【悲報】宇宙人ワイ、小学生屋根ゴミに拾われた模様【助けて】   作:鳩胸な鴨

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21スレ目 vs花園家執事長

「ナビ、気づくのが遅い。

解析と同時に状況を俯瞰しろと以前教えたはずだが?」

「はい、ごめんなさい…。

完全に焦ってました…」

「その他。弾幕が薄くなったと感じた時点で誰か一気に詰めろ。

この中では…、真、モルガナ。車に変身するだとか、ヨハンナで突っ込むだとかやりようはあっただろ」

「は、はい…」

「う、うっす」

 

相変わらずの容赦ない批評に打ちのめされる怪盗団一同。

その傍らでは大した説教を向けられることのなかった蓮が、回復を終えた寧桜と会話を交わしていた。

 

「新倉さん。ペルソナを操りながらの攻撃を会得したいんだが、コツとかあるか?」

「意識を二つ持つイメージかな。

自分が動かしてるってイメージをまっさらにして、思うがままに動いてもらう…って感じ」

「よし…、アルセーヌ」

 

アドバイスをもらい、仮面を燃やす。

顕現したアルセーヌを見上げ、呼吸を数度繰り返す。

染み付いた意識を流していく感覚。

幼い頃より得てきた全てを捨て、動き出す。

まさしくそれは、一つのペルソナと1人の人間による演武。

操作の粗さは目立つものの、寧桜がやってのけたものと同じ技術を披露した蓮にほぼ全員が目をひん剥いた。

 

「どうだ?」

「…………ビッキーと同族か…」

「これと同レベルのがいるのかよ…」

「世界って広いのね…」

 

バルルも度重なるエレボスとの戦いで出来るようになっている…とは言わないでおこう。

寧桜がそんなことを思っていると、先鋒3人の面倒を見ていた志都児(しつじ)が前に出る。

 

「次はわたくしの番ですね。

お手柔らかに…とは申しません。どうか、骨すらも擦り潰すおつもりでかかってくださいませ」

「かなりの自信だな」

「ええ。なにせ、世界唯一のペルソナ使いでありますので」

「そういう世界もあるのね…」

 

ペルソナ使いが1人のみで、どうやって理不尽に対応しているのだろうか。

…いや、理不尽はペルソナ使いを狙うと聞く。恐らくは出現した分だけ出会しているのだろう。

真が自問自答していると、バルルが口を開く。

 

「単独戦闘に関しては私たちより強いぞ。間違いなくな」

「えっ…!?」

「ご謙遜を。序列で言えばこちらが下ではありませんか」

「私が単独で倒しているのは週一で来るエレボスがほとんどだ。

貴様のように多種多様な理不尽を撃ち倒したわけではない」

「恐縮です」

 

笑い合う2人に、転生者含めた皆が小首を傾げた。

 

「バルル、知り合いだったのか?」

「ああ。少し面倒を見ていた時期があってな。

名前を見た時は驚いたぞ」

「あの時の破片に潰されまして。二度と軍人になどなるかと誓いました」

「ああ。あの燃料間違い爆殺事件か」

「二次被害あったのな」

 

なんだその微妙に興味をそそられる事件は。

バルルの前世を聞かされていた蓮と双葉が納得する傍らで、怪盗団の面々がなんとも微妙な顔を浮かべる。

空気がある程度弛んだことに気づいたのだろう。

バルルは途端に表情を変え、わざとらしい声音でつぶやく。

 

「…ああ、そうだ。こいつは私が初めて全てを叩き込んだ男…いわば、前世の一番弟子でもある。気張れよ」

「………!」

 

その一言に蓮の目がギラつく。

初めて見る蓮を前に、怪盗団が戦慄いていると。

「試合を始める前に」とバルルが付け加えた。

 

「蓮以外のメンバーは下がれ。ナビもだ。見て学べ」

「お前たちではついていけない、的な?」

「そういうことだ」

 

刹那。一瞬にして2人が肉薄する。

ジョーカーが繰り出す斬撃数発を軽々避け、それ以上の蹴り技を返す志都児。

その間、約3秒。あまりにも常軌を逸した応酬を前に、皆に動揺が走った。

 

「え、人間辞めてません…?」

「ペルソナによる強化だ。頑張れば俺らにもできる…だろうけど、ちょっと自信ない…」

「合気…、空手…、カポエラ…、だめ、どれも違う。

足技だけでああも戦えるものなの…?」

 

合気を会得している真が愕然とつぶやく。

志都児が繰り出す足技は洗練されているが、真の知るどの格闘技にも当てはまらない。

似たような技はあるだろうが、そのほとんどが我流であることは見て取れた。

 

「手は使わないのか?」

「ええ。奥様方に何かあった時、抱えて逃げねばなりませんから」

「凄まじい忠誠心だな」

「恐縮ですが…、この対応では不満もあるかと愚考致します。

ので、『こちら』だけは壁らしく振舞わせていただきましょう」

 

顕現するは、白の衣を纏う天使「ルシフェル」に、竜を思わせる風貌の悪魔「サタン」。

この二つのペルソナを前に、ジョーカーは全身から汗を吹き出し、飛び退く。

 

「ミックスレイド」

 

─────『ハルマゲドン』

 

神の裁きが如き光が降り注ぐ。

逃げ切ることなど到底敵わず、ジョーカーの体はあっさりとその光に飲み込まれた。

本来であれば一撃受けただけで戦闘不能は避けられない攻撃。

絶命は免れぬ光を受けて尚、ジョーカーはなんとか踏みとどまっていた。

 

「ぐ、ぅ、ゔぅ…」

「食いしばりからの宝玉使用による完全回復でございますね。お見事」

「いきなり撃つか…!」

「こちらの方が自己紹介になるかと」

 

言って、宝玉と御卵を同時に砕く志都児。

何故だろうか。その姿が、かつて戦ったラヴェンツァのものと重なる。

権能こそ奪われたものの、力そのものは全く衰えていなかった『彼女ら』のことを思い浮かべつつ、ジョーカーは仮面を燃やす。

 

「ペルソナ…ッ!!」

「ふむ」

 

白の体躯に光沢が走る巨影を前に、志都児の笑みが崩れる。

真・ルシファー。別世界において神たる事象を撃ち破り、その座についた原初の反逆者。

話には聞いていたのだろう。

その顔に驚きはなく、警戒だけが残っていた。

 

「仇為せ、真・ルシファーッ!!」

 

叫び、光を落とす。

何種かの万能ブースタに加え、丸喜より学んだ「ゾーン」によって威力が増大した一撃。

白の中へと消えゆく中、志都児は目元から青い炎を吹き出し、呟いた。

 

「判じよ、サタン・神罰(メギド)…!」

 

瞬間。彼の身を包む光が吹き飛ぶ。

肌に突き刺さる威圧。毛穴の一本一本に冷たい針を通された感覚。

特別強い理不尽を前にした時のような怖気が、全身を強張らせる。

軈て目に映るは、竜と人のものが入り混じる赤の7つ頭に、美しくも禍々しい黒の体躯。

先ほど顕現したものとは違う「サタン」が、そこに在った。

張り詰めた空気が漂う。

みじろぎ一つが死につながりかねない。安全圏にいる者たちにすらも悪寒が走る。

と。対峙していた2人が途端にペルソナを解除した。

 

「……失礼。人に向けるものではありませんでした」

「…いや、こちらこそすまない。人に落とすものじゃなかった」

 

互いに笑い、目元を燃やす。

ペルソナと肉弾戦。激しく飛び交う技の数々を前に、寧桜が不貞腐れた顔を浮かべた。

 

「……私さっき、ヨグ=ソトースとかアザトホースとかぶつけられたんだけど」

「そいつら、7割くらいナーフされてる」

「え、アレで?」

「クトゥルフペルソナは全書埋めた分だけ強くなるんだってさ。

ルルブ読めばわかるけど、あれって要はラヴクラフトたちが提唱した『神話の否定』だからな。神話の存在を身に宿すことへの反作用みたいなのが働いて、その力を増すんだと。

今はその全書がぜーんぶまとめてパァになったから、あの程度ってわけだ」

「あ、あの程度…」

 

「ま、パレス吹っ飛ばせるくらいの力はあるけど」と付け足し、持参した水筒をちびちびと飲む双葉。

あのコップに感謝しそうになってしまった。

ジョーカーをナーフしたことで間接的に命を救ったとは言え、こちらにちょっかいをかけてこない保証もないのだ。

考えるのはやめておこう。

寧桜が誰ともわからぬ反省を心の中で述べているとも知らず、双葉は淡々と続ける。

 

「んでも、真ルシは一切ナーフなしだ。

あれは全書云々関係ない。元が反逆の極致みたいな存在だからか、主が持つ『反逆の意思』の強さに比例して強くなる。

反骨精神の塊みたいな蓮だと最強クラスの性能になるんだけど…、ソレとタメ張れるあのペルソナはなんだ?

私の知ってるサタンとは違うんだが…」

 

別宇宙で猛威を振るった原天使です。

…などと馬鹿正直に言えるわけもなく、転生者が双葉から視線を逸らした。

 

「シヴァ」

「ヨシツネ!!」

 

シヴァが放つプララヤと、ヨシツネが放つ八艘跳び。

物理最強とされる連撃がぶつかり合う中、彼らもまた得物を交える。

 

「ペルソナ、ペルソナッ、ペルソナァッ!」

「ペルソナ、ペルソナ、ペルソナ」

 

目まぐるしくペルソナが切り替わり、核熱、万能、疾風、火炎、氷結、念動など、多種多様な属性の光が弾ける。

側から見て確認できたペルソナは、ファフニール、ヨグ=ソトース、ノルン、アザトホース、シュウ。

その光景を見て何かに気づいたのだろう。

杏が疑問をこぼす。

 

「あれ…?もう二つは…?」

「杏?どうしたの?」

「あ、いや。双葉が言っていた『強いの』がまだ出てないなって…」

 

志都児と顔合わせした時、確かに言った。

「魔改造されたアルセーヌを圧倒するほどに強いペルソナが3体ある」と。

そのうちの一体は「サタン・神罰(メギド)」だろうが、残る二体らしきペルソナが見えない。

杏が疑問をこぼすと同時、2人が距離を取り、言葉を交わす。

 

「ここまで余裕を削がれたのは実に2日ぶりです」

「結構最近だな」

「ええ。なにせ、わたくしの世界は一ヶ月に150件以上の殺人事件が起きるもので」

「…理不尽絡んでるのか?」

「これが絡んでないんですよ。悲しいことに」

 

ここに来て初めて、余裕以外の感情を見せる志都児。

その顔には疲れと鬱憤が垣間見える。

バルルと同じく相当に苦労しているということは、簡単に読み取れた。

 

「上げていいぞ。ぶつけてこい」

「……威勢だけはよろしいようで」

 

笑みに獰猛さが宿り、青の炎が吹き荒れる。

間違いない。あれぞ、志都児が隠していた秘蔵のペルソナのうち一体。

そのことを悟ったジョーカーは、仮面を剥がし、炎へと変換させた。

 

「砕け、アーレス!!」

「奪え、ラウール!!」

 

志都児が顕現するは、人の内部に潜む残虐性を反映したペルソナ、軍神アーレス。

対するジョーカーが顕現するは、絶えぬ反逆の意思より生まれたペルソナ、怪盗ラウール。

二つの巨影が肉薄し、その腕を突き出す。

 

「ぶっ…、ぐっ…!!」

「がっ…、んのっ…!!」

 

頬を穿たれ、たたらを踏む2人。

どちらも物理耐性は積んでいなかったらしい。口内を切ったのか、血が垂れている。

2人は同時に血を拭い、青い炎を更に強める。

 

「ミックスレイド…!」

「ミックスレイド」

 

ジョーカーが操るのは、同一存在たるアルセーヌとラウール。

対する志都児が操るのは、アーレスともう一つの秘蔵ペルソナらしき影。

呪怨と祝福。二つの属性が吹き荒れ、凝縮されていく。

 

「『反逆のトリックスター』!!」

「『ラヴィズウォー』」

 

放たれた二つの光が激突し、弾ける。

戦場すらも大きく分つほどの拮抗が暴風となり、傍観者たちの体を襲った。

 

「にゃぁあああっ!?」

「うぉおおおっ!?」

 

まさしく阿鼻叫喚。

数秒か、それとも数分か。

呪怨と祝福の相殺が収まり、静寂が流れる。

どちらも無傷。だがしかし、その顔にもはや余裕はない。ここで止めるべきだろうと判断し、バルルが叫ぶ。

 

「双方止め!!」

「…次で最後にしておきましょう。

これ以上は命に関わります」

「ああ。これで最後だな」

「おい!双方止めと言ってるだろうが!止めろッ、止め…」

 

バルルが叫ぶも、悲しきかな。

興奮し切った彼らには届かず、その体が蒼炎纏う影に隠される。

 

「仇為せ、真・ルシファーッ!!」

「判じよ、サタン・神罰(メギド)ッ!!」

 

────『明けの明星』ッ!!

 

────『メギドアーク』ッ!!

 

刹那。世界が割れた。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

すっかり更地と化した異世界にて。

捲れた地面に沈む2人を前に、双葉のファイナルガードによって守られた怪盗団、及び転生者一同が白目を剥いた。

 

「……参考になるか、あれ?」

「………ちょっと、ならないかもな…、うん…」




花園 志都児…前世も今世も同じ名前。実は前世の大佐と同じく空自所属であり、同レベルのハイスペック不幸体質。数々の事件に巻き込まれるうち、犯罪絶対許さないマンになった。ちなみに童貞。このあと、めちゃくちゃ叱られた。

サタン・神罰(メギド)…真・女神転生ⅣF、及びⅤVにて「試すもの」として顕現したサタン。アルカナは「審判」。罪に対して罰を望む感情に比例してその強さを増す。専用スキル「メギドアーク」もペルソナになった影響か、敵の数に比例する威力の変動がなくなっている。その気になればコズミック屋根ゴミも修得可能。

転生者パレス…「前世の地球」というオタカラはズタボロなものの、一応は無事。死神がリアルタイムで実況してたので惨状はすぐさま知らされた。

バルル大佐…めちゃくちゃ叱られた。

雨宮蓮…めちゃくちゃ叱られた。
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