【悲報】宇宙人ワイ、小学生屋根ゴミに拾われた模様【助けて】 作:鳩胸な鴨
「止めるのが遅い」
「…………すまない。この2人ならばすぐに聞くと思っていたんだが…」
「ごめん、完全に周り見えてなかった…」
「『彼の壁であれ』と思い過ぎるがあまり、このような失態を晒しました。陳謝いたします」
仁王立ちする寧桜の叱咤を受け、項垂れる3人。
その背後では、どういう原理か再生していく景色を前に、皆が感嘆の息を漏らしていた。
「おおお…、みるみるうちに直ってんな…」
「このパレスは生存本能の現れだからな。破壊に対する補填はかなり早いぞ。
ちょっと前にあらゆる世界にちょっかいかけてくるクソバカどもを封じ込めた時も、更地になってたしな」
「そのクソバカ、フィレモンとニャルラトホテプだろ」
「あれ?フタバちゃん知ってるんです?」
「何回かちょっかいかけられたことある」
辟易し、吐き捨てる双葉。
と。それに呼応するかのように、二つの足音が背後から響いた。
「呼んだかね?」
「呼んだか?」
「「「「「「「「失せろ!!!!」」」」」」」」
この世ならざるものの声が響き、反射的に声を知る者たちが怒号を放つ。
一体何がいるのだ。
そう思い振り返ると、そこには。
蝶の仮面を被った肩幅の広い男と、触手の塊のような異形が蠢く光景があった。
「な、シャドウ…!?」
「違う。もっとヤバくてウザくてめんどいの」
「ナビ、しっかり説明して!敵なの!?」
「相手しようとか思うなよ。関わったら最後、碌な目に遭わないぞ」
「だから、しっかりと…」
「深く知った時点でアウトなんだよ。
蓮とバルルの理不尽来歴が悲惨なことになってるのも8割こいつらに気に入られてるのが原因」
双葉にしては珍しいあんまりな言いように、皆が呆れ混じりに警戒を強める。
理不尽関連と聞けば無理もない反応である。
が、しかし。各世界を股にかける愉快犯たちはそんな警戒など歯牙にもかけず、蓮たちに迫る。
「いやはや、興味深いものを見せてもらった。
人と人とがぶつかり合うことで生まれる成長…、素晴らしい。
真・ルシファーにサタン・
ペルソナでありながら、異なる宇宙に君臨する『事象』と遜色ない域にまで至るとは」
「結局は強い破壊性が生み出した力だろう。
人は生み出すよりも破壊する力に重きを置く。認められないものを排する力でしか自己を表現できぬとは哀れだな」
「……な、めんどっちいだろ?」
「あー、うん。なんとなく伝わった…」
答えの出ない口喧嘩を披露する2人を前に、杏が渋い顔を晒す。
確かに面倒くさい匂いがプンプンする。
「お前ら、どうやって封印抜け出した?
ニュクスの封印に対抗できるだけの力はなかったはずだが」
「なに、君たちが見出した可能性、破壊性から活動できるだけの力を得ただけだよ。
壁を求めているようだったからな。私たちであれば、申し分ない高さだろう?」
「え?やらん」
「超える自信がないか?それはそうだろうな。
我らが不滅たることを知っているのだから。
勝機の見えぬ相手にわざわざ立ち向かう者の、なんと少なきことよ」
「何が不死だ。コップに突き出せば消えるだろ、お前ら」
「……………」
「……………」
バルルが言うと、見るからに渋面を作る2人。
大衆を支配する聖杯。メメントスを介し、集合的無意識を掌握したソレに対する策を2人は持たない。
集合的無意識より生まれ出たものが、そのものを支配する力に勝てるわけがない。
そのことを自覚している故か、途端に押し黙る2人。
消されるのは勘弁願いたいらしい。
バルルはそれを尻目に、怪盗団の皆に頭を下げた。
「すまんな、厄介なのを抑えきれず。
今日は疲れただろうし、一度戻ってやす…」
「殴らせろ」
「………蓮?」
「殴らせろ。どっちも。今」
青筋を浮かべて吐き捨てる蓮。
何を隠そう、彼もまたこの2人のちょっかいに振り回されてきた1人。
無理難題をふっかけられ、余計な消耗を強いられた過去を想起しているのだろう。
ひしひしと感じる圧力を前に、流石のバルルも閉口した。
「皆も殴るか?」
「何がそこまでお前を駆り立てるんだよ…」
「コイツらほど叩きがいのあるサンドバッグないぞ」
「さっきから辛辣じゃない…?
なにされたの、一体…?」
「ただでさえ理不尽が降臨して地球が危機だって言ってるのに裏ボスけしかけられた。12回も」
「それは流石に怒るな…」
罪状は他にもあるぞ、と付け足し、軽く体をほぐしていく蓮。
ここまでやる気満々な姿は初めて見た。よほど腹に据えかねているらしい。
本当に何をしたんだと呆れ、皆に同意を得ようと竜司が視線を向けると。
モルガナが滝のように冷や汗を流しているのが見えた。
「おい、ネコ。どうしたんだ?」
「い、いいか、お前ら…!絶対に『あの方』と『アレ』に喧嘩売るなよ…!」
「モルガナ、何か思い出したの?」
「いや、なんにも…。ただ、その、ヤバいってことだけしかわかんない…」
「どっちがあの方?」
「ニンゲンの方…」
フィレモンを敬い、ニャルラトホテプを警戒するモルガナ。
それに確信めいたものを感じ、蓮は怯える彼に問いかける。
「…モルガナ、鼻の長い老人に見覚えは?」
「………多分、ある」
「よし、アイツら殴れ。叩けばいくらでも情報が出るぞ」
「おいバカやめろ!喧嘩売るなって!
碌なことにならねーぞ!!」
「大丈夫。小坊の頃から売ってる」
「よく生きてたなオマエ!?!?」
暴行少年らしい物言いを連発する蓮に叫ぶモルガナ。
なんなら既に数度殴り飛ばしている。
その情報を出すことなく、バルルは怪盗団の皆を遠ざける。
「今は見ていろ。力をつけている段階で挑むような相手じゃない」
「具体的に言えば…?」
「ハルマゲドンが通常攻撃レベルの敵だ」
「よくわかったわ」
「吹けば飛ぶ」と通告された彼らが一歩下がるや否や、ぶわり、と風が吹き荒れる。
相手の風貌は変わっていない。
変わったのは、纏う雰囲気。
先ほどの蓮、志都児を凌駕する悍ましさが肌を撫ぜる。
「おや。彼らを鍛えるのではなかったのか?」
「ほざけ。力に振り回されているような子供たちを相手にする気など、毛頭ないんだろ?」
「……ふむ。私たちのことをよく理解しているようだ」
ばっ、と手を広げ、2人がその化身らしきペルソナを顕現する。
それを前に、一同もペルソナを呼ぶ構えをとった。
「証明してみせろ!
諸君ら人間が完全へと至れる可能性を!!」
「証明してやろう!
貴様ら人間が完全になどなれないことを!!」
「こういう面倒くさい時だけ仲良いのやめろカスども!!」
「死ねボケ!!」
「いやぶっ殺してやる!!!!」
マインドたちの笑い声と、転生者らの猿叫が混じり合い、直ったばかりの街並みが再び更地となった。
カスども…たいそうなことを宣ったが、要は「なに面白そうなことしてんの?混ぜて?」と好き勝手暴れ始めただけ。でかい花火を準備中
コップ…メメントスを掌握した時点でカスどもに特攻持ち。
カスども被害者の会…乱入したカスどもにバチギレ。殺意全開。
怪盗団…既に目をつけられてる。逃げ場はない