雄英高校1年A組の委員長、飯田天哉は自身の個性『エンジン』を使い最大出力で雄英高校へと走っていた。
A組は人命救助訓練を行うためウソの災害や事故ルーム、通称USJへと足を運んでいた。
水難事故、土砂災害、火事などあらゆる事故や災害を想定した演習場でスペースヒーロー13号と共に訓練を行い、人命のために個性をどう活用するかを学ぶために。
しかし、A組に待ち受けていたのは人命救助訓練ではなくヴィラン連合の襲撃であった。
突如現れたヴィラン達にA組の教師相澤を筆頭に爆豪、切島が迎撃を試みるも襲撃の主犯格の1人、黒霧の個性『ワープゲート』によって生徒達はUSJ内でバラバラになってしまう。
そして、生徒達はそれぞれ飛ばされた先でヴィラン達と対峙することになった。
黒霧の個性から逃れることができたのは13号とA組の一部のメンバーのみ。
外部へ連絡をしようとするも、妨害できる個性を持つヴィランによって電子機器を利用することは不可能だった。その中で、この緊急事態を学校へ伝えることができるのが飯田だった。
飯田は、13号やA組生徒の協力もありなんとかUSJの外へ脱出することに成功していた。
(早くこのことを学校へ伝えなければ・・・!!みんな、何とか持ち堪えてくれ・・・!!)
自分が今出せる最大限の力で個性を発動する。
しかし、突如として前方に氷の壁が現れる。
「何だこれは!?くっ・・・!!」
何とか急ブレーキをかけ、氷壁にぶつかるのを避けた飯田だがその場で悪態をつく。
そんな飯田に1人の男が声をかける。
「そんなに急いでどうした眼鏡の兄ちゃん。街中で個性を使うのは危険だって学校で習わなかったのか??」
声の方向を向くと、そこには自転車に乗った男がこちらにゆっくりと近づいてきていた。
「すみません!!でも、急いでいるんです!!早く学校にヴィランの襲撃を伝えなければ・・・ッ!!」
(一般市民になんでヴィランのことを言ったんだ僕は・・・!!不安にさせるだけではないか・・・!!)
一般市民を不安にさせるような発言を後悔するも、早く学校に伝えなければならないことを思い出し氷壁を越えようとする。
「・・・兄ちゃん雄英の学生だろ?俺の知り合いに雄英教師がいる。ほら、このスマホで連絡しろ」
そう言い、男は飯田にスマホを放り投げる。
突然の行動に驚くも、スマホを受け取った飯田は画面を見る。
スマホは既に電話のコールが鳴っており、画面には『馬鹿1号』と表示されていた。
『あーもしもし。お前から電話するなんて珍しいな』
「マイク先生!?!?」
声の主が雄英の教師の1人、山田ひさしこと『プレゼントマイク』だと分かると飯田はすぐにUSJの現状を伝えた。
『その声は確かA組の・・・』
「A組の飯田です!!先生!!今すぐUSJに来てください!!ヴィラン達の襲撃が!!」
『なんだって!?!?』
なんとか雄英にヴィランの襲撃を伝えることに成功した飯田は、スマホを持ち主の男に返そうとする。
「ありがとうございました!!貴方のおかげで学校に・・・ってあれ?あの人はどこに・・・?」
しかし、先ほどの男はいなかった。
唯一あるのは、車輪をクルクル回転させ地面に倒れる自転車。そして、不自然に凍り冷気を放つ地面だけであった。
***
「緑谷ダメだ・・・さすがに考え改めただろ・・・?」
「ケロ・・・」
「──・・・!!」
緑谷、峰田、蛙吹の3人は脳をむき出しにした巨体のヴィラン、脳無によってボロ雑巾のようにボロボロにされる相澤を見て戦慄していた。
3人は、飛ばされた先で対峙したヴィランをなんとか退け、相澤の援護をするために中央エントランスへと戻ってきた。
しかし、その考えはなんて浅はかなものだったのだろうか。
自分たちより遥かに戦闘経験が豊富で実力も上な先生が一方的にやられている光景を目の当たりにし、言葉も出ない。
脳無はバキバキと小枝を折るかのように相澤の腕を握り潰し、頭を地面に押さえつける。
その衝撃で小さなクレーターができており、相澤は意識を保つのがやっとだった。
入口では他の生徒達がヴィランと戦っているが、既に13号が倒され地面に横たわっているのが見える。
まさに絶体絶命。
相澤を助けようにも足がすくんで動かない。
「平和の象徴としての矜持を少しでもへし折るために生徒を何人か殺そうと思っていたが・・・別に教師でも問題ないよな・・・!!」
体の至る所に手首をつけたヴィランの死柄木が不気味な笑顔を浮かべながら、脳無に相澤のトドメを刺すように指示をする。
(相澤先生ッ・・・!!)
「おい待て緑谷!!」
「緑谷ちゃん!!」
死柄木の発言を耳にした緑谷は、先ほどの恐怖を忘れ脳無へと走り出す。
OFAを足だけに集中することで高速移動を可能にし、一瞬で脳無の懐に忍び込む。
そして、そのまま右手に力を集中させ、脳無へ強大なパワーで殴りつける。
無意識に彼のヒーローとしての資質が、OFAを使いこなすことに成功したのだ。
「SMASSH!!!」
パンチを受けた脳無の体に衝撃が走り、砂埃が舞う。
(出来た!?上手くスマッシュが決まった!!)
高速移動に加え、今まで出来なかった力の調整を出来たことに驚きつつ、右手には確かな手応えを感じていた。
(やった・・・・・・・・・えっ・・・?」
しかし、喜びも束の間、緑谷の情けない声が漏れる。
砂埃が晴れた先にいたのは、強烈なパンチを受けても微動だにせずその場にとどまる脳無だった。
いつの間に・・・
速っ・・・
ていうか・・・
効いて・・・
ない・・・!?
「いい動きをするなぁ・・・スマッシュって・・・オールマイトのフォロワーかい?」
「まぁ、いいや君」
死ね
自身の体の半分以上ある脳無の拳が目の前に迫る。恐怖で顔を歪ませながらも、何とか防御を取る。
しかし、この後自身に待ち受ける現実が脳内で再生される。
巨大な拳により体がグチャグチャに吹き飛ばされる。
自分は死ぬのだと。
(ごめんなさいオールマイト・・・ごめんなさい・・・お母さん・・・!!)
緑谷は来る衝撃と死に備えその場で目を瞑る。
「あらら・・・ちょっとごめんな兄ちゃん達。そこどいてくれるか?」
突如響く男の声に脳無の腕が止まる。
脳無だけでなく死柄木や緑谷、その場にいた人物全員がその声の主の方を向く。
そこには緑のコートを羽織った男がいた。
体から冷気を放ち、自身の体を凍らせながら死柄木と脳無を睨みつけている。
サングラスによってどのような目をしているか判断できない。
だが、顔には薄らと血管が浮き出ており、凍った体からは男の感情を表すようにパキキと音を立てている。
「そいつは俺の・・・友達なんだよ」
最後のやつをやりたかったの。