共鳴りとは──魂の振動(大嘘)   作:美味しいラムネ

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幼魚と逆罰、エピローグ+短編一個

日常回です









幼魚と逆罰③

 

 

 

 

 霊安室に並べられた死体を眺める。

 

 「...俺は、今日人を殺したよ」

 

 ぽつり、と悠仁が呟く。

 里桜高校での一件。その中で、呪霊を祓うためとはいえ、私たちは多くの改造人間を殺した。元々は人間だった相手を、何の躊躇いもなく。呪霊のように殺した。

 

 戦闘の興奮が冷め、脳がゆっくりと情報を咀嚼する。

 

 「結局さ、呪霊も祓えなかった。人ってさ、みんないつか死ぬんだよ。」

 

 「知ってる。」

 

 「ならせめて正しく死んでほしい、そう思ってたんだ。」

 

 ぎゅ、と手すりを強く握りしめる。

 

 「正しい死、ってなんなんだろうな」

 

 正しい死、かぁ...

 手のひらを、天井の蛍光灯にかざす。

 

 あー、くっそ。はじめっから術師側だった私らと比べて、悠仁はこっち側に来たばっかりだ。まだ割り切れてない部分も多い筈だ。

 

 「...殺した数で言うなら、俺や釘崎の方がよっぽど多い。だが、そういう問題でもないだろう。」

 

 悠仁の視線が揺れる。

 

 「...俺は、不平等に人を救う。命の天秤は平等じゃない、俺はそう思う。仮にあそこで改造人間を逃していれば、それ以上の数の人間が死んでいた。抵抗しなければ当たり前だが俺たちも死ぬ。俺は、あの時の選択を間違いだとは思わない。」

 

 「結局さ、私も恵も。救える数には限りがあるって割り切ってる。命に価値をつけて、勝手に天秤に乗せてる。自分の人生の席に、関わりのない他者まで座らせようとは思えない。あんたは優しいよ、本当に。」

 

 「悠仁。あんたがさ、後悔してるのか、忘れないように自戒してるのか、罰でも求めてんのかはわかんねぇ。でもさ、殺したことを罪だと思うならさ、私たち。皆共犯だよ。」

 

 理論上、魂を知覚した時点で治すこともできたかもしれない。

 でも、私にはできなかった。根本的に、誰かを治すことに私は向いていなかった。

 あそこまで滅茶苦茶になった魂をどうこうする技量は、私にはなかった。

 仮に自分の魂だったら、改造されてもすぐに正常な状態に戻せたかもしれない。でも、改造された彼らは、殺すことでしか解放できなかった。

 

 仮に、私が五条悟だったら、両面宿儺だったら。資料で読んだ夏油傑や、乙骨憂太だったら。

 割り切ってる、なんて口で言っちゃいけるけど、完全に割り切れるほど非情になれやしない。自分らしくもない考えが頭の中で反響して止まらない。

 

 「正しい死とは何か、そんなこと私にもわかりません。死は万人の終着ですが、同じ死は存在しない。それら全てを導くと言うのはきっと苦しい。」

 

 私はおすすめしません、と七海が呟く。

 高専に保管されている死亡記録を思い出す。そういえば、七海さん。同期が亡くなっていたっけな。

 

 「などといっても、悠仁君。君はやるんでしょうね。死なないようにしてくださいよ。君を必要とする人は、あなたの近くに既にいるんじゃないんですか?」

 

 「...ナナミン」

 

 「それに、あなたたちが死力を尽くしたことで、救えたものは確かにあります。吉野順平くん...いや、吉野順平『四級術師』。」

 

 「それって」

 

 「えぇ。...こちらの世界に引き摺り込むのは少々心苦しいですが。事情が事情です。経過観察を経て...それこそ半年もすれば貴方達の同級生となることでしょう。」

 

 「あいつが...そうか...」

 

 ギリッギリだったけど、確かに助けられた命があった。

 何人も切り捨てた中で、拾い上げることができた。

 

 騙される形とはいえ呪霊に協力し、非術師に手を出したこともあり、さすがにストレートで高専生にするわけにもいかなかったそうだ。とはいえ、呪術界は万年人手不足。多少のことは目を瞑って術師にするという判断を上は下したそうだ。

 

 「だとよ、虎杖。」

 

 「そうか。...次は、逃さねえ。」

 

 虎杖が拳を握りしめる。 

 

 「そうだな。呪霊は、祓う。それだけだ。それだけの強さを持てばいい。」

 

 「あぁ、そうだな!だったら、だったら安心だな。だってさ─

 

 恵と悠仁の肩を組むようにして飛びつく。

 

 私たちは──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♦︎♦︎♦︎

 

 

 

 

 

短編① 五条悟強襲作戦

 

 


 

 

 

 「五条悟(ゴジョセン)ってさぁ、悪い人ではないけどさぁ、うざくね?」

 

 「急に何を言い出すかと思えば。...まぁ。それは俺もそう思う。」

 

 ある日の、授業が始まる前の時間のこと。

 

 伏黒恵は考える。

 軽薄、ちゃらんぽらん。その言動で周囲を振り回す、生粋のクズ。...でも、誰よりも信頼できるし、信用できる『最強』。

 

 「そういやこの前釘崎制服パクられてたもんな」

 

 「あれ、完全自作なんですけど。制服の図面もらって1から作ったから相当時間かかったんですけど。」

 

 「釘崎お前裁縫得意なのか」

 

 「まて虎杖。それは『裁縫が得意』で済ませていい問題ではないと思うぞ」

 

 制服を改造するならまだしも、1から作るって何を考えているのだろうか。今まで気づかなかった。

 

 「一応人形と関わりの深い呪術の家だしな。布もこだわってんのよ?アラミド繊維ってやつ。真依の弾丸で穴開かなかったのもそれが理由よ。可愛さは機能性よ?」

 

 「釘崎お前ドリアンだったのか!?」

 

 時々虎杖と釘崎の会話についていけなくなる時があるが、まぁ本人達が楽しそうだしいいだろう。

 

 「で、話がずれたわね。...あの邪智暴虐の五条悟に、天誅を下すべきだとは思わないかしら?」

 

 「いやー、別に俺はそれほど。一応俺あの人いなかったら死刑執行されてるし」

 

 「それはそれ、これはこれよ!」

 

 「天誅って、具体的にどうするんだ?」

 

 「あら、恵。意外と乗り気じゃない!」

 

 天誅か、具体的に何をするつもりなんだろうか。お世話になってはいるが、それはそうと少しぐらい痛い目を見てもらいたいと言う気持ちがないわけではない。 

 釘崎。時々、急に精神年齢下がるよな、と思いながら眺める。

 

 「じゃじゃーん!これよ!呪術師御用達のオークションサイトで50万で競り落とした3級呪具『なんかめっちゃ粉の舞う黒板消し』!これを五条悟の頭にぶち込むのよ!」

 

 「何それめっちゃ面白そう!」

 

 虎杖がキラキラと目を輝かして釘崎から呪具を受け取る。

 おい待てもう粉が広が、煙い。煙たいぞ!

 

 「おい馬鹿虎杖やめ、窓を開けろ!!...というか、無下限どうするつもりだったんだ?」

 

 「まぁ、恵には難しいわよねぇ!」

 

 「あ゛?」

 

 何で俺は煽られなければならないんだ。

 

 「まぁまぁ、ここはプロの悪戯師に任せておきなさい。ついてくるのよ!悠仁!」

 

 「うっす!」

 

 教室のドアの方へ消えてゆく二人を見ながら、伏黒恵は考える。

 

 ──こいつら、小学生か?

 

 勿論。ただただ頭に落としただけの黒板消しは、五条先生に触れることなく地面に転がった。

 

 

 ♦︎

 

 

 

 あの日から、4日ほど経過した。

 一人だけ任務があり、暫く授業を外していたが、釘崎の『天誅』とやらはどうなったのだろうか。

 

 そういえば、今回の依頼も普通に一級案件だったよな。碌な情報もなかったし俺を殺すつもりなんだろうか。

 

 ガラガラ、と教室の扉を開ける。

 

 「あ、おはよー恵!おつかれー」

 

 「お、伏黒!お疲れさん!」

 

 「...釘崎、虎杖。お前らまだやってたのか。」

 

 黒板消しに何やら細工をしながらしゃがみ込んでいる二人を発見する。

 まだ諦めてなかったのかこいつら。

 

 「いやぁ、恵。結構惜しいところまで行ったんだけどねえ、ダメだった。見れなくて残念ね。悠仁渾身の両面宿儺のモノマネ。ボキャブラリーが『鏖殺だ』と『ケヒヒ』しかなくてすぐバレてたけど*1

 

 「おい待て、おい待て。いやちょっと待て!」

 

 「いや、釘崎も頑張ってたんだけどな。呪力を練り上げて、擬似的に斬撃を放ってみたり。」

 

 待て。情報の処理が追いつかない。虎杖、お前は何をやっているんだ。釘崎、何だその超高等技術は。

 

 「いずれは対象の呪力量・強度に応じて自動で最適な斬撃を繰り出せるようにしたいわね。まだ切れてスイカが限界なのよねぇ。あと形代越しに体内から斬撃を炸裂させたり」

 

 「また微妙な耐久性の物を例えに...何故悪戯にそこまで全力を注ぎ込めるんだ、お前らは...」

 

 呆れて声も出ない。術式に頼らず、呪力を練り上げて特定の形状に変えて放出。普通はできないぞそれ。

 

 俺と二人で領域展開とか、反転術式のアウトプットとか。魂も認識できるらしいし、変なところで器用だよな、釘崎。

 

 「この五日間、いろいろ頑張ったのよ?幾つかは惜しいところまで行ったし。例えばね──

 

 

 

 1日目。この時はまだ恵もいたわね。そのまま頭に落としたら失敗したわね。

 

 2日目。普通の黒板消しと呪具の黒板消しを同時に大量に投げつけて、物量で攻めたのよ。普通に返り討ちにあったわね。

 

 3日目。趣向を変えて、悠仁のモノマネと私の斬撃で気を引いて、その隙に拾った五条悟の髪の毛を辿って共鳴りしようとしたのよ。距離関係なく直接魂に触れるなら、無下限も破れると思って。まぁ失敗だったけどね。理論上は可能そうだけど、なーんかレベル差がありすぎて弾かれた、みたいな。

 それこそ、『世界を揺らす共鳴り』とかできれば話は別なんでしょうけど。」

 

 

 「なぁ釘崎。この辺から、『如何にして無下限を破るか』に目的が変わりつつないか、おい、待て。目を逸らすな」

 

 気まずそうに目を逸らしながら、 釘崎は話を続ける。

 

 「4日目。術式は領域で中和できるってのを思い出してね、この前祓った、特殊条件下で簡易領域を使える呪霊の式神持ってきたのよ。

 作戦は、こうだった。耐久力に優れた一級呪霊の式神『青龍』で足止めして、簡易領域を展開するまでの時間を稼ぐ。」

 

 「どっちもこの前3人で祓った一級呪霊だなー」

 

 虎杖がそう補足する。

 

 「そうね。ちなみに惜しいところまで行ったわ。青龍見た瞬間何故か五条悟の動きが硬直したし、簡易領域は展開できたの」

 

 「それで?」

 

 この話ぶりだと、失敗したのだろうが、話を続けさせる。

 

 「『流石にやりすぎ』って言われて、簡易領域持ちの方は破壊されたわね。」

  

 「一撃で塵になってたなぁ」

 

 一応、その呪霊祓うのにそこそこ手こずったんだけどな。流石五条先生というべきか何というべきか。

 

 なんともいえない表情で伏黒は釘崎を見つめる。

 

 「で、まだ諦めてない、と。」

 

 「えぇ、そうよ。それでね、昨日は初心に帰って、せめて粉だけでもつけようと教室を粉まみれにしたのよ。」

 

 「で?」

 

 「五条悟は無傷、私たちは真っ白、掃除にかかった15分。あわや粉塵爆発の危機。」

 

 爆発はしなかったけど、と釘崎は付け加える。

 

 「釘崎の式神がなかったらあの10倍はかかってたな、時間」

 

 「馬鹿、なんだろうな」

 

 「流石に無理では?そう思い始めた私たち。でもね、恵。あんたが来てくれたおかげで勝ち筋が見えてきたの!悠仁、あの言葉を言ってやりなさい!」

 

 釘崎が俺の両手を取って握りしめる。

 ...暖かいな、なんて思ってしまった。

 

 「了解!『貴様の無限とやらも、より濃い領域で中和してしまえば、儂の術も、届くのだろう?』『うん、届くよ』」

 

 あの時の火山頭か。やけに似てるモノマネだな。

 

 「ありがとう悠仁。そう、つまり!」

 

 おい、まさかこいつ

 

 「領域展開すれば、流石の五条悟でも頭に黒板消しくらうわよ!」

 

 「遊びで領域展開する馬鹿がどこにいる!!!!」

 

 「大丈夫!恵には負担はかけないわ!ただ中身が空っぽの領域を体に纏わせて、五条悟の術式を中和するだけだから!術式焼き切れたりしないから!ただ恵の領域の感覚借りるだけだから!」

 

 「なぁ伏黒!ここは一発五条先生に泡吹かせたいと思わないか!」

 

 「はぁ...」

 

 流石に呆れた。こいつら馬鹿なんじゃないかと

 まぁ、でも

 

 「今回だけだぞ」

 

 「ふぅ!言質とったぁ!」

 

 「で、理論はわかったが...どうやって黒板消しに空の領域を纏わせるつもりだ?まさか手に持って殴りかかるつもりか?」

 

 「頑張って遠隔で纏わせるわ!」

 

 「どうやって?」

 

 「気合い!多分できる!さっき黒閃キメてきたから!」

 

 「釘崎、黒閃ってそうポンポンでるもんじゃない!そういうもんじゃないぞ!間違ってる!絶対に間違ってる!」

 

 領域なんて出せば、五条先生に流石に気づかれると思うが、あの人のことだ。多分乗ってくるだろう。

 

 「恵。そろそろ五条悟(ゴジョセン)くるわよ。」

 

 「あぁ」

 

 深く、深く意識が沈む。

 魂と魂がつながり合い、意識も、術式も、魂も。全てが同調する。

 

 「「いくぞ」わよ」

 

 五条先生(ゴジョセン)が教室の扉を開ける。

 空になった領域を全体に纏った黒板消しは、徐々に、徐々に無限を中和しながらその頭に迫り、

 

 

 

 

 五条先生が、笑った気がした。

 当たってあげてもいいよ、とでも思ったのだろうか。

 

 

 

 

 ぽふ

 

 柔らかい音と共に、白塵が舞う。

 

 「や、

 

 「「「やったああああああ!!!!」」」

 

 

 同調が切れる。確かに俺にはほとんど負担がなかった。

 息も絶え絶えと言った様子で、釘崎が立ち上がる。

 

 「ふふ、見たかしら最強!油断して、生徒に足掬われたわね!」

 

 びし、っと釘崎が五条先生に指を突きつける。

 

 ふ、と五条先生がわずかに微笑んだ気がした。

 

 「いや、いやぁ!流石は僕の生徒たちだ!まぁでも、それじゃあ実戦じゃ使い物にならないかな?...これなら、教えてもいいかもね。御三家秘伝『落花の情』」

 

 「でも五条悟(ゴジョセン)ってぶっちゃけ天才タイプで教えるのは...」

 

 「うん、ずけずけ言うね。そう、だから僕の背中を見て学んでもらう。」

 

 「そうだな...ちょっと校庭に出ようか。僕は無下限を切る。落花の情しか使わない。その状態で一撃でも入れれたら、めっちゃ高い回らない寿司、奢ってあげるよ。」

 

 「おし、やるぞ、釘崎、伏黒」

 

 虎杖が、袖を捲り、腕を回しながらやる気満々と言った様子で校庭へ向かう。

 

 「いくぞ恵。合法的に五条悟ボコボコにするチャンスだ。ハンガーラックにしてやるよ」

 

 俺は別にそんな乗り気ではないが...まぁ。

 

 「いつもイライラさせられてるんだ。やってやるよ」

 

 「あ、恵。布留部由良るなよ」

 

 「釘崎、お前は俺を何だと思っているんだ。」

 

 

 

 ちなみに、1分と持たなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
不快だ、小僧 by両面宿儺







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私たちは──の後、友達だろ、って言ったかもしれないし、最強になるんだから、と言ったかもしれない。とはいえどっちも死亡フラグにしか見えない。

交流戦、どうしよう。


Q.今の恵、どれぐらいの強さ?
A.短編の3日後ぐらいに、円鹿までは調伏できた。
 
Q.青龍って?
A.オリ呪霊。虹龍のパチモン。

Q.虎杖別に殺してなくない?
A.真人戦中、数人だけ。

Q.虎杖くん、覚悟足りなくない?
A.その分3人が強くなればいい。一人欠けたら崩れるけど
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