共鳴りとは──魂の振動(大嘘)   作:美味しいラムネ

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 中編1話+超短編1話です

 中編の方は、小説版のストーリーです





夜明けのいばら道

 

 

 

 

 

 八十八橋の事件の後。その日は特に依頼もなく暇だった。

 悠仁は順平と映画を見に、恵は部屋で積んでいた本を読んでいる。

 

 ま、折角東京にいるんだし、適当に街をぶらぶらと歩くことにした。

 東京に来たばかりの頃は、その活気に圧倒されることもあった。それも数ヶ月も経てばすっかりと慣れてしまった。

 

 目に留まった店に顔を出しては、気に入ったものをカゴに入れる。

 

 「何で『大阪限定!』ってでっかく書いてあるもんが東京においてるのよ...」

 

 別に地方のアンテナショップという訳でもないのに、不思議だ。

 悠仁の好きそうな乾麺を買うついでに、カゴに入れる。恵にでも押し付けよっと。

 夏の暑さもすっかり引いた街中を歩く。

 

 「冬物はもう買ったし、インナー、ファンデもよし。繊維は明後日にでも送られてくるはずだし、...あ、紙注文しなきゃ」

 

 新作の香水を試しながら、これ好みじゃないわと思う。

 香水の香りは、相手の嗅覚を刺激する。共鳴りの効果を高めるから、時々使うこともあるわね。キッツイのは好みじゃないから、そこまで効果は実感できてないけども。

 

 特に用もなく街をフラフラと回る。

 この時の釘崎野薔薇を見た一般人は、こう思ったことだろう。「なんかこいつ歩くの早くね?」と。ピンヒールを履いているとは思えない足取りだ。

 

 「...あれ、五条悟(ゴジョセン)じゃない?」

 

 少し特殊な製法で作る紙を仕入れるために、秋葉原の方へ足を運んだ時のことだ。

 いた。五条悟が。能面のような顔でメイド喫茶らしき店へと侵入していた。あまりにもシュールね。

 

 じっ、と店の方を見つめる。

 入り口の看板には、これでもかとホイップクリームとカスタードクリームを乗せ、さらにはそのクリームさえも隠す勢いで苺の乗せられたパンケーキが。

 『三種のイチゴとラズベリーのふわふわパンケーキ〜カスタードクリームを添えて〜』...めちゃくちゃ甘い奴じゃない、アレ。五条悟やっぱ甘党よね。それにしたって限度があると思うけど。

 

 「そういえば、この前悠仁と恵が二人でメイド喫茶行ったって言ってたわね」

 

 しかも、同じ店には五条悟が居たと来た。

 自分の休日が潰れることになった事件を思い出す。

 

 メイド喫茶に入る五条悟。しかも壁越しにもわかる、この微動だにしない魂の気配。接客とかどうでもよくて、完全にパンケーキ食べに来てるわねこいつ。

 冷蔵庫の中に、白味噌に見える赤味噌を見つけてしまった時の感覚で、そっと店から目を逸らす。

 

 そっとしておこう。

 

 

 

 ♦︎

 

 

 イベントがある訳でもないのに道は人でごった返し、道路を車が走り抜ける音がする。無理な割り込みを仕掛ける車にクラクションが鳴らされ、タクシーを拾おうと、背広姿の人が手を挙げる。

 

 人は多いが、息苦しさはない。

 個人個人がそれぞれの人生を歩んでいる。故郷の村は、密度は薄いが息苦しかった。

 

 渋谷ヒカリエ方面へ向かって歩いていた釘崎は、正面に見覚えのある顔を発見する。

 

 「おっ、狗巻先輩じゃん」

 

 銀色のマッシュルームカット。口元を完全に隠したその顔は、間違いなく狗巻先輩のものだ。

 

 「しゃけ、しゃけしゃけ。おかか!」

 

 「Oh…Onigiri Boy!!」

 

 どうやら、道案内を外国人観光客に頼まれているようだけど...流石に無理があるわよね、アレ。私もまだ雰囲気でしか理解できてないし。

 

 「あー、ちょっといいかしら?」

 

 行きたい場所を聞き出し、代わりに説明する。地元じゃないけど、流石に数ヶ月住んだら覚えるわよ、道ぐらい。

 

 「災難だったわねー、狗巻先輩。じゃ、そういうことでー」

 

 狗巻先輩、頼りになるし尊敬もしているんだけど、いかんせん言語の壁が...知らない間に地雷踏んでいたら嫌だし....

 ヒラヒラと手を振り、別れようとする。狗巻に止められる。

 

 「高菜高菜、おかか」

 

 危険が危ない、みたいなことを言ってるわね。...依頼でも受けてるのかしら?なら、邪魔しちゃあ悪いわね。

 

 「なるべく危険そうな雰囲気のところには近寄らないようにして、さっさと帰るから大丈夫よ」

 

 そう言って、雑踏の中へ歩いて行き、気づけば狗巻先輩は見えなくなっていた。

 

 

 

 

 ♦︎

 

 「ちょちょっと、ちょっとすいません!」

 

 チラシ配りや、怪しげな勧誘をのらりくらりと躱しながら、道を歩いていた時のこと。向こうに某黄色いMが特徴のファストフード店を見つけたし、休憩でもしようと思った時のことだ。

 

 突然、スーツ姿の金髪の男に呼び止められる。引き締まった体からは、ある程度は鍛えているのだろうということが窺い知れる。

 

 「モデルの勧誘か何か?ならお断りよ」

 

 「いやいや、そうおっしゃらずに、私。こういうものでして」

 

 手渡された名刺を思わず受け取る。

 『Hプロダクション ファッションモデル事業部 鶴瓶加也』

 

 Hプロダクションといえば、言わずと知れた有名プロダクション。

 キュートだのキョートだの、力こそパワーだの何やら力説しているが、要はスカウト、ってことね。

 コテコテすぎて逆にマジなのかと思ってしまうわね。思わず信じちゃうというか。

 

 ──なんて、んな訳ねーだろアホか。

 

 魂が見える私に、精神操作系の能力が効くと思うなよばーか。...一瞬かかりかけたのは内緒だ。狗巻先輩につい先ほど会ってなければ、全く警戒せずホイホイついて行ってただろう。

 狗巻先輩レベルの呪言ならまだしも、呪詛師でセコセコ稼いでるような相手の呪言擬きは、身構えていれば流石に対処できる。

 狗巻先輩?爆ぜろって言ったら爆ぜるって何よ。潰れろって言ったら潰れるって何よ。言葉が物理的現象を伴ってるじゃない。アレは例外よ例外。

 

 薄らと魂にへばりつくように、男の言霊が漂っているのを感じる。

 頬の内側の肉を噛み切り、気付をする。花御の精神汚染ですら痛みで軽減できたんだ。痛みはこの系統の術式への特効薬みたいなものだ。

 

 「...とどのつまり、あなたなら次世代のジェニファー・ローレンスに...」

 

 「分かったわ。そこまでいうなら、話ぐらい聞いてあげてもいいけど?」

 

 ここでこいつを捕まえるのは拙いわね。周辺に一般人が多すぎる。それに、単独犯じゃなかった時、相方に逃げられる可能性があるのも厄介だ。

 一度、懐に潜り込むか。

 私の残穢を辿れば、狗巻先輩なら気づいてくれるかしら?

 

 世辞とわかっている世辞ほど、気分の悪くなるものはないわね、なんて考えながら男へとついていく。

 

 そのまま路地裏へと入って行き、何度か曲がると、廃ビル同然の建物へとたどり着く。

 その中の一室へと導かれると、椅子に座らされ、そのまま後ろ手で縛られる。

 壁、床、天井と所狭しと呪符が張られている様は、いっそ滑稽とも言える。あまりにも悪趣味だ。

 

 私の後ろに男が一人。他には誰もいない?

 

 金槌や釘、人形が奪われるのを感じる。

 

 「...流石にここが芸能事務所とは思えないけど?」

 

 さも「今目覚めました」と言ったふうに口を開く。この二人が呪詛師で間違いなさそうだ。

 

 「ねぇ、君なんでそんなに自我が強いの?実家から出奔した家出少女だと思ってたけど違った?まぁいいけどさ」

 

 向こうからすれば、催眠にかけていたはずの相手が目覚めたというのに、まるで焦りがない。

 

 「まぁま、一旦落ち着いて。何も危害を加えようって訳じゃないんだ。ね。『信じて』」

 

 一瞬頭がくらっとする。成る程──

 

 「そういうことね!」

 

 服を突き破り、生地と生地の間に隠されていた式神が飛び出す。

 それらは二人が呆気に取られている間に縄を切り裂く。

 

 「暗器は隠してるから暗器なんだよ、ぱっと見で安心したのがダメだったなぁ!」

 

 「ちっ...!東北勢力を取り込むための、上層部のテコ入れだと思っていたが、違ったか!おい、小泉!」

 

 小泉と呼ばれた男が割り込み、全力で振り抜いた椅子を両手で受け止める。

 椅子の方が砕け散り、木片が舞う。

 

 「硬いわね、あんた」

 

 一応、鉄製の鎧程度の硬さはあるわね。その性能で、なんでこんなせこい商売してるんだか。

 三級呪霊の式神ぐらいなら破壊できる力はあるみたい。

 

 「ダメだよ君。小泉はフィジカルだけは一級だから。筋肉と皮膚硬化の術式。盾としちゃ一級品だ」

 

 フィジカルが一級?は、うちの悠仁と比べれば月とスッポンよ。

 術式の開示。それも、明らかに通常の開示よりも能力の向上幅が大きい。

 大ぶりのパンチを躱し、本棚を掴み、そのままぶん投げる。

 バインダーに挟まった資料やら、心理学系の本がどさどさと降り注ぐ。

 

 「う、おぉい!『そんなことしたら危ないから、やめた方がいいよ』」

 

 一瞬、判断が鈍り、振り切れなかった。

 投擲は充分な速度を稼ぐことができずに、鶴瓶を抱き抱えた小泉には当たらない。

 金属の凹む、大きな音が密室に響き渡る。

 

 そういうことか、やっぱり!

 バラバラになった机の脚を掴み取り、その尖った先を向けて、男目掛けて投擲。

 

 「『そんな鋭いものを向けるなんて、いけないことだよ』」

 

 言葉が紡がれるよりも前に放たれた脚は、男の太ももに突き刺さる。

 

 「『簪』」

 

 男が苦悶の声を漏らす。片膝を突き、額から玉のような汗を流す。

 鶴瓶の顔に焦りが生まれる。

 

 「ちっ!見誤ったか!...『俺の術式は”呪言“なんだよね。でも、狗巻家のそれと違って、万能性はない。この部屋に貼った呪符と渡した名刺。この増幅装置がなきゃ雑魚もいいところ。効果も貧弱。ただ俺の言葉を“信じてしまう”だけ』さ」

 

 「成る程、それで術式の開示の効果が高かったって、わけね!」

 

 小泉の顎を全力で蹴り飛ばす。

 そのまま、簪を経由しない斬撃で、服の上から全身を薄く切り刻む。

 

 「『そ、そいつを傷つけると面倒なことになる』ぞ!」

 

 「知らねえよ!」

 

 小泉の金的を蹴り上げ、私を縛っていたロープを鞭のように振るい、左腕に叩きつける。ぴしゃん、という音が鳴る。

 

 苦し紛れに放たれた拳を受け止める。確かに重い。受け止めた掌がビリビリと痺れる。でも、大したことはない!

 

 「...そうだ!『お前は今息ができない』!『お前の体は燃えている』!」

 

 息苦しさを感じる。全身が炎に巻かれたように熱い。成る程、考えたわね。

 でも、そんな偽りの感覚で止まる私じゃない。

 倒れた小泉の首を締め上げ、そのまま意識を落とす。

 

 「さーて、あとはあんた一人よ」

 

 「ひっ!『こっちに来てはいけない』『私に触れてはいけない』!」

 

 存外、頭は回るようだ。『こっちに来るな』のような命令形では、『信じさせる』効力は発揮しないだろう。

 『〜してはいけない』であればそのルールを信じ込ませることができる、と言ったところかしらね?

 

 実際、鶴瓶の呪言には強制力がない。あくまでも信じさせるもの。それ故に、ある程度の意味のある言葉でなくてはいけない。

 

 でもまぁ、

 

 「んなもんで止まる私じゃないんだよ!」

 

 「ひっ!く、来るなぁ!」

 

 懐から鶴瓶が拳銃を取り出す。映画でよく見る種類だからわかる。多分ナンブって奴ね。

 これでほぼ確定した。こいつ、もう既に何人か殺してる。  

 

 銃口が突きつけられる。まぁ、自分から死のうとしない限り、そんな豆鉄砲が呪術師に効くとはこいつも思ってねえだろ!

 

 ぱぁん、とタイヤの破裂したような音が窓ガラスを揺らす。

 

 『止 ま れ』

 

 同時に、聞き覚えのある呪いの言の葉が紡がれる。

 空中で静止した弾丸。

 

 「狗巻先輩!さっすがぁ!」

 

 成る程。狗巻先輩が受けていた依頼、その相手がこいつらか。

 

 「さーて、呪詛師の猿。懺悔の用意は出来ているか!」

 

 男に渡された名刺を男の腹に叩きつけ、名刺を貫くようにしてヒールで踏み抜く。

 

 「言っとくが、お前の体も十分人型だからな」

 

 「ま、まっ...許し...!」

 

 きっとこの男も、唯の二級術師の学生程度であれば狩れる実力はあったのだろう。まぁ、相手が悪すぎたわね。

 

 「『共鳴り』」

 

 「ミ°ッーーーーー!」

 

 部屋中の呪符が、9割近く一斉に燃え上がり、鶴瓶が奇妙な絶叫を上げながら、気を失う。

 

 

 「高菜...」

 

 「わかってるわよ、狗巻先輩。殺しはしなかったわ」

 

 それを分かっているから、無理に止めもしなかったのだろう。

 

 「狗巻先輩...優しいわね、本当」

 

 どうせ死刑になる相手だ。それでも後輩に人を殺させたくないとか、そんなところだろう。もう散々殺してきてるんだけどね。

 悠仁といい狗巻先輩といい。なんでこんな呪い呪われの世界に入ってこなきゃいけなかったんだか。

 

 「にっ、しても。こんな沢山呪符を用意するとか、どんだけ人を食い物にしてきたのか」

 

 残った数枚を引っぺがしながら呟く。

 

 「ま、あとは大人達が対応するでしょ。そのあとどうなるかは知らないけど...聞こえちゃいないか」

 

 

 

 

 

 ♦︎

 

 

 翌朝のこと。

 

 「高菜高菜、明太子!」

 

 「ふ、狗巻先輩。それ最っ高にかわいいじゃない!」

 

 何やら話し込んでいる釘崎と狗巻先輩を虎杖は発見する。

 

 「お、釘崎。朝っぱらから何してんだ?」

 

 「五条悟驚かせ計画」

 

 伊地知さんのところに用があった虎杖は、頑張れよー、と声をかけて二人のいた場所を去る。

 背後から、二人分の「すじこぉ!」と、いう声が聞こえる。多分返り討ちにあったんだろうな、なんて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 短編③ クラゲとクソ映画 

 

 

 

 


 

 

 「お、順平こっちこっち!」

 

 悠仁が、待ち合わせ場所に歩いてくる順平を見つけて、手を振る。

 一応観察期間中ということもあり、二級以上の術師の付き添いなしでの長時間の外出は禁じられているが、私が二級術師なので問題はないわね。

 

 「あ、虎杖君、釘崎さん!」

 

 順平が手を振りながら駆け寄ってくる。今日は、ネットで噂の伝説のクソ映画を三人で見に行く約束をしている。

 手抜き映画でもない、観客を舐めているタイプでも、予算不足でもない。精一杯頑張った上でのクソ。やる気は感じられるがクソ。いっそのこと哀れだと言われるほどにクソ。そんな噂の映画を見に行くのだ。

 

 「順平、最近調子どう?やっぱ呪術師って色々大変じゃない?最近どう?」

 

 「まぁ、何というか、もう慣れちゃったかな。...伏黒君のアドバイスの通り、色々なクラゲを調べて、式神に生かせないか頑張ってみてる」

 

 「へぇ、いいじゃん。知ってるか順平?世界最小のクラゲは幅一ミリとかなんだってよ?」

 

 悠仁が、こんなにちっさいんだぞ、と指で強調する。

 

 「流石にまだそこまで細かいのは作れないかな...」

 

 映画館まで歩きながら、呪術トークに花を咲かせる。

 

 「拡大解釈でキクラゲも作れないかしら?」

 

 「釘崎、キクラゲはクラゲじゃねえよ...」

 

 伝説のクソ映画とまで言われているのに、そこそこ大きな映画館で上映されているというのだから驚きだ。

 エスカレーターを登り、最上階にレストラン街と併設された映画館へ入る。

 

 「せっかくだしあの映画のパンフ買いません?」

 

 「あ、私チュロス買いたいチュロスー!!」

 

 「いいな、パンフ!ポップコーン、でけえやつだとお得だし、買ってシェアしねぇ?...おいマジかよ、クソ映画って散々言われてるのに、堂々とグッズ売ってるぞ」

 

 「何かしらねこの冒涜的な人形は...そして強気な価格設定...」

 

 

 

 ♦︎

 

 

 

 映画の上映が始まる。

 開始5分で順平は察した。あ、これダメなタイプのクソだ。クソじゃないところを探す方が難しい。

 

 『oh、ジェニファー。つまりクリストファーの爺さんは実は浮遊要塞アトランティスの一族の末裔だったってことなのかい!?』

 

 『ええ、だから古代のサメの怒りに触れ、背中から筍が生えて死んでしまったの。キノコ頭のゾンビをネス湖に捨ててしまったから...』

 

 会話の内容がまるで頭に入ってこない。両脇の二人がひたすら無心でポップコーンを貪っているのを見つめる方が有意義だと言える。

 

 『母さん!くっそ、まさか母さんが暗黒卿の復活を阻止するためにひとつなぎの指輪を抱いて溶鉱炉に飛び込むだなんて...』

 

 『スミス!くそう、お前の頭パルプンテかよ!』

 

 正直こんなクソ映画で思い出すのは癪だが、主人公の母が死んだシーンで、思わず自分の母のことを思いだしてしまう。

 

 どう言い訳しようと、自分があの学校の全ての生徒に危害を加えたのは事実だ。

 真人に騙されていたとか、母親が殺されて判断力が鈍っていたとか、それで自分に言い訳したくない。

 

 いじめていた三人は、真人が殺した。

 もう一人は、僕が毒に浸した。

 

 ──順平って、君が馬鹿にしている人間の、その次くらいには馬鹿だから

 

 確かに、そうだったのだろう。

 言い訳したかった。自分のすることに。言い訳したかった。自分が、母さんが人の心に呪われたという事実に。自分が、誰かを殺そうとしたこと──それで、あの人の魂を穢そうとした事実に。

 人に心なんてない、そう思い込もうとして。 

 

 いいように利用されて。

 

 アイツらは嫌い。それは事実。頼むから死んでくれとは思っていたし、死んだのをみてせいせいしたのも本当。

 今でもたまに、額の傷は痛む。それは肉体的なものなのか、精神的なものなのか。

 

 『地獄から這い戻ってきたぜ...お前を殺すために『アハタケタフラ』お前不意打ちかよ!』

 

 あまりにもあんまりな展開についに頭を抱え始めた虎杖を見て、思わず笑みが溢れる。

 

 こうやって、考えることも。あの時助けて貰えなければ出来なかったんだよなぁ、と考える。

 

 ──お前はただ、自分が正しいって思いたいだけだろ

 

 そう。だからもう自分には言い訳しない。

 自分がしたこと。その責任は背負う。自分の為すことに言い訳はしない。

 

 そして、いつかは。あの三人の背中を。そこに追いつきたい。

 

 

 120分の上映時間が終わると、二人ともぐったりとダウンしていた。

 暗いシアターから出て、外の眩しさで一瞬視界が滲む。

 

 「いやぁ、近年稀に見るクソ具合だったわね」

 

 「ミミズ人間がいかにマシだったか思い知らされたわ」

 

 「確かにあれは酷かったね...」

 

 映画の感想を口々に言いながら笑い合う。

 

 「このままの勢いでさ、ミミズ人間の制作会社が作った新作、人間ミミズでもみねえか!?」

 

 「うわっ聞いただけでわかる地雷臭」

 

 「それ昨日公開されたやつじゃん...」

 

 クソ映画みたいな呪い呪われの世界だけど、存外捨てたものでもないな、なんて。

 

 「そういえば、この前竜巻とサメが混ざったみたいな呪霊がいたなぁ...」

 

 「「何それ映画じゃん!!」」

 

 





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渋谷事変のタイムテーブルがあああああ!!!!!少し更新が滞るかもしれません。大変申し訳ございません。


次回:漏瑚vs五条(2回目)

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