空の冒険   作:もみの木

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時は大海賊時代――かつてこの世の全てを手に入れた海賊王〝ゴールド・ロジャー”。
彼が死に際に放った一言は、世界中の男たちを海に駆り立てた。
「俺の財宝か?欲しけりゃくれてやるぜ…探してみろ。この世の全てをそこにおいてきた」
『ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)』を巡って、多くの海賊たちが旗を掲げた。

恐らく、管理外世界の中でも極めて端的な世界情勢だろう。そのありとあらゆる世界構図も――


情報収集

ジャヤについた麦わらの一味。

一見リゾート地のような印象を受ける島だが、海岸沿いに一斉に並ぶ海賊船、船をつける前に上がる悲鳴――明らかに異常な島だ。

そんな危険な地にルフィとゾロが降りた…どう見ても何らかのトラブルを巻き起こすと判断したナミが二人を追った。

エリオもナミに連れそって船を下りて彼らを追った。情報がほしいのと、単純にこの世界を見てみたい、という願望もあった。

ナミが行くなら自分も、とサンジも降りようとしたが、ウソップとチョッパーの懇願で戦力が落ちると言われ留まることにした。

 

「ちょっといいかしら」

 

ウソップたちが修理しようと木材や機材を運び出したので手伝おうとしたスバルはロビンに声をかけられて振り返った。

ロビンは着替えて外出しようとしている。

 

「なんですか?」

「情報収集してくるけど、ちょっと付き合ってくれないかしら」

 

ロビンが手招きしたので、スバルは大して考えず船を飛び下り、ロビンの後を追った。

 

後で女が一人もいなくなったことをサンジがぼやいたのはまた別の話。

 

 

モックタウンに入るロビンとスバル。

 

「あの、どうして私を?」

「フフッ」

 

ロビンはスバルに微笑んだ。

 

「まあ前に言った空島に関する情報収集と、あなたと槍使いくんの服を見繕うためにね。いつまでもそんな堅苦しい服は嫌でしょ?」

「…あ」

 

そういえば(当然といえば当然だが)突然飛ばされたためこちらに来てから自分とエリオの服は管理局員用の制服しかない。

海賊船にお世話になる以上ある程度ラフな服は持っておいたほうがいいだろう。

 

「…でも」

 

今度はスバルから切り出す。

 

「それだけではないでしょう?多分ですけど」

「……」

「なんとなくですけど、ロビンさん、こっちのことを知りたがっていたようですし」

 

スバルとしてはなのはたちよりも年上なロビンに対してはっきりと言うのに少し抵抗があった。

ロビンはまたも微笑んだ。

 

「ええ。私が生きている間に異世界、ミッドチルダなるものは聞いたことがないわ。魔法という技術も全く、ね。

 最も、この海には常識では測れない物事があまりにも多すぎる。それこそ空島のように。

 私は考古学者だもの、そういった文献でも見たことのない情報には興味を持つのも当然でしょ?」

「そういう気持ち、わかります。私だって興味があるものには飛びつきますし。でも……言えないんです」

「魔法を生業とした職業についているそうね。恐らく警察や軍隊のような組織に所属していたのかしら?」

「大きくは違いません。ただ、魔法が発達していない世界で私たちの所属する組織については話せないんです。

 魔法のことも……本当なら喋っちゃ駄目だったんですけど」

「ある程度は信用できたということね?私を――というよりあの子たちを」

「はい。海賊と聞いたけど、全然悪い人に見えなくて……親切にしてくれましたし」

 

ロビンは苦笑する。

 

「まあ、あなたたちのことを知りたがっていたのも確かだけど、私としてはちょっと個人的に聞いてみたいことがあったからよ」

「……?なんです?」

「異世界人の、この世界の事を全く知らない人たちから見て、この世界はどう映ったかしら?」

 

ロビンの質問に、スバルは少し詰まった。そしてしばらく考え込む。

 

「難しく考えなくてもいいわよ。ありのままの思ったことを言ってくれればいいわ」

「私としては……なんだかすっごい時代だなって思いました」

 

スバルは頭をかいた。

 

「なんと言うか……大海賊時代なんて、つまり海賊が高い影響力――ということですよね――を握ってるなんて無茶苦茶です。

 司法や法律が世界を支配していないなんて」

「……」

 

ロビンはスバルの言葉を黙って聞き続ける。

これはロビンが知りようがないが、スバルは時空管理局に勤めているのだ。相棒のティアナからバカ呼ばわりされるが、

元々座学の類はそれほど成績も低くなく、管理世界における管理局、管理外世界における王政や大統領制などの政治も多少はかじってる。

それ故に、一般の人間を守る気などさらさらない海賊(犯罪者)が世界の影響力を持つなど考えにくいのだ。

スバルは続ける。

 

「でも、ルフィたちがただの犯罪者には全然見えませんでした……確かルフィってかなりの懸賞金がかけられているんですよね?

 でも、それほどの悪人に見えないです」

「それはそうね。実際彼らのような海賊は本当に極一部よ。海賊団が10あったら1あるかってくらい」

「やっぱり、そうなんですね」

「そうよ。だからあの子たちが例外で、他の海賊はあなたたちが考えているものと同じよ」

 

ロビンがそう言い切った途端、前方の飲食店で爆発が起きて扉や窓が吹き飛んだ。

そのまま怒号と罵声と銃声が響き、大量の男たちが店から飛び出して剣で斬り合ったり銃で撃ちあったりしている。

逃げ惑う通行人に野次馬のように見に来る通行人もいる。巻き添えを食らって倒れる者もいる。ケンカしている男たちも何人か倒れる。

それでも不思議と止めようとしたり通報しようとする人がいない。

 

「面倒ね…迂回しましょう」

「あ、はい」

 

ロビンの言われるがままにスバルは喧噪に巻き込まれないように道を曲がる。

しばらくしてロビンが再び口を開いた。

 

「わかった?あんな感じなのよ。あれがこの世界の海賊の大多数の姿よ。このジャヤは海軍の手が伸びてないようだけれど、

 それでもあんなのが日常茶飯事なの」

「……」

 

スバルは口を紡ぐ。

あんな光景はミッドチルダ、いや管理世界で起こったことはない。そんなことが起きれば新聞の一面に出て、

トップニュースで騒がれるに決まっている。しかしあの場にいた人たちは明らかに慣れていた。まるでいつもの光景のように。

ロビンもそんなスバルを見て、さらに声をかけた

 

「気持ちはわかるわ。海賊に襲われる事件や海賊同士、もしくは海賊と海軍の戦いなんて毎日のようにあるのが普通なのよ。

 情報が行き渡ってないこともあるけど、そう見ていいわね。

 だからこそ、この時代を疎んでる人も大勢いるわ。普通の人からすれば迷惑でしかないものね」

 

ある種の諦めに似たようなロビンの答えに、スバルはポツリと呟く。

 

「ワンピースって、そんなに凄いんですか?」

「……」

 

ワンピース。ひとつなぎの大秘宝。海賊王ゴールド・ロジャーが残した財宝。

実在するかもわからず、どんなものかすら知られない、それでいてその名前を知らぬ者はいないとされる伝説の代物。

この世の全てを手に入れると信じられ続けた。事実それを手にしたゴールド・ロジャーは海賊王となり世界の頂点に君臨した。

世界の全てが手に入る。その言葉に魅了される者は数多く、そして多くのものが海賊に憧れている。

毎日海賊が消えては増え、増えては消えの繰り返し。今のこの時代に海賊の存在を無しには回らないほどに。

手にすれば世界を手に入れられる――夢のような話だが、スバルにはそれがどういうものなのか想像もつかない。

 

「…海賊王、世界の頂点に君臨したいと思う人間はどの時代にも数多くいるわ。そのプロセスを比較的簡単に踏めるなら、

 自分にも世界を握れるチャンスがあるなら、やってみようとおもうんじゃないかしら」

「私には……よくわかりません」

 

スバルは続ける。

 

「私の夢は、災害や犯罪者から助けを求める人たちを助けることです。災害の中で自分が無力なのが悔しかったんです。

 そして私を助けてくれた恩人はとっても輝いていて…その人を目指してずっと頑張ってきました。

 誰もが平和に過ごせるように…だから、世界が手に入るって言われてもピンときません」

「あなたは――とてもいい子ね」

 

ロビンは優しそうなまなざしでスバルを見つめる。そして不意に、ある質問をした。

 

「あなたがどういう組織に所属しているか知らないけど、法で動く組織と思ったうえで一つだけ聞くわ。

 もし、1000人の犠牲で100万の人命が救える、と聞かされたら躊躇なく実行できる――そんな連中をあなたはどう思う?」

「えっ…」

 

一瞬言葉に詰まるが、質問の意図が分からず逆に聞き返してみた。

 

「それってどういう状況なんですか?1000人を犠牲にすれば100万人が返ってくるっていう意味ですか?」

「ちょっと違うわね。正確にいうなら凶悪な犯罪者がいて、将来的に大勢の人を殺す力を持っているとして、

 1000人の犠牲を払えばその場でその犯罪者の息の根を止められる、もしくは捕まえられる、ということよ。

 ここでいう100万人って言うのは、いうなればその犯罪者を逃がした時に出る未来の犠牲の数といったところかしらね」

「そんなの、おかしいです!それじゃその犯罪者と何も変わらないじゃないですか!」

 

スバルは思わず憤慨した。

恐らく六課の人間なら誰も賛同しないような暴挙だ。考えてみたことすらない非道だ。

もし自分がそんなことをすれば一生自分自身を軽蔑して生きるだろう。

ロビンは優しそうなまなざしを崩さない。

 

「そういう極普通の感覚、これからも忘れちゃだめよ。―――この辺でいいかしら」

 

話を打ち切り、ロビンが指示した先は大通りから少し離れた小さい酒場だ。ロビンとスバルはドアを開けて中に入る。

中は薄暗く酒の匂いと男たちの笑い声で支配された空間だった。

珍しそうに周りを見るスバルと、一顧だにせずカウンターを目指すロビン。

 

「マスター、コーヒーを。この子にはジュースでも。あとできたら地図があればくれないかしら」

「酒場だってのに変わったもん欲しがるな、嬢ちゃんたち。この島は初めてかい」

「えぇ」

「は、はい」

 

緊張するスバルと慣れたような対応をとるロビン。

店主はすぐに二つのコップをだし、同時に地図も出してくれた。

 

「マスター、この辺で何かいい服屋はないかしら?」

「ああ、ここから大通りを抜けて右手に――」

 

店主の声がそこで止まる。スバルは振り返ると酒場で酒をあおっていた男たちが赤ら顔でこちらに寄ってきている。

 

「おーうねえちゃんたち。なかなか綺麗じゃねえか。こっち来て一緒に呑もうや」

「あ、い、いえ結構です」

 

酒の匂いにスバルは若干引き気味になりながらも断る。すると店内がギャハハハハハ!と笑い声が響く。

 

「おいおいフラレちゃったよオレ!」

「おめーはかおがきたねえからだバーカ!オレが行くぜ!」

「おうおう嬢ちゃん、可愛い顔して言うじゃねえか!こっち来いよ!」

 

男の一人がスバルの腕を掴もうとする。顔を引き攣らせながらも反撃してやろうかと思ったスバル。

そこでようやくコーヒーをあおったロビンが振り返る。

 

「あなたたち、この辺の海域に詳しいかしら?」

「は?知らねえな。俺たちはこの島に住んでるわけじゃねえし、航海士じゃねえんだ。興味もないな」

「だったら、この辺の海域について詳しい事情を知ってる人を教えてくれないかしら」

「はぁ?」

 

よくわからないことを聞く女だ、と言わんばかりの反応の男に、隣の男が耳打ちする。

 

「はみ出し者のクリケットのジジイがいただろ。あのジジイなら詳しいんじゃねえか?」

「クリケット?」

「ああ、モンブラン・クリケットっていうジジイがいるんだよ。阿呆みたいに夢ばっかり語るバカだ」

「そう。じゃあその人がどこに住んでるか、教えてもらえないかしら」

「おいおい嬢ちゃん、さっきからこっちに聞いてばっかで不公平じゃねえか?」

 

店内全員の男たちがロビンとスバルを取り囲む。スバルは酒の匂いで顔を歪めたままだがロビンは平然としている。

スバルは待機状態のマッハキャリバーを握る。男の一人がにやけながらロビンに顔を近づけた。

 

「こっから先の情報はタダじゃねえ。嬢ちゃんたちの頑張り次第ってとこだなぁ」

「そう。そういうのなら――海賊らしく」

 

顔を近づけた男を含め、突如肩に咲いた手。男たちは、スバルは、その光景に驚愕した。

 

「なにこれ!?」

「こ、この女!?」

「能力者かッ!?」

 

彼らの言葉を一切耳に傾けず、一言下す。

 

「〝三十輪咲き「ストラングル」”」

 

一斉にヘッドロックをかけた。男たちはもれなく泡を吹き白目を向いて気絶した。―――いや

 

「調子に乗ってんじゃねえぞ女ァッ!」

 

ロビンの死角に潜んでいた一人の男が血管を額に浮かべ片手にサーベルを持って飛び込んできた。

これではロビンの反応が間に合わない――と思われたが、それでもロビンは一切表情を変えない。

男の横からとびかかる青い人影。

 

「ハァッ!」

 

スバルが拳を振るう。男のサーベルにぶち当たり、手から離れてくるくる飛び、天井に刺さる。

男は血走った眼でスバルを睨み、飛びかかろうとしたところで、今度は背中と床から咲いた手によって両手を後ろに掴まれ、

両足は固定されてしまい、バランスを失った男はそのままあっけなくドシンとうつぶせに倒れた。

ロビンは倒れた男を顔だけ強引に上にあげ、ジャヤ島の地図を見せながら言う。

 

「あなたたちがさっき言っていた、そのモンブラン・クリケットという男の居場所を教えなさい」

 

男は黙ってこくこくとうなずくだけだった。




ジャヤはアクション少なくてつまらないなぁ…能力も中々見せ辛い。
ダイジェクトに進めて5話くらいにはもう空島に突入させようと思います。

そういえばこの頃のロビンはまだ名前呼びじゃないんだよなぁ…エリオは槍使いくんにしたけどスバルはどうしよう…
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