おはな の おはなし   作:沙時灯

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タケ =大人=

 

 

 

ある日の昼下がり。

 

 

「あの・・・団長様?これはどういう・・・」

 

 

常に涼しい顔で淡々と仕事をこなす流石のタケも困惑した声で尋ねてくる。

当然だろう。前触れもなくいきなり膝の上に座れと言われ、次には頭を撫でられているのだから。

 

だがその質問に答えるわけにはいかない。

沈黙でそう答えると頭を撫でるのを続けた。

 

昨日のうちに書類仕事は済ませ、今日は来客も出撃の予定もない。

だからと言って執務室から離れることはできないが、こうしてタケを撫で続けることはできる。

今日ばかりは害虫も大人しくしていてほしいものだ。

 

 

「・・・・・・・・・・っ」

 

 

受け入れることも拒絶することもできずにタケはもじもじと身をよじらせる。

そのたびにタケの小ぶりなお尻の感覚が太ももに伝わる。

 

─────非常にいけない

 

今日はそんなつもりではないのだ。

そんなことを考えてると

 

 

「その・・・団長様がお求めであれば、私はいつでも・・・」

 

 

耳を真っ赤にしながらタケはぼそぼそとつぶやく。

 

違うのだ!

 

思わず叫びそうになったことに耐えつつも、説明しないわけにもいかない状況に白旗を掲げるしかなかった。

 

 

「私の緊張をほぐしたかった・・・ですか」

 

 

ひどく不思議そうな声でこちらの言葉を反芻するタケ。

本人にそんなつもりはないのだろうから当然の反応だ。

仕方ないので全てを話すことにする。

 

 

禁書の世界に潜り、異界のタケとの交戦もあった例の一件。

その際に出会ったタケの『姫』であるヒメハチク。

そのヒメハチクから伝えられた言葉があったのだ。

 

 

姉さまは頼りないわたしのために『大人』であろうとしてらっしゃる

強く、賢く、美しくいようと

だから戦いのない日は一人の乙女として過ごしてほしい

いつも頑張っている姉さまだから

そうそう姉さまって実は泣き虫なんですよ

だから姉さまを守ってあげてくださいね

 

 

「姫が、そのようなこと・・・を・・・」

 

 

タケが強いのは確かだし、その『強さ』を求められて現代に蘇った戦士。

数百年の封印で見知った顔も居ない。そんな状況下でもタケは固く、真っ直ぐに立ってきた。

だからこそ平和に過ごせることもある今はただの娘に戻ってもいいのだ。

 

 

「いえ、そんな」

 

「私は別に、無理など」

 

 

段々消え入りそうな声のタケの肩が震える。

 

タケの腰を抱いた左手に力を込めてもっと抱き寄せ、右手でその美しい黒髪を撫で続けた。

後ろからなら泣き顔を見られることもない。

その言葉に小さく反応があった。

 

 

そこには小さな乙女が居た。

 

ずっとずっとがんばっていた。

だからきょうはおやすみしよう。

あしたになったらいつもどおりだから。

 

 

 

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