共鳴りとは──魂の振動(大嘘)   作:美味しいラムネ

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暫く忙しいので更新頻度が安定しません。申し訳ない。




死滅回游②─並び立つ者、追い抜く者(1)─

 

 

 

 

 

 予感があった。

 結界内に侵入した瞬間から。

 

 真希先輩と共に禪院家へ行った時。

 扇とかいう術師を殺し、真依さんを救出したあとのこと。

 親の仇でも見るような目で睨んでいたあの男。

 

 

 

 小1の頃、俺の父親と津美紀の母親。それぞれの片親がくっついて蒸発した。五条先生が言うには、俺は禪院家に売られたらしい。

 父親が禪院家の関係者だっただとか。俺も一応禪院家の血を引いているらしい。詳しい話は知らないが。

 津美紀と俺は、親も無しに生きていかなきゃならなかった。

 

 親の顔なんて碌に覚えていない。

 

 ──喧嘩はするもんじゃねえ、止めるもんだ。誰かと喧嘩して転がしたところで、後から教師やら警察やらうるせえだろ。

 

 ──だが、誰かの喧嘩を止めれば褒めてもらえるぞ、おまけに最低でも、二人殴れる。

 

 多分、それが父とした最後の会話だった。

 もう、思い出す気もない。思い出す必要がない。

 

 津美紀を助けて欲しい、こう言ったのは2度だ。

 どうやら、俺は友人に恵まれているらしい。俺は今を生きているんだ。過去の奴らに、足を引っ張られている暇はない。だからさっさと津美紀を助けて、アイツらと一緒に高専に戻ろう。

 

 そういえば、まだアイツらと津美紀を会わせたことはなかったな、と思い出す。

 

 だが、あぁ。思い出す気もなかった過去は、俺を離してくれないらしい。

 禪院家の呪いは、俺を離さない。

 

 

 

 コンクリートの壁があちこち沈んでいる。

 相当激しい戦いがあったのだろう。片方は絶命し、もう一方は余裕そうだ。

 首を掻き切られた名も知らない術師の上に座る男の名を、俺は知っていた。

 禪院直哉。

 乙骨先輩に止められただけで諦めるとは思っていなかった。

 

 日車を探している余裕はなさそうだな。

 適当に投擲した刀を難なく弾く。流石の呪力強化だな。

 

 「ようやっと来たか、恵くん」

 

 「禪院家では、ビビって逃げたのに。心変わりか?」

 

 刺すような殺意が体を射抜く。

 俺は虎杖や釘崎のように優しくはない。殺そうとしてくるのなら、容赦なく殺す。

 

 「やっぱ、いきなり外様から割り込んできて、『今日から俺が当主です』、は納得できひんねん」

 

 何よりも。甚爾くんの影がちらつく、それが一番許せない。

 瞬間、直哉の体が加速する。禪院相伝の術式の片割れ。『投射呪法』。

 知っている情報は二つ。移動速度の超向上、それと触れられた際に1秒間フリーズすること。

 

 速さ、それは強さにつながる。

 横合いからの打撃を腕で受け止める。重いな。だが。

 

 脳裏に浮かぶのは一人の男。暴君の姿。

 あれ程じゃない。今まで戦って来た多くの強者。彼らと比べれば、小粒もいいところ。

 数度拳を交わし、腹に電撃を纏った平手打ち。痺れたことで速度が落ちた瞬間、傍に手を回して投げ飛ばす。起きあがろうとした瞬間に、満象の重量を纏った蹴りを放つ。瞬間、加速した直哉は、弧を描くような軌道で再接近。

 

 影に潜り拳を避け、飛び出した直後に直哉目掛けて穿血を放つ。

 背中から翼を生やし加速。そのまま玉犬の貫通力を纏わせた拳で滅多撃ち。

 

 「加茂家の...!お前がなんでそれを使えるかは知らへんが、プライドとかないんか?」

 

 拳を逸らしながら直哉が吐き捨てる。

 

 「そんなもの、玉犬に食わせた」

 

 

 

 

 投射呪法が速度に優れた術式であるように、穿血も同じように速度に優れた技。

 

 こいつ、想定以上に強い。

 魔虚羅さえなんとかすれば勝ちだと思っていたが、あてが外れたな。まぁ、甚爾くんの息子やし当然か。

 ならばどうするか。術式を重ねる。何度も、何度も。

 絶えず術式を重ね、より早く、向こう側まで一気に駆け抜ける。

 

 速度が音速に迫るにつれ、徐々に恵くんも防戦一方になっていく。

 そうや、お前じゃない。お前は甚爾くんになれない。

 

 「死ねばええんや」

 

 恵くんの体に触れる。瞬間、その体がフリーズする。

 今なら決まる。

 

 家から持ち出した切り札の一つ。

 速度に比例して攻撃力が上がる一級呪具『風雷』。小刀風のそれを、脳天に突き立てる。

 円鹿、という反転術式が使える式神がいることは知っている。

 それを使う暇も与えない。

 

 得物使う術師はダサい、と思ってきた。だが、出し惜しみできる相手じゃない。

 瞬間、横合いから殴られて体が吹き飛ぶ。

 影の中から現れた巨体。知っている。知っている。

 

 「動けなくなった瞬間に出現するように設定しておいたんか!」

 

 脳内の一部で、それを警戒しておいたおかげで致命傷は避ける。

 魔虚羅の姿をした模造品。

 

 「『廻転獣・魔虚羅“菲狗”(かいてんじゅう・まこらふぇいく)』」

 

 退魔の剣が服を浅く切り裂き、胸に薄い切り傷が刻まれる。

 それの対策は、勿論してきた。

 

 「ちっ...!『嵌合獣・顎吐』『嚥下獣・灰怒羅』」

 

 魔虚羅が消滅した瞬間、すぐさま恵くんは新しい式神を呼び出す。

 

 「判断が早すぎるやろ!ちょっとは動揺せんかい!」

 

 キェエと奇声を上げながら腕を広げる式神を小刀で切り裂こうとした瞬間、切り裂かれた側から体が再生し、抱きついてくる。

 瞬間、電撃が全身を穿つ。

 

 こいつ相手にも、これ使わなならんな...!

 左手に隠された刃が触れた瞬間、式神が消失する。しかし、その時にはもう新しい顎吐が迫り、地面から灰怒羅が口を開けて待ち構えている。

 

 「魔虚羅と比べれば、1発勝負じゃないだけ幾分かマシだろう」

 

 脱兎の群れが空間を埋め尽くす。

 加速する空間を与えないつもりか、こざかしい。

 

 「その左手の刃。術式の強制解除、だろうな。破壊されたわけではないな。現に、再召喚が可能だ」

 

 天与の暴君がかつて愛用していた呪具『天逆鉾』。既に失われたその呪具は、しかし失われる前から既に欠けていた。三又の刀身の一つが欠けていた。

 そして、直哉の左手にそれが握られている。禪院家の蔵の更に奥。奇跡的に発見した隠し通路の奥の箱の中にあったそのカケラ。

 

 本体と離れたせいか耐久性に難がある上、その切先にしか術式の解除効果が残っていないという欠陥品だが、魔虚羅対策には最適であった。

 これと、自分のためにあるのではと思うほどに噛み合った『風雷』。この二つが勝算であった。

 

 

 「成る程。それがあれば五条先生も解放できるな。...奪わせてもらうぞ」

 

 「やれるものならなぁ!」

 

 

 速さだけは、誰にも負けない自信があった。

 不知井底の舌が当たる前に駆け抜け、穿血の狙撃を避け続ける。脱兎の群れは壁にすらならない。

 音を越える。もっと早く。

 

 片方の顎吐を天逆鉾で消しさり、もう一方を風雷で再生する余地さえないほどに粉砕する。

 トップスピードのその先へ。

 

 大きな口を開いた河馬を、その口内へ飛び込みぶち抜く。

 地面に潜り、口を開けて待っていたウツボを、その口が閉じるよりも早く飛び越える。

 

 ぴしり、あまりの速さに皮膚が裂ける。

 

 ──なんで、なんでそんなに余裕そうなんや

 

 「お前は、甚爾くんにはなれない!」

 

 力は、重さと速さ。最高速度でぶち抜いたる

 コンクリートの壁を蹴り、電柱を蹴り、立体的な動きへ手を伸ばす。

 

 それでもなお、致命傷は避け続けるか。

 

 「『落花の情』」

 

 あの独特の構えは知っている。

 御三家秘伝。落花の情。それをカウンターに応用したか。まぁ、扇と戦ったなら知ってるか。一応恵くんも御三家やし、落下の情自体は知っててもおかしくないわな。

 

 「そんなトロイ動きで、カウンターなんてできると思わんほうがいいで!」

 

 直哉の蹴りが恵の体に触れようとした瞬間、落花の情が起動。

 瞬間、体内から呪力が、()()()()()()()()()

 まともに攻撃を喰らった恵の体が吹き飛ぶ。

 

 (なんや、どういうつもり──!)

 

 呪力の代わりに発生したのは、落雷。

 自身の呪力ではなく、影の中の鵺に肩代わりさせたか。

 

 「無茶苦茶やるなぁ、恵くん!!」

 

 それでも、勝つのは俺だ。

 全身を雷に焼かれてもなお、依然トップスピードは維持。

 いや、それどころか。どんどんと速度が上がっていく。

 

 それに呼応するように、伏黒恵は次なる一手を取る。

 頭の毛が更に逆立つ。両脚をぱちぱちと光が包む。全身に、鵺の影を纏う。

 電気の特性を持った呪力を纏った姿。

 円鹿の治癒能力と併用し、足裏に溜めた雷を放つことで、急加速。

 

 禪院直哉と伏黒恵の、超高速のぶつかり合いは、道路を結ぶ光の線となって結界を巡る。琥珀の如き煌めきが漏れる。

 音と影が競り合う。どんなに速い物体でも、影は常にその後を追い続ける。

 影はどこまでも追いかける。影は猟犬だ。

 

 「まだ、まだや!」

 

 踏み込む。より速く前に進むために!

 視界が赤く染まる。心臓が異常に速く脈打つ。

 

 「いや、これで詰みだな」

 

 前へ前へ、それだけに意識が向いてしまっていた。

 故に、初歩的なミスを犯す。

 

 地面が沈む。踏み込んだ地面に伏黒恵の影が掛かっていた。 

 加速の反動がくる。1秒間のフリーズが訪れるよりも前に。速度が死ぬ前に、右手を振るう。

 

 「魔虚羅」

 

 最悪のタイミングで、魔虚羅が再召喚される。天逆鉾は?間に合わない。なら。

 正の剣と、風雷がぶつかり合う。負ける。打ち負ける。

 

 「負けて、たまるかぁあああああ!!」

 

 フリーズよりも速く、投射呪法を上書きする。

 全身の筋肉から血管が浮き出る。

 

 パリン、何かが割れる音と共に互いの刃が割れる。

 次の瞬間、自身の刀を持った恵が、それを左脇腹めがけて振るう。満象、鵺、玉犬の力を持った刀。それを喰らえば即死は必定。

 

 「ドブカス...がぁ!!」

 

 咄嗟に差し込んだ天逆鉾。純粋な力で押し負け、本体からわかたれて久しいその弱りきった刃が砕け散る。

 

 雷撃を纏った蹴りが、禪院直哉を吹き飛ばす。

 それがアパートの壁に当たると、戦闘の余波で脆くなっていたアパートが倒壊する。

 

 蹴りが当たった瞬間は、まだ死んでいなかった。

 

 「当主候補、その末路が呪力の関係ない、瓦礫での圧死、か」

 

 粉塵が晴れた先、出来上がった瓦礫の山を眺める。

 

 ──いや、まだ終わっとらんよ

 

 禍々しい、不吉な何かが瓦礫の中で蠢く。

 瓦礫の山を突き破りながら現れたのは、芋虫のような呪霊。

 

 『術師は呪力以外で殺してはいけない』。

 あぁ、こいつ。呪霊になりやがった...っ!!

 

 「ぐっ!」

 

 クロスした腕で攻撃を受け止める。僅かにだが、先ほどの最高速度よりも速い。それを代償なしで出すか。

 

 まぁ、漏瑚よりはマシだな。

 

 「『穿血』」

 

 「呪霊もちゃんと痛いんやね。ぎょーさん祓てきたけど、どの子も皆痛かったんか...申し訳ないなぁ...」

 

 穿血を同線に電撃を流し込まれ、芋虫がのたうつ。

 

 「ま、思ってないけど」

 

 突撃が伏黒恵の体を吹き飛ばす。

 そして、前回の最後へ話は戻る。

 






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高羽・レジィ・釘崎with特級フレンズ「やぁ」

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