個性『氷結人間』   作:龍角散ガム

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USJが雄英の敷地内にあることは完全に私の勘違いです。

ですので、本作のUSJは敷地内ではなく雄英から少し離れた場所にあるってことで脳内補完していただければ幸いです。

ごめんなさいUSJ警察さん・・・
許して・・・
ゆるし・・・

許せオラァ!!!


第4話

 

 

「戦いはまだ終わってねぇ。雄英体育祭が迫ってる!」

 

「「「「クソ学校っぽいの来たぁぁぁぁ!!!」」」」

 

ヴィラン軍団の襲撃から2日後。

全身包帯に包まれた相澤から突如告げられた体育祭開催宣言。

 

雄英体育祭。

 

日本のビッグイベントの一つであり、かつてのオリンピックに代わると言われる重大イベントである。

 

ヴィランの侵入があったばかりにも関わらず体育祭を実行することに疑問を持った生徒もいたが、あえて開催することによって雄英の危機管理体制が盤石であることを示す方針だと相澤は補足する。

 

全国のトップヒーローもこの雄英体育祭を観るため、娯楽目的だけでなくヒーローのスカウトとしても重要視されてるのだ。

 

ヒーローを志すなら絶対に外せないイベントであることを改めて理解したA組生徒達は各々が参加種目に向けての準備を始めていた。

 

緑谷もオールマイトから引き継いだワンフォーオールを使いこなすために、再び海浜公園でトレーニングを行っていた。

 

ズズズとタイヤと砂が擦れる音が鳴る。

以前オールマイトからのトレーニングとして行ったように、公園に廃棄されたタイヤを何個もかき集めロープで括り付け、自身の腰にロープを巻いて砂浜を走っていた。

 

(相澤先生を助けようとしたあの時・・・腕が折れずにワンフォーオールが発動できた。初めて人に使おうとしたからか無意識だけどパワーを制御することができたんだ)

 

タイヤ引きを終えると今度は冷蔵庫やタンスといった廃棄物を担ぎ砂浜を綺麗にしていく。

 

(無意識じゃなくて自分の意思でワンフォーオールを使いこなさなきゃいけない。次世代のオールマイトの象徴の卵として世の中に知らしめるために!!)

 

オールマイトから告げられた自身の活動限界が狭まっている事実。現在のマッスルフォームの維持時間は3時間程度であるが、少しずつ短くなっているのを実感していると。

 

オールマイトが完全に力を失うのも時間の問題。それまでに何としてでもワンフォーオールを使いこなせるようにしなければならない。

 

『君器じゃないもの』

 

かつてオールマイトに言われた言葉を思い出す。

 

ワンフォーオールを譲り受けることができる身体にはなったが、使いこなせるような身体にはなっていない。

 

だからこそ、今自分がやるべきことはワンフォーオールを使いこなせるような身体作りをすることなのだと。

 

砂浜の一区間を更地にした緑谷は砂浜に座り込み海を眺める。

 

「見ててくださいオールマイト。僕が必ずあなたの後を継いで見せます・・・」

 

一息ついた後砂浜に立ち上がった緑谷は右手にパワーを集中させる。

100%の力を込めると爆発してしまう。

だから、爆発しないギリギリのパワーを右手に込めるのだ。

 

イメージするのは電子レンジに入れられた卵。

「W数を下げる」「タイマーを短くする」

様々な方法はあれど、卵が爆発しないイメージを持つのだ。

 

「壊れない程度でワンフォーオールを発動・・・大体5%ってところか」

 

パワーを抑え0%へと持っていく。

これ以上出力すると体がもたない。

やはりまだ使いこなせる器ではないのだ。

分かってはいるがオールマイトの衰退が緑谷を焦らせる。

 

「くそっ・・・」

 

悔しがる緑谷は背後から声をかけられる。

 

「100%出力すると体がぶっ壊れちまう・・・不便な個性だねぇ・・・」

 

「あなたは・・・USJで助けてくれた人!!確か名前は・・・」

 

「クザンだ。よう、元気してるか??」

 

声の主はクザン。

USJでピンチを救ってくれた恩人である。

 

「緑谷出久。かつては無個性だったが、高校入学前に個性が発現。超パワーで入学試験の0Pロボットを唯一倒した。しかも一撃で」

 

緑谷の経歴を語りながら、緑谷に近づく。

 

「だが、あまりのパワーに身体が耐えられず負傷してしまう。試験では右腕、個性把握テストでは指を負傷。USJでも指を負傷しながらも水難エリアでヴィランを撃退と」

 

「何故・・・それを・・・」

 

「唯一負傷しなかったのは、脳無に攻撃をした時だけと・・・なんともまあ、不器用な奴だなお前・・・」

 

「うっ・・・」

 

何も言い返すことができず、顔を伏せる。

 

「確かにお前は自身の個性に耐えられるような体を持っていない。だから身体を鍛えるってのは間違ってはいないが・・・安直すぎねぇか?」

 

「でも・・・それしか方法はないんです!!じゃないと僕はオールマイトみたいにはなれないんです!!」

 

ただならない様相でクザンに叫ぶ。

急に個性を使えるようになった人間が、すぐに個性を使いこなすことなんてできない。

ましてやオールマイトから受け継いだ超パワーを使いこなすなんて夢のまた夢の話である。

 

だが、自身はオールマイトのようにならなければならない。

理想と現実が噛み合わず苦しむ緑谷を見たクザンは、ゆっくりと口を開いた。

 

「俺は『氷結人間』だ。自身を凍らせるだけでなく、外部にも冷気を放出させ凍らせることができる。こんな風にな」

 

クザンは手を開き冷気を放つ。

すると、見る見るうちに目の前に2m程の氷塊が出来上がった。

さらに、緑谷はUSJでの出来事を思い出す。

自身を氷に変えることで死柄木の攻撃を無効化していたことを。

 

「そして、俺はこの個性を常に全身で発動させている。意識をせずともな。異形型個性持ちもそうだ。意識して個性を発動させている訳じゃない。自然と発動させている」

 

「自然と・・・発動・・・」

 

思い浮かぶのは異形型の個性を持つクラスメイト達の姿。

彼らは個性を発動して技を繰り出しているのではなかった。

常に発動している状態から技を繰り出しているのだ。

 

「だがお前はどうだ?お前は体の一部分にしか発動していない。それも、自然とではなく意識をして。無駄が多すぎるんだよ」

 

「無駄が・・・」

 

「避けてみろ」

 

そう言い、空中に小さな氷塊を何個も作り出し緑谷に向けて放つ。

 

「ッ!!」

 

自身の足に5%のパワーを集中させギリギリで氷塊を避ける。だが、追尾するように氷塊は何度も緑谷に放たれる。

 

すると、突如足元から氷が現れ緑谷を空中に弾き飛ばす。衝撃で怯む緑谷に容赦なく氷塊が迫る。

 

(手にワンフォーオールを集中させて防御をッ!!)

 

再びギリギリのところでワンフォーオールを発動させ正面での防御に成功する。

しかし、氷塊は分散し四方八方から緑谷を目掛けて放たれる。

 

(防御しきれないッ!!)

 

「がぁッ!!!」

 

容赦なく緑谷に氷塊が撃ち込まれる。

重傷を負うような威力は無い。

だが、確実に緑谷の体力を削っていった。

 

氷塊が止まり、緑谷はドサリと砂浜に落ちる。

 

「ぐっ・・・げほっ・・・」

 

緑谷は体を押さえゆっくりと立ちあがる。

クザンは見極めるように緑谷を見つめながら再び語り始める。

 

「そして、仮に個性を発動しパンチを繰り出すとする。その時もお前は個性を発動する。右手にパワーを集中させる。パンチを繰り出す。この3ステップが必要になりラグが生じる。これが訓練なら問題ないが、命が関わる戦闘だとこのラグが命取りになる。だが、俺にはそのラグが無い」

 

クザンは近くあった廃棄物に拳を当てる。

すると、その廃棄物が氷結していき氷のオブジェクトと化した。

 

「俺だけじゃない。プロと呼ばれるヒーロー達はこれを当たり前のように行う。今のお前に必要なのは、個性を自然に使えるようにすることだ。仮にもプロを目指すならこれくらいはできるようにしろ」

 

だがとクザンは一拍置き、背中を向け緑谷に告げる。

 

「個性を過信しすぎる奴ほど早死にする。これだけは忘れるな」

 

そう言い残し、クザンは海浜公園から去っていった。

 

 

 

 

 

 

そんな後ろ姿を見ながら、息を整えた緑谷はクザンに言われたことを振り返り思考する。

 

(皆は息をするように自然に個性を扱っている。だが、僕にはまだ「使う」という意思があるんだ・・・)

 

右手にワンフォーオールを集中させる。

 

(だからこそラグが生じてクザンさんの攻撃を避けることができなかった)

 

スイッチを切り替えるようにワンフォーオールを左手へと集中させる。

 

(この動作が無駄なんだ・・・この動作を無くすにはどうしたら・・・)

 

脳裏に浮かんだのははUSJでのクザンの姿であった。

自身の体を凍らせ死柄木の攻撃を避けていた姿。

そして、バラバラだった氷が1点に集まり、体を形成させ移動をしていた姿を。

 

 

その時のクザンの姿は氷で出来ていた

 

 

青白い氷で

 

 

()()()

 

 

「・・・ッ!!そうかッ!!」

 

体全体に力を込める。

 

「スイッチで切り替えるのが無駄なら、初めからスイッチを全て付ければいいんだ・・・!!」

 

赤いイナズマのような模様が緑谷の全身に広がり始める。

 

「一部にだけ伝わっていた熱が・・・万遍なく伝わるイメージ・・・!!」

 

 

 

 

 

「全身・・・常時身体許容上限(5%)———!!!」

 

 

 

 

 

 

イナズマ模様が消え去り、緑の電気がバチバチと音を立て体から溢れ出す。

 

「これが・・・個性を扱うということなんだッ!!」

 

 

***

 

「あのオールマイトが認めた男・・・こりゃあ想像以上じゃないの・・・!!」

 

ヒントは与えた。

だが、それをすぐに理解し実行した。

しかも完璧に。

 

自身の予想を遥かに上回る素質と才能を目の当たりにしたクザンは、額に汗を浮かべながら笑みを浮かべほくそ笑む。

 

「こりゃあ、今後が楽しみだな・・・!!」

 

ワンフォーオールを全身に張り巡らせ、自身が作った氷を破壊する緑谷の姿を横目にクザンは雄英へと戻るのであった。

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