【悲報】宇宙人ワイ、小学生屋根ゴミに拾われた模様【助けて】 作:鳩胸な鴨
沈没した国を渡る傲慢の船にて。
全国放送を乗っ取って予告状を叩き付け終えた怪盗団の面々が、本会議場へと繋がるエレベーターへと乗り込む。
「今頃、現実の獅童は泡食ってるだろうな。
ペルソナ使い全員に連絡つかないんだから」
「やっぱり、ジョーカーだけじゃなくて僕の顔も出したほうが良かったんじゃないかな?そっちの方が面白かったよ、絶対」
「クロウの場合、今後の人生にめちゃくちゃ響くだろ、それ」
「今更だよ」
獅童1人を打破したとて、面子を潰された数々の組織が怪盗団を狙いに来るのは確実。
人生は困難に溢れている。
それが一つ増えた程度だ。気にすることでもない。
クロウがそう諭すより先、エレベーターの扉が開き、本会議場へと出る。
その壇上に立つ獅童を前に、スカルが声を張り上げた。
「あいつ…!!」
「珍しいな。シャドウがそのままの姿なんて」
「よほど自分に自信があるんだろう。過剰なものだろうがな」
シャドウとは思えぬほど原型を保っている。
これまで出会ったシャドウは、例外なく「強い自分のイメージ」をこれでもかと体現していた。
獅童の場合は、それが現実における自分なのだろう。
さすがは傲慢が行き過ぎた男と言うべきか。
呆れを込めた視線を向ける中、こちらを向いた獅童がクロウを見て鼻を鳴らす。
『やはりそちら側だったか』
「裏から支配してやろうかと思った時もあったんだけどね。
ツラ殴るほうがせいせいすると思ったんだよ」
『愚かさは母譲りか』
「いいや、アンタに似たんだよ。
アンタも気に食わないやつを片っ端から黙らせないと気が済まないだろ」
『己の欠点を気に食わない父に押し付けるか。育ちが知れるな』
「親子揃って捨て子なもんで」
『…………?』
怪訝そうに顔を顰める獅童。
と。人間の姿を保っていたソルジャーがクロウの前に立ち、その仮面を外す。
「この姿ではお初にお目にかかるな、獅童。
吾郎の養父をやらせてもらってる者だ」
『…なるほど。あれは演技だったわけか』
「そういうことだ」
ソルジャーの素顔を前に悟り、嘲りを込めた笑みを浮かべる獅童。
その視線の先はソルジャー…ではなく。
その隣に立つクロウ…実子たる明智吾郎へと向けられた。
『なるほどなるほど…。復讐のために養父に恥を押し付け利用する…。まったく、どう育てばここまで厚顔無恥になれる?
落胤とすら思えぬ恥晒しだな』
「なんだと…!?」
「構わないよ、スカル。どう吠えようが、この因縁も今日で終わりだ」
初めから親らしい言葉など期待していない。
クロウがそう言いたげな瞳を向けると、獅童はそれに薄ら笑いで返す。
『私に消される覚悟があるということか?』
「よく言うよ。総理に就任したら殺すつもりだったんだろ」
『…ほう。存外、愚鈍というわけでも無いらしい』
想像以上に下衆が極まっている。
これが次期元首とは、世も末である。
そんな呆れを飲み込み、クロウは凶悪な笑みを露わにする。
「僕たちの手の上で踊っていたピエロが言えた口かな?
お前が消したと思っている人間のほとんどが生きているというのに」
『なに…?』
初めて獅童の表情が歪む。
ずっと、その顔が見たかった。それなのに、なんの感慨も湧かない。
案外こんなもんか、とどこか失望を覚えていると、ソルジャーがクロウの言葉を引き継ぐ。
「玉木洋文、聖川歩、一色若葉、浅川勇大、奥村邦和、エトセトラエトセトラ。
私たちが担当した人間はすべて死を偽装して逃がしていたんだよ」
「……そ。冷静に考えたら、お前みたいな小物のために手を汚すのも馬鹿らしくてさ。それっぽく演出したわけ。
どう?アンタがバカにしてたペテン探偵にずーっと騙されてた気分は」
めぎっ、と音を立てて獅童のスキンヘッドに青筋が浮かぶ。
よほど我慢ならなかったらしい。
獅童はその鋭い目をクロウとソルジャーに向け、低い声を漏らした。
『なるほど、なるほど…。
この私があろうことか、とうの昔に嵌められていたというわけか…!』
「政治家らしく受け入れるのが早いな」
『……多少驚いたが、それがどうした?
お前たちを叩き潰した後、そちらも始末すればいいだけのこと。なんら問題はない』
「強がらなくてよろしくてよ」
「冷や汗、隠せてないわよ」
ノワール、クイーンが指摘するや否や、ハンカチを取り出して汗を拭う。
仕事が増えた故か、それとも見下していた相手にしてやられた故か。
獅童は怒気を纏いながら、重々しく呟く。
『よほど私を引き摺り下ろしたいらしい。
世間を振り回すのがそんなに楽しいのか?』
「違ぇよタコ」
「俺たちは信じた道を歩んでいるだけだ」
「アンタは間違った。それだけのことよ」
『愚民は愚民だな。自分に酔い、判断を誤り、死んでいく』
「よくブッ刺さりそうなブーメラン投げたなー…」
スカル、フォックス、パンサー、ナビが獅童の言葉を跳ね除けていく。
暫しの沈黙が流れる。
一触即発の空気が流れる中、ソルジャーが口を開いた。
「どんな社会においても、人は消耗品だ。
時が経つに連れて削れ、やがて使い物にならないと蔑まれ、死んでいく。
どうやったって変わらない、残酷な仕組みだ」
『だからこそ、この私が使い物になる人間を選定し、強い国家を樹立すると言っているのだ。そこになんの文句がある?』
「…聞くが。人は何故、子を産み落とすと思う?」
唐突な話題の転換に、怪訝そうに眉を顰める獅童。
ソルジャーはそれに構わず、言葉を連ねた。
「快楽に身を任せた。愛が欲しかった。
理由はどうあれ、種を残したいと思うのは生物としての本能だ。
それがどんな結果に繋がるとしてもな。
……だがな。そうして繋いだ命を尊く思えぬ社会に先はない」
『…何が言いたい?』
明智吾郎を捨てたことへの恨み節か。
そう判断した獅童が話を切り上げようと結論を急ぐと、ソルジャーは呆れを込めた声音で答えた。
「社会を知らぬ子供を上から踏みつけ、挙句はその屍で総理に成り上がろうとする外道が作る国だ。
弱者と言って、先を担うはずの子供達を切り捨てるのが当たり前の社会になる」
「先細りが目に見えてる弱小国家の誕生だ。
お前がさんざっぱらテレビでバカにしてきた政治家たちと何ら変わらない。同じ穴の狢というわけだ」
ソルジャーの言葉を遮り、ジョーカーが銃口を突きつける。
それを前に獅童はくっくっと喉を鳴らし、声を張り上げた。
『貴様らの言い分はよくわかった。
取るに足らん小さな綻びだが…、その甘さで大国すら滅びる。
私はそういうミスは犯さない』
「小さくねーぞー」
ナビの指摘を無視し、獅童が拳を握る。
瞬間。いつの間にやら現れた多くの認知存在が獅童の言葉を讃え、拍手を送る。
それに呼応するかのように本会議場が動き出し、様相を大きく変えていく。
変化に飲み込まれぬように怪盗団が飛び上がると、そこには。
『さあ、速やかに死にたまえ』
軍人のような服装に変貌した獅童が、金色の人型で模られた獅子に跨っていた。
ハゲ…「アイツら向こうの自分に手ェ出してこんかったんやし、向こうの自分めっちゃ強いんやろ。心配せんでええか」という結論に落ち着いた。多分、本編でもこのメンタルで迎え撃ってる。
バルル大佐/ソルジャー…「子供を養分に育つ大人」は軒並み地雷。つまりパレスメメントスターゲットほぼ全員が地雷。よくストレスで死ななかったと思う。