「初めまして、ガンライコウさん。突然だけどあなたは今日でケンザンを名乗れなくなるわ」
「・・・意味がわからないのだけど?」
「説明してあげましょう。当代のケンザンはこの私、ハゲイトウが担うことになったわ」
「・・・・・まさか!?」
「そのまさかよ。スイバチの子孫であるケンザンの血筋は1本ではない。一子相伝ではないということよ。
考えたことはない?あの大天才のスイバチが自分の才能を後世に残すにあたって親から子へ、子から孫へだなんて不確実な手段に頼るだなんておかしい、と」
「ええ、考えたことはあるわ。けどあたしの両親はその可能性は否定したから」
「でしょうね。あなたの血筋はかなり安定して代々ケンザンを継続できていたそうだから。
でもご両親の早逝によりあなたの代で『
「なるほど・・・そういうことだったのね」
「察しがいいわね。ここまでの話で大体は理解したようね。
ケンザンの発明と呼ばれるものは多岐に渡っているわ。
つまりケンザンはそれぞれの主軸となる血筋のエキスパートなの。もちろんそれだけではなくて他の分野も少しは理解しているけれど。
スイバチの叡智というあまりにも膨大な知識や技術はたった一人の子孫では一生かかっても伝えきれないわ。
だから分割した。そしてそのひとつがあなたの血筋というわけ。そして私は別の血筋のケンザンを継いできた家よ」
「で、両親の死というイレギュラーでできそこないのあたしに代わってあなたがケンザンを継ぐ、と?」
「少し違うわね。ケンザンは同時存在していいのよ。大っぴらにしてこなかっただけ。
あなただって最初はケンザンであることを隠していたはずでしょう?
つまり私達以外にもケンザンはどこかに居る。スイバチの叡智を余さず遺すために。
そしてガンライコウさんの血筋はケンザンの資格を失った。
現代にケンザンが生きていると知れ渡ってしまっている以上、私の血筋が表立ってケンザンを名乗ることになった。
「それ・・・・・だけ・・・?」
「ええ。簡単な話でしょう?」
「あたしは・・・あたしにはその『それ』しか残っていなかったのに!!!!!
『それ』を絶やさないためにずっと必死で生きてきたのに!!!!!
過去のケンザンの発明に触れるたび、自分の不甲斐なさを痛感するたび、何度やめようと!諦めようと!生きることに絶望したことだって!!!!!
それでも!両親のことを思うとやめることなんてできなくて!!!!!
ずっと独りで積み重ねてきた『
あたしのッ・・・・・あたしのやってきたことは・・・・・ケンザンですらなくなってしまったらッ!!!!!」
堰を切ったように涙がボロボロと零れた
悲しさと 悔しさと 情けなさと 驚きと 運命の非情さと ケンザンという重荷からの開放感と
自分で自分のこころがわからなくなるぐらいのごちゃまぜの感情と
あたしがあたしでなくなるような感覚に子供のように泣きじゃくるしかなかった
──────────ガンライコウの花言葉:『絶望』──────────