「俺だってみんなのために」   作:荼枳尼天

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お世話になっております。
…ごめんなさい。我慢できないので週二投稿でお願いします。


先は長そうです。

 

 

「ッハァアッ!!」

 

「ッ!!」

 

 

 飯田は目の前の少女に戦慄していた。

 

 個性らしい個性を見せていない彼女に、明らかに押されている。

 なぜ個性を使わない。

 なぜ彼女は僕に追いつきつつある。

 なぜ、速度はコチラに分があるのに。

 

 なぜ、なぜ。

 彼女の体力は無尽蔵なのか…?

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 動く、動く、動く。

 

 彼、飯田はそもそもの個性柄、反射神経が良い。

 そいつを撹乱するためには俺の全力で動き続けなければならない。

 

 幸いここは柱が、死角が十分に存在している。

 

 

「くっ…」

 

「コチラです」

 

 

 今まで全力で避けられ続けたが、ついに斬撃を届けることが出来た。

 

 

「デェイッ!!」

 

 

 袈裟懸けの斬撃は足で防がれる。

 個性の起点である足の装甲は厚く、小さな傷を残すのみ。

 

 

「片足を上げましたね」

 

「しまっ」

 

「軸足を狩らせて貰います!!」

 

 

 だがここは突くべき隙だ。

 鍔迫っている足と剣。

 剣を押し込むように体当たりをする。

 

 死に体になった相手に、取る選択は一つ。

 

 

「ヤァアアアアッ!!」

 

「うっおおお!!」

 

 

 明確な隙に対し、昏倒させるために側頭部に剣を振るう。

 だが飯田は無理やりエンジンを吹かし剣撃を避ける。

 

 

「チッ!往生際の悪い…!」

 

(ヴィラン)とは往生際の悪いモノだろうッ!!」

 

「まだですッ!!」

 

 

 無理やり避けたとはいえそれでも飯田は死に体。

 無理やりエンジンを吹かした影響でおかしな姿勢になっている上に立てていない。

 

 ここで核を取りに行ったところで位置が悪い。

 立った飯田に追い抜かされるのが落ち…

 

 落ち…

 

 

『死ねぇッ!!!』

 

 

 

「そうかっ!!」

 

「ッ?!」

 

「借りるぞ…!爆豪…!!」

 

 

「【風王鉄槌(死ねぇッ)】!!!」

 

 

「ッ?!?!」

 

 

 最大出力。

 先程の威力とは比べ物にならない風圧は飯田を容易く持ち上げ、建物の外壁ごと、外へと運び出す。

 

 いいや、吹き飛ばす。

 

 

「うっ?!うおああああああ!!!!」

 

「ッグ!!」

 

 

 肩がボクン、と外れた。

 だが、これで勝敗は決した。

 

 

「核、確保です」

 

 

 

『ヒーローチィイイムッ!!WIN(ウィィイイインッ)!!』

 

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 聞けば緑谷は原作通り、ボロボロになるまで戦ったらしい。

 追い詰められた結果、自分の退路を切り開くために俺の【風王鉄槌】(偽)と同タイミングで個性を使ったらしい。

 独白も、爆豪の憔悴も原作通りというわけである。

 

 

「ふっ」

 

ボクッ

 

「コラコラコラコラ!!!」

 

「?なんですか?」

 

「いま外れた肩を力づくで直したでしょ!」

 

「「ええっ?!?!」」

 

「ええ…問題はありません」

 

「「えええ?!」」

 

「そういうことでは……この授業の後、リカバリーガールの所に行くように」

 

「?はい」

 

「はぁ…じゃあ講評の時間だ!!」

 

 

 仕切り直しだッ!

 とオールマイトは切り出す。

 今回、かなりの混戦だったがどのように講評は変わるのだろうか。

 

 

「今回のベストは、誰だったと思う?」

 

「はい!オールマイト先生!」

 

 

 その問いかけにいち早く反応したのは()()()()

 たしか脂質をものに変えて作るんだったか。

 

 

「この戦いで一番柔軟に動いていた帯金 風音さんですわ」

 

「ほう」

 

「最初の潜入で麗日さんが捕縛され、それでもなお2対1で対処しようとしたこと」

 

「ふむ」

 

「爆豪さんの強引な分断ですぐさま核兵器の回収に動き、飯田さんを速やかに降し核を回収した。恐らく爆豪さんの目的を察した行動だったのでしょう」

 

「ぐ…」

 

「飯田さんを屋外に吹き飛ばすとき、最小限の被害で済むよう窓際に寄っていた点に関しても最大限を出したと言えるでしょう」

 

「……」

 

「次点で飯田さんは状況設定に応じた行動をとっていたこと、戦闘に入っても最小限のダメージで逃げられるようにしていました」

 

「…………」

 

「爆豪さんは戦闘を見た限り私怨丸出しの独断。最初こそ理性的に行動していましたが、それも全て緑谷さんと戦うための布石。そして、屋内での大規模攻撃」

 

「あ、あはは」

 

「緑谷さんも同様の理由です。麗日さんに関しては警戒が薄く、すぐに拘束されてしまった」

 

 

「ヒーローチームの勝ちは、帯金さんにおんぶにだっこの一人勝ちのようなものですわ」

 

「…ま、まあ…緑谷少年が爆豪少年を釘付けにしたことも勝因に関係はあるのだが……そんなとこだよ!!くぅう!!全部言われてしまった!!」

 

 

 

 …ええ、緑谷がんばったよ??

 事実爆豪を釘付けにしてくれたし…

 

 

「常に下学上達!一意専心に励まねばトップヒーローになどなれませんので」

 

「「おお…!」」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「場所を移して第二戦だ!!さっきに続いて連戦だけど行けるかい?帯金少女」

 

「いけます」

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

 

「尾白くん!私本気出すわ!手袋もブーツも脱ぐわ!!」

 

「透明な伏兵ですか。なるほど大きな脅威ですね」

 

「う、うん(女の子としての倫理観ヤバいな…)」

 

 

 (ヴィラン)側としての第二戦。

 肩が外れてたんだから気遣って欲しいもんだが、問題ないと言ったのは自分だ。

 今回の仲間は()()()()()()()

 手負いの身ではあるが、できる限りの事はしよう。

 

 

「相手の出方を見ましょう。索敵に出ます」

 

「了解。俺は核を守るよ」

 

「私は帯金さんについてくよ!」

 

 

 

 死角の多いビルを歩いていく。

 警戒は怠らない、が今回は最初の氷結を避けるべきだ。

 どのタイミングで来るか…

 

 

 ピリッ

 

 

「不味いッ!トオル!!」

 

「へっなになに?!?!」

 

 

 透明な彼女をどうにか横抱きにし、死角から迫ってきた氷結を避ける。

 

 

「チッ!!すみません!!」

 

「へ?!きゃっきゃあああ!!」

 

 

 葉隠を抱えては避けきれない。

 そう考えありたけの力を込め、葉隠を投げ飛ばす。

 そしてカリバーン(偽)を構え、気炎を上げ氷結を吹き飛ばす。

 

 

「ゼェァアアアアアッ!!」

 

 

 半分ほどの出力でカリバーン(偽)の【風王鉄槌】(偽)を発動。

 自分の領域のみ、氷結を免れた。

 

 

「っと…大事無いですか」

 

「はっ…はいぃ…」

 

 

 落ちてきた葉隠を優しく受け止め立たせる。

 

 

「さ、さぶい…」

 

「…ブーツを。上着は貸しましょう」

 

「わっ持ってきてくれてたの?!ありがとう!!」

 

「私がヒーローの気を引きます。マシラオの安否を確認してきてください!可能ならば救助を!」

 

「うん!」

 

 

 

 目の前の、階段に向け剣を構える。

 

 

「それじゃあ、俺たちが(ヴィラン)みたいじゃねえか」

 

「…いえ、そのようなつもりは無いのですがあまりに強い個性だったのでマシラオの安否が気になりまして」

 

「インカムがあるだろ」

 

「む…そういえばそうでした」

 

 

 天然の気流が流れ始める。

 い、いやいや気付いてたし。

 文明人なんで自分。

 

 

「……そんなことはどうでもいいでしょう」

 

「ああ、そうだな」

 

「行きます!!」

 

 

 万力を足に込め、接近する。

 

 袈裟懸けに剣を振り下ろすが寸前で氷壁に阻まれた。

 

 半ば埋まる形でカリバーン(偽)が氷に飲まれそうになるが風を無理矢理出し、氷を砕く。

 

 

「さすがだな」

 

「いいえ、まだですッ!」

 

 

 迫る氷結を床ごと吹き飛ばす。

 氷壁と切り結び、

 風で氷壁を塵にする。

 

 

「…フゥ…肺が凍え始めたか」

 

「チッ…」

 

「霜が降りていますよ」

 

「さすがに気づくか」

 

「続けましょ」

 

 

『ヒーローチィイイムッ!!!WIN(ウィィイイイン)!!』

 

 

 轟焦凍との戦いを続けようとした瞬間、自身の負けを告げられた。

 

 

 

「なに?!」

 

「障子か」

 

「馬鹿な!入口から続く階段はひとつのはず…!」

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

「講評の時間だよ!!」

 

 

 控え室まで戻りオールマイトの講評を聞く。

 

 

「今回のベストは轟少年だ!ビルを氷結させ(ヴィラン)チームを半壊させ、間接的に障子少年の支援をした事がポイントだ!!」

 

「障子…メゾウはなにをしたのですか」

 

「障子少年の行動は単純さ!壁をのぼり部屋を探り当て、核兵器を回収!氷の対処で周りの見えない葉隠少女と尾白少年は発見が遅れて、そのままヒーローチームの勝ちというわけさ!!」

 

「なるほど……完敗です」

 

「いやいや、帯金少女はよくやった!普通なら最初の氷結で完封さ!!」

 

「うんうん!私も助けられたもん!」

 

 

 慰めが入るが自分的にはあまり納得出来ない。

 いや、自分一人で何とかできるというのは傲慢だとは思うのだが。

 もう少し頑張れた…!!

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 言われた通りにリカバリーガールの治療を受け、着替える。

 皆と、教室に戻り残りの授業を受ける。

 どうやら緑谷の傷は大きいらしく授業に終ぞ参加することは無かった。

 

 

 

放課後。

 

 落ちかけた日が窓から差し込む中、俺はみんなに詰められていた。

 

「俺!切島鋭児郎!!凄かったぜぇ!!最初は追いつけてなかったけど!!すげぇあつかった!!!」

 

「あ、ありがとうございます。エイジロウ」

 

「私!芦戸三奈!!すっごい強いんだね!!」

 

「い、いえ。それほどでは。ありがとうございます。ミナ」

 

「蛙吹梅雨よ。梅雨ちゃんと呼んで」

 

「はい。ツユちゃん」

 

「俺!砂藤力道!」

 

「リキドウですね。よろしくお願いします」

 

 

 おおう。凄い活力を感じる。

 これが本物の高校生というやつか。

 

 ガララとドアが開く。

 そこに居たのはモジャヘアーの緑谷出久。

 それを見ると狙ったかのように標的が緑谷に移った。

 

 

 わーわーと自己紹介の応酬がまた巻き起こる。

 自然とおかしな気分になり、俺もその応酬に加わった。

 

 

「イズク。怪我の具合は大丈夫ですか?」

 

「あ、いやコレは僕の体力的なアレで…」

 

「治りきらなかったのですね…すみません。私も貴方の助力に加わっていればこんなことには…」

 

「いや、あの場では、僕とかっちゃんだけで。よかったんだ」

 

 

 …へぇ。

 

 

「因縁に、決着は着きましたか?」

 

「いや…それはまだ」

 

「…そうですか。これから長くなりそうですね」

 

「それはもう…あっかっちゃんは?!」

 

「あっかっちゃん?」

 

「いや、かっちゃんです…」

 

「ああ、先程帰ってしまいまし…た」

 

 

 俺の最後の言葉を聞くこともせずに走り出した緑谷はどんどんとその影を小さくして行った。

 

 

「あれ?緑谷行っちゃった?」

 

「ええ、爆豪に何か言いたいことがあるようで」

 

「あーそっかー…風音ちゃんはファミレスいく?」

 

「ファミリーレストランですか。いいですね」

 

 

 

 まあ高校生活を満喫するのもいいだろう。

 

 

 

 

 




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