素敵なイラストをありがとうございます。
「・・・・・ふむ。まぁこんなものかしら」
姿見の前で確認を行う。普段も姿見は使うけれど、今日は何倍も役に立ってもらう。
情けない姿など見せるわけにはいかないのだ。
「とは言え」
「こんなに肌を見せてもいいのかしら・・・」
今更になって疑問に思う。しかし後戻りなどできないのだ。
彼が家に来る際に着飾ってみようと思ったけれど、ずっと発明一筋だった自分ではオシャレとか全くわからなかったので友人のゼンマイさんに相談をしたのだが、
「エンジニアの正装はツナギだよ!」
と言われたので参考にはできなかった。冗談半分で自分で決めさせたかったのだろうけれど。
困ったあたしは発明家コミュニティで知り合ったジニアさんに相談することにした。彼女ならこういう話もお手の物のようだし。
で、オススメされた衣装と近いものを買ったのだけれど・・・
上は鎖骨が見えるぐらいに肩あたりまで開いている白のふわっとした洋服。
中にインナーは着るようになっているけど、ちょっと恥ずかしいわね。
下はデニムのミニスカート。制服もスカートではあるけれど、ここまで短いと不安だわ。
ジニアさんはあっけらかんとした人だから、露出に抵抗がなさそうだったけれどあたしには・・・
イラスト:ぬゐめ 様
「すごく似合っててイイ?そ、そう?」
困った。彼の顔が見れない。顔が熱い。スカートの裾をグイグイと押し下げながら自分のつま先を見る。
人に褒められるのってこんなに恥ずかしかったかしら。いつもは嬉しいという気持ちだけだったはずなのに。
再確認した。やっぱりあたしは彼に惹かれているのだと。
工房に彼を案内する。以前にも来ているから案内と言っても先を歩くだけなのだけど。
彼と顔を合わせなくていいのは今は助かる。と思ったのだが、彼の動向が伺えないのはこれはこれで緊張する。
もしかしてあたしの脚とか見てたり?は、恥ずかしすぎるでしょ、そんなの。
今日は髪をまとめてアップにしてあるから首筋もスースーするし。自分の家でこんなに落ち着かないことって初めてだわ。
そんな動揺も工房に着いてしまえばいつも通りだった。他愛のない話や開発のことで盛り上がった。
彼と話すのは楽しい。波長が合うというのだろうか。一緒に居て疲れないのは人付き合いの苦手なあたしには非常にありがたかった。
きっとそういうところから心を許してしまうのだろう。ちょっと悔しいなと思ったその時、
「こーんにーちはー!」
えっ嘘でしょ。よりによって今日!?
驚きを隠せないあたしと不思議そうにする彼。突然の来客はあたしの心を更にかき乱すことになる。
「わー!きょうのはかせ、かわいいー!」
「そのひとは”かれし”さんですか~?」
「ダメだよリジー、そういうことはきいちゃ」
その通りだ。聞かれてもどう答えていいか困る。彼との関係はまだそんな段階じゃないというのに。
「この子たち?近所の子なんだけど、以前にあたしがミニメカを作ってあげたことがあって。それ以来、懐かれてしまっているのよ」
わいわいと群がってくる3人にもみくちゃにされながら説明をする。
今のあたしは彼にどう映っているのだろうか。恥ずかしいことこの上ない。
「で、どうしたの?何かトラブルかしら?」
「ごめんなさい。ペンペンのちょうしがわるくて・・・」
「わかったわ。見せてもらえる?」
そう言ってペンギン型ミニメカを預かり、工房の机でメンテナンスに入る。
調べてみるとギアのかみ合わせが悪くなっているようだった。理由さえ判れば簡単なものだ。
代わりの部品を用意し、入れ替え。調整を行い、元に戻す。自分の作った子のことは当然完璧に理解している。
程なくしてペンペンは元気にモッフィーちゃんに抱き抱えられて帰っていった。
「あの子たちはね。あたしの作った子をとても大切にしてくれる、いい子たちなのよ」
3人を見送りながら彼に話始める。最初は戸惑っていた彼も、メンテナンスを始めてからはずっと見守っていてくれた。
そのおかげもあってメンテナンス中はただのガンライコウになっていた。やはりあたしは機械いじりが性に合っている。
発明品と向き合うことでその世界に浸れるのだ。そしてあたしはそれが好きだ。きっとずっと変わらない。
「子供は好きよ。夢やロマンに満ち溢れているもの。年齢を重ねると現実が見えてきて、そうならなくなってしまうのだけれど」
「だからこそ、あたしは夢やロマンを忘れない。叶わないことだってあるのも知っているけど、発明家がそれを忘れてしまったら発展なんてありえないもの」
きっとこれはケンザンという血筋。あたしを形作るもの。そして後世に伝えていかなければならないもの。
「いいお母さんになれそう?は、恥ずかしいわね・・・でも子供はたくさん欲しいわ」
「ッ!!ち、違うわよ?あなたとの間に何人欲しいとか、そういう話をしたつもりじゃ」
今日のあたしは何度、自分のつま先を見ればいいのだろう。
こんなあたしでもいつか好きな人の顔を見ながら話せる日がくるのだろうか。