共鳴りとは──魂の振動(大嘘)   作:美味しいラムネ

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本編+短編一個です
大変申し訳ございません。次の投稿は4/2ぐらいになります


渋谷事変⑧─霹靂lll─

 

 

 

 

 がたん、ごとん。電車は揺れる。

 

 ──何で、俺が死刑なんだって思ってるよ

 

 駅に止まるたび、乗っていた人々が降りてゆく。

 

 ──自分の死に様は、もう決まってんだわ

 

 ──オマエは強いから、人を助けろ

 

 結果、全部何とかなると思っていたのかもしれない。

 

 がたん、ごとん。電車が揺れる。

 俺は、ここに乗っていていいのだろうか?

 

 伏黒が、五条先生が新宿で降りる姿を幻視する。

 これは近い未来か。──違う。

 

 このまま乗り続けていたら、自分の代わりに誰かが降りることになるのではないか。

 

 真希先輩が、狗巻先輩が、パンダ先輩が。伊地知さんが、ナナミンが、猪野さんが。東堂が、京都校の生徒たちや先生。名前も知らない術師たちが。

 

 自分に背を向けて何処かへ降りていってしまう。

 

 俺は、ここに乗り続ける資格があるのだろうか。

 

 釘崎が、その姿が見当たらない。違う、違う、違う違う、いや、違わない。

 

 あぁ、俺は、ただの人殺しだ。

 先程まで首を掴んでいた掌を、弱々しく見つめる。

 

 よく知った相手の咳き込む音が聞こえた。

 

 声にならない嗚咽が漏れる。

 地面に指がめりこむ程に強く引っ掻く。

 

 あぁ、あそこで死んでいれば。

 

 ──あなたたちが死力を尽くしたことで、救えたものは確かにあります

 

 違う、それ以上に多くの人を殺した。

 

 自分への呪いの言葉を吐く。

 

 「こっちを見て」

 

 声が聞こえる。

 その手を取る価値は、俺には無かったんだ。

 

 「お願いだから、私の目を、私の目を見てよ!

 

 潤んだ目で、釘崎が俺を見つめる。

 肩を両手で掴み、離そうとしない。

 

 「全部、全部俺の所為なんだ、俺が、俺が殺した──!」

 

 俺は、ただの人殺しだ。あぁ、そうだ。

 殺した以上の数を救わなきゃ。人を助けなきゃ。アア、ソウダ、タスケナキャ──

 

 釘崎の手を払い、錆びついた人形のような動きで自分が起き上がる姿を、俯瞰的に見ていた。

 

 あぁ、そうだ。五条先生を解放して、全部を終わらせたら。誰にも見られない場所で死のう。誰にも囲われずに独りで。そのためにも、先ずは人をスクワナキャ。

 

 

 「違う、違う!」

 

 

 ふわり、何かが体を包み込んだ。

 釘崎が、強く俺の体を抱きしめる。雫が、ぽつりぽつりと首筋を伝う。

 

 

 

 「貴方が殺したんじゃない!!悠仁の所為じゃ──!」

 

 「駄目だ!そういう問題じゃないんだ、俺の所為とかそういう問題じゃ──」

 

 分かってた。貴方ならそう言うって。自分を赦せないって。

 でも、一人で背負おうとするなよ。私たちは友達じゃねえのかよ。

 

 「俺達の所為だ」

 

 恵が、ポツリとそう言う。

 

 「あそこで、漏瑚を祓えていれば。両面宿儺を止められていれば。──あそこで、無理にでも介入していれば。命惜しさで躊躇ったのは俺たちも同じだ」

 

 「違う」

 

 「違わないわ。何で、一人で背負おうとするのよ」

 

 この腕は絶対に離さない。

 

 「自分の事なんて考えてる暇はない。ただひたすらに人を助ける、それが俺たち呪術師だ。オマエ独りで勝手に諦めるな」

 

 

 「自分がいなければ、なんて思ってんじゃねえだろうな、悠仁。巫山戯るなよ。なら、なら──貴方に救われた私達はどうすればいいのよ!」

 

 駄目だ。その手を取りたくなってしまう。

 伏黒が、釘崎が伸ばす手を取りたくなってしまう。

 

 駄目なんだ。

 

 「わりぃ、心配かけた」

 

 「!悠仁!...」

 

 釘崎の顔が哀しそうに歪む。

 ごめん、まだ自分を赦したくない。

 

 「おい、虎杖」

 

 伏黒。俺が隣にいる限り、お前は一生苦しむことになる。

 

 「先ずは、五条先生を解放する」

 

 「...その後で、勝手に死んだりしないでよ。そうしたら、私も死んでやるから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

短編④ 高専生だけど、私たちにも修学旅行的なイベントあってもよくない?

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 時は遡り、京都姉妹校交流会が終わった少し後の頃のこと。

 

 

 

 

 「高専や!はよ開けんかいゴラァ!」

 

 ガンガンと扉を叩き、ドアノブをガチャガチャと回す。

 あぁもう、出てくるのが遅い!!はよ開けんかい、ぶっ壊すぞ!!

 鋼鉄製の、金庫に使われそうな扉、しかも表面には呪術的な守りが施された扉が浮き上がる。

 

 「おい、釘崎!!落ち着け!どっちが呪詛師かわかんねえみたいなことになってるぞ、若干引かれてるぞ!!」

 

 「そうだよな、幾ら扉が丈夫でも、それが取り付けられた壁が弱かったらこうなるよな」

 

 家ごと破壊しそうな勢いの私を悠仁が宥め、恵が頭が痛そうに額を抑えているのを、京都校の三輪は若干引いた目で見つめる。

 

 「ナァ、伏黒恵。アイツ絶対二級の強さじゃないだロ」

 

 一応は、この中で一番等級が高い男、メカ丸がそう呟く。

 

 「あはは、気迫凄いですね。それにしても、東京校が追っていた事件と、京都校が追っていた事件が、大元が同じだったなんてびっくりですね」

 

 三輪が、コイツまじかという目で、ドアノブを握りつぶした私を見つめる。そんな目で私を見ないでほしいわね。

 

 「マァ、心強くはあるガな。東堂と違って話が通じる強者ダ」

 

 「...試合の時も思ったが、東堂に対する認識は東京も京都も似た様なもんだな」

 

 東京が追いかけていた、呪詛師グループと一般人の犯罪グループが手を組んだ中規模な集団。

 初めは通常の詐欺師集団として警察が対応していたけど、呪詛師の影が見え隠れし始めた。しかも、一般人に特殊な呪具も売り捌いているときた。だから高専の方に受け継がれたというわけ。始まりはそう。

 

 「東京で被害出しておきながら、追いかけて行ったら本拠地は関西。何でこんなに大きくなるまで放置していたのかしらね。『花御』、やりなさい!」

 

 その事件を追ううちに、少しづつ西へ西へ進んでいき、最後には京都校の管轄のはずの関西まで到達してしまった。

 時同じくして、京都校の方でも似た様な事例の事件をメカ丸と三輪が担当。

 最終的に同じ組織へ辿り着いたってわけ。上へ連絡を取った結果、規模も想像以上に大きかったため、合同で組織の制圧に移る様命令が下った。

 まぁ、妥当ね。

 

 『御意。やりすぎな気もしますがね』

 

 木の根が建物の壁や屋根ごと扉を剥がす。奥で待機していた、拳銃を持った男二人が急に明るくなった空を見上げて驚いている。

 

 「...釘崎ガ呪詛師じゃなかったことに感謝だナ。...なァ、釘崎。真人とかいう呪霊と戦ったと聞いたガ、そいつの式神は持ってるのカ?」

 

 「いや、祓えなかったから今は休眠状態ね」

 

 「そうか、わかッタ」

 

 一応は呪詛師。驚きから立ち直った二人が銃弾を放つ。

 片方はメカ丸のレーザーで銃器を破壊され、頭に吹き飛んだ破片があたり気絶する。

 

 「三輪、大丈夫カ?」

 

 「シン・陰流『抜刀』!...当然ですよ、メカ丸!」

 

 マズルフラッシュと共に放たれた弾丸が、神速の抜刀で切り裂かれる。

 シン・陰流最速の技『抜刀』。弱者の技ではあるが、分かっていれば小口径の拳銃弾程度、容易に切り裂ける。凄いわね、あれ。門外不出じゃなかったら私も教わりたかったわね。極めれば汎用性凄そう。

 

 「まぁ、術師だし、分かっていれば対処は余裕よね。もっとこう、あのリボルバー女の真衣みたいに工夫しなきゃね」

 

 さらに奥に構えていた男を木の根で縛り上げ、奥にいた大斧型の呪具を持った呪詛師を悠仁が殴り飛ばす。

 

 「ひっ!」

 

 眼鏡をかけたインテリ然とした男が手を叩くと、奥の部屋から蠅頭の大群が押し寄せるが、それらを不知井底の群れが片っ端から捕食する。

 

 「調教した蠅頭みたいな低級呪霊を使った霊感商法ねぇ、何人か消してるみたいだし、救いようがないわね。それに、呪具...麻薬っぽいのも捌いてたっぽいし。というかこれがメインの罪状ね」

 

 「死ねや、ガキどもがああああ!!」

 

 破れかぶれになった呪詛師の一人が、外からトラックに乗って突撃してくるが、タイヤが穿血と簪に貫かれ、制御を失った車がスピンしながら私たちから逸れる。

 

 そのまま家に衝突して爆散、火事になりそうなところを満象が消火する。

 

 「...ここまで壊れてるんだもの。この程度誤差よ誤差」

 

 「いや半分以上破壊したの釘崎だからな。帳があるからって何でもしていいわけじゃないからな!?」

 

 「ガス会社の皆さん、本当にお疲れ様です...」

 

 私悪くないもん!あの扉開けようと思ったらその間に準備されてもっと面倒くさいことになってたし!!!

 

 「まぁ、実際そこら中にブービートラップあるしな。メカ丸にすぐバレてたが」

 

 「あの程度の杜撰ナ呪骸を使ったトラップ、気づかないわけがないダロウ」

 

 「流石メカ丸です!」

 

 哀れ呪詛師集団。こんな簡単に処理されてはたまったものではない。

 

 圧倒的フィジカルの悠仁に、影の軍勢で割とゴリ押しが利く恵。何なら私は正直花御で全部終わらせれる気がする。私的にはその気になれば傀儡の軍勢で日本制圧ぐらいならできそうな疑惑のあるメカ丸。そしていい子そうな三輪。

 

 「何かしら、このメンツ。都市でも落としにいくのかしら、ってレベルで過剰戦力よね」

 

 ...いやまって、一番普通そうだけど、呪術師なのに「一般人的精神(ミーハー)」でいられるって逆におかしくないかしら?

 

 「あ、おい皆んな!奥に続く扉見つけたぞ!」

 

 「やけに抵抗が薄いと思ったら、やっぱ奥があったか」

 

 「普通は、あれを薄いとは言わないんですよね」

 

 「三輪。東堂側の人間に合わせようとしても疲れるだけダ」

 

 何だとこの野郎!

 

 

 

 

 

 ♦︎

 

 

 

 

 

 

 

 「ねぇ、恵、悠仁。三輪とメカ丸の二人、あれって、そういうことよね?」

 

 「あぁ、そういうことだろうな!」

 

 悠仁も同じ感想っぽいわね。余程鈍感じゃなければ流石に気づく。

 まぁでも、

 

 「「「多分三輪の方は気づいていないな」」」

 

 奥に呪霊でも巣食っているのか。異界化した地下を進みながら、隣り合って進む三輪とメカ丸の方を眺める。

 

 「脈なし、って感じではないわね。多分自分への好意に鈍感なだけね。話している時は心なしか楽しそうだし」

 

 「なぁ、あのストラップ、おそろじゃね...?」

 

 三輪とメカ丸がつけている究極メカ丸のストラップ。明らかにお揃いである。...青春ね。いいわね。

 

 階段を降りて、通路に出る。

 

 あー、そういうパターンね。

 騙された哀れな一般人や、組織の構成員らしき人間の死体が無造作に放置されている。気分悪い。こりゃ頭は相当なクズだな。

 如何にも、幽霊屋敷といった雰囲気だ。皮だけの死体。中身は喰われたんでしょうね。呪霊に。

 

 「吊り橋効果的な奴は無さそうね。肝が据わっているというか何というか」

 

 通路の先に鎮座していたのは、壺の中から腕を出す呪霊。

 おおかた、人間の肉を食らって、代わりに依存性の高い麻薬的なサムシングを生み出す呪霊でしょうね。強さは準一級ぐらいか。このメンツなら余裕すぎるわね。

 

 「呪霊と共生関係にあったというわけカ。...おい、お前ラ。何だその生暖かい目ハ!」

 

 「「べっつにぃ?」」

 

 悠仁と私が白々しくそう答え、恵が「コイツら...」と言った様子でため息をつく。

 その間に虫ケラに呪霊は解体される。哀れ。私も別にあんな呪霊欲しくないわよ。

 

 「テメェら、カチコミだ、殺れ、バラバラにして重油塗れのカモメの餌にしてやれ!」

 

 「凄いわ悠仁!映画よ映画!こんなコテコテの呪詛師、今どきいるのね!」

 

 そんなセリフを吐きながら、刀に風を纏わせ、風の分身を生み出すというなかなかの技巧派である点が面白いわね。どうして呪詛師なんてやってるんだか...

 

 有象無象の呪詛師が悠仁のラリアットで吹き飛び、クロスボウから放たれたボルトは抜刀で叩き落とされ、逆に槍を振るった男が、その穂先を切り落とされる。

 

 「『刀源解放(ソードオプション)』」

 

 右腕から刃を出現させ、メカ丸が一気に四人持っていく。

 何あれかっこいいわね!式神で再現できないかしら!!浪漫が詰まってるわ!!

 

 「さて、私もお仕事を片付けますか!」

 

 刀を持った男へ突撃。三方向から放った釘が居合で弾かれた瞬間、懐へ飛び込み、そのまま顎へアッパー。

 逆手に持ちかえ、何とか貫こうと振るわれた刀を、釘が当たり脆くなった部分を叩き、破壊。

  

 「『共鳴り』」

 

 本体が気絶しても動く風の分身を、本体を通じて共鳴りで破壊。

 ほぼ同じタイミングで、この狭い室内でロケットランチャーをぶっ放そうとしていたバカをメカ丸が制圧し、同じくこの狭い室内で自爆しようとしていた男を恵の灰怒羅が飲み込み、締め付けて気絶させる。

 

 「ハイお疲れ、解散解散」

 

 頭っぽい奴を縛り付け、踏みつけて逃がさない様にする。

 今時一番強いやつが組織の頭やってるって珍しいわね。*1

 

 「ぐっ、終わったと思うなよ、ここにはあのQの最高戦力の弟、ベイエルさんが来てるんだぞ!」

 

 「あぁ、こいつカ?」

 

 奥に待機していたらしい軍服を着た男を、メカ丸が捕縛して連れてくる。

 

 「...あの、全部吐くんで殺さないでください」

 

 有象無象の集団、って感じだったわね。本当。

 

 「メカ丸、この前私タピオカ食べたんですよ。いうほど美味しいか?って思ってて。やっぱ言うほどでもなかったですね」

 

 「それ今いう事カ?」

 

 

 

 

 

 ♦︎

 

 

 「じゃ、ばいばーい。お疲れー」

 

 「パンダによろしく伝えておいてクレ」

 

 夜に突入したからか、もうすっかり朝である。朝帰り、という単語が脳内に浮かんだ気がした。メカ丸と三輪、これ真衣あたりに弄られるわね。合掌。

 ...傀儡使いと呪骸、繋がりあったのね、なんて思いながら京都校の近くで分かれる。

 

 「なぁ、東堂いないよな、東堂いないよな!?」

 

 悠仁が周囲をキョロキョロと見渡している。

 大丈夫、東堂の気配はないわ。確か今日東京で高田ちゃんの握手会があるらしいから、ちょうど入れ替わりよ。*2

 

 

 「さて、交流会の時は、こっちへ来れなかったけど!!観光よ、京都観光よ!!」

 

 「おい、それだと徹夜だぞ俺たち!正気か釘崎!?」

 

 恵が正気か、という顔で睨んでくるが、悠仁の方は乗り気だ。

 

 「新幹線の中で爆睡したから平気だろ!大阪といったらグリコだろグリコ!!」

 

 「近いし先に京都行ってから、夕飯は大阪で食べましょ!」

 

 一先ずは駅のロッカーに荷物置いて、観光ね観光。

 

 「はぁ...まあいいか。今宿で寝ても変な時間に起きることになるだけだしな」

 

 「恵も乗り気じゃん!あ、ちょっと待って、京都行くなら着替えたいわ」

 

 

 

 

 ♦︎

 

 

 

 「お、似合ってるな、釘崎」

 

 「でしょでしょ?ねぇ、恵はどう思う?」

 

 「まぁ、似合ってるんじゃないか?」

 

 清水寺前の参道を歩く。平日なのに随分と人が多いわね。

 外国人観光客も結構多いわね。あれは修学旅行生かしら?

 

 「にしても、釘崎。自分で着付け出来るんだもんな」

 

 「あのクソ婆に覚えさせられたのよ。ま、そこだけは感謝ね」

 

 土産屋で、悠仁が修学旅行で小学生が買いそうな剣のストラップを眺めている。

 悠仁...どうしてそれを買おうと思ったのよ。確かにかっこいいけど。

 

 「それを言ったら釘崎、お前も奥の模造刀買っていただろう、ウン十万するやつ。隣の修学旅行生ギョッとしてたぞ」

 

 「あれは芸術品よ芸術品!!ほら、悠仁もなんか買ってるし...ねぇなにあれ!?なにあの冒涜的なストラップ!?」

 

 「リアルな鹿の頭のストラップ...なぁ、微妙に県違くないか?」

 

 同じ日本なのに、異国情緒って感じね。

 石畳の参道を歩く。観光客で埋め尽くされていて、中々進めないがそれもまた旅行の醍醐味ね。

 

 「つぎひゃこうひょうしーずんにきたいひゃね(次は紅葉シーズンに来たいわね)

 

 「口にモノを入れて喋るな、釘崎!...何処で買ったんだその...なんだ?アイス?」

 

 「んにゃ。アイスバーみたいなやつ。くず氷?だっけ。向こうの店」

 

 「あ、俺抹茶味にするー!」

 

 悠仁が、たまたま空いていた店に駆け込み、手にアイスを持って戻ってくる。

 

 「それ一口ちょうだい?私のも上げるから」

 

 「いいぞ?」

 

 「マジかお前ら...」

 

 途中途中で店にふらりと寄って買い食いしながら参道を歩く。

 正午に近づくに連れて観光客も増えてきたところで、漸くお寺の前に着く。

 

 「いやぁ、疲れたわね」

 

 途中で買った扇子で顔を仰ぐ。

 

 「清水寺なのに、描かれてる絵は金閣寺なんだな」

 

 「なぁ虎杖、あれ、駅にも売ってたよな...?」

 

 「...ノーコメントで」

 

 「なにぶつぶつ言ってんのよ?」

 

 たたた、っとかけ、手すりから下を見渡す。

 

 「清水の舞台から飛び降りるって言うけど、確かに高いわね」

 

 「10m以上あるらしいしな。まぁ、当時は木も生い茂ってたから死ぬ人はそこまで多くはなかったらしいが」

 

 「まぁ、確かに落ちても死にそうにはないな」

 

 「悠仁、今は下地面だから、呪術師以外は基本死ぬのよ」

 

 広く澄み渡った、青い空を見渡す。

 

 「気が早いけど、今度は沖縄とか行きたいわね。来年あたりにどうかしら?」

 

 「お、いいな!めんそーる、だっけ」

 

 「虎杖。それだと色々間違ってるぞ」

 

 

 ♦︎

 

 「余計なお世wi-fi!!」

 

 舞台の上でネタを披露する芸人を見る。

 その、何と言うか...微妙...フリップネタとしても...ところどころクスリと笑えるところはあるけど。

 

 悠仁は...滅茶苦茶うけてるわね、うん。

 お昼を京都で済ませ、夕飯を食べるために大阪へ向かったはいいが、時間が少しあった。

 

 ──お、劇場の方、当日でも入れるみたいだぞ?な、釘崎、伏黒。折角だし見ていかね?

 

  まぁ、まだ夜まで時間あるしいいと思うけど...恵はどう?

 

  ま、いいんじゃないか?...髙羽史彦、聞いたことないな──

 

 

 そんなこんなで、お笑いの本場ってことで劇場に行くことにしたのだ。

 

 あ、全部ネタが終わったみたいね。時間も丁度いいわね。

 

 「そろそろ私たちもお店に向かいましょうか」

 

 「だな」

 

 

 

 ♦︎

 

 

 夕食を済ませ、五条悟が取ってくれた宿へ向かう。

 

 「五条悟がこっちの依頼をこなすときに毎回泊まってる、術師御用達の宿らしいわね。楽しみね!」

 

 「何せあの馬鹿高いワイシャツ着てる五条先生だぜ!」

 

 「あの話は止めろ...」

 

 自分の痴態を思い出したのか、恵が遠い目をする。

 あ、あの件は...はい。私が悪いですね、はい。

 

 「げ、釘崎。何であんたここにいるのよ」

 

 「げ、リボルバー女。こっちこそ同じセリフよ。私たちは泊まる宿に向かってるのよ」

 

 道の向こうから歩いてきたのは、京都校の真衣。まぁ、向こうの地域だし、こんなこともあるか。依頼帰りかしら。

 

 「宿って...まさかあそこ、あそこなの!?」

 

 真衣がマジかこいつら、と言う顔で宿のある方向をみる。

 

 「えぇ、五条悟が取ったのよ」

 

 「...御愁傷様ね。いい性格してるわね、五条悟って。そこ、呪霊が棲みついて大変なことになってる場所よ?東堂じゃなきゃ対処できないから放置されてる奴」

 

 

 「...おい、五条先生に電話するぞ」

 

 想像通り、『祓っちゃえば普通の宿だし、あとは頑張ってー、とだけ返された。

 

 「よし、戻ったら天誅を下しましょう」

 

 「...こんなに休まらない宿が許されていいわけないだろ。五条先生。円鹿の実験台になってもらうか」

 

 「お化け屋敷みたいで楽しそうじゃね?」

 

 怨念渦巻く旅館といった様相。どうしてこうなるまで放置していたのかしら。

 

 「さっさと片付けて、寝床確保するわよ!」

 

 「いやまて。流石に従業員いないだろうから、これ結局素泊まりでは?」

 

 「...ちょっと真衣!!!京都校に空き部屋とかないかしら!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
力以外の序列はつまらんな by呪いの王

*2
一方その頃、東京校 何故ブラザーがいないのだ!!! by東堂








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このあと、この世界線でのメカ丸戦書こうかとも思ったけど辛くて無理でした。
本編と短編の温度差で心苦しかったです。本編は本当に書いてて心苦しかった。




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