スターティングラインナップ
千葉ドルフィンズ
1番 ライト 入夏水帆
2番 サード
3番 セカンド
4番 レフト
5番 ショート
6番 指名打者 トマス・ムール
7番 ファースト
8番 キャッチャー
9番 センター
先発投手
北海道パイレーツ
1番 センター
2番 セカンド
3番 ライト
4番 レフト グリン・トッド
5番 ファースト
6番 サード
7番 指名打者
8番 キャッチャー
9番 セカンド
先発投手 ブレダン・マコーミック
北海道パイレーツには打撃に自信のある選手が揃っている。
1番には投手としても出場している二刀流の奥戸場から始まり、3番には去年20本塁打20盗塁を達成した宇坪を筆頭としたクリーンナップが控えている。
5番には生けるレジェンド、恵比寿。
現役では最多の本塁打を放っている。
6番の兜は好不調の波が激しいが、二度の本塁打王を獲得したことのある強打者だ。
綺麗なバッターボックスを踏みしめ、入夏が打席へと入る。
相手先発は今年から加入したマコーミックだ。
ゆったりと振りかぶって、初球が投じられる。
―――ストレート。
入夏がスイングしようとバットを走らせたところで、ボールは入夏の体めがけてぐにゃりと曲がった。
ボールと数センチの差を残し、バットは空を切る。
噂には聞いていたが、マコーミックのスライダーはすごい威力だ。
変化量が並の投手とは全然違うし、曲がり始めるのも遅いため急にボールが来たように見える。
2球目、今度はより内角を攻めるスライダーを入夏が身を引いて避けボール。
ファールが二球続き、カウントは1ボール2ストライク。
追い込まれた以上、多少のコースは振らないといけない。
勝負の5球目、今度こそストレートが来た。
しかし、真ん中からやや外角に逃げる癖のあるボールだったため芯を捉えることは叶わず、ボールはセカンドへの平凡なゴロに。
ツーシーム、メジャーではシンカーとも呼ぶボールだ。
『分かる分かる、動くボールっていうのは厄介だよねぇ』
「そんな他人事みたいに」
『だって他人事だもーん』
左打者の内角を突けるスライダーと、対照的に外角に逃げていく速球。
確かに難敵なわけだ。
◇
文句の付け所の無いピッチングで初回の攻撃を終え、今度は守備の時間に入る。
守備といえば西部ー志々海のバッテリーだ。
あの二人のルーティンは役に立つのだろうか。
そんな入夏の疑問は簡単に裏切られた。
1番の奥戸場に対してテンポよく追い込むと、最後は外角ギリギリを突くストレートでバットを出させず見逃し三振。
2番の芽張は初球を詰まらせサードゴロ。
ランナーなしの場面で3番の宇坪との勝負を迎えた。
宇坪は入夏とは真逆のようなタイプで、苦手なコースが少なく広角に強い打球を打てる打者だ。
初球、外角からストライクゾーンに入ってくるスライダーが外れ1ボール。
外れたというよりも審判のゾーンに入りきらなかったのだろう。
ストライクゾーンは具体的な基準がないため、細かなゾーンの見極めは主審の判断にゆだねられる。
2球目、今度は低めから外角に逃げていくシュート。
先ほどの主審に対する抗議なのか、ほとんどゾーンは同じ。
しかしこれも主審の手は上がらずボールの判定。
3球目はストライクゾーンに投げ込むも、4球目はまた外角を外れてボール。
この時点で、既に違和感があった。
バッテリーを組む二人は、打者よりも審判と勝負しているような感じだ。
結局宇坪はインローのボールを打ち損じてライトフライに倒れたが、もし見逃せば四球という事も十分にあり得たコースだった。
「志々海、最後の打席は悪いクセが出てたぞ。お前らまた審判のゾーンのギリギリを突いてただろ」
ベンチに戻って早々、バッテリーコーチが志々海に対して小言を吐く。
「すいません、でも撒き餌にはなったんじゃないですかね。今日のストライクゾーンの確認も出来ましたし、結果的には無安打じゃないですか」
「いいか、捕手は投手にとって命綱だ。お前がしっかりとリードしてやらないと。特に初回なんかの大事な場面で冒険する必要はない」
「お言葉ですが、初回だからこそ探りを入れる必要があると思います。肝心なところでストライクを取ってもらえなかったら困るのはこっちじゃないですか? それに無理を強いているわけではないですよ。ですよね西部さん」
志々海も譲らず、西部に同意を求める。
西部がこくりとうなずいた。
際どいコースを積極的に突いていきたいバッテリーと、その場の成績を重視したいバッテリーコーチにはかなり深い溝があるようだ。
2回になっても二人の配球は変わらなかった。
いや、それ以上に精度を増していたようにすら思える。
初回で大まかなストライクゾーンを察したのか、コースを突いた投球が徐々にストライクと判定されるようになってきた。
西部の制球力も素晴らしいものがあるが、捕る側の志々海も高い捕球技術を持っている。
何しろ、構えたところからほとんどミットが動かない。
メジャーでは「フレーミング」と呼ばれるこの技術は、上手く使えば多少ストライクゾーンから外れても主審にストライクだと思わせる事ができる。
主張する事も目立つ事もなく、ただ持ち前の技術で投手を引き立てる。
まさに縁の下の力持ち。
何故志々海が打てずとも多くの投手から信頼を得る正捕手というポジションを確立しているのか、入夏には何となく分かる気がした。
◇
試合は投手戦のまま中盤へと入る。
入夏はまたもマコーミックのスライダーにやられ空振り三振。
穂立がライト前へのヒットで出塁するも、その後が続かず4回の攻撃を終えた。
その裏、西部は奥戸場からフェンス直撃の一打を浴びノーアウトでランナーを2塁に背負う。
初めての得点圏、俊足の奥戸場はヒット一本で帰ってくるだけの実力を持っている。
2番の芽張はバントの構えだ。
初球、バントを警戒して高めのストレート。
対する芽張はバットを引いて見逃し1ボール。
バント警戒で前進してきていた槍塚がホームベース近くにまで寄っていた。
二球目、芽張は再び前進してきた一塁側ではなく三塁際にバントを転がす。
絶妙に勢いが殺されたボールをすぐに掴んで志々海がサード方向へと目を向ける。
一瞬ちらりとサードの様子を見た後、一塁方向へと送球した。
入夏のいる外野から推測すると、確実にアウトを取れる一塁を選択したのだろう。
バントが絶妙だっただけにサードの判断が遅れていた。
たとえ送球が速かったとしても、すぐにタッチできるわけではない。
わずかな差でセーフになる可能性が十分にあった。
ここで迎えるのは宇坪だ。
先ほどは走者なしの状況で抑える事ができたが、今回はランナーが三塁にいる。
外野フライでも1点が入る局面である。
なまじ長打力があるだけに外野が前進するわけにもいかず、入夏は定位置でボールが来るのを待っていた。
先ほどとは打って変わって、配球が内角中心のものへと変わる。
宇坪は1球ライト方向へ特大のファールを打ったが、それ以外は反応するだけに留まっている。
フルカウントとなった6球目、志々海は外角に構えた。
外角いっぱいの直球。
合わせただけに見えた宇坪の打球はレフト方向へと伸び、レフト線のライン際へと落ちた。
判定はフェア。
阿晒が二塁へと送球する間に三塁ランナー奥戸場は悠々と生還。
宇坪の力と技術がバッテリーの配球を破った形となった。
続くトッドには四球を与え、なおも1アウト一二塁のピンチを背負う。
5番の恵比寿が打った打球は低くバウンドして一二塁間の深い所へ。
セカンドの鳥居が滑り込んでキャッチするも、二塁をちらりと見ただけで一塁へ送球。
ダブルプレーは取れず、6番の兜にはセンター前へのタイムリーヒットを浴び西部はこの回3失点を喫する。
たまらずドルフィンズの投手コーチがベンチから飛び出した。
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