共鳴りとは──魂の振動(大嘘)   作:美味しいラムネ

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遅れてしまい申し訳ないです


伏魔御廚子

 

 

 

 

 「本当、頼りになる奴だよ。東堂は──俺の兄弟達は!」

 

 あの穿血は、脹相の放ったものだろう。全てを終わらせる時が来たんだ。

 ニヤリ、と笑って悠仁が両面宿儺に拳を叩きつける。

 その威力に、宿儺は両腕を交差させて防いだものの、その上から地面に溝を作りながら吹き飛ばされた。

 

 「領域展開」

 

 乙骨憂太の声が聞こえた。そう、ここからは総力戦だ。私達は、私達じゃなく、全員で呪術師なんだ。私たちだけで戦っているんじゃないんだ。見せつけてやれ、私たちの強さを、強かさを。

 

 

 「現代術師、舐めんじゃないわよ」

 

 「『真贋相愛』

 

 「ごめん、みんな。遅くなった」

 

 

 荒廃した現代の世界。

 終わった世界。見捨てられた世界。自分が生きていていいのかと苦悩し、そして答えを見つけた者の世界。

 

 ある少年は友に価値を見出し、ある少年も友に救われた。

 

 剥き出しの鉄筋コンクリートが地面から乱立し、空をあわじ結びが結んでいた。その地面には、無数の刀が乱立していた。

 

 「今、宿儺は生身というよりは呪具に近い状態...多分、あれで倒せるわよ」

 

 「分かった。...今、ここで全て終わらせる」

 

 全てはここから始まった。もう1人の呪いの始発点にして終着点。乙骨憂太。完全顕現した呪いの女王と共に並び立ち、地面から抜き取った刀を横薙ぎに振るった。

 瞬間、両面宿儺の体が大樹に縛り上げられる。

 

 「『彌虚葛籠』...ククッ。無限に乱立する刀の世界。それが貴様の生得領域。コピーした術式による無限の択、それが貴様の領域か!」

 

 必中で付与されている術式は、まず間違いなく天使の術式と思っていいだろう。領域が使えない状態になった俺を沈める、必殺の策と言ったところか。『彌虚葛籠』を解くわけにはいかんな。

 

 「なぁんて、思ってるんでしょうけど!──受け取れッ!」

 

  領域対策などしてくるのは当たり前。分かっていた。だから、その上で上から殴るのみ!

 私が投げ飛ばした虫籠型の呪具を乙骨が受け取り、同時に一本の刀を掴む。どの術式が出るのかはランダム。しかし、この術式だけは間違えない。そういう()()をしたもの。

 

 空いた両腕で解を放とうとした宿儺目掛けて、悠仁と恵の蹴りが放たれる。半分の腕は領域対策に奪われ、もう半分は2人の対処で封じられた。この状況でこれの対処はできないでしょう?

 

 「私の右腕食べたんだから、その分は働きなさいよ!『簪・平打ち』!」

 

 牽制として放った釘の雨が両面宿儺をその場に縛りつけ、そこに悠仁の拳──逕庭拳が炸裂し、満象の重量と貫牛の貫通力を共なった恵の突進が宿儺の体を吹き飛ばす。

 吹き飛ばされながらも、即座に解を放とうとした宿儺目掛けて、その解による結界すらも貫通しながら、超重量の刀の一撃が飛来した。

 

 「『星の怒り(ボンバイエ)』...これは、九十九さんが万一にって託してくれた術式だ」

 

 頭にできた傷を即座に再生しながら、呪いの王が不敵に笑う。

 余裕。まだ何か隠し札が?関係ない。何を隠していようと、何もできないままに殺し切る。

 

 ──五条先生が削り、後輩の皆んながここまで繋いだ。この勝機を繋ぐ!

 

 乙骨が、私が作成した形代を取り出し、そこに虫籠から飛び出した蝿頭の群れ─その総数、およそ千─を撃ちつける。そして、もう一本の刀を地面から引き抜く。当たりだ。

 宿儺の周りを蠅頭の群れが旋回し、それらの軌道上に体が触れた瞬間、その表皮から血が溢れ出す。

 

 「式神の軌道上に不可視の結界を張る術式と、釘崎野薔薇の術式の合わせ技か!」

 

 少しの溜めの後に放たれた通常の解から全員を守るようにして空間をシーツのようにして掴み取り、その攻撃を逸らす。

 

 「『宇守羅彈』」

 

 「黒ッ閃!」

 

 宿儺の目の前の面が弾け、その体に傷を刻む。それを癒す暇も与えないと、飛び込んだ悠仁が拳を放つ。今の悠仁は最高潮だ。黒閃が出るとあらかじめ分かっていたかのように叫んだ。

 仰け反った宿儺の半身が、不可視の領域に深く切り刻まれる。そこ目掛けて、呪いの女王が突進し、宿儺の体を鷲掴みにして地面に叩きつける。

 

 すぐさま起き上がり、カウンターとして放ったであろう宿儺の拳が予知染みた動きで避けられ、お返しに星の怒りがその胸を揺らし、宇守羅彈がその肝臓を貫いた。

 宿儺がよろめき、そこ目掛けて悠仁が両の拳から黒閃を放ち、同時に宿儺の拳からも黒い火花が散った。

 両者共に勢いよく吹き飛ばされながら、何度も地面をバウンドしながらようやく止まる。

 

 「合わせるぞ、釘崎!」

 

 その先に待ち構えていたのは、私達だ。

 形代が作り出した球場の影の空間の中に宿儺が侵入した瞬間、私は恵の影に腕を差し込む。

 

 「「『簪・三千世界』!」」

 

 一切の逃げ場を潰した七色の釘による飽和攻撃。解で叩き落とせる釘の数を100とすれば、それを上回る200,300の釘をぶつけ続ければいつかは倒れる。

 

 3秒、その後、宿儺の体を中心に展開された雷が形代を焼き尽くし、全身に鉄釘が刺さった状態で脱出してきた。

 同時に、私の左肩を中心に、世界が断たれた。

 

 「少し照準がズレたか」

 

 「ちょっと疲れてきたんじゃない?そのまま永眠すれば?」

 

 肩口を押さえながら、宿儺目掛けて大地を蹴る。腕を治す時間すら惜しい。

 肩口から吹き出す血をそのまま目潰しのように放ち、懐から取り出した黒板消し型の呪具を取り出す。それが殴られた瞬間、白煙が視界を完全に埋め尽くす。

 

 疲れ切っているのは私達も同じだ。でも、限界じゃない、限界なんてない。そんなもの、とうの昔に置いてきた。

 

 「ねぇ宿儺、粉塵爆発って使い古されすぎて逆に新鮮だと思わない?」

 

 僅かな炎と共に爆発が発生し、宿儺の聴力と視力が完全に釘付けになる。瞬間、腕を再生させて宿儺の両目、喉仏、心臓、股間に流れるように釘を打ちつける。

 使えるものは全部使え。今まで経験してきた全てを。

 

 「ちっ...気づかれてたか!」

 

 爆炎の中から飛び出した恵が悪態を吐く。その手には、魔虚羅の如き正の呪力の剣が握られていた。

 不意打ちは簡単に避けられ、逆に背中から解に切り裂かれる。

 

 「なるほど、確かに今の俺は呪具のようなものだ。呪霊ほどではないが、正の剣は有効だな」

 

 世界を断つ斬撃が放たれようとした瞬間に、恵を抱えて離脱する。左足が裂かれたが問題はない。...いえ、まって。威力が僅かに落ちている気が...?

 

 飛び退きながら藁人形を縛り上げると、同時に宿儺の体も丈夫な荒縄に縛り上げられる。同時に、絡みついた影がその体を地面に縫い付ける。

 

 「やれ!切れっ!」

 

 掠れた声で絶叫する。

 

 「「『龍鱗』『反発』『番の流星』」」

 

 乙骨憂太と虎杖悠仁。2人が並び立ち、その腕を構える。

 世界を、空間を切り裂く感覚は共に知っている。そして、その手本も見た。術式も持っている。

 

 『世界を断つ斬撃』が、交差状に放たれる。

 気づいた時にはもう遅い。回避も不能、世界を断つ斬撃は、同じ世界に介入する一撃でしか防げない。しかし、4本の腕のうち2本は領域対策に使われている。ならばもう手は一つしか残されていない。天使の術式を耐えぬき、そして迎撃を──

 

 「『動くな』」

 

 一瞬、動作が止まる。もう、詠唱も間に合わない。だから、咄嗟に無詠唱で放つしかなかった。世界を断つ斬撃を。その結果、縛りの揺り戻しが発生した。定義が曖昧だった故に起きてしまった失敗が。

 咄嗟に放たれた斬撃の威力は、あまりにもお粗末で、普通の解にすら劣る始末だった。

 

 「取ったッ!乙骨先輩!」

 

 領域対策に使われていた宿儺の両腕が消し飛び、その身を守っていたものが消える。

 

 「これで、終わりにしよう──出力最大『邪去侮の梯子』

 

 サラサラと、光の中で両面宿儺の体が薄れ始める。術式の消去、それは呪具化した宿儺にとっての天敵であった。

 

 勝利を確信した瞬間だった。

 

 (でも、この程度で終わる相手?いや、違う!)

 

 嫌な予感がし、咄嗟にそばに居た恵の体を引き寄せる。その行動は間違いなく正解だった。

 

 ──解と捌の工程を経て、初めて竈の扉は開く。しかし、今。その扉は五条悟の手によって固く閉ざされていた。開いたところで速度も範囲も乏しいという問題があった。

 

 ならばどうするか。薪を焚べればいい。竈に薪を。最後の呪具、神武解を焚べる。特級呪具という最高の素材により、その炎は再び激しく燃え上がり、黒閃によって上がったボルテージも相まって、両面宿儺の体内で燃えるその炎は一瞬にして周囲を揺らがせる程の熱を持つ。外部への解放こそまだだが、内燃機関として宿儺の呪力を燃え上がらせる。

 

 これにより再び最高効率で循環し始めた両面宿儺の呪力は、やがて一つの世界を作り出す。

 

 「嘘でしょ...それは使えなくなっていたはず!『簪』!」

 

 恵の体を庇いながら、放った簪は一瞬にして細切れになった。

 

 「領域展開──『伏魔御廚子』

 

 崩壊しかかった、御厨子が現れる。呪いの王の生得領域にしてはあまりにも見窄らしく、故におどろおどろしい。

 

 その攻撃の全てを乙骨憂太に集中させ、領域を崩壊させる。

 無限の刀と、無尽の斬撃がぶつかり合い、最後に乙骨憂太の世界が崩壊を始める。

 

 「ある人から伝言です」

 

 崩れゆく領域の中、乙骨憂太が一枚のレシートを取り出す。

 

 「『せいぜい最後まで道化となって踊ってくれよ』だってさ」

 

 私たちの呪力が回復する。あぁ、やっぱり生きてたってわけね。

 乙骨の領域が破壊された。宿儺の領域も不完全とはいえ戻った。竈の炎も再び灯った。追い詰められた?否。追い詰めたんだ。縛り、呪具、隠し札、保険。その全てを悉く明らかにさせ続けた。

 

 「その領域、借りるわよ」

 

 ここで殺しきれなかった場合の想定もしていた。

 

 「釘崎野薔薇──その術理は、渋谷で俺の領域を防いだ!」

 

 「『領域改変』」

 

 私は、私の世界を持たない。

 だから、乙骨憂太。貴方の世界を借りる。そして、私と悠仁の縁を辿って、世界を接続する。

 

 今の悠仁の結界術の練度じゃ、どうあがいても領域の展開はできない。だから、乙骨憂太の領域の残骸を改変して、虎杖悠仁の世界で塗り替える。

 2人がかり、いや、3人がかりの領域展開。

 

 それは、伏魔御廚子に似ていた。しかし装飾は異なり、どちらかといえば快活な雰囲気を漂わせる祓の祠。宿儺という呪力に浸され、その世界が書き換えられた故に辿り着いた王の世界。

 2人の王が向かい合う。

 

 「領域展開──『伏魔御廚子』!」

 

 宿儺の御廚子から放たれた斬撃と、悠仁の御廚子から放たれた斬撃がぶつかり合い、甲高い音を上げた。

 呪いの王の隠し札は全て切られた。あとは、現代術師と史上最強の地力比べだ。

 

 巡り巡った呪いが、遂に収束する。

 

 




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決着の時は近く。
外でスタンバってた術師達による総力戦。

Q.乙骨生きてる?
A.生きてる。なんなら回復したら戦線復帰してくるかも知れない


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