「俺だってみんなのために」   作:荼枳尼天

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初めまして。荼枳尼天と申します。
アルトリア・ペンドラゴンの小説を書きたかったのですがよく分からなくなったため供養させていただきます。
週1投稿をめざして頑張ります。


生きるべき君へ

 

 

 

 

 

 

 

 ひとつ。俺はなんの間違いか創作の世界に飛ばされた。直前の記憶は無い。死んだとか、神様に会ったとか、そんなことは覚えちゃいない。

 ふたつ。創作の世界、っていうのは俺の中では確かに創作だったって話だ。僕のヒーローアカデミアという作品をご存知しているだろうが、要はその世界に来たわけだ。

 

 みっつ。俺は人殺しかもしれない

 

 

 

 

 

 この世界に来て、俺が言われた言葉。

 

 誰?

 

 この言葉はまだ、俺に刺さったままだった。

 別に来たくて来たわけじゃない。いつの間には来てたから誰も悪くないのは分かってる。

 母さんだって悪くないし、俺も悪くない。

 

 いや、俺は悪いかもしれない。

 

 俺がこの世界で目覚めた時、俺は女の子になってた。

 金髪碧眼。自分とは違う容姿、性別に新鮮さを覚えたのは事実だし、これからの展望に期待を馳せたのは確かだ。

 思い思いに世界を、創作を一人称で堪能する。

 ベッドの上で白湯を飲みながら、愛読書を読むように。

 

 そんな時だった。母さんの独り言が耳に入った。

 

「個性が出たのかしら?変わったわね〜。誰?って感じ」

 

 

 何気ないソレは異物である俺に傷を残した。

 

 今、この体は4歳で

 元々のこの体の持ち主はどこへ?

 

 天国は地獄に変わった、とは言わない。

 だけれど、過ごしづらくなったのは確実だった。

 

 どうにかしてこの子を起こせないだろうか、と。

 幸い、この子の親はヒーロー関係の要職であり有効そうな個性の情報が手に入った。

 個人的なルートを作り、コンタクトを図りもした。

 

 でも、無駄だった。

 二重人格とは基本的に病気として扱われる。

 治って良かった。そう言われるのが関の山でまともに取り合われることが少なかった。

 

 4歳だからダメなのか?

 戯言だと思われたのか?

 個性の1部とも言われた。

 

 ああ、俺が個性の1部だと思えればどれほど良かったか。

 でもこの体の本来の持ち主は?個性に淘汰されちゃった4歳の女の子は?

 

 どうにかしなければならない。

 

 親の資料をひっくり返して、国中の個性を見た。

 一つ一つ、赤子の個性から老人の個性まで。

 心配された。実際、体は壊れた。

 寝込んでしまったけれど、でも辞められなかった。

 

 そして、俺が中学三年生になったすぐあと、ついに見つけた。

 

 個性届によれば、理想を現実にする個性。

 とてつもない強個性。見つけたのは偶然で極秘資料を無理やり見た時に見つけた。

 

 見ればこの個性を持つ者は同い年のようで、そしてこの子の地元には雄英高校が存在していた。

 ここに来ての、原作要素。

 

 俺の住んでいる地域とは遠く離れている。

 調査するために、入学するっていうのは…どうだろうか。

 住所も把握してる。

 訪問して頼むのも手だ。

 

 ただ時期が悪い。両親を説き伏せ、資料を見せてもらってはいるが受験というのは両親にとってとても重要な事だった。

 条件は成績を良い状態に保つこと。

 資料を見る理由は伝えなかった。でも見せてくれている両親には頭が上がらない。

 だから俺は大成することで恩を返す。

 雄英に進学し、調査し、恩返しする。

 

 そして、4歳の女の子を、救う。

 

 絶対に俺は、この世界で生きるべきだった少女を救うのだ。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 最初に、この体の個性について話をしよう。

 どうにかして個性を伸ばし、体を鍛えなければ雄英なんて夢のまた夢だからな。

 その問題の個性だが、この女の子の個性は恐らく、人格の作成。

 

 そこで俺が個性の産物かもという疑惑が生まれた訳だが、彼女は俺が来る前、優秀なことに小説を読んでいたらしく本棚にライトノベルが置いてあった。

 

 そこからインスピレーションを得たのかも、しれない。

 

 この際、俺の事はどうでもいい。真実はいくら考察してもわからない。

 

 問題はこの個性を俺も使えるか否か。

 そして、使えたとして、使い勝手の確認もしなければならない。

 俺の想像通りの強個性なら雄英は確実にパスできる。

 

 でも俺がパスしなければならない障害は、まだあった。

 

 

「雄英?!いいわねぇ!!ヒーローになりたいのかしら?!?!」

 

「え?あ、うん」

 

「わかったわ!!お父さんに言って準備しましょ!!!でも言うのが遅いわ!!!そういうことは早く言ってね!!でも貴女は優秀だから合格できるわよね!!!あなたは昔から

 

 

 

 …どうやら障害はないようだ。

 

 つつがなく事は進行し、両親は経済力にものを言わせ個性伸ばしを行う場所を用意してくれた。

 体育館ほどの大きさだったが俺は驚きはしなかった。

 なぜって?そりゃ金持ちの家住んでりゃ慣れるからだよ。

 

 

「個性の発動の感覚。知らない感覚だ」

 

 個性の発動が最大の課題だ。

 そもそも俺は個性のない世界の出身であり、「能力の発動」というワード自体、創作の中のものであり俺も実際に使ったのはカードゲームの最中だった。

 

 だが、知らない感覚だからこそ分かるものもある。

 元々体にない異物感。

 これを探す。

 

 ただ俺もこの世界を生きて15年経った。

 探せるか…?

 

「……」

 

 いや、闇雲に考えるのもな…

 そうだ。4歳の時、マインド系のヒーローは言ってた。

 個性を発動する時、確固たる目的を思い浮かべるのだそうだ。

 

 雄英の合格を確実にできる存在を作る。

 

 いや、宿す。

 

 最初に断っておくが、俺は創作の虜だ。

 暇さえあればアニメや漫画、小説を視聴、購読していた。

 最後に俺がハマっていた作品はFate。

 

 見れたのはstaynightのみだが、FGOもそれなりに齧っていた。

 

 俺の推しの人格を再現出来ればいいのだが、彼女は野蛮に過ぎる。制御できるとも思わない。

 だから彼女の別側面。

 誠実な人を宿す。

 幸いなことに性別も一致している。不都合は無いはずだ。

 見た目も若干似ている気がするし。

 

「さっ、やれることは試さなきゃならない。受験は目前。筋トレは定期的にしてたし体づくりもできているはずだ」

 

 それに、俺の人格が淘汰されて消えた時のための手記も持ってきた。

 彼女、アルトリア・ペンドラゴンなら助けてくれるはずだ。

 

「アルトリアアルトリアアルトリアアルトリ……

 

 

 いや、来ん。

 

 イメージが足りないのか…?

 召喚の再現でもしてみるか…?

 

 ど、どないしよ

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 あれからアルトリア顔のサーヴァントを試した。

 でも反応無し。

 

 個性の把握に敗北した俺は、勉学を一通り終わらせ体づくりに戻った。

 

 あの実技試験は無個性でもやれないことはなさそうだった。

 ロボットの試験であればスタンロッドなどの対抗策も用意出来る。

 ただインチキで受かるのも気が引けたので、スタンロッドなどのデバイスチートはしない。

 セイバーにあやかって頑丈な木刀を持っていこうと思う。

 どれぐらい頑丈かで言えば洞爺湖ぐらい。

 

 この体は幸い高性能だ。

 若干硬いロボットを用意してもらい戦闘訓練を行った。

 最初は拙かったが、ロボットの弱点を把握出来たし、剣術に関してもそれなりに習熟できた。

 

 うん。十分だろう。

 

 あとは体調の維持に努めよう。

 

 

 

 

 窓から、外を眺める。

 外気は冷たく、吐く息は白いがあまり気にならない。

 あともう少しで受験だ。

 中身は所詮小市民な俺が、難関高校に入学しようとしている。

 人殺しかもしれない俺が。

 

 原作の緑谷のように、緊張でガチガチになるかもしれない。

 だが、そんな暇は無い。

 入学し、恩を返す。

 理想を現実にし、この体を返す。

 

 

「カザネ」

 

「あ、父さん」

 

 

 ドアから入ってきたのは、俺の父さん。

 在日イギリス人であり、俺に多大な恩恵を与えてくれる人。

 

 

「どうしたん?」

 

「いや、昨日から缶詰め状態だったからネ。少し心配だったんだヨ。けど今はカザネが風邪ひかないか心配だナ。そんな薄着でェ。今日は一段と冷えるのにサ」

 

 

 日本語はさすがに喋れるようになったらしいが語尾が怪しい。

 あとことある事にパパ呼びさせようとするのをやめて欲しい。

 

 

「うーん。すこし頭を冷やしたくて」

 

「緊張でもしたのかナ?カザネは昔から生き急いでるからねェ」

 

 

 俺と似た目元を愉快そうに細め、言う。

 

 

「今は理想通りに事は進んでいるようだけド、そんなに心配かイ?」

 

「心配は心配だよ。父さん。なんと言っても難関校だし」

 

「そうじゃないでしョ?」

 

「……」

 

「君がなにを成そうとしているかは知らないヨ。でも僕は君のパパなんだかラ。君が雄英を通過点として見ているのは分かル」

 

「パパ…」

 

「おっ、パパって呼んでくれるのは5回目だネ」

 

「数えてんのキモ」

 

「辛辣ゥ」

 

 

 

 口から出た罵倒は戻って来ず、父さんの心をえぐる。

 父さんの瞼からほろりと涙がこぼれるのを見るとちょっと罪悪感を感じた。

 

 父さんは立って、俺に言う。

 

 

「何をしようが、僕達はカザネの味方サ。気張らずに、遠回りでも近道でも君は立って歩いていル。歩いていれば目的地に着ク。それだけは知って置いてネ」

 

 

 体は冷えたが、心は暖かくなった。

 絶対に失敗できない。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

 筆記は問題なかった。

 問題はこれから。

 実技試験だが、俺は無個性としてこなすことが決定している。

 そのために、鉄筋入りの木刀を用意した。

 すこぶる頑丈。ロボット程度なら砕けるだろう。

 

 青い中学のジャージに身を包み、木刀を地面に突き立て緊張気味の精神を落ち着ける。

 

 両親への多大な恩を返す。

 元々体に存在していた女の子を救う。

 

 両方やらなくっちゃあならない命題。

 

 

「なればこそ、私は皆に誇れる英雄に…!!」

 

 

 

『はい、スタート』

 

 

 柄を持ち、刃にあたる部位を体の背面に伸ばし走り出す。

 周りの様子など、目には入らなかった。

 

 

 

 ◇

 

   ◆

 

 

 

「ハァアアッ!!」

 

 

 気炎を上げ、目の前の一ポイントを保有した仮想(ヴィラン)を一刀の元に砕こうと木刀を振り下ろす。

 

 自分には彼らを叩き伏せる大きな力、個性はない。

 だから、技巧を独学で鍛えた。

 木刀の刃筋を装甲の合間、ケーブルの集合した柔らかい箇所に袈裟懸けで叩き込む。

 

 柔らかく柔性があり打撃に耐性のあるはずのソレらは分かりやすく『ギシギシ』と悲鳴をあげ、彼らにとっての血液であるオイルが吹き出す。

 

 振り抜いた木刀はこのままに、体当たりで相手の体勢を死に体にする。

 オイルは依然と吹き出しており、ロボットがただの体当たりで体勢を崩したことから人工筋肉が機能不全を起こしていることを察する。

 

 倒れた仮想(ヴィラン)に足をかけ心臓部に木刀を突き立てる。

 戦闘不能になった仮想(ヴィラン)には目を向けず次の仮想(ヴィラン)に目を向ける。

 

 先の処理で仮想(ヴィラン)の強度は把握した。

 他の受験生は既に動き出しており、背後から大人数の足音がする。

 この優勢を維持しなければ、無個性の自分に勝ち目は無い。

 

 

「ここからは一刀で切り伏せます」

 

 

 一撃で、最高効率で仮想(ヴィラン)をねじ伏せる。

 機能停止に追い込む必要は無い。

 

 駆動系を壊し尽くす。

 そもそもの話、ヒーローは(ヴィラン)を殺してはならない。

 このような妥協で不合格にさせられることは無いだろう。

 

 いや、ただ不安ではある。

 一ポイントの仮想(ヴィラン)に関しては壊すことは簡単だ。

 一ポイントの仮想(ヴィラン)は確実に壊すとしよう。

 

 

 

 こんな仮想(ヴィラン)を壊す程度で根を上げていては無個性でプロヒーローなど、夢のまた夢。

 足が、手が、頭が悲鳴を上げようが、この世に生きるべきだった女の子の苦痛に比べれば苦にはならない。

 

 

 

「フンッ!!」

 

 

 首を飛ばす。

 一ポイント。

 

 

「ハァッ!!」

 

 

 四足のうち、二本を叩き壊す。

 二ポイント。

 

 

「ゼァアアアアッッ!!!」

 

 

 メインカメラを叩き、ミサイルポットに木刀を突き刺し自爆を誘う。

 三ポイント。

 

 

「チィイッッ!!」

 

 

 最高効率で仮想(ヴィラン)を再起不能にしてきたが、既にほかの受験生にポイントを追いつかれつつある。

 

 視界の端に怖気付いて尻もちを着く受験生を見つけた。

 三ポイント仮想(ヴィラン)のミサイルは既に発射され迫りつつある。

 

 

(目の前の人を救わずに王は名乗れない!!)

 

 

「ハァアアッ!!!」

 

 

 ミサイルを木刀で弾く。

 爆風で手傷は負うが、こんなものは気にならない。

 

 

「立てッ!!戦えるのなら!!」

 

 

 飛んだ瓦礫で切ったのか(こめかみ)から血が流れる。

 血を強引に袖で拭い。

 怖気付いた受験生を無理やり立たせる。

 

 

「貴方には力があるッ!それを振るわずして何がヒーローかッ!!怖気付いている暇は…!ないッ!!」

 

 

 構わず近づいてくる一ポイント仮想(ヴィラン)を切り伏せる。

 

 

「……き、きみは…」

 

「私は行きます。貴方は避難を……いえ、無粋でしたね」

 

 

 どうやら火がついたらしいその受験生への心配を消し。

 私は駆け出した。

 

 

 

 

 

 熱された頭から汗が吹き出し、それ以上の熱を持つ手足は痙攣しつつある。

 

 原作では大した労力なくポイントを重ねているように見えたがコレは確かに過酷だ。

 無個性の私にとっては特に。

 これまで生きてきた中で原作に関しては大筋しか覚えていられなかった。

 どれほどのポイントを重ねれば合格できるのか。

 終わりない戦いを繰り広げる苦痛は()()()()()

 グレードを何段階も下げた体で、私はまだ()()()()()

 

 

「ヌンッ!!」

 

『ブッコロ………ス…ジジッ』

 

「次ッ!!!」

 

 

 次の標的は少ない。

 多数の受験生、その中でも動ける受験生たちに消化されていく仮想(ヴィラン)

 大雑把にカウントした保有ポイントは53ポイント。

 合格できるか出来ないかなど、考えている暇は無い。

 

 標的を見つけた直後、ズゥンと腹部に響く重低音が試験場を埋めた。

 音の起点を見るために振り返れば、今までの仮想(ヴィラン)とは比べられないほどの背丈(サイズ)を持つ仮想(ヴィラン)がいた。

 

 これほどの、ものなのか。

 

 私にはどう倒せばいいのかわからないソレは事前に『会敵した場合、逃走を勧める』と言われた仮想(ヴィラン)であった。

 

 倒しても得られるポイントは零。

 倒す理由は皆無に等しい。

 

 冷静に判断し、その場を後にするために足を

 

 

「い、いたた…」

 

(ッ!!)

 

 

 聞こえた苦痛の声に駆けだす。

 そこに行けば、原作通り、とはいかないものの彼はいた。

 零ポイント仮想(ヴィラン)の前で震える受験生に駆け寄る。

 

 

「貴方は、彼女を見て立ち止まったのですね。倒す必要のない敵の前で」

 

「あ……あなたは…」

 

「ならばやるべき事は一つ。アレをどうにかする力があるのでしょう?彼女は私が回収します。後始末も私がしましょう」

 

 

 任せましたよ。

 そう言い残し走り出す。

 

 

 俺が()()()()()を回収した数瞬後、とてつもない炸裂音が響き渡り巨大な(ヴィラン)は地に沈んだ。

 

 

 

 

 一週間後、俺は雄英高校ヒーロー科に合格した。

 

 

 

(………私……王……?……いつから俺はアルトリアになったんだよ…?厨二病なんて前世で克服したはず……恥ず……)




読んでいただきありがとうございます。
毎週金曜日に投稿できたらと考えていますのでよろしくお願いします。
筆が乗れば2話投稿とかあるかもしれませんが。
設定の矛盾への指摘、誤字報告、評価感想、お待ちしております。
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