ケンザンの血筋である以上、当然あたしの家族にもケンザンの血は流れている。
もちろん近親婚を繰り返しているわけではないので夫婦のどちらかしか継いでいないのだけれど。
他にも必ずケンザンとして目覚めて発明に傾倒するということもないらしい。
あたしの前に発明家として才能を開花させていたのは祖母であるおばあちゃんだった。
おばあちゃんとの思い出はあたしにもある。
あたしも人のことは言えないけれど、おばあちゃんは小柄な人だった。
真っ白な白髪ではあったけど、とても綺麗な長い髪をしていて子供ながらに憧れるものがあった。
そんなおばあちゃんが自分の何倍もある
家族として実家に居る時間より工房に居る時間の方が長かったように思う程度には発明家だった。
でも家族を顧みないわけでは決してなくて。
ちゃんと家族の時間も大事にしつつ、発明品にも愛情を注ぐような人だった。
そんな発明家おばあちゃんでおじいちゃんは寂しくないの?とおじいちゃんに聞いてみたこともあった。
するとおじいちゃんはニコニコ笑ってあたしの頭を撫でるだけだった。
小さい頃のあたしは答えてくれないことに不満があったけれど、今なら解る。
おじいちゃんは発明家をしてるおばあちゃんが好きだったのだ。
発明品と向き合っている時のおばあちゃんの目はいつもキラキラと輝いていて、本当に発明が好きなんだなと思えた。
でもあたしを見る時は優しい目になって発明品についてひとつひとつ説明してくれたのを今でもハッキリ覚えている。
そんな優しいおばあちゃんが大好きだったし、あたしがケンザンに目覚めた時に目指した人でもあった。
おばあちゃんに追いつきたい。おばあちゃんに並びたい。おばあちゃんを追い越したい。
あたしの発明家としての基準はいつもケンザンではなくおばあちゃんだった。
そんなおばあちゃんは空を見上げるのが好きな人だった。
ただ見上げるのではなくて、その先にある何かを思い描いているような気がした。
そんなおばあちゃんを見て、どこか遠くに行ってしまいそうな気がして怖かった。
でもいつもすぐにあたしの方を見てニコっと笑ってくれた。それだけでちゃんと傍に居てくれるんだって安心できた。
そんなおばあちゃんが大好きだったからなのか、あたしのケンザンとしての目覚めは早かったのだろう。
今にして思えばあたしの人生はおばあちゃんに影響されたことがあまりにも多い。
おばあちゃんが居なければ確実に今の自分はなかっただろうと断言できる程度には、あたしの軸になっている。そんな人だった。
「ん・・・・・やだ、寝ちゃってたのね」
目を開けるとあたしは工房の作業机の上でうたた寝をしてしまっていたことに気付く。
突っ伏して寝ていたので体が痛い。
「ちゃんと布団で寝なさいって、よくおばあちゃんにも怒られたわね・・・」
それにしてもおばあちゃんの夢を見るだなんて。
おばあちゃんから受け継いだザンセツのメンテナンスをしていたからだろうか。
独り立ちして実家を出てからはずっと会っていないおばあちゃんに会いたくなってしまったが、まだケンザンとして未熟なあたしでは会わせる顔がない。
もっと発明家として結果を出してからにしたい。あたしはまだ追いついてもいないのだから。
「でも・・・久しぶりに会いたいなぁ。ガンライコウおばあちゃん」