おはな の おはなし   作:沙時灯

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ガンライコウ =煙管=(挿絵あり)

 

 

 

「えっ?あたしがいつから煙管(キセル)を吸い始めたのかって?」

 

 

昼下がりの執務室。昼食を終えて副団長のガンライコウとのんびりしていた際に、ずっと気になっていることを尋ねてみた。

 

出会った時には既に片手に煙管(キセル)を手にしていたし、ちょくちょく煙を吹かしているのも見かけている。

 

騎士団内でも同じように喫煙を嗜む花騎士(フラワーナイト)は何人かいる。だがガンライコウの場合はなにかこう・・・違和感のようなものを感じていたからだ。

 

 

「『いつから』と問われればあたしの祖父、おじいちゃんが亡くなった時からね」

 

 

 

当の煙管(キセル)を取り出し、フッと立ち上がると執務室の窓を開けながら続けた。

 

 

「これはね、おじいちゃんの形見なの」

 

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

イラスト:ぬゐめ 様

 

 

 

あたしは発明一家の娘として生まれた。

 

そしておじいちゃんもケンザンの血筋に名を連ねるに恥じない発明家だった。

 

小さな頃から発明品に囲まれて育ったのだけど、小さなあたしはおじいちゃんが咥えていた煙管(キセル)を発明品の1つだと思ったわ。

 

だってあんな細い棒から煙が出てるのよ?きっとなにかすごい絡繰に違いないってね。

 

興味津々で煙管(キセル)を触ろうとするあたしにおじいちゃんは言ったわ。

 

 

「ちび助が煙管(キセル)なんぞ吸うモンじゃねぇ」

 

 

そう言うとあたしには飴玉をくれたわ。きっと口寂しいと思ったんでしょうね。

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

イラスト:ぬゐめ 様

 

 

 

それからあたしは おじいちゃんの煙管(キセル)をねだると飴がもらえる と学習して何度も煙管(キセル)に手を伸ばすようになったわ。

 

 

でもそれも長くは続かなかった。

 

わりと早くにおじいちゃんは亡くなってしまったの。

 

後から知ったけれど、かなりの愛煙家だったらしくて肺をやられていたそうよ。

 

でも発明に集中できるからと一切煙草をやめようとはしなかったらしいわ。

 

長生きするより発明家として生きることを選んだのね。

 

家族としては褒められたものじゃないけれど、あたしはおじいちゃんのその生き方に尊敬した。

 

だから亡くなった時に形見としてこの煙管(キセル)を譲り受けたの。

 

おじいちゃんの発明家としての魂が残っている気がして。

 

けれどあたしはケンザンとして跡継ぎを産まなければならないことは解っていたから、煙が出るだけの葉しか吸ったことはないのよ。

 

・・・・・他の花騎士(フラワーナイト)には内緒にしておいてね?恥ずかしいから。

 

 

 

 

少しずつ、少しずつ。言葉を紡いでいくようにガンライコウは執務室の窓辺から煙と共に思い出話を吐き出してくれた。

 

その眼は遠くにある懐かしいものを見るような優しい眼をしていた。

 

 

「今でもあたしがたまに吸っているのはね」

 

 

「こうしてあたしが煙管(キセル)を吹かしていることで、天国のおじいちゃんにあたしが発明家として生きていることを伝えられるような気がするから」

 

 

話はこれで終わりよ と言わんばかりにガンライコウは窓枠で煙管(キセル)の雁首をカーン!と叩いて既に火が消えている煙草の葉を捨てた。

 

 

その澄んだ音はきっと天国にまで届いていただろう。

 

 

 






※このお話は ぬゐめ 様のファンアートから着想を得て作品にしたものです。

 該当のファンアートの掲載許可を得て、挿絵として掲載させていただきました。
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