実力者になりたくて   作:マクスウェル

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プロローグ

 悪魔憑き。

 悪魔に取り憑かれ、肉も皮膚も醜く爛れる症状。

 教会に引き取られ、二度と表舞台に現れることはない。まあ、民衆の指示を集めるパフォーマンスの一環で、さっさと処分しているのだろう。

 

 昨日、姉がその奇病にかかり、俺は処分するとか言い出したクソ親父を殴り飛ばし姉を連れ逃げ出した。

 まあ、だからといって何か手掛かりがある訳でもない。無用に姉を苦しめるだけかもしれないが。

 

「あ、ぁ………」

「……………大丈夫だよ姉さん、飯取りに行くだけだから」

 

 父は猟師。元跡継ぎ。だから、森での生き方は心得ている。

 肉は取れるし喰える樹の実も解る。まだ乳歯だからいいけど、虫歯とかになると積むからしっかり炭で歯も磨いている。

 あれ、俺ってサバイバル適正高い? 前世の知識の影響かね?

 

 

 

 

 そう、前世。俺には前世の記憶がある。

 クラスに友達が3人ぐらい。金持ちではないが、貧乏でもない至って普通の家庭に生まれた。

 ちょっと変わった事があるといえばクラスメイトの………なんと言ったか? とにかくクラスメイトに社長令嬢とブツブツニヤニヤしてるなんかキモいの。

 

 それ以外は、まあ普通。

 普通、だったんだがなぁ。何な変な化け物が現れて、食われて死んだ。

 そして気づいたら赤子として生きていた。

 

 田舎とか、過去とかではない。全く別の世界………だと思う。魔力とかあるらしいし。

 魔力………魔獣とか居るのだろうか? あの変な生き物もそう名付けられていた。

 もしもまた、あんな事があれば…………

 

「…………力がいるな」

 

 何処ぞの道場に入って魔力の使い方を学べればいいのだが、一文無しのガキを入門させる道場などあるわけがない。

 

 瞑想とか滝行でもしてみるか?

 

「…………ああ?」

 

 と、隠れ家の洞窟に戻ると黒装束の何者かが姉に触れていた。腐肉の塊のようになりうぞうぞと蠢くだけだった姉が苦しむように暴れている。

 

「何してんだてめぇ!!」

「!!」

 

 即座に振り返る黒装束が腕を振るう。カン、と軽い音がして持っていたナイフが斬られる。

 動物の骨を削っただけの簡単なナイフだから猪だろうが骨ごと真っ二つにするこの世界の剣士相手にはこうなるか。

 

「ふははは! 我が名はスタイリッシュ盗賊──!」

「知るか死ね」

 

 だが、だからこそ量産は容易。服の下に隠したナイフを投げつける。と、黒装束が消えた。

 

「っ!?」

 

 背後の僅かな空気の動きに気付きナイフで受ける。明らかに人間という生物を超えた動き。魔力による身体強化か…………!

 

 

 

 

「…………防がれた?」

 

 スタイリッシュ盗賊スレイヤーは困惑する。

 何時ものように盗賊スレイを楽しんでいたら偶然悪魔憑きを見つけ、今日も魔力操作の実験しよー、としていたら襲ってきた子供。

 

 毛皮で作った服。泥だらけの姿。スタイリッシュ盗賊スレイヤーの経験と頭脳が導き出した答えは、山賊!

 

 ただし今まであった盗賊山賊の中で、一番装備が貧弱。だというのに、スライムソードを防いだ?

 

(ぶつかった感覚はあった。だけど、その瞬間軌道がずれた…………そらされたか)

 

 そうなれば得物の硬さなど問題ではない。しかし、それを行えると言うことは途轍もない動体視力に反応速度。

 

 魔力自体は持っているが、使えているようには見えない。身体強化無しで………純粋な身体能力と、才能。

 

「いいね、君!!」

「!!」

 

 切り合う程に速度を上げていくが、向こうも対応していく。動きから無駄が消えていく。戦いの中で成長する、天才型!!

 

「だけど、魔力を使えるものと使えぬものでは天と地ほどの差がある」

「かっ…………!!」

 

 スライムソードを伸ばし胸を切り裂く。予想外の変化に体の反応が遅れ、避け残ったようだ。

 ここだ!

 

「フッ」

 

 連撃。ただし音は一つ。1秒以下の刹那に拳を4度叩きつけ、最後に腹を蹴る。肩を殴られ腕を動かせず、もろに入った。僕の価値だな。

 

「…………ん?」

 

 これは、魔力?

 

「こんの!」

 

 追い詰められ、魔力に目覚めたか! まあ魔力を持ってるならあり得なくはないよね。よくあるよくある。

 

「があ!!」

 

 だが、残念。身体能力に振り回されてせっかくの技術がおろそかになっている。これなら、さっきの方が厄介だった。

 

「力に飲まれたか、哀れな………」

「がは!」

 

 一閃。血を吹き出し倒れる少年山賊。なかなか強かった。あと少し成長していたら、きっと名を馳せたことだろう。それを倒す謎の実力者ムーヴも出来た。

 少し勿体無い気がする。

 

「お、あ………ああ!!」

 

 ん? 悪魔憑きの様子がなにかおかしいな。動けばただれた皮膚が擦れて色々痛いだろうに、あんなふうに暴れるなんて初めて見た。

 

「ねえ、さ………」

「………………」

 

 姉さん?

 姉さんかぁ………ひょっとしてこの子、山賊じゃなくて悪魔憑きの家族と一緒に山に引きこもった世捨て人?

 

「まあいきなり襲ってきたのは向こうだし、僕は悪くないな!」

 

 

 

 

 

 結局強さが足らなかった。

 だから、何も守れず、奪われた。目を覚ますと傷は癒えていた。あのスタイリッシュ盗賊の仕業か? ふざけた名前しやがって。

 殺してやる……姉さんはどこだ。

 彼奴が連れて行ったのか? ぶち殺す。

 

 殺してやるぞ、スタイリッシュ盗賊!!

 

 

 

 その日より一人の修羅が産まれた。

 数多の道場に現れては門下生を、師範をぶちのめし去っていく。

 盗賊が現れたと聞けば襲撃し、殺し尽くす。

 

 わかっているのは男だと言うこと。盗賊以外には死者を出さないということ。

 

 

 そして、表向きに知られていないのは、悪魔憑きを集めるディアボロス教団というこの世界の闇にすら牙を向いているということ。

 

「スタイリッシュ盗賊は、お前等の仲間か?」

「す、スタ………? し、知らない!」

「そうか」

 

 グシャリと頭を踏み潰し、捕まっていた悪魔憑きに触れる。皮膚も肉も腐り果てた悪魔憑きは、少しずつ本来の姿に戻っていく。

 

 だが、少年の気は晴れない。この力がもっと前から、姉がいる時にあれば、そう思わずにはいられない。

 

 

 

 

 

「王都ミドガルド学園、か………」

 

 ディアボロス教団のアジトを調べ手に入れた情報によるとどうにもその学園に教団の手が伸びているらしい。何か探しているのか? それとも、貴族が多く通うからか………。

 

 派閥争いがここを中心に行われている。どこの派閥かまでは解らないが、教団のトップの連中に手が届くかもしれない。

 

「…………行くか」

 

 

 

 

 

 

「あはぁ………」

 

 シャドウガーデン本拠地、アレクサンドリア。

 数百人に渡る構成員がたった一人に殺された。

 下手人はペルソナ。ナンバーズでありながら、唯一シャドウより名を与えられた仮面の女。

 

 彼女はシャドウが入学するという学園の新入生が記された書類を見て、ブルリと身を震わせる。

 

 シャドウの()()()()に傷付けられた最愛。シャドウを殺す為に、あえてここで力をつけるべく戦い続けてきたが、彼が生きていたなら復讐なんてどうでも良い。

 

 会いに行こう。シャドウガーデンの権力は、色々使用できる立場にある。シャドウは正真正銘の化け物だから、追手がこないよう証拠を残さない為に多少時間はかかるが………。

 

「待っててねえ、マー君」

 

 私の全て。私の最愛。貴方さえいれば他に何もいらない。

 彼に真っ先に戻った姿を見せたいからと被っていた画面を捨てる。少し残念だが、仮面を被った女剣士なんてわかりやすい情報を残す気はない。

 女は真っ赤に染まった床を、水溜りで遊ぶ子供のようにパシャパシャと音を立て跳ねた。




マリン
本作の主人公。資金集めのために前世の知識を利用した結果、ミツゴシ商会の本来の資金源を半分にしたり姉を助けられなかった代わりに人を助けてる間にシャドウガーデンのメンバーを減らしたりとバタフライ・エフェクトがすごい子。
天才型で一度見た型は速攻でマスターし、2度見れば最適化を行える。
魔力に増加訓練を行い過剰に魔力が生成され、肉体のリミッターもぶっ壊れて本来の戦い方を行うと肉体が壊れるので他人の魔力操作と動きを模倣している。
必殺技は【魔砲】。



お姉ちゃん
姉なるもの。ブラコン。弟くんは死んだと思っていたが生きていたのでシャドウガーデンの半数をぶっ殺して逃走。自分の剣筋とか知ってるかもだからね。
目立たないよう実力を隠していた七陰以上の強さを持つ真なる陰の実力者
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