おはな の おはなし   作:沙時灯

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※今回の挿絵は ぬゐめ 様より提供していただいたものを使用しています。
素敵なイラストをありがとうございます。


ガンライコウ =受け継がれるもの=(挿絵あり)

未熟。欠陥品。できそこない。未完成。失望。

自分を評するのにそんな言葉ばかり並べてしまう程度にはあたしは不十分な発明家だった。

当然だ。代々受け継がれるケンザンの伝承を十全に受け継ぐ前に両親が死んでしまったのだから。

いやそれだけではない。そもそも自分の発明家としての才能の程度も決して高いとは言えなかった。

家にあった先祖が残した発明品の仕組みを理解することも最初は難しかった。

それ以前のもっと昔のケンザンの発明品に触れた際も、その技術力や完成度には常に劣等感を感じてきた。大昔にこれだけの技術を成し遂げていたのかと。

特にケンザンの原点とも言えるスイバチの技術の集合体である蓬莱花の調査に行った時などは、ただただ驚くしかなかった。

明らかにスプリングガーデンをはるかに超える文明の機器の数々。もはや魔法を超えた『超魔法』としか言えないような技術には舌を巻くばかりだった。

歴代のケンザンの調査で得た知識がなければ、おそらく『それがどういうものか』すら理解できなかっただろう。それぐらいスイバチは遥か高みに居たのだ。

 

もちろんあたしだって発明家として努力しなかったわけではない。むしろ発明一筋に生きてきた。あたしにはもうそれしかなかったから。

これを失ってしまえば、あたしの存在価値はなくなる。生まれた理由も今生きている意味も。

ずっと、ずっとそんな想いで発明に触れてきた。それがあたしの、ガンライコウの人生。

 

そんなあたしが愛する男性(ひと)と出会い、結ばれて。

今あたしのお腹には次代のケンザンが宿っている。

その子に生まれる前から重い使命を課してしまってごめんなさいという気持ちは確かにある。

けれど、きっとそれは杞憂だということも知っている。

なぜならあたしは両親を恨んでいないし、あたしを見る両親の顔はいつも笑っていたから。

ケンザンの血筋の話をされた時も申し訳無さなんて微塵も感じない。発明の素晴らしさやロマンをキラキラした目で語っていたから。

そんな両親だからこそ、あたしは発明を諦めずにこれたのだ。

 

きっとこの子もいつか代々の偉業に打ちのめされ、歩みを止めそうになることもあるかも知れない。

そんな時に諦めずに歩いてゆける軸を。根っこを。あたしは育てなきゃいけない。

それが親となるあたしの。当代のケンザンとしての使命。

 

「人の親になるのって大変だわ」

 

大きくなったお腹を撫でながら、あたしはそんなことを思うのだ。あなたの隣で。

 

 

【挿絵表示】

 

イラスト:ぬゐめ 様

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