担は大きくなるけど、支援を続けて相手の消耗を誘うわ!」
ジョーカー以外の怪盗団は、物量攻撃を前に魔法による支援しか出来ない。
そう判断したのだろう、真の指示が飛び、ジョーカーの体を三色の光が覆う。
が、しかし。ジョーカーの変化に気づいた寧桜が、一つの瓶を放り投げた。
その中身は洗浄水。能力上昇を打ち消すそれが宙で弾け、ジョーカーの体を濡らす。
「打ち消された!?」
「強化した状態なら勝ち筋があるということか…?」
「解析終わった!装備とペルソナのスペックは高いけど、本体の体力はそこまでない!
総攻撃一回で削り切れるくらいだ!」
「なるほどな。余裕に見えて、向こうもギリギリなわけか」
絶えず光輪を放つのは、近づかれたら終わりだと勘付いているからだろう。
均衡を崩せば、勝機は十分にある。
問題はどう彼女の気を引くかだ。
生半可な攻撃では歯牙にもかけられない。
かといって、魔法で攻撃しようにも、光輪のせいで射程圏内まで近づくこともできない。
どうしたものか、とクイーン、ナビの頭脳班2人が頭を捻っていると。
ふと、何かに気づいたようにフォックスが声を漏らす。
「………数は多いが、三次元的な動きが見られないな…」
「え?」
高威力と数に気を取られていたが、確かに平面的な動きしかしていない。
もっと起伏の激しい場所であれば、攻撃を避けることも可能だったろう。
「下手に突っ込めば着地点に殺到するだろうが…、ペルソナに乗って突っ込めば接近できないか?」
「んー…、厳しいぞー…。ペルソナのデカさで向こうに気づかれる」
「あ、ならさ。これならどう?」
「んにゃっ?」
パンサーがモナの頭を掴み上げる。
何をするか悟ったのだろう。モナは一気に顔を青く染め、叫ぶ。
「ちょっと待て!!生き物投げる気か!?
動物愛護団体が黙っちゃいないぞ!?」
「元は人間なんでしょ。なら大丈夫。
あ、スカルの方が飛んだりする?」
「砲丸投げは経験ないぞ」
「んじゃ、行くよ!」
「ま、待…にゃぁああああっ!?!?」
ぶぉん、と風を切る音と共にパンサーがモナを投げ飛ばす。
放物線を描いて飛ぶモナの叫び声に気づいたのだろう。
寧桜はそれに怯むことなく、ペルソナでそれを叩き返した。
「ぎにゃあああっ!?」
「浅知恵」
寧桜は罵倒を吐き捨て、ジョーカーとの応酬へと戻る。
拳と短剣、ペルソナとペルソナ。
嵐の如き戦いを繰り広げる2人が、同時に御卵を噛み砕く。
「ガイア」
「アザトホース…っ!」
叫び、互いの放つ波動がぶつかり合う。
優勢なのはアザトホース。が、それを補うように放たれる寧桜のインファイトがジョーカーから余裕を奪っていく。
「ぐっ…」
「まともに戦ってよ」
出来たらやってる。
そう言おうとするも、拳に阻まれ言葉を出せない。
通常、ペルソナを操りながらインファイトするなど出来ない。
ペルソナとはすなわち、もう1人の自分。もう一つの体があると言っていい。
「2台の自動車を同時に運転しろ」と言われてできる人間などいない。
が、しかし。目の前の少女はその神業を成し得て見せている。
潜ってきた修羅場の数が違う。
そう思わせる迫力にジョーカーが押されかけた、まさにその時。
「ゴエモン!!」
「っ!?」
冷気が彼女の足を捉えた。
バカな。リングはまだ展開されていたはず。
困惑が突き動かすがまま声の方向を向くと。
ペルソナを顕現し、天よりこちらへと降りてくるフォックスと目が合った。
「な、どうやって…!?
アレを避けられる高台なんてどこにも…」
困惑し、周囲を見渡す寧桜。
と。ある一角で砂煙が上がり、そこに車となったモナが突き刺さっている光景が見えた。
「私が弾いたネコを足場にして…!?」
「ジョーカー、今だ!!」
「し、しまっ」
「醒めろッ、アザトホース!!」
意識が逸れた。
そう自覚した時には遅く、ガイアがアザトホースより放たれた波動に叩き伏せられる。
彼女がダメージのフィードバックにたたらを踏む。
刹那。薄くなった弾幕を掻い潜ってきたクイーン、パンサー、スカルが飛び上がる光景が見えた。
「SHOWTIME!!」
ジョーカーが叫ぶと同時、幾重もの影が寧桜の周囲を駆け回る。
ペルソナや装備で防御しようにも間に合わず。
彼女の体力はあっという間に削り切られ、その場に倒れた。
「………ビッキーいないの忘れてた」
「アレでソロ専じゃねーの!?」
新倉 寧桜/戦姫絶唱ハローワールド…相方がペルソナを操りながらインファイトをやってのけていたので、頑張って習得した。普段は範囲物量攻撃で行動を制限させ、その軌道や特性を理解し尽くしている相方にメインアタッカーを投げている。今回はその癖が大きく出た。ちなみに、光輪は理不尽相手に特攻を持たず、雀の涙ほどの威力しか出せない。