ちょっとダイジェスト風味
五条悟、領域解除後。
360秒で、改造人間1000体を鏖殺。
直後、五条悟はこの場で最も危険度の高い相手──漏瑚に狙いを定め、その腹に拳を放つ。
時同じくして、漏瑚、覚醒。
情報の濁流を焼き尽くした漏瑚は、迫り来る死を真正面から睨みつける。
狙うは、
そこで、漏瑚は気づいてしまう。目の前の最強は、自分の事など見ていない、と。
如何に儂を早く処理し、他の敵を処理するかしか考えていない。既に次の敵──真人のことを考えていると。
巫山戯るな、巫山戯るなよ五条悟。
「こっちを見ろ!!五条悟!」
本日2度目の黒閃が決まる。
直後、五条悟の拳が腹にあたり、漏瑚はそのまま駅のホームの壁へと叩きつけられた。
五条悟の顔が僅かな驚愕で染まる。
ダメージはない。しかし、ほんの数ミリではあるが、五条悟の体が後ろへと後退していた。
その数ミリの差が、漏瑚の生死を分けた。
領域展開、改造人間の最高速での殲滅に呪霊の呼び出した改造式神の対処。息が切れるほどの速度での殲滅。そして此処に来て、一撃で仕留めるつもりの相手の仕留めぞこない。
コンマ1秒にも満たない混乱。
その直後に、更なる──おそらく今後の人生で2度と経験することの無いような──混乱が訪れる。
「獄門疆 開門」
あぁ、その声は。
開かれた立方体は、内部からグロテスクな肉の鎖を展開し、五条悟の体を縛り付ける。
「や、久しいね、悟」
五条袈裟を着た、特徴的な髪型をしたその男。
忘れるはずもない。1秒、一瞬たりとも忘れたことなんてなかったさ。
最近、考えることが多くなった、親友の声。
直後、五条悟の脳内に溢れ出す、3年間の、青い春。
『悟、弱いものいじめは良くないよ?』
『呪術は、非術師を守るためにある』
『それ正論?俺、正論嫌いなんだよね』
『まぁ大丈夫でしょ、俺たち最強だし』
俺だけが強くても意味はなかった。
『殺したければ殺せ、それには意味がある』
出来やしなかった。
『最期ぐらい呪いの言葉を吐けよ』
刹那に満たない回想。
しかし、それでも脳内では数年分の記憶がフラッシュバックしていた。
獄門疆、その封印条件。
対象の脳内時間で1分間が経過する。
この眼に映る情報は、目の前の存在が偽物であることを否定している。
でも、俺の魂がそれを否定する。
「お前は誰だ!!」
「キッショ...なんでわかるんだよ」
千年を超える執念の化け物。その悪意が遂に、目的に王手をかけた。
ぷちん、ぷちんと頭の縫い目が切れる。開かれた頭蓋の内部に鎮座するのは、彼のものではない脳。
あぁ、そういう事か。
「おい、いつまでいい様にされてんだ。傑」
夏油傑の体が、その喉を締め付ける。
突き立てた爪がめり込み、血が流れる。
「あはは、凄いな、こんなの初めてだよ!」
イレギュラーに、化け物は心底愉快そうに笑う。
その後、無理やり肉体を従わせた化け物は言い放つ。
「君、強すぎるの。私の計画に邪魔なんだよね。じゃ、百年...いや、千年もしたら解放してあげるよ」
おやすみ、五条悟。あたらしい世界でまた会おう。
視界が閉じる。
箱の中の世界へ仕舞われる。
「色々まずったなぁ...まぁ、でも」
自分の教え子たちの姿を思い浮かべる。
♦︎
21:03 東京メトロ 明治神宮前駅 B2Fにて
一級術師冥冥と二手に別れた直後。虎杖悠仁、バッタの呪霊『蝗GUY』と交戦。
「賢い奴だけが生き残オブぎゃあああああああああ!」
人を喰らう呪霊。その姿を見た直後。
虎杖悠仁は駆け出していた。
その虎杖悠仁の姿を見て、呪霊は「こいつ馬鹿だな」と嗤い──
まず腹に逕庭拳を放ち、動きの止まった顎目掛けてアッパー。
意識の飛んだ呪霊の脳天、心臓、股間部に流れるように3連撃。
そしてその勢いのまま放った回し蹴りが、呪霊の隠し札。先端の硬い伸縮する腹部を刈り取り、4本腕を2本腕へ変える。
「ま、ちょ、」
一瞬で9割は命を持っていかれた呪霊が叫び、
無慈悲に、その胸を黒い衝撃が貫いた。
『蝗GUY』、戦闘時間3秒。文字通りの秒殺であった。
その後、虎杖悠仁は冥冥と合流。五条悟封印の報をメカ丸から聞いた彼は、これを仲間へ知らせる為、渋谷へと駆ける。
♦︎
21:22
補助監督新田との通話中に、補助監督伊地知が襲撃される。
禪院直毘人、禪院真希、釘崎野薔薇からなる班は、これを察知。
携帯が使えない今、補助監督による連絡網を破壊されるのは不味いと判断。
早急な対処が必要とし、また応急処置も必要になる可能性が高いと判断。簡易的ではあるが反転術式による他者治癒が可能かつ、状況対応能力の高い釘崎野薔薇が新田と共に、伊地知の救助へと派遣された。
「いいじゃんいいじゃん、男ばっかで飽き飽きしてたの!スーツもいいけど、制服もいいんじゃない?」
「てめえか、伊地知さんをやったのは」
「あ、お仲間だった?そりゃそうか。いいよね、仲間の敵討ちだー!って奴!」
投擲された、持ち柄が手となった悪趣味な刀を金槌で弾き飛ばし、一瞬で距離を詰める。
振るわれた拳は、捻るようにして呪詛師の腹を抉ると、近くの建物の窓ガラスを突き破って、そのまま内部まで吹き飛ばす。
呪詛師『重面春太』、呪術師釘崎野薔薇と邂逅。
そしてすぐに察する。「あ、喧嘩売る相手間違えた」と。
「ひっ」
偶々、店内のソファーがクッションとなり重傷は免れる。
すぐさま起き上がった重面は、這々の体で逃げ出そうとする。
「んー?どこに逃げるつもりなのかなー?」
直後、偶々目の前にあった配線に転んだおかげで、背後から飛来する釘の雨を避けることができた。
直後、釘の突き刺さった壁が、バターのようにバラバラに切り裂かれる。
追いついてきた釘崎に重面は髪の毛を掴まれると、そのまま壁に貼り付けられ、昆虫標本のように壁に磔にされる。
「鬼ごっこは終わりかしらね?」
ひっ、と押し殺した悲鳴が漏れる。
──しめたっ!
釘崎野薔薇の背後。そこへ向かっているのは自分の刀。
それが切先を背中へ向け、勢いよく飛来する。
殺った、背中を貫く刃を幻視した。
「なんで...なんで切れてねえんだよ!!」
服すら貫けなかった刀が、釘崎の手に握られる。
ガタガタと揺れて、刀の方が抵抗しているが離れられない。
「私に従え」
そう一喝すると、刀が全く動かなくなる。
今まで自分が握ってきた刀の切先が、自分の手首に触れる。
「実はさ、私反転術式をね、他人にも使えるの」
手首に、つーっと赤い線が刻まれる。
「さぁ、言え。仲間の数と配置は?」
どくどくと、自分の命が流れ出るのを感じる。
「あ、あ、あぁ」
重面は、最後に小さな悲鳴を上げると、そのまま股間を濡らし、意識を失った。
意識を失ったおかげで、少なくともこの瞬間の絶命は免れた。
「え、マジ?ねぇマジ?マジこいつ?えぇ...」
所在なさげに、刀の切先をプラプラとさせる。
♦︎
伏黒恵。虎杖悠仁からの、五条悟封印の報告を聞き、共に術師を通さない帳の破壊へ向かう。
そして、地上41階で帳の起点を守る呪詛師をワイヤーで地面へ叩き落とし、戦闘へ突入する。
「なんだこいつ無敵か!伏黒!」
「『鵺』!」
鵺の突進を受けても、玉犬の爪を受けても。
虎杖の拳と貫牛の直撃を同時に喰らってもノーダメージ。
「まさか...ショック吸収の個性!?」
「なぁ虎杖。お前ひょっとしてヒロアカ読んだか?」
「うん」
男の拳を受け止め、回避しながら軽口を叩き合う。
おかしい。仮に相手の術式が無敵化なら、もっと派手に攻撃してきてもいいはずだ。何より、そんな強術式持ちなら、なぜ今日まで表に出てこなかった?
強者故に五条悟を恐れた?五条悟に勝ち目がない術式...いや、領域内なら無敵の術式も意味はないか。それを恐れた?
領域を使うか?とも考えたが、まだこの札を切るのは早い。長期戦が予想されるこのタイミングでの呪力の浪費は避けたい。
「『脱兎』『不知井底』虎杖!」
脱兎で逃げ場を塞ぎ、不知井底の舌と虎杖の拳による挟撃。
目の前の男は、虎杖の拳を喰らいながら、なぜか不知井底の舌を避けた。
もしかして、威力の反転?なら上限や下限はどうなる?
「試してみるか...」
つい最近調伏した、アレを除けば最後の式神。
それといくつかの式神を組み合わせる。
「『鵺』+『虎葬』+『円鹿』+『大蛇』
まだ見ぬとある極点とは対象的に、女性形の式神が現れる。
『嵌合獣・顎吐』『嚥下獣・灰怒羅』『噛砕獣・大河馬』
噛み合わせ、噛み砕き、飲み込む。
三体の、影を組み合わせた式神が現れる。
そして、三種の攻撃方法、特に、威力ではなく拘束に特化した灰怒羅。それは奇しくも、『あべこべ』の突破条件を満たしていた。
呪詛師は気づく。
目の前のこの、黒髪の男。
弱い攻撃、強い攻撃。中くらいの攻撃。
空から、地面から。水に雷。変幻自在の攻撃方法。
追いつかない、対処が。
追いつかない、判断が。
だが、この男だけを注意していればいいという訳ではない!
仮に、対処を誤って影の式神の攻撃を喰らっても、即死はしない。
しかし、あの、妙な打撃を使う男はダメだ。
影の獣に紛れ、致死の拳が振るわれる。
「この程度で...この程度で調子に乗るなよガキども!」
影が、足に絡みついた。
衝撃が「ゼロ」では反転させようがなかった。
その場に絡みとられた男の顔面目掛けて、脱兎が何体も群がる。
「種が分かればなんてことなかった。お前の術式『あべこべ』だな」
その言葉を最後に、呪詛師の意識は暗転した。
♦︎
期待してるよ、皆。
箱の内側の異空間で、腕を組みながら五条悟は上を眺める。
そして、おどろおどろしい様相の空を見つめる。
悠仁、恵、そして釘崎。
名前を頭の中で読み上げながら、気づく。
あぁ、そうか。僕、あいつの事が、なんとなく苦手だったんだなぁ。
あの三人組が、何処となく彼の姿が透けて見えることのある彼女が。
そうはならないと、同じ結末を辿らないと理解できることが、まるで否定されていると思ったのか。
重ねてしまうことで、穢れてしまうと思ったのか。
心のつっかえが、一つとれた気がした。
「まぁ、なんにせよ。...期待しているよ」
きっと、この程度なんとかしてみせるでしょ?なんてったって
「越えるんでしょ、最強」
感想、評価、誤字報告などありがとうございます!励みになります!
この顎吐は、まぁ劣化版。その代わり継承で作った合成獣じゃなくて、不知井底と同じ仕組みで作った合成獣だから何度でも蘇る。
あとはまこーらだけ...やっぱまこーらあんたおかしいよ