機動戦士ガンダムSEEDFREEDOM 運命の復活 作:鳳.
「ルナマリアとアグネスは、僕と一緒に侵攻を、シンはミレニアムで待機、警戒を頼む」
キラの言葉に、シンは驚いた。
部隊内ではフリーダムに迫る機動力を誇るジャスティスに乗る自分が、キラと共に前線メンバーに選ばれると思ったからだ。
「…隊長、何で俺は待機なんですか?ジャスティスの機動力は、侵攻に活かすべきだと思いますが。」
その質問は予想していたとばかりに、キラは少し言うべきか迷ったが、返事を返す。
「…この国は、信用できない。怪しいんだ、色々と…。だから、いざと言う時は、シンにミレニアムを守って欲しいんだ。」と。
そして、「もし僕に何かあったら、その時は皆を頼むよ」と続けた。
「そんな縁起でもないこと言わないでください…!」
とシンは返す。
しかしキラからそう頼まれては、シンも拒否できない。する気もないが。
「…分かりました。でも、ちゃんと帰ってきてくださいよ?俺だけじゃなくて、総裁も隊長の帰りを待ってるんですから。」
総裁と言われ、キラは少しだけ気持ちが憂鬱になった。ラクスをここの宰相オルフェ・ラム・タオが狙っている。嫌味まで言われた。ここでの戦いが終わり、ミケールを捕縛すれば、この国にもう用はない。そうすれば、ラクスを狙うオルフェの"横恋慕"もそれまでだと思うが・・・
シンがそう言うと、作戦前ブリーフィングは解散となった。
部屋を離れるキラに、ルナマリアが声を掛けた。
「隊長」
「何だい?ルナマリア」
「さっきの、シンに防衛を任せた理由、本当ですか?」というルナの質問に、キラは内心肩をすくめた。
「…半分は本当だよ。実際、この国は信用できない。」
「じゃあ、残りの半分は?」
「ルナマリアの考えてることと同じだよ。最近のシンは、気負い過ぎてるし頑張りすぎてる。いくらファウンデーションが怪しいといっても、流石に表立って敵対するようなことはしてこないだろうし、シンにもたまには休んでもらわないと…。このところ、激戦続きだったからね。」
「隊長がそれ言います…?」とルナは半分呆れた返事を返す。
「隊長も、無理しないでくださいよ。隊長の調子が悪いと、総裁もシンもパフォーマンスが落ちますから。」と付け加える。
また【総裁】の名前が上がる。シンもルナマリアも、総裁…ラクスが自分を気にしてくれていると言っている。
…しかし本当はどうなのだろうか?もし、本当にあの男…「オルフェ・ラム・タオ」が、本当に世界を平和にする術を持っているとしたら、彼女は…
「隊長?」
「…ああ、ごめん。ちょっと考え事を…」
「…本当に無理はしないでくださいよ。」
―――
そうして出撃の時が来た。
フリーダムとゲルググ、ギャンが出撃する様子を、シンはコクピットから眺めていた。
今回は留守番だ。ヒルダさん達も出てったし、艦に残っているパイロットは自分しかいない。
もし、隊長が言ったように何かあったら、この艦は俺が守るんだ…!と思いつつも、やはり内心はブルーになる。ミケールの捕縛など、ここ最近の連戦の締めくくりとなる、とても重要な作戦だ。艦の防衛も同じく重要なのは理解しているが、その作戦に参加させてもらえないという事実が、シンの心に陰を落とす。
やはり、自分は信用されてないのだろうか…
コクピットの中で、シンは膝を抱え、深い溜息をついた。
ミケールがいるブルーコスモスの総本山とはいえ、出てくる戦力はダガーやウィンダム、最大の脅威がデストロイくらいなものだ。
デストロイが大いなる脅威であることは間違いないのだが、前の戦いで隊長はそのデストロイの、目立った損傷もなく恐らくフルスペックであろう個体を、単機で落とした。
つまるところ、今のキラにとって恐るべき存在はいないのだ。万が一のことなど、起るはずがない…。そう思いながらもシンは言われた通り待っていた。前線の心配などまるでせずに…。
―――
物思いにふけ呆けていたシンは突然飛び起きる。
何かわからないが、突然"何か"を感じたのだ。得体の知れない、しかし物凄く気味の悪い何かを。
途端に不安が襲う。前線にいる、キラやルナの。
前線の様子が知りたくて、ブリッジとの通信に手を伸ばす。
―通信が繋がったブリッジは何やら大騒ぎだった。
誰かが誰かに大声で指示を飛ばしている。
「あ、あのー?何かあったんですか?」
と言うと、今までに見たことのないほど緊迫した様子のコノエ艦長から通信が返ってきた。
「アスカ大尉か!すぐ出撃だ!狙撃用ライフルと通信用スレッドを装備しろ!ゲルググのだ!」
「え、ええ!?一体何があったんですか!?」
「……分からん!突如、ここら一体に強烈な通信妨害が起きた!前線の様子が分からない!ただ、私が考えている"最悪の想定"通りなら…今すぐ行動を起こさないと間に合わん!繰り返す、狙撃用ライフルと通信用スレッドを装備して即座に出撃しろ!説明は追ってする!」
ここでコノエは、一つの"嘘"を付いた。
前線の様子がまるでわからないのは事実であるが、分かっていること…キラの暴走を伝えずにいた。
シンは彼を慕っている。彼に何かが起きていると知れば、どうしても気にしてしまうだろう。
なので、成否が生死に関わる場面で、それを伝えることは出来ない。
「りょ、了解…!ハンガー!ライフルを出してくれ!」
慌てて言われた通りに、出撃をするのだった…。
ルナマリアは状況に困惑しつつも、周りの敵を必死に落としていた。
「通信が繋がらない…!どういうことよ…!?」
いくらNジャマーの通信妨害があるとしても、この近距離でも他の機体と通信が繋がらないなど異常だ。
ダガーの胴体を撃ち抜き、とにかく前に進もうとする。
すると、そんなルナマリアの行く手を機体が遮った。
ブラックナイツである。
「ちょっ…!なんなのよ…!」とルナマリアがその機体の前で速度を緩めると、その機体はおもむろにゲルググに銃を向け、発砲した。
辛うじてシールドで防ぐゲルググ。
「なっ…!?裏切るつもり!?」
付近で戦闘していたムウもそれに気付く。
「アイツら…!!」
「罠だわ!」アークエンジェルの環境で、マリュー・ラミアスは叫んだ。
ジャスティスは、専用装備ではないものの共用規格の為装備できるゲルググ用のロングライフルを構えたまま狙撃体勢に付いている。
『戦域座標〇二〇ウィスキー、一三八ノベンバー』と、飛来するミサイルの座標を淡々と指示する。
シンは、未だに先程の不安が収まらない、むしろ強くなっているような気さえする。
しかしそんなことを気にしている場合ではない。ここでしくじる訳にはいかないのだ。隊長に艦を任されたからには…
思えば、味方が前線に出ている間に艦の直営に回る事は少なかった。今まで艦を守っていた人も、こんな風に前線が気になっていたのだろうか。
…いや、大丈夫だ。隊長は強い。俺なんかより、ずっと―ルナだって。
そう自分に言い聞かせ、ライフルの照準を覗き込む。
「…あれか…!」
スコープに飛翔体が映り込んだ。狙撃用の機体ではないが、最新のOSだけあって命中精度は十分の筈だ…あとは、パイロットの腕次第。
川面のすぐ上を進むミサイルは、その終点にある湖の前で一気に高度を上げた。
チャンスは今しかない!それも、弾頭でなく、Nジャマーキャンセラーのみを撃ち抜く!
少しの迷いを挟んだ後、ジャスティスのライフルから一筋の光が伸びる。
それはミサイルへと近づき…見事に狙った箇所だけを撃ち抜いた。
シンはため息を付き、気を休める。
ミレニアムの艦橋も歓声に包まれた。
しかし。
そこにアルバートが水を差すかのよう声を上げた。
「二発目がコースを変えた!!」
「ええっ!?」アーサーも素っ頓狂な声を上げる。
「退避しろ!シン!こいつは狙撃できん!!」
「やれます!間に合わないはずあるか!こいつがジャスティスなら、こういう時!!あの人ならァ!!!」
といい、ジャスティスは飛び立つ。
「よせ!核の爆発にモロに巻き込まれるぞ!」とアルバートは忠告をするが、シンの耳には届かない。
「あのミサイル…!街を…!」
シンはミサイルに向かう。ライフルをミサイルに向けるが…
「クソッ!駄目だ!」高速移動中の射撃は安定などする筈がない。この状況で射撃をすれば、核ミサイルが爆発し、自分どころか街も無事では済まないだろう。
シンは覚悟を決めた。
ライフルを投棄する。
『シン!?何をするつもりだ!?』とアーサーからの通信が響く。
シンは核ミサイルに近づく。
アーサーも、かつてミネルバでアークエンジェルとやった時以上も剣幕でシンに向かい叫んでいた。
「シン!何があった!?」
その叫びを、シンの落ち着いた…しかし確かな声が遮った。
「すみません、ルナに伝えておいてください。『ごめん』って」
「何を言ってるんだシン!? バカな事はやめろ!」
シンはコクピットの通信を切った。このまま話していると、名残惜しくなって、自分の"やるべきこと"を忘れてしまいそうだったからだ。
ジャスティスで核ミサイルに組み付く。
そして、ジャスティスの大推力を使って、ミサイルの起動を強引に変えさせた。
「ジャスティス、戦闘空域より離れます!」
「シン君は死ぬつもりか!?やめさせろ!!」コノエ艦長も声を荒げる。
「駄目です!もう通信範囲外です!」
「ミレニアム、浮上!」とコノエ艦長は迷わず指示を飛ばした。
水中から出るミレニアム。
「光学映像、出ます!」とアビーが言うと、極限までズームされた遠距離に核ミサイルを抱えたジャスティスが映し出される。
「核ミサイルを範囲外まで運ぶつもりか…!?」
と呟いていると。
ジャスティスの抱えているミサイルは、ジャスティスを巻き込んで大爆破した。