秤戦は原作と変わらないので省略されました
死滅回游①─vsレジィ・スター─
「そういえば、悠仁。秤先輩は説得できたの?」
スマホで何かのデータを読んでいた釘崎が、ようやく帰って来た虎杖達に声をかける。
「モーマンタイ!殴り合って最後は夕陽に向かってフィニッシュよ!」
高専術師達が動き出す。
九十九由基、脹相は天元の護衛。乙骨はひと足先に仙台コロニーへ。
秤金次、パンダは東京第二コロニーへ、虎杖悠仁、伏黒恵、釘崎野薔薇は東京第一コロニーへ。
11月11日、鹿紫雲一による突然のルール追加。
それにより判明した100点保持者の存在。
目的は二つ。死滅回遊を平定──状態を硬直させ、死滅回游そのものを破綻させるようなルールの追加。それによる伏黒恵の姉、『津美紀』の死滅回游からの離脱。
そして、五条悟の封印解除の鍵となる天使の発見。
『よぉ 俺はコガネ!!』
『この結界の中では、死滅回游って殺し合いのゲームが開催中だ!!一度足を踏み入れたらお前も泳者!!』
「ねぇ、これ全国にあるのよね?...全部が終わった後、日本そのものが大丈夫が心配なんだけど」
「まぁ、夜蛾学長達がなんとかしようとしているが...未来のことは、未来に考えるぞ」
『それでもオマエは、結界の中に入るのかい!?』
「「「あぁ、問題ない」」」
「まずは日車の情報収集だ」
せーの、の掛け声で結界内部に飛び込む。内部がどうなってるかはわからない。しかし一つだけ言えることがあるとすれば──
100点を取れるだけの数、敵を殺し生き残った強者がいるという事実のみ。
内部が地獄になっていてもおかしくはない。入った瞬間初心者狩り狙いの術式に着地狩りされる可能性もある。
さて、鬼が出るか蛇が出るか。
死滅回游。言ってしまえば術師同士の殺し合い、デスゲーム。
覚悟はとうの昔に決まっている。不平等な命の天秤片手に、死地へと飛び込んだ。
さぁ、私らしく行きましょう。
そして、結界の内部へ風景が切り替わった瞬間。
「覚悟は決まってたけどさぁ──」
「どうなってんだよクソ運営ーっ!!!!羂索仕事しろやあああああ!!!!」
東京のビル群よりも高い上空にいきなり放り出される。
いやいやいや待って、待って!?重大なバグよ、糞ゲーよ!いやこの程度の高さじゃ死なないけど、普通は死ぬわよ!?
とはいえ対策なしで落ちたら流石に大怪我じゃ済まない。しかも二人と逸れたわね。
どうするか。式神は使いたくない。術師同士のバトルロワイヤル形式である以上、こんなどうでもいい場面で手札は晒したくない。
私の術式、鄒霊呪法は歴史の古い術式だ。そして、歴代の使い手で私みたいな使い方をした人は私の知る限りではいない。だから、式神は奇襲性という点で過去の術師相手に有利に働くはず。
ならばどうする?純粋な呪力強化で突破する。
折角だし、かっこよく着地したいわね。
空中でいい感じのポーズを取り、地面に着地する。当然無傷だ。
それを地面から見ていた、蠍風の髪の毛をした女が呟く。
「...え、体重何キロ?」
「何だとコラ」
♦︎
レジィ・スターは過去の術師が受肉したタイプの泳者だ。
そんな彼は独り言つ。
随分といい時代に来たものだ、と。
レシート、領収書。実に素晴らしい。これほど容易に紙を使える時代になったとは、素晴らしい。
取れる手段の多さはそのまま強さに直結する。
あとはあの女を餌にポイントを稼ぎ、あるいは仲間を増やして、『爆弾』に備えればいい。
さて、次はどんな泳者を連れて来てくれるか...
「おっほ」
素晴らしい。薮を突いているのだから、いつかは蛇が来ると思っていた。いや、あれは蛇などではないな。
「薮を突いたら、まさかこんなにも可愛らしい龍の娘が来るとはね」
麗美を引きずりながらやって来た女の姿を見る。
現代の術師だろう。それも、覚醒型ではなく、元からの。
「いやぁ、私、こういうタイプの人間全般が嫌いなのよね。自分がない奴。ま、それはコイツも同じみたいだけど?」
「はは、それは
罠へ自分から飛び込んできた。
相当自信があるのか、それともポイントを集めたい?戦闘狂?
相手を殺していない時点で、コッチ側ではないのだろう。
「違うわよ?何を勘違いしてるか知らないけど」
強いな、仲間に引き込めないか。
「それは失礼。いいね、君。仲間になろう。君、強いでしょ」
「まぁ、本当に不本意だけど特級術師だもの。取り消される前に結界入ったし」
特級、ってのが何かは知らないけど。現代の術師の評価基準だろうか。
「ねぇ、君。死滅回游についてどこまで知ってる?」
「結界内の泳者達の呪力を利用して、日本の人間を彼岸へ渡し、人ならざるものへ変えるための儀式、ってことなら」
へぇ、なら話は早い。羂索と関わった相手が羂索の不気味さを知らないはずがない。
「今、君が言った話、おそらく“
結界侵入後、いきなり襲って来た女を倒し、その集団の頭のところまで案内させる。強くなきゃ術師の頭なんて張れないでしょ、だからそいつが日車かもしれないわね。
そう思っていたら、全然違う相手がいた。全身にレシートを貼り付けた変態。多分術式でしょうね。
過去の受肉した術師、か。無理やり引き剥がすことは...真人を使えばできるかも?でも、あまりにもリスキーすぎる。
申し訳ないけど、1000人全員に使っている余裕はない。あの世で罵ってくれて構わないわ。
「ブラフ、ねぇ」
まぁ、根拠も含めて説得力はある。
結界内が静かすぎるとは思っていた。入ったらいきなりメギドラオンぐらい想定していたわよ。でも出て来たのは蠍女だけだったし。
爆弾、ねぇ。そういえばあいつ現代兵器を評価していた気が...
核シェルターってどこかにないかしらね?コーラとランチボックス片手に終末世界とか嫌よ。
「というか何、貴方羂索の知り合いなの?じゃあ何か羂索が嫌いなものとか知らない?」
「あぁ、君も羂索に一杯食わされた口か?駄目だよ、あいつ信用しちゃ。まぁ、嫌いなものは退屈とかじゃないかな?あいつ、自分の失敗も楽しめる口だよ?」
まぁ、話はできている。できているが──
相手も私も、笑顔で話をしながら、裏ではナイフを構えている。互いに呪力を練り上げている。
「近々、泳者間でのポイントの受け渡しを可能にするルールが追加されるわ。貴方達のポイント、全部渡しなさい。そうしたら、仲間になってあげてもいいわよ?というか、むしろ貴方の方が私の仲間にならない?」
人手は幾らあっても足りないぐらいだ。
「残念、交渉決裂♡」
背後から感じた殺気目掛けて、振り返ることもなく釘を放つ。
突き刺さった釘からは、最適な一撃に調整された斬撃が放たれ、対象の意識を刈り取る。
「『簪・平打ち』。さっさと降参した方が身のためよ?」
「あぁ、殺せないか。点数欲しいもんね。でもさ、殺す気でやんないと、死んでから後悔するよ?」
瞬間、上空から目玉をはじめとした身体の部位が落下し、爆発。
体の一部が抉れる。
「ははっ、使えるか!反転術式を!」
「当然!!」
身体の一部を代償に爆発を発生させる術式。しかも反転術式持ち、厄介ね。だから、速攻で潰す!
「花御、陀艮!」
花御が振るった音速の一撃と、ダイオウグソクムシによる押し潰しが、男へ迫る。
爆発と反転術式を駆使することで対応していたが、増え続ける物量に押し負け、ついに意識が飛ぶ。
反転術式の使い手への対処法は知っている。致命傷を与え続けて脳をバグらせるか、意識を刈り取るかだ。私が誰よりもそれを分かっている。
「鄒霊呪法だと思っていたけど、式神使いか!」
道路へ降りた私を追うように、レシート男が傘をパラシュート代わりにふわりと着地する。随分とメルヘンね。
さて、あの一瞬なら花御も陀艮も日車にはバレていないでしょう。もちろん手持ちの真人も。
日車という本命がいる以上、バレないためにもこれ以上の特級式神の使用は避けたい。100ポイント無い術師でもこのレベルなら、日車は一体どれだけの強さなのだろうか。
想像ができない以上、低級の式神と私だけで、倒し切る。
「『再契象』」
レシート男が体についていたレシートを剥ぎ取り、それを呪力で燃やす。
すると空中に包丁、金槌、のこぎりと多数の凶器が展開される。
それら全ての切先が私に向けられている。
「なんちゃって王の財宝かよ!『簪』!」
五寸釘と凶器がぶつかり合い、釘が打ち勝つ。
それが体に突き刺さる前に、展開されたライオットシールドが釘を防ぐ。
レシートが焼き切れた瞬間、盾が現れた。つまりあれは──
「俺の術式は、『契約の再現』さ。契約書を焼き切ることで、ほら、この通り」
術式の開示か、現れた商品の強度が上がる。
当たり。現代なら、相当厄介な術式ね。
地面から、ガソリン満タンの車の群れが飛び出し、突っ込んでくる。
それらを式神で迎撃。すり抜けた一部を簪で破壊しつつ、懐へ飛び込む。爆発、炎上した車体を突っ切る。
こういう相手は、術式を使わせる暇なく倒し切る。
「熱かっただろう、ほら」
水道の払い込み用紙だろうか。
それが焼き切れた瞬間、水が濁流のように押し寄せ、私を押し流す。
濡れたらレシートも焼き切れなくなるだろうに、相当リスキーな手に出たわね!
視線越しに共鳴りを叩き込みつつ、式神にグレネードをくくりつけて射出、あとを追うように五寸釘を投擲。
同時に、全身を電撃が揺らす。電気料金の払込票か!
焦げついた体を反転術式で癒している間に、追撃。
チェーンソーが唸りを上げながら突撃。さらにあとを追うのは、ランマーに小型のロードローラー。
「物理的殺意が高いなぁ、おい!」
呪力で強化した腕でチェーンソーを叩き落とし、ランマーの振動ごと機械を破壊する。ロードローラーの下を潜り抜け、釘を放つ。それを巧みなセグウェイ捌きで避けたレシート男目掛けて一気に加速。
懐に飛び込み、腹目掛けての正拳突き。
足に感触。うまく踏み込めず、突きが浅くなる。
ビー玉に油。即席のトラップ。随分と単純で、そして有効な──!
目の前に、大量の家庭用洗剤が現れ、一枚のレシートから同時にありえない数の包丁が現れる。
「大量の包丁に洗剤、あと縄にクーラーボックス。一体これの持ち主はどんな買い物をしたんだろうね。このレシート、変だな」
「いやそれ人殺してるって、人間ぶっ殺しレシートだろそれ!」
蛇の様にのたうつロープを掴み、逆にそれで包丁を叩き落とす。
その間に飛び退いたレシート男は、一つのレシートを燃やすと腹の打撲が癒える。
「打撲の治療費のレシートさ。本当、いい時代になったものだよ」
焼け落ちた3枚のレシートから花火が雨のように飛び出し、大きなマグロが勢いよく飛び出す。
かと思えば大量のガスが吹き出し爆発。有刺鉄線が体に巻きつき、モデルガンからBB弾が吐き出される。
呪力で強化された弾は、拳銃弾ほどの威力となってアスファルトを削りながら私を追いかける。
「ねぇ、君。後のことを考えてか、ずーっと出し惜しみしてるでしょ。呪力も、術式も。それじゃあ、勝てないよ」
移動式販売車が突撃し、競技用の和弓から矢が放たれる。
コンパウンドボウやクロスボウからも矢弾が放たれ、消火器から目眩しの煙が放たれる。
「そのまま死んでくれれば助かるよ『再契象』」
レシート男が取り出したのは、一枚の契約書。
「とっておきの一枚さ。PMCSとの契約書。なんでこんなものを持っていたのかは知らないけど、有効活用させてもらうよ」
自動小銃を持った武装集団が、小銃片手に突撃してくる。
同時に、レシート男が取り出したのは猟銃。散弾銃タイプのもの、ライフルタイプのもの両方がある。
「はは、本当になんでも持ってるじゃん」
更にレシートを切ると、そこから現れたのはドーベルマン。
「レシートの具現化というより、契約を再現した式神の召喚の方が近いか...!どう、同じ式神使い同士お話でもしない?そんなに展開したら、呪力もきついんじゃない?」
「はは、そう言いながら反撃して来てるじゃん!遠慮しておくよ」
一枚のレシートを切ると、レシート男の体力も呪力も回復する。
「5つ星旅館「星空亭」の、2泊3日オイルトリートメント付きの領収書だ。つまり、完全回復ってことさ。そのまま、本来の実力の半分も発揮できないまま死んでいけ」
空からトマトが爆弾のように降り注ぎ、銃弾が私の体で弾ける。
突撃して来たオートバイを蹴り飛ばし、木刀の群れを粉々にする。
そうね。出し惜しみして勝てる程弱い相手でもない、か。
「『共鳴り』」
形代と共に一体に釘を打ち込むと、連鎖的に武装集団が消滅する。
凶器の群れを呪力強化と反転術式で突っ切り、一気に距離を詰めてレシート男の腕を掴む。
「いいよ、やってやるよ!本気で!もう一度聞くわよ、そっちの方が私の仲間にならない?」
「はは、龍を目覚めさせたか!いいや、お断りさ!」
レシートを焼き切ると共に、レシート男の筋肉が肥大化する。
「筋トレインストラクターの契約書さ!これで筋肉もバッチリってわけ!」
元々高かった身体能力に、筋肉量が加わることでなんとか拘束から脱し、反撃に拳を交わす。
レシート男の手に握られているのはメリケンサック。その金属の打撃と拳がぶつかり、金属の方が押し負ける。
『泳者によるルールが追加されました!泳者による──
「あぁ、二人がやってくれたか」
花御と陀艮を呼び出す。レシート男が笑った。
「あぁ。こりゃ勝てない」と。龍が覚醒した、と。
あぁ、感謝だな。
出し惜しみして、実力発揮できないとか私らしくも無い。
「行くわよ!」
金槌を振り上げる。
次の瞬間──
戦場に舞い降りた音速により、戦いが中断される。
呪霊。それも特級の中でも強い。
それと戦っているのは──恵!?
同時にあとを追うのは、退魔の剣を砕かれたのか、呪具の刀を持った魔虚羅。
でかい芋虫みたいな呪霊、だな。
「ねぇ、一時休戦と行かない?多分このままだとアレに漁夫られるわよ?」
「まぁ、仕方がないか」
互いの名前を短く交わす。レジィ、この体の名で呼べと言って来た。
「あくまで仲間になったつもりはないけどね。あれを倒すのには戦力が足りなそうだから。『再契象』」
私と恵の体力が回復する。
ケチったわね。格安ビジネスホテルって感じがするわよ。
「ぐっ...釘崎、こいつは?」
「過去の術師。一時休戦中!そっちは?」
「あぁ、禪院のやつと少し揉めてな──
時間は少し遡る。
感想、評価、誤字報告などありがとうございます!励みになります!
過去術師名前問題ってどう解釈すればいいんでしょうね。
仙台市在住のドルゥヴ・ラクダワラさんとか。
空間鷲掴みお姉さんの過去回想で泳者の名前が使われていたし。でも裏梅は別っぽいし。宿儺も虎杖カウントだったし
禪院家「よかった...壊滅しなかった...」
裏梅「やぁ」
Q.受肉体の分離ってできるの?
A.この作品の設定だと「一応」できなくもないけどミスったら中身も全部消し飛ぶ。あとかなりリスキー。無為転変って結局相手の魂に触れるから。