【悲報】宇宙人ワイ、小学生屋根ゴミに拾われた模様【助けて】   作:鳩胸な鴨

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22スレ目 取るべき一手

「これで奥村邦和は死亡した。後処理はやっておくから、報告よろしく」

「ああ」

 

倒れ伏した中年男性…絵に描いたようなブラック大企業、オクムラフーズの頂点に君臨する強欲の悪魔、奥村邦和の亡骸を尻目に数人の人影が去っていく。

残されたのは、煌びやかなれど、関わるのを避けたくなるような風貌の女性と、連日連夜テレビで取り沙汰される二代目探偵王子の少年。

少年…明智吾郎は奥村の死体を黒い袋に詰め、女性へと微笑む。

 

「これで怪盗団も終わり…、ですかね」

「だろうね。自分から罠に飛び込むなんて、ただのバカ」

 

女性は淡々と返し、奥村の死体を用意した車の後部座席へと運び込む。

2人が乗り込むと、吾郎が微笑みを崩し、女性へと話しかけた。

 

「………車の中は誰も見てません。素を出しても問題ないかと」

 

その一言を皮切りに、女性は垂れ下がった瞼を閉じ、深くため息を吐く。

先ほどまでの震えた声音はどこへやら、芯の通った声が車内に響いた。

 

「ぶっはぁぁあ……。すまんな、吾郎」

「付き合わせてるのはこっちだ」

「それでもだ。ありがとう」

 

女性…否。変装したバルルは吾郎に礼を述べ、続け様に問いかける。

 

「獅童の周囲は洗えたか?」

「ああ。あいつのコネ、踏み越えてきた屍は予想以上の数だったよ。

奥村も切るついでに怪盗団をハメるエサとして使われる予定だったみたいだ。

既に死んでるから、会見の報道ができない代わりに遺書を捏造する算段らしい。

体が弱いって話だから、適当に『発作で倒れたところを社員が見つけた』なんて説明でもするんじゃないか?」

「ふむ…。手口が緑のバカそっくりだな…」

「あのボケガエルと発想は同レベルでも、やってることのエグさはこっちのが上だね。

いや、エグい割にはみみっちいか。

支配の行き着く先がペルソナ使い頼りの独裁国家…、バカの国かな?」

 

ありったけの嘲りを込め、ため息混じりに愚痴をこぼす吾郎。

こんなのが実父だとは。

呆れに頭を抱える吾郎に、バルルは続けて確認を取る。

 

「吾郎。次のパレス攻略だが…」

「わかってる。冴さんにパレスがあることも確認済みだ。

彼らにも気づくヒントを与えちゃってたみたいだし、大半は筋書き通りに進むだろうね」

「……それなんだがな、吾郎。

筋書きを少し変える必要が出てきた」

「…ストレガに幾月、だっけか」

 

幼き頃の苦い思い出を振り返り、顔を顰める吾郎。

それに同じように渋面を作ったバルルが頷き、口を尖らせた。

 

「ああ。どうやら、私たちの仕事に疑問を覚えてるらしくてな。

皆殺しにしてるから廃人化した人間が表に出ない…なんて筋書きにも無理が出てきた頃合いだ。

恐らく、奴らが尋問室を確認する恐れがある」

「蓮なら大丈夫じゃない?バケモノじみた強さしてるんだし」

「だからこそだ。アイツらは蓮を躍起になって潰そうとするだろうな。

なにせ、数えきれないほどに煮え湯を飲まされた相手だ。その殺意は並々ならない。彼の周囲に危害が及びかねないほどにな」

 

吾郎はそれにバルルが取り得る選択肢を考え、そのいくつかに辿り着く。

現時点で取れる選択肢を考えると、それなりの賭けになる。

吾郎は確信に頷き、表向きは冷静に答えた。

 

「………なるほど。やりたいことは大体察したよ」

「助かる。…我慢ばかりさせて悪いな」

「謝ることはないよ。あと二ヶ月の辛抱くらい、どうってことないさ」

 

言って、軽く拳を突き合わせる。

暫し沈黙が流れ、ふと、吾郎が後部座席へと目を向けた。

 

「……それで、奥村はどうするの?

仮死剤の効果が切れるのは明日だろ?」

「時期的にベーリング海行きだな。休んだら死ぬ、という状況を身をもって体験してもらおう。

一代で小さな食品会社を全国チェーンレベルに大きくしたやり手だ。根性は申し分ないだろ」

「体弱いとか言ってなかったっけ…?」

「全力で生かすから安心しろ」

「……僕が言えた話じゃないけどさ、結構容赦ないよね」

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「………という感じで、奥村社長は生きてる」

「…生きてるけど最終的に死なない?」

「生かすって言ってるから大丈夫だろ」

 

音声データの再生を止め、新しく入ったメンバー…奥村 春に諭す蓮。

バルルと顔合わせを済ませていない故か、その顔には疑念が浮かんでいる。

そんな彼女の様子を見兼ねたのか、それとも疎外感に文句を口にしたくなったのか。

ソファに腰掛けた竜司がため息混じりに愚痴を吐いた。

 

「にしても、水臭ぇなぁ。正直に言ってくれてもよかったんじゃねーの?」

「バカ。ここから先は私たちの協力も必要だから、蓮が明かしてくれたんでしょ」

「竜司の気持ちもわかるが…、黙っていた理由も納得できる。近頃の俺たちは目に見えて浮かれていたからな…」

 

祐介の言葉に気まずそうに視線を落とす面々。

現在、彼らは窮地に立たされていた。

大々的に報道された、オクムラフーズ社長…奥村邦和への予告状。

誰もが次の改心を心待ちにする中、事件は起きた。

オタカラを盗んだ直後、奥村邦和の死亡報道が流れたのだ。

結果、彼らは一気に殺人者として転落。指名手配犯となってしまった。

その事実を振り返ってか、痛々しい沈黙が流れる。

と。重苦しい空気を変えようとしたのだろう、竜司が慌てて話題を戻した。

 

「んで、こっからどーすんだ?

向こうにはなんか考えがあるみたいだが…、こっち側から何か動く必要あるのか?」

「当初の予定だと、このあとのパレス攻略で俺がわざと捕まって向こうの出方を伺う…んだったが、ストレガと幾月が動くんだったら、もう一工夫凝らす必要がある。

バルルはその工夫を手伝ってほしいみたいだ」

「……言ってたか、そんなこと?」

「ニュアンス」

「……たまに蓮のコミュ力モンスターっぷりが怖い時があるんだけど」

「慣れろ。脈絡のないツーカーは真っ黒コンビのお家芸みたいなもんだぞ」

 

「ナビするこっちの身にもなれー」と付け足し、マヨネーズがかかったカップ焼きそばを啜る双葉。

互いにコミュニケーション能力があり過ぎるのも考えものだ。

こんこんと出る文句を麺ごと飲み込む双葉を尻目に、真が沈痛な面持ちで問いかけた。

 

「…ねぇ、蓮。次に攻略するパレスは、お姉ちゃんのものなの?」

「そうなるな。吾郎が『怪盗団を終わらせるための取引』として持ちかけてくる形にはなるが」

「……聞いてる感じ、結構前から計画を練っていたように思えるのだけど…、それについても説明してくれるのね?」

 

かつてのような圧力を纏い、詰める真。

蓮はそれにたじろぐことなく首肯した。

 

「ああ。6年ほど前から練っていた。

獅童の傘に隠れたストレガに幾月…、そして、その奥に潜むであろう理不尽を打破するために」

「さっきも名前出てたな…。なんなんだ、その、すとろーが?と、幾月ってやつ」

「ストレガだ、バカ」

「そうそれ…って、バカって言うなバカネコ」

「ネコじゃねーし!!」

「「2人とも、静かに」」

「「………………ウッス」」

 

ぎゃあぎゃあと喧嘩する2人に、真と春が軽く腕を鳴らす。

怪盗団きっての武闘派2人を相手にする勇気はなく、モルガナと竜司は大人しくソファに座り直した。

 

「…何年か前、カルト宗教が流行っただろ。『終わりがくる』って終末思想の」

「それ、覚えてる。月光館あたりは特に酷かったって聞いたことあるよ」

「あれを作ったのがストレガで、その思想の大元が幾月だ。

……それも元を正せば、先先代の桐条が全部悪いんだが…」

「ま、そこんとこは深く知る必要ないぞ。

『一回は世界滅ぼしかけたすんごい悪党が性懲りも無く世界を滅ぼそうとしてる』程度に思っとけばおっけーだ」

「気になるんだけど。すごく」

 

杏が呆れ混じりに言うと、「そこ関連はまた今度なー」と双葉が流す。

と。話が脱線するのを見越してか、祐介が蓮に問いかけた。

 

「それで、工夫とは?」

「だいたい想像はできてるが…、絵面的にまずいことにはなるな」

「…………絵面?」

 

訝しみ、蓮を見上げるモルガナ。

蓮の顔はかつてないほどに苦渋に歪み、変な冷や汗が垂れていた。

 

「多分、向こうも同じことを考えている。

俺も正直気が進まないが、一番生存率が高い策を考えたら…」

「あの、そんなに嫌なの…?確かに尋問中に拷問を受けるかもしれないけれど…」

「いや、そっちは宇宙関連のトラブルに遭ってきたから耐えれる。

問題は…、その。あまりに言いづらいことなんだが…」

 

珍しく言い淀む蓮。

できる限り口にしたくない。そう訴える蓮の仕草に皆が疑念を向ける。

こうも針の筵にされてはたまらないと感じたのか、それとも話さなければならないと悟ったのか。

蓮はがっくりと項垂れ、ため息混じりに吐き捨てた。

 

「浮気に近いことをやる」




雨宮 蓮/ジョーカー…既に彼女持ち。この後、首が千切れるほどに土下座して作戦の了承をもらった。

奥村 邦和…意識を取り戻したらカニ漁船にいた。良心の呵責と一回のミスがガチの死に繋がる過酷な現場へのプレッシャーとが混じり合い、夜な夜な号泣する妖怪として船員に怖がられることに。その中には、緑のカエルみたいな顔をした成人男性もいたとか。

バルル大佐…死んだ顔で作戦を実行に移した。

明智 吾郎…作戦が実行された際、しわしわピカチュウ並みの顔面崩壊っぷりを見せた。

彼女…作戦が実行された際、布団にうずくまって「うぐーっ!!」と叫び散らした。
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