術式はかなり盛った。それでもなお勢い余って殺しそうになる。
憑依野薔薇に原作知識はありません
死神は突然やってくる。
呪術師なんてやってるんだ、いつか死ぬことは覚悟していた。つもりだった。
生存者の救出の為に少年院の内部に突入して直ぐに、異変に気付いた。
「おい、ここ二階建ての寮の中だよな。どうなってんだ!?」
階数が何倍にも増えた建物。空を覆い尽くすように張り巡らされた配管。此処が人の領域ではないことをまざまざと感じさせる異常空間。
「扉がなくなってる...呪力による生得領域の展開。それも大規模な」
「こんな大きなものは初めて見た...!!」
出入り口は消えた。いや、私たちが出入り口から離れた位置に飛ばされた?
伊地知さんの魂を見つければ辿って外に出られそうだけど...幾ら何でも距離が遠すぎるわね。何処か壁の薄い場所が見つかればいいんだけど。
「大丈夫だ。玉犬...コイツが出入り口の匂いを覚えているからな」
「イッヌ!最高に可愛いじゃない!ジャーキーよ、ありったけのジャーキーを持ってきなさい!」
流石『十種影法術』。
「やっぱ犬は人類最大の友ね!」
「あーよしよしわしゃわしゃわしゃ」
「緊張感!」
なんとなくだけど、私たちならなんとかなる、そんな根拠のない自信を抱いてしまっていた。
危機感の欠如。自分ならなんとかなるという夢想。特級というか埒外の存在の膝下で抱くには場違いな感覚だった。
♦︎♦︎♦︎
「自分が助けた人間が将来人を殺したらどうする」
「じゃあなんで俺は助けたんだよ!」
呪霊によって殺された受刑者の死体。それを発見した時からずれ始めた。
死体を持って行こうと主張した悠仁と、ただでさえ助ける気のない奴を死体になってまで救う気はないと主張する恵。
そういえば、あの二人が出会った時に、一悶着あったらしいわね。
両面宿儺の指を喰った少年。しかも、その少年は極善の心の持ち主だった。
コイツ、正義の味方になりたいとか言い出さないわよね?恒久的世界平和とか願い出さないわよね?
「これが平時なら、思う存分魂をぶつけ合いなさい!って言いたいところなんだけど...時と場合を考えなさ...っ!二人とも、跳べ!」
その言葉を発した瞬間に私は飛び退いていた。
地面に急にぽっかりと開いた穴。その端にいた恵と私は落ちることは無かったが、ちょうど中心にいた悠仁は、中にいた呪霊に足を引っ張られ、そのまま落下する。
「呪霊の...馬鹿な、玉犬は反応しなかっ」
壁を見る。そこには壁に叩きつけられ、首だけになった玉犬の死体。
そして、同時に私の眼も、圧倒的な禍々しい呪力の塊を捉える。
私たちが異変を察知した次の瞬間には、特級呪霊が真横に出現していた。
恵の体が、圧倒的プレッシャーにより硬直する。無理もない。今まで見てきたどんな呪霊とも格が違う。
今、動けるのは私だけだ。
無防備な恵目掛けて、呪霊の無慈悲な一撃が振るわれる。
「あ、ぐ、あぁ!!!」
恵の体を蹴り飛ばし、そのままクロスした腕を呪霊の攻撃に挟む。
破城槌のような重い一撃に、呪力で強化したはずの腕が軋み、そのまま吹き飛ばされる。
鉄筋コンクリートの壁に打ち付けられ、壁にヒビが入る。
自分から飛ぶことである程度衝撃は逸らした。それなのに、この威力!
壁に叩きつけられた私目掛けて放たれた呪力の砲撃をなんとか回避する。削れた地面を見て、あれを喰らっていたらと思うと肝が冷える。呪力放っただけでこれとか、バーン様じゃねえんだからよ!
まぁでも、なんの警戒もなしに殴ったのは失敗だったわね。
「芻霊呪法『簪』」
自身の拳に衝撃が走り、不思議そうに呪霊は己のヒビの入った拳を見つめる。
殴られた瞬間に、カウンターとして突き刺した五寸釘。呪霊の拳は速かった。それ故に釘は拳に深く突き刺さる。そこから流し込まれた私の呪力が、オマエの拳を破壊する。
「はは、特級と言ってもこんなもんか。女の腕にヒビすら入れられてないでやんの。」
勿論強がりだ。確かにヒビは入っていない。それでもそう何度も打ち合える威力じゃない。
「恵。悠仁見つけ出して、そのまま連れて逃げなさい。私がコイツを食い止める。」
殿を務めるべきは私だ。まともに撃ち合えるのは私しかいない。
「特級相手にお前を見捨てろと!?できるわけ」
「逃げろっつってんだろ!じゃあどうする、仲良く此処で全員死ぬつもりか!」
「...俺ならコイツを確実に祓える」
「は、メガンテするつもりだろ。てめえが犠牲になって生き残っても何も嬉しくねえんだよ。私なら、こいつを食い止めて、確実に生きて帰って来れる。お前の術式の最奥が確実にこいつを祓えるように、私の術式の最奥はこいつから絶対生きて帰れるんだよ。頼む。私を人でなしにさせないでくれ。」
ダチ死んでのうのうと生きて、そんなの私らしくねえんだよ。
「信じていいんだな」
ごめんな。
「悠仁を頼む」
恵の体を、特級から遠ざけるように蹴り飛ばす。
あぁ、行ってくれたか。
ニタニタと笑う目の前のコイツが気持ち悪い。
あえて恵を見逃したなコイツ。完全に舐めてやがる。
「術式の最奥ねえ...あるわけないじゃん。...ごめんな」
勿論死ぬ気は毛ほども無いし、何なら祓ってやる気満々だけど。
でも、嗚呼。さすがに死んだかコレ?
左手の拳に3本の釘を構える。
「さーて。あいつら優しいし、私が死んだらあと引きそうだし...てめえには死んでもらうぞ、碌な術式もねえ特級のなり損ない」
♦︎♦︎♦︎
縮地にも似た、移動を悟らせない動きで特級の眼前まで接近。肘から衝突するようにして呪霊の腹を抉り、正中線をなぞるようにして3本の釘を突き刺す。
「あぁくそ、硬え!」
ざけんなや
呪力が通らん
ドブカス......がぁ‼︎
二級程度の呪霊なら、間違いなく爆散していた。しかし特級相手では、あくまで表面で弾けるだけ。
私を捕まえようと振るわれた呪霊の腕を、股下を滑り抜けることで回避し、そのまま膝目掛けて素早く金槌を振るう。
膝の裏と表にほぼ同時に来た衝撃により、呪霊は思わず膝をつく。
砕くつもりだったけど、砕けないか...!
膝を突きつつも振るわれた拳が私の胸に突き刺さる。肋骨が何本か持ってかれた気がする。
呪霊の顔から余裕の笑みは消えない。
正面から投げつけた釘を腕を振るうだけで弾き、脳天をかち割ろうと振るった手刀を受け止め、顔面に振るった金槌を笑って受け止める。
死角から投げつけられたはずの、呪力を纏った四角い箱を容赦なく叩き落とす。
「『簪』ばーか。やっぱお前馬鹿だな」
呪霊の叩き壊した箱は、中に大量の画鋲が入ったプラスチックケース。呪霊の体を覆うように広がった百近くの画鋲を媒介に、一斉に穿つように放たれた呪力がその体を蝕む。
「──────────!」
さすがに苛立ってきたのか、呪霊の速度が上がる。
立ち上がった呪霊は、手頃な瓦礫を掴むとそれを投擲。その後を追うようにして私に急接近。瓦礫をなんとか蹴り壊した私の足を掴み、そのまま振り回して地面に叩きつける。
なんとか呪力を防御に回して意識は保ったが、今度は顔面を掴まれ、鉄筋コンクリートの壁ですりおろされる。
その過程で何度も壁に叩きつけられる。
全身が割れるように痛い。顔面に至っては今すぐにでも意識を手放したくなるほどの痛みだ。呪術師じゃなかったら即死だったわ。
「いってえなこの...虫ケラが!」
視界の大半を壁に埋められながらも、なんとか呪霊の腕に釘を突き刺し、僅かに力が弱まった瞬間に壁に脚を突き刺して頭を壁から外す。
首を軸に、呪霊の力を利用して、そのまま遠くまで投げ飛ばす。
「おっも!何喰ってそんな重くなったんだよ!負の感情か!そりゃ重いわ!」
投げ飛ばされた瞬間に呪霊は空中で向きを変えると、ついに笑いが消えた口から呪力の砲弾を放とうとする。
懐からグレネードを取り出し、ピンに指をかける。
そして息を吸い込み──
「私の術式『芻霊呪法』共鳴り。本来なら対象の一部にヒトガタを重ね、釘を打ち込むことで、対象の一部という縁を辿って本体にダメージを与える術式だが。対象の一部っていうなら、五感も充分対象の一部だ。対象が私を見て、聞いて、触れて...それだけでも十分だ。そして今お前、『私を見たな』」
因みに間に合わせるためにありえないほど早口だ。毎日アナウンサーばりの早口の練習しておいて本当に良かった。
術式の開示により威力が底上げされた共鳴り。
呪霊は、釘崎野薔薇の声を聞き、釘崎野薔薇の体を見た。
私は、自分で自分の体に釘を打ち込む。アドレナリンが出まくってる今の体じゃ、大した痛みじゃ無いわね。
見た、聞いた。「3回見たら死ぬ絵画」や「聞いたものは全員自殺する曲」「その存在の名を言うだけで確実に呪殺される神」に「触れたものを全て金に変えてしまう腕」。五感というものは呪いの上で重要な要素だ。その縁を辿り、呪霊の複眼と、人間なら耳がありそうな位置に呪力が注ぎ込まれる。
複眼の一部が吹き飛び、物理的に砲身となる顔面が揺らされたことで呪霊の放った呪力は逸らされ、何枚もの壁をぶち抜いて止まる。
さっきよりも威力が上がっている。もしかしてこの呪霊、自身の呪力に適応し始めた!?だったら、いずれ術式に目覚めてもおかしくは無い。
「だったら...一気呵成に決める!」
砲撃直後の開いた口にグレネードを投げ込む。呪霊の体内で爆発した爆弾は、呪力がこもってない以上一切のダメージは与えないが、炸裂した釘が体内に滞留する。
そこを起点に放たれた呪力が、内部から呪霊の体を穴だらけにする。
いくら特級呪霊の体が硬いからとはいえ、内部の硬さは多少マシなはず。
「さて、此処でダメ押しといきましょうか!」
隠し持っていた藁人形と、何百枚もの形代の入ったカードケースを取り出す。
共鳴りは、対象の体の一部にヒトガタを重ねて釘を打ち込むことで対象にダメージを与える。...本当に、それだけ?私は、この術式のポテンシャルはこんなもんじゃ無いと思った。
「呪力の本質ってなんだと思う?私はね、自由だと思うのよ」
どこまでも自由に、想像力を広げて、術式を拡張する。
拡張術式『共喰』。西洋の呪いの人形や、ひとりかくれんぼだとか、いろんな都市伝説を参考にしてたどり着いた私だけの術式。
対象の体の一部を、ヒトガタの
これにより、元の呪霊と全く同じ姿の式神が出来上がり、それは己の本体を全身全霊で殺そうとする。
この時、素材にした対象の体の一部では補いきれない体の部分は元になった式神の素材で置き換わるため、耐久値はオリジナルより圧倒的に劣るし、呪力量も少ない。しかし、それ以外は全て据え置き。
そして、仮に本体を殺すことに成功すれば、その式神は自分のものになる。元になった式神はあらかじめ調伏済みだし、当たり前っちゃ当たり前なんだけど。
式神の操作に特化した術式と比べれば二流も二流の式神だが、それでも紙や藁人形のように持ち運びやすく、呪力リソースは呪霊から引っ張ってくる以上自分に負担はそこまで無い。金はかかるけど。
今まで祓ってきた、2級や3級の呪霊を元にした式神たちが、自爆するようにして次々と特級呪霊に突っ込む。今日この日までコツコツと貯めた数百体。ぶっちゃけ百体ぐらいは蠅頭で傘増ししてるし、大半は3-4級だけど...全部出し切る!
生き物でない以上、式神は命を賭ける縛りは使えないが、それでもこれが終わった瞬間崩壊する縛りを掛けることで多少は威力の上がった式神の群れが突撃する。この戦法は
そう言えば、この術式を見せた時五条悟が苦々しげな顔をしたのはなんでだろ?
突っ込み続ける式神の攻撃と合わせるようにして執拗に片腕目掛けて釘を放ち続ける。
1体を残して、式神が全て破壊される。
同時に、片腕が落ちる。
それを自身の存在と引き換えに、最後に1匹の式神が投げ渡す。
「は、なかなかイケメンになったじゃない」
怒り、だろうか。
全身をボロボロにされ、その眼に溢れんばかりの憎悪を抱く呪霊が、大きな咆哮を上げる。
窓ガラスが全て吹き飛び、足元に微細なヒビが入る。細かな破片が宙に浮かぶ。
窓ガラスが頬にあたり、つー、っと血が垂れる。
落ちた片腕を、とっておきの木製の人形、樹齢うん百年の呪樹から作り出した人形で作った式神に打ち込む。
そして、懐から、あえて使わずにとっておいた式神を取り出す。
「仮想怨霊『かまいたち』。東北にいる時一回だけ戦った、術式持ちの一級呪霊よ、光栄に思いなさい。此処から先は三対一だ。」
目の前の特級呪霊と同じ姿になった式神と、風を纏った獣風の式神が私の両隣に並び立つ。
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自分が油断したせいで友人が一人死んだら虎杖は間違いなく曇る。
劣化版夏油+劣化版冥冥+強化版真人特攻
見ただけでアウトなんだから、魂に触れるなんてした日にはもう...
まぁ触れられてる時点でアウトなんですけどね
領域展開させようにも名前を思いつかない。