シティハンター vs ゴルゴ13   作:三流FLASH職人

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第七話 そして舞台は東京へ

「瞳! お前は全く、なんで動いたんだよ!!」

「本当です! あなたがたが下手に動いたら、全てが台無しになるのですよ!!」

 喫茶『キャッツ・アイ』にて。泪、瞳、愛の三姉妹は、お目付け役の内海俊夫と野上冴子刑事に、きっちりお説教を食らっていた。

 

 昨夜、二人の監視の目を抜け出した彼女らは、ハインツ展の作業員をひとりを拉致して、その人物に変装して現場に乗り込もうと目論んだ。

 だが、その作業員は瞳の強襲をなんなくいなし、彼女に警告を与えた後、警察に通報すらせず平然と立ち去った。それは明らかに荒事に慣れている、只者では無さを備えていたのだ。

 

「あはは、ゴメーン。やっぱパパに会えるとなると、どうしてもねー」

 末娘の愛が愛想笑いしながら俊夫に甘えた声を出す。二人の姉がしゅんとして、立場無さそうに説教されるのを見て助け舟を出したのだ、こういう時に末っ娘というのは得である。

 

「相手はどう考えてもシロートじゃない。そしておそらく奴らがハインツに何らかの形で繋がっているのは明らかだ」

「そうね。下手に手を出すと逆効果にもなりかねないわ」

 海坊主と美樹もそう警告する。ふたりはまだ正式に依頼を受けたわけではないが、大恩あるこの喫茶店のオーナーの三人に対して、是非とも父との再会を果たしてもらいたいと願っている。

 だからこそ、それがご破算になるような軽挙妄動は慎んで欲しい所だ。

 

「お二人とも、どうかその位でご容赦ください」

 三姉妹の執事、永石がそう仲裁に入る。彼は昔から親友ハインツの為に瞳たちの泥棒行為を影ながらサポートしていて、当然今回の彼女らの行動も知っていた。

 だが、やはり認識が甘かったようだと反省の思いがある。テロリストやギャング組織を相手にするのは初めてではないにせよ、それらから物をかすめ取るのではなく、真っ向から対峙するのは、やはりプロに任せた方が良さそうだ、と。

 

「で、永石さん。お願いしていた件は順調ですかな?」

「はい、(ファルコン)様。貴方に指定されたビルの買い占め、滞りなく進んでおります」

 海坊主と永石のその会話に、三姉妹も俊夫や冴子も「えっ?」という顔を見せる。ビルを買い占めるって……何のために?

 

「あの展示会場、その周辺の狙撃ポイントとなるビルの買い占めを頼んでおいたの」

 美樹がウィンクしながらそう言って、カウンターテーブルに地図を広げる。その地図にはあの会場を中心に、周囲2kmの図が示されていた。そしてゴルゴ13が狙撃に使いそうなビルにしっかりと赤丸が付けられている……その数、20棟以上!!

 

「か……買い占めたって、こんだけ、全部?」

「ここ新宿なんだけど……東京の一等地、よね」

 俊夫と冴子がそのトンデモ値段の買い占め行動にひきつった笑顔を並べる。その背後には一匹のトンボが、なんかドットみたいな航跡を引きながら通過していった……気がした。

 

 まぁさすがに展示期間中だけのレンタル契約らしいけど、いやはや永石の本気が伺える行動だ。海坊主にしても依頼がまだとはいえ、座して動かないつもりはなかった。獠を信用していないわけではないが、なにせ相手はあのゴルゴ13だ。念には念を入れてしかるべきだろう。

 

 その狙撃ポイントも、冴子がICPO(インターポール)のツテを頼って取り寄せた『Gファイル』を元に、プロである海坊主と美樹が入念に割り出したものだ。

 何せ相手(ゴルゴ)はライフルの射程外から、山なりの弾道を描いて目標に命中させるとか、ビルの窓に映る標的の姿を頼りに見えない場所から狙撃した例すらある怪物(モンスター)、ありきたりの狙撃ポイントだけでは抑えきる事が出来ない。

 

 あとは、この押さえたビルに配置する人員だが……

 

 カランカランという扉のベル音と共に、ぞろぞろと喫茶店に入ってくる面々。

「ヤッホー泪さん、相変わらずお美しい」

「よ、あーいちゃん。パパに会える日が楽しみだねぇ」

 入店して来たのは元『キャッツ・アイ特捜科』の面々だ。リーゼント+グラサンの逆噴射男、平野と、カンフー使いのロリコン刑事武内、そして敏腕女性刑事の浅谷。

「全く……こんなんでいいんですか、野上刑事」

 浅谷が二人の緊張感の無さに息をつく。が、冴子は「充分よ、ご協力感謝します」と三人に敬礼をする。応えて慌てて返礼する三人。

 

「私の妹の麗華も手を貸してくれるわ、これで狙撃のポイントはほぼカバーできるでしょ」

「あまーい、甘いねぇサエコちゃーん」

 突然背中から両肩を掴まれ、思わずぎょっ! という顔になる冴子。後ろにいたのはガタイのいい金髪男、ミックだった。一体いつの間に……?

「ようファルコン、リョウの奴はもうターゲットと接触できたのか?」

「さぁな、奴の事だから勿体付けてるかもしれん」

 さも参戦するのが当然とでも言うように慣れ合って来るミック。このへんのノリは本当にアメリカ版の獠そのまんまだ。

 

 これだけの人員を警戒に割けば、さすがのゴルゴ13といえど狙撃は困難だろう。ましてや狙撃ポイントのビルを押さえている以上、そのビルに備えられている監視カメラがそのまま彼らの『目』にもなるのだ。

 

「で、ゴルゴ13()()の邪魔者はどーするんだ?」

「そんなのは獠の仕事だ、俺達の知った事じゃない」

 ミックの言葉に素っ気なく返す海坊主。まぁそこらの組織やマフィア、ヤクザあたりなら、シティハンターの二人に任せておけば問題はないだろう。

 

      ◇           ◇           ◇    

 

 長野県の某所、まさにその海坊主の言葉が実践されていた。

 

「やーれやれ。全く次から次へと湧いて来るなぁ」

「アンタが最初に情報流すからでしょうが!」

 

 暴力団事務所『名狼派(なろうぱ)組』()()()瓦礫の山から抜け出してきた獠と香が、顔面をススとホコリだらけにしながら、ミニクーパーで待つハインツの元に歩いて来る。

 

「あ、あは、ははは……」

 ハインツは目を点にして、彼らが今しがた壊滅させたジャパニーズマフィアの惨状を眺めて冷や汗を流す。

 

 名狼派(なろうぱ)組もまた、ホテルにチェックインしたハインツを嗅ぎ付けて誘拐しようとし、一緒にいたシティハンターに取っ捕まって本部事務所を吐かされ、こうしてオトシマエを付けられたというわけだ。

 

 実は京都を発ったすぐに、関西の愚連隊組織『有不和(あるふぁ)』にもハインツを発見され、襲撃を食らって返り討ちにしたばかりなのだ。香にとっては二日連続のアウトローとのイザコザで少々食傷気味なのである。

 

 だが実はこれ、獠が東京の吉祥組と連絡を取り合い、わざわざ奴等にハインツの移動経路をリーク()()()()いたのだ……もちろん香は知る由もないのだが。

 

 獠が恐れたのは、このレベルのチンピラ共とゴルゴ13の対決が重なる事だ。そうなれば無論、攻め手のゴルゴの方がその混乱に乗じて狙撃をしてくる可能性は十分にある。場の状況をコントロールするのは攻め手側にあるからだ。

 

 なので事前のゴミ掃除と、もしかしたらゴルゴの情報が得られるかとも思って、こうしてアウトローたちの相手をしているという訳なのだ。

 

「さーて、どうやらタイムリミットかな。明日は個展の開催日だからなぁ」

 約束の日はもう明日に迫っていた。いよいよ待望の親子の対面の時が刻一刻と近づいている。

「で、どうしますハインツさん。そろそろ彼女たちと連絡を取りますか?」

 香の質問に、ハインツは深刻な顔で首を横に振る。

「会うのは明日の朝、それまで待っていただきたい」

 

 ハインツの頑なな態度を見て、獠はもう一波乱を予感していた。これだけ雑魚を掃除してもハインツの決心は変わらない。つまり、ハインツに制限をかけている何者かは未だ排除できていないわけだ。そして、あのゴルゴを雇ったかもしれない人物もまた……

 

「んじゃこーしようか。明日の朝、朝日をバックに喫茶『キャッツ・アイ』に乗り込むって言うのは」

「なに……それ」

「だぁーってさぁ、せっかく感動の親子の対面なんだしぃ、晴れやかな朝日に包まれて会わせてあげたいじゃなーい?」

 

 獠の提案にふぅ、と息を吐く香。まぁ確かにできるだけ早く会わせてあげたいとなれば、朝イチに引き合わせるのはいいかもしれない。

 

「それで……お願いします。その後、娘達と、個展に」

 ハインツが相変わらず深刻な顔でそう答える。

「よっしゃ、キマリだな」

 

 パチン、と指を慣らして笑顔を見せた獠が、スマホを取り出して電話をしつつ背中を向ける。一見気取っているように見えるが、その実は対面後の夜の泪との逢瀬(もっこり)を想像してニヤケまくっているのだが。

 

「もしもしぃ、あー海ちゃん。明日の朝、そっちに画家を連れてくから、お出迎えよろしくね~♪」

 それだけ言って電話を切り、ぐへへと緩みまくったスケベ顔になる獠。それを見た香は、大体何を考えているかを理解して「絶対にさせないわよ」と心に固く誓うのだった。報酬の泪との一発は香の許可が条件なのだ。まだまだ阻止できる理由はある!

 

「ま、これで明日をお楽しみに、ってヤツだな」

「気ぃ緩めるのは早いわよ、顔も緩んでるし」

 香のツッコミに頬に手を当て、すこしほっぺを引っ張って真顔に戻し、香とハインツに言葉を返す。

「大丈夫だ。電話の向こうからミックや麗華さん、美樹さんやその他大勢の声も聞こえていた……まーったく、おせっかいな連中だぜ」

 

 獠や海坊主のテリトリーである新宿に、ほぼフルキャストが居並んで力を貸してくれているのだ。いかに相手があのゴルゴ13とはいえ、新宿入りしてしまえばもうこっちのものだと自信を、いや確信を持って笑みを見せる獠。

 

 だが、それが彼にとっての大きな誤算となるのだった。

 

      ◇           ◇           ◇    

 

「明日の早朝、喫茶『キャッツ・アイ』の前……か」

 

 東京の某所、駐車場に停車した車の中で、ゴルゴは()()()()()()から聞こえてくる情報を元に、明日の狙撃の最終プランを組み立てて行く。

 

 彼の憂鬱さを示すかのように、吐き出したタバコの煙は、車内をゆっくりと濁していくのだった。

 

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