おはな の おはなし   作:沙時灯

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ガンライコウ【パラレル学園】その8

いつかは誰かと結婚して子供を産んで育てることになる。そんなことをあたしも考えたりすることもあったわ。

もちろんまだ学生であるうち、彼氏も居ないうちから考えても仕方ないことだと思っていたけれど。

 

「まさかこんなに早く『その時』が来るとは思わなかったわね・・・」

 

髪はまとめてTシャツにジーパン、エプロンも着用で完全な保育士スタイルになり、赤ん坊を抱いた自分の姿を見て思う。

だがあたしは形から入るという信念がある。定番のスタイルというものは長い年月で最適化されたものなのだ。

効率などもしっかり考えられた歴史の集大成である。それを蔑ろにすることなどできない。自分に経験がないなら尚更だ。

 

お世話になっている近所のお母さんが病院で一日検査を受けることになったが、近くに親戚も居ないそうで。

そこで付き合いのあるうちに救援を求めてきたので、今日一日は赤ん坊をあたしが預かることになった。

そして今、その赤ん坊のナーエちゃんに哺乳瓶でミルクをあげているところだ。

 

「自分の子供ではないけれど、こうして抱いていると母性を刺激されるわね」

 

一生懸命ミルクを飲んでいるナーエちゃんを愛しい目で見てしまう。

これが自分の子供ならどれだけ可愛がってしまうのだろう。

 

「でもあたしのこの胸でもちゃんと母乳は出るのかしら・・・大きさは関係ないとは聞くけれど」

 

まだ足りないのかあたしのおっぱいに顔を埋め、はむはむとナーエちゃんがおかわりを求めていた。

当然だがその要求には答えられない。自分はまだお母さんではないのだから。

 

「そうよ。あたしはまだ。でも─────」

 

でも。その時に浮かんだ顔があった。その人があたしの隣に居て、一緒に微笑んで自分たちの赤ちゃんを見守る姿を想像してしまった。

 

「~~~~~~ッ」

 

急に身体が熱くなった。自分の幸せな母親姿を想像したら恥ずかしくなったのだ。

まただ。恋をするとこういうことがたくさん起こる。好きな人との未来を想像し、身悶えするような感覚が襲いかかってくる。

でもそれは嫌じゃなくて。恥ずかしいのだけれど、とても暖かくなって優しい後味を残す。

これはきっと母親になって育児の大変さに打ち勝つための準備期間なのだろう。

たくさん優しい気持ちを溜め込んで、それを子供に注いでいく。人類はそうして繁栄してきたのかも知れない。

たった一日のママ体験なのにたくさんのことを学ばせてもらった気がした。

 

その日、夢を見た。小さかった頃のあたしが両親に抱っこされている夢。

あたしも確かに愛されていた。そして今度はそれを次の世代に伝えていかなければならない。

あたしにはそんな使命感のようなものが根付いていた。けれど、それはとても大事なこと。

それを共に歩み、育む相手をあたしは見定めなければならなかった。

 

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