「俺だってみんなのために」   作:荼枳尼天

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お世話になっております。
週二投稿二話目です。


悪意を見ました。

 

 

 

「ようこそ!ウソの災害や事故ルーム(USJ)へ!!」

 

 

 俺たちの目の前に立つスペースヒーロー1()3()()が俺たちを出迎える。

 13号に相澤先生が歩いていき、尋ねる。

 

 

「13号。オールマイトはどこだ?ここで待ち合わせのはずだが」

 

「先輩、それが…通勤時に制限ギリギリまで活動してしまったみたいで…仮眠室で休んでます」

 

「不合理の極みかよ…あの人は…」

 

 

 辛辣な言葉をこの場にいないオールマイトに浴びせる相澤先生。

 仕方ない、と嘆息し仕切り直しで「はじめるぞ」と言う。

 それを皮切りに13号が話し出す。

 

 

 ヒーローの卵とはいえ、自分たちが持つ個性は人を簡単に殺し得るものであることを自覚しろ、と。

 

 その個性を人のために活用する方法を持ち帰ってくれ、その旨を話終わりクラスメイトから賞賛を浴びている。

 

 

 そのすぐあと、血相を変えた相澤先生が叫ぶ。

 

 

「ひとかたまりになって動くな!!」

 

 

 その一言に場は騒然とする。

 長い階段の下、見えたのは黒く深い闇。

 それは個性因子であるモヤの集合体。

 渦を巻いた闇から続々と排出される、武装した(ヴィラン)たち。

 その数は多く、A組を狙った敵襲ならば過多と言えるほどの数で。

 

 

「動くな…!あれは…(ヴィラン)だ…!!」

 

 

 そう、俺たちにとっては絶望的な事実を叩きつけ相澤先生はゴーグルを目にかける。

 13号に細かい指示をした後、捕縛布を握り飛び出そうとする相澤先生にイズクが叫ぶ。

 

 

「先生!一人で戦うんですか?!あの数じゃ先生の個性を消してからの1対1の戦闘は難しいんじゃ…!!」

 

「……」

 

 

 その言葉に相澤先生は変わらず構え、言った。

 

 

「一芸だけじゃプロは務まらん」

 

 

 そう言って飛び出していく相澤先生。

 一瞬の後、直ぐに戦闘を開始する先生は瞬く間に(ヴィラン)の数を減らしていく。

 

 

「…!すごい!多対1の戦闘こそ先生の得意分野だったんだ…!」

 

「イズク、緊急事態です。避難しますよ」

 

「う、うん!」

 

 

 持ち前の分析が始まりそうになったイズクの油断を指摘し、自分も走り出す。

 

 

「…させませんよ」

 

 

 だが、それを遮る者がいた。

 モヤ、モヤ、モヤ。

 眼前の闇は相澤先生の個性の切れ目を突き俺たちA組の目の前に立ち塞がる。

 

 

「あれは…!(ヴィラン)を出してきた…!」

 

「ワープの個性の(ヴィラン)か!」

 

「不味い!みんな下がって!!」

 

「事前のカリキュラムでは、オールマイトがここにいるはずなんですが…」

 

 

 まあそのうち出てくるだろうと目の前の敵は嘆息する。

 13号はすぐさま指示を出そうとするが、敵が続けた言葉にその場の全員が耳を疑った。

 

 

「初めまして、私たちの名は(ヴィラン)連合。僭越ながらこの度ヒーローの巣窟に入らせて頂いたのは、平和の象徴、オールマイトに息絶えて頂きたいと思ってのことでして」

 

 

 オールマイトを殺す。

 原作では知っていた敵連合の目的。

 15年生きてきたこの世界で聞いたその二度目の言葉は、オールマイトの活躍をこの世界で見てきた俺からしても改めて耳を疑ってしまうものだった。

 

 一瞬の硬直が場を支配するが、その中から飛び出る者がいた。

 爆豪とエイジロウだ。

 

 

「しぃねぇええ!!!」

 

「オラァッ!」

 

 

 ドゴンととてつもない爆風が舞い上がる。

 その衝撃は屋内戦闘訓練とは違い込められた威力殺意共に成長していた。

 

 

「その前に俺たちにやられることを考えなかったか!!」

 

「チッ」

 

 

 爆風の中から現れたフォーマルな様相の敵は何も無かったかのようにセリフを続ける。

 

 

「……危ない…さすがは金の卵」

 

「引け!!爆豪!エイジロウ!!」

 

「どきなさい!二人とも!!」

 

 

 同時に放たれた撤退の指示は間に合わず、敵からとてつもない量のモヤが溢れ出した。

 

 

「ちくしょう!何だこのモヤ!!」

 

「くっ!!」

 

「散らして…嬲り殺す」

 

 

 俺は恐らく、単独で動くことになる。

 なんてことも無い直感。

 モヤに包まれるみんなはすぐに見えなくなる。

 

 俺も例外ではなく、モモが手を伸ばすのが見えたが俺は直感を信じ言う。

 

 

「モモ、こちらには来ないで」

 

「風音さん!!」

 

 

 モヤが場を支配し、俺は闇に包まれた。

 

 

 

 

 

 

「…ここは…」

 

 

 天井が近い。

 右手側には吊り橋が見える。

 ここは…()()()()()か。

 

 

「…直感も信じてみるものですね」

 

 

 周りを見渡しても、俺を除きA組の人間()存在していない。

 

 

「おーおー。可愛いお嬢さんだな」

 

「へへへ。ラッキー」

 

「なあ殺す前に楽しんじゃダメなのかァ?」

 

 

 剣、剣、斧、槍、槌。

 どう見ても近接戦闘型の敵がここには固まっていた。

 カリバーン(偽)を鞘から抜き構える。

 

 世界からの試練。

 無個性で概算ではあるが20人超の敵を単独で倒さなければならない。

 

 

 …いや、逃げ…

 

ーーー逃げたくない

 

 …逃げた方が、確実…

 

ーーー逃げれば、誇りは地に堕ちる

 

 

 

 …なぜか分からないが気分が高揚していく。

 

 

「感謝しなければ、世界に」

 

「あぁん?」

 

「無個性の私に試練の場を用意してくれる。この世界にだ」

 

 

 アドレナリンが分泌される。

 視界は晴れ渡り、感覚は鋭くなる。

 

 

「構えろ、衆愚どもよ」

 

 

「私を簡単に陵辱できるとは思わないことだ」

 

 

 先手は敵。

 

 

 斧を持ったソイツは鋭い動きで的確に私の選択肢を潰してくる。

 

 

「オラオラオラァ!!デケェ口叩いてんじゃねぇ!!」

 

 

 剣を持った相手の対応に慣れているのか、繊細な斧使いで攻め立ててくる敵はそのテクニックとは真逆に口汚く俺を罵る。

 

 

「ふむ。あまり考えるタイプには思えませんが、繊細ですね」

 

「お褒め頂きありがとうよ!オラァ!」

 

 

 唐竹割りの斬撃を顎を引いて躱す。

 斧は地面に深々と突き刺さり、敵は明確な隙を晒した。

 

 

「なっ!斧が!!」

 

「フッ!!」

 

 

 抜こうともがく敵の喉仏に狙いを定め、カリバーン(偽)を叩き込む。

 

 

「がぼっ」

 

「ハァッッ!!」

 

 

 返す刃を側頭部に叩き込み、昏倒させる。

 一気に意識を閉じた敵は豪快に倒れ込みその場の敵全員を騒然とさせる。

 嬲られる姿でも想像していたのだろうか、ヘラヘラしていた敵達は、俺への警戒度を一気に高め襲いかかってくる。

 

 

「この程度の腕の敵だけならば苦労はないのですが」

 

「なにやってんだ!!こうやんだよ!!」

 

「遅い」

 

 

 剣を受け止め、流し、喉を殴る。

 それだけで倒れる敵を無視し、突き出された槍を避ける。

 

 

「はあ!!」

 

「槍は突き刺すだけのものではありません」

 

 

 飛び退いた先にいた槌の使い手は既に槌を振り上げている。

 俺からしたらそれが隙だ。

 

 脇に全力でカリバーン(偽)を叩きつけ、呻いた敵の喉を潰す。

 

 

「槌をそのまま豪快に扱っては槌が泣く。更生してから鍛錬を重ねてください」

 

 

 すぐに飛んできた槍を掴み、折って捨てる。

 無手になった敵に対しすぐに距離を詰めるが、個性なのか手のひらから突き出るように槍が飛び出した。

 

 

「なるほど、個性ですか。ですが槍の技能は未熟以下です」

 

 

 飛び出した槍を剣で跳ねあげ、返す刃で膝を折る。

 

 

「がぁあああっ!!」

 

「痛めつけてしまい申し訳ありません。おやすみなさい」

 

 

 顎の先を掠めるようにしてカリバーン(偽)を振るうと叫び声は止みその敵は意識を投げた。

 

 常に考え続け、動き続け、俺は敵の半数を屠る。

 倒れて動かないモノ。泡を吹き呻くモノ。脳震盪で立てないモノ。

 喉仏を潰した影響か呼吸不全に陥っている敵もいる。

 このままでは俺が人殺しみたいになってしまう。

 

 

「つ、つええ…」

 

「こんなん聞いてねぇぞ…!」

 

「無個性のガキ殺すだけじゃねえのかよ!!」

 

 

 気になるワードが出てくる。

 

 それはつまり、こいつらは俺の無個性を把握していて組織内に俺を狙う敵がいるということ。

 

 

「情報は必要ですが状況は逼迫しています」

 

 

 こいつらからの事情聴取を考えてこちらが窮地に追いやられたら目も当てられない。

 これまで通り、全力で敵を屠る方向性で方針は固まった。

 

 

 

 基本的にこの敵たちは増強型で固めてある。

 槍を生み出すような個性の変わり種は少数しかいなかった。

 体力を度外視した俺の動きに敵はその数をみるみる減らしていく。

 

 刀を砕き、敵を降す。

 

 

 最後の敵は倒れた。

 

 

「…はっ…はっ……ふぅ…応急処置程度は施しましょう」

 

 

 死ぬ可能性のある敵に応急処置をしてまわる。

 体力回復も兼ねた応急処置は俺としては慣れないものでそれ相応の集中力を必要とした。

 油断していた、と言っていい。

 

 

「…ハイ、おしまい」

 

 

 完璧に油断していた俺は背後から這い出でる影に気づきもせずに全身が痺れる感覚を感じた後、昏倒した。

 

 

 

 

 

 

 

「油断してくれて、助かったってとこか」

 

 

 USJの機能を麻痺させていた敵は目の前で昏倒した風音を前に独り言ちる。

 周りの(役立たず)に呆れつつも一人一人、丁寧に電流を流し込み絶命させていく。

 

 

「役立たずがこの敵連合にいたってしょうがねぇ、ここで殺されるか、死柄木さんに殺されるかの差だ。同情するよアンタらには」

 

 

 役目を終えた、とでも言うかのように膝を叩き立ち上がる。

 面倒だが抱えて持って帰ろうと風音に振り返る。

 

 

 立っている。

 

 

 万が一にも獅子を起こしては敵わないと致死量ギリギリを狙い電流を流し込んだはずなのに。

 

 

「貴方…いや貴様に問う」

 

 

 とてつもない威圧感が敵を襲う。

 威圧感は地中にいる時からヒシヒシと感じていた。

 だがこの威圧感は起きる前のソレとは一線を画す。

 

 地面に落ちていた剣を拾い、風音、いやソレは敵に突きつける。

 

 周囲を一瞬見回す。

 

 

「貴様、なぜ同胞を殺した」

 

「…!要らねぇからだ。俺たち敵連合に」

 

「……そうか。私に()()()()()情報の裏付けができたことは感謝しよう」

 

「…てめぇ、何意味不明のことを」

 

「これが、ただの()()()()では無いこと、いや戦争ですらないことは理解した」

 

 

 なぜ私がここに…と独り言を漏らす少女を前に敵は好機だとは思いつつも、金縛りにあったかのように動かない。

 足を煩わしく思いながら敵はその光景を見届けるしか無かった。

 

 

「…?」

 

 

「…貴方が私のマスターですか?」

 

 

「私を、英霊を体に降ろしたと?」

 

 

「………」

 

 

「………なるほど聖杯の()()()、いや個性があるのですね」

 

 

「…そうですか」

 

 

 

 花。

 

 

 その微笑みを見た敵はそう表現することしか出来なかった。

 

 この場に不相応なそれは図らずとも敵の戦意を削る。

 

 

「私は、()()のサーヴァントだ。その方針に従いましょう。それに貴女のその願いは私としても好ましい」

 

 

「私はマスターに恵まれているようですね」

 

 

 そう締めくくり、少女は敵を睨む。

 残りカス程度の戦意はそれにより膨らむ。

 

 

「私はすぐにこの場を離れなければならない。マスターの命もある事だ。早めに済ませたい」

 

 

 体も満身創痍ですし、とスーと体を撫でながら少女はこちらを見る。

 

 

「俺も…敵連合の端くれ。タダで帰れると思うな…!」

 

「そうか。では、先手は貰うぞ。外道!」

 

 

 そして目の前の少女は文字通りの目にも止まらぬ速さで距離を詰め敵を一瞬で昏倒させた。

 

 

 

 

 




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