来週金曜日のお昼に投稿します。
カチャカチャ
パクパク
カチャカチャ
パクパク
妙に静まり返った食堂では今日、珍しい光景が見られた。
金髪碧眼の美少女が1つのテーブルを覆い尽くす程の食べ物を瞬く間に胃袋に吸収しているらしい。
所詮は食堂、その様相は皆の知るところとなり食堂に入ったものは誰もが視線をそちらにやった。
誰かが言った。
「なんて、幸せそうなんだ…」
◇ ◇ ◇
ヒーロー基礎学。
ヒーローを志すものとしては避けては通れない教科。
午後からの授業でついに俺はヒーローへの一歩を踏み出すことになった。
「イズク」
「あっ、帯金さん」
「帯金さん?!カッコイイね!」
ヒーロー基礎学に伴い、個々で用意したヒーローコスチュームに身を包むことになる。
そこで俺はどうしてもデザインが思いつかなかったため、偉大なる先人たちにデザインを借りることにした。
個性を推測し、己が身に宿そうとしたアルトリア・ペンドラゴンに習い、青色のバトルドレスに甲冑という装いをサイバーパンクにアレンジしたヒーローコスチュームを依頼した。
依頼通りにデザインされたソレはイメージ通りのもので、その時に一緒に依頼した頑丈な剣は刃を潰してある。
ただただ頑丈でカリバーンを模した物を依頼したのだが、サポート会社は何を血迷ったのか様々なギミックを内蔵した物を寄越してきた。
まず光る。
この時点でおかしい。
あと独自の噴出機構を内蔵しているらしく、とんでもない風を起こせるのだとか。
そんな依頼してないよ。
エクスカリバーじゃんもう。
それ以外はまだ把握していない。
マニュアルは分厚く、それを読破するほどの時間はなかったのだ。
雄英高校は難関校らしくやるべきタスクを多く用意してくる。
そこに見ても見なくてもいいマニュアルを突っ込んでこないでくださいお願いします。
「ありがとうございます。貴女のコスチュームは可愛らしい。いいものですね」
「ありがとう!」
ヒーローコスチュームに身を包んだみんなを一通り見たあと、オールマイトが言う。
「良いじゃないかみんな!カッコイイぜ!!!」
「先生!ここは入試の演習場のようですが市街地演習という認識でよろしいでしょうか!!」
「ありがとう飯田少年!だが今回はそこより二歩踏み込む!!」
そこからオールマイトが話したのは概ね原作通り。
状況設定は
ヒーロー側は
といった具合に原作と相違ない。
「コンビ及び、対戦相手はくじで決めていくぞ!!」
適当さ加減も原作通りである。
「ちなみに、帯金少女は諸事情でヒーロー側、
「それは二回行うということでよろしいでしょうか」
「その認識で大丈夫だぜ!!」
「わかりました」
周りのクラスメイト怪訝そうな表情はもとより、やはりというかなんというか、試練が来た。
自分は無個性。
みんながスタートラインと認識している場所のはるか後方にいる。
教師側も俺に配慮してくれているのだろう。
いま俺がすべきことは体をもっと鍛えること。
一番自信があるのは体力だが、それでも足りないと雄英側は判断したのだろう。
今年度、A組は原作よりも1人多くクラスが編成されている。
クラスの面々は俺を除いて原作通りに進んでいる。
俺はくじを引き、
「続いて最初の対戦相手は!!こいつらだ!!!」
Aコンビ VS Dコンビ
◇◇◇
「相澤先生みたいにペナルティないみたいで安心したよ〜」
麗日がのほほんとした顔で言う。
「ええ、余分な力が入らずに済みます」
「うんうん!緊張するもんね〜。ね!デクく」
麗日が緑谷に話を振ろうと一歩下がった場所に目を向けるとガタガタ震える緑谷が目に入る。
「安心してないね?!」
「あああいや!相手がかっちゃんで…飯田くんもいるし…!!だいぶ身構えちゃって…」
「そっか…爆豪くんってバカにしてくる人だっけ…」
「因縁ある相手、ということですか」
「因縁……そうだね。嫌な奴だけど、凄いんだ。かっちゃんは。小さい頃から全部出来ちゃって…僕よりも何倍も凄いんだ」
「……」
「…でも、今は負けたくないな…って」
「男のインネンってやつやね!!」
「さすがです」
「あ、ごめんね!2人には関係ないのに!!」
「そんなことないよ!!チームじゃん!」
「ええ、私たちにも因縁の決着に役立たせてください」
「ッ!!!」
屋内戦闘訓練!!
麗日の個性を用いてビルの二階部分からの潜入に成功した。
「潜入成功」
「死角が多いから気をつけよう」
「…因縁浅からぬ爆豪はまず、イズクを狙うでしょう。そこが狙い目です」
「そうだね。かっちゃんが攻めてきたら、2人には核の確保に動いてもらいたい…です」
「オチャコは」
「わたしもその方針でいいよ」
俺は剣を構えて、警戒する。
原作通りの予測は行ったが2対3の戦いでそのような愚かな判断を行うようにも思えない。
神経を研ぎ澄まし歩みを進めた瞬間、目の前の角から爆豪が飛び出してきた。
「奇襲!」
「来た!!」
「構えてッ!」
サポートアイテムのカリバーン(偽)を本気で振るうが、爆豪はそれを恐るべき反射神経で見てから個性を用いて避ける。
「なッ!」
「テメェはあとだ…!!」
恐るべき才能。
爆破を用いた姿勢制御で俺の背後を取った爆豪は、すぐさま
「まずは!テメェだァッ!!」
「あっ、うぁあああ!!」
俺たちが動けないでいる間に、爆豪は麗日の左手を握り連れ去り俺たちとは少し離れた地点に叩きつける。
「オォラァアアッ!!」
「ぐはっ!!」
「オチャコ!!」
「麗日さん!!」
背中を思い切り叩きつけられた麗日は息絶え絶えであり、捕縛証明テープを巻き付けるための労力を必要としなかった。
「……丸顔確保…!!」
恐るべき速さで行われたソレは援護の仕様もないほどで、天性の才能が可能とするものだった。
改めて、爆豪の才能に戦慄する。
目の前で体験する才能の暴力は、漫画では体験できないものだった。
「数的有利は奪った…こっからだ…!!デク!!」
「…っ!!」
「くっ!!イズク!!2対1の今動きます!!遅れないで!!」
目の前の人間への認識を改めつつ、斬り掛かる。
「ハァアアアッ!!」
「テメェはアッチだ…!金髪ゥ!!」
こちらの唐竹割りの斬撃をまたしても避け、爆豪は両手をコチラに向ける。
バチンバチンと炸裂する掌。
しまった!!コイツの目的は!!
「死ねぇッッ!!!」
ドッ
起点である掌から今までとは桁違いの爆風を俺が襲った。
甲冑で威力を分散させることにしか意識を割けない。
足が浮遊する感覚の後、俺は窓ガラスをぶち破り地面へと真っ逆さま。
まんまと
「分断されたッ!!」
どうにかして、着地、衝撃を逃がしインカムに向けて話しかける。
「イズク!!」
『ジジッ…ザー…ザー…』
「くっ…!」
壊れたインカムを耳から取り投げ捨てる。
こんな上手く分断されてしまってはこれまで立てた計画が機能しない。
「頑張れって感じのデクだっ!!!」
……
大丈夫そうだ。
このまま飯田を探すとしよう。
いや良かった。
イズクとオチャコの恋愛フラグのひとつを叩き折っちゃったかと思ったよ。
◇ ◇◇
「おい!!爆豪君!!状況を教えたまえ!!…気分を聞いているんじゃ…!!あっ切れた!!マジか…!」
飯田を探す中。
どう探そうか困ったものだが、さすが爆豪。
わざわざ仲間の位置を教えてくれるなんて。
「とても大きい声で叫ぶものですね…おかげでここが分かりました」
「むっ!速いなヒーロー…!俺はァ!至極悪いぞ…!」
「爆豪はイズクに任せました。オチャコは既に確保されてしまっています。迅速な対応を心掛けるのは当然でしょう」
グァッハッハッハッと笑う飯田を前に剣を構える。
原作通りにいかなかった影響か、今回の爆豪は幾らか冷静だ。
インカムが壊れ、緑谷と連携が取れない。
なら原作のような手段はとれない。
ならば迅速に核兵器の確保を優先するのが今取れる最善の選択だ。
「行きます!!ゼァアアアアッ!!!」
「ぬっ!!」
まず、核兵器と飯田を引き離す!
「フンッ!!」
飯田の足のエンジンが火を吹き、俺との距離が開く。
「個性ですか!」
「そうだァ!誰も俺に追いつけねェ!!時間いっぱい粘らせてもらうぜ!!」
「くっ!厄介な!!」
無個性と個性持ちの間には決定的な違いができる。
それこそが俺と飯田の速度の差。
速度が足りないとはよく言ったものだ。
たとえリミッターを外したとしても到底追いつけるものでは無い。
理不尽とはこの事か。
…カリバーン(偽)の使いどころか。
原作と違い、この部屋の小物はまだ片されていない。
この環境を上手く使えなければ勝機はない。
「自分の長所をよく把握している」
「で、あればコレはどう対処しますか!!」
「【
サポートアイテムのトリガーを押下し、指向性のある風圧を飯田に繰り出す。
威力の調節が可能なカリバーン(偽)ではあるが最低威力でこれとは。
緑谷のデコピン風圧の数倍の威力の風圧は周囲の小物を巻き込み、相応の結果を飯田にもたらした。
「のっああああっ!!!」
「今っ!!」
肩が外れそうなほどの風圧を出すサポートアイテムに戦慄しつつ核兵器の確保へと向かう。
「ぬっおおおお!!!」
が、あろうことか飯田は浮いた体をものともせず、足をがむしゃらに振り地に足をつけて、コチラに向かってきた。
「なにっ!!」
「デェアアアッ!!」
エンジンが火を噴き、尋常じゃない速度での蹴撃が俺を襲う。
それを剣で受ければ少なくない衝撃が俺を襲った。
「グゥッッ!!」
「ハァアアアッ!!」
そのまま押し切られ、俺は吹き飛ばされる。
姿勢制御を行い、追撃を許さないために飛び退く。
能力の程度は知れた。
だが盤面は最初の状態に戻ってしまった。
「…イズクが折れる前に、カタをつけなくては…!」
読んでいただきありがとうございます。
設定の矛盾への指摘、誤字報告、感想評価お待ちしております。