直哉成り代わり♀がいく実力至上主義の教室   作:一夏 茜

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お待たせしてすみません!!次もこのくらいの投稿頻度になるかもしれないです。できる限り早く仕上げます。


第9話

 「まあ入ってくれ。それで私に話とは何だ? 堀北」

 

 鈴音ちゃんか……。ま、どうせ自分がDクラスなのが納得いかんってやつやろな。簡単に想像できるわ。私とは別の意味でプライド高いもんなぁ。

 

 「率直にお聞きします。何故私が、Dクラスに配属されたのでしょうか」

 

 ほら見たことか。

 

 「先生は本日、クラスは優秀な人間からAクラスに選ばれたとおっしゃいました。そしてDクラスは学校の落ちこぼれが集まる最後の砦だと」

 「私が言ったことは事実だ。どうやらお前は自分が優秀な人間だと思っているようだな」

 

 鈴音ちゃんが自分を優秀な人間だと思ってるなんてそんなん、誰がみてもわかるやろ。身体中から拗れ切ったエリート特有のプライドの高さが滲み出てる女やで。

 

 「入学試験の問題は殆ど解けたと自負していますし、面接でも大きなミスをした記憶はありません。少なくともDクラスになるとは思えないんです」

 

 ま、予想通りの言葉やな。同じように予想していたらしい清隆くんと目があって、私は呆れたように肩をすくめて首を振った。

 話の流れから茶柱が入試問題の答案を見せているらしい。茶柱によると一年の中では3位の成績。ま、十分すぎる結果やな。ふむ、面接でも高評価だった……と。これは鈴音ちゃんがDクラスに来た理由はコミュ障で確定やね。

 

 「お前の学力が優れている点は認めよう。確かにお前は頭が良い。だけどな、学力に優れた者が優秀なクラスに入れると誰が決めた? そんなこと我々は一度も言ってない」

 

 まあ、その通りすぎて何もいうことがないな。『常識』というカードを出して反論する堀北に懇々と茶柱は反論する。テストの点だけで人間を評価し優劣を決めた結果が今の日本、世襲制なのだと茶柱がいう。

 政治家一家の生まれとして聞いてもまあ一理あるかもな、どうでもええけど。私は大きなあくびをこぼした。

 

 「確かに勉強ができることは一つのステータスだ。それを否定するつもりはない。しかし、この学校は本当の意味で優秀な人間を生み出すための学校だ。それだけで上のクラスに配属されると思ったら大間違いだ。この学校に入学した者には、それを一番最初に説明しているはずだがな。それに、冷静になって考えてみろ。仮に学力だけで優劣を決めていたのなら、須藤たちが入学できたと思うのか?」

 「っ……」

 

 悔しそうな顔をしているのが目に浮かぶ。はあ、どうでもよ。

 私はいい加減飽きてきたので、同じく暇そうな清隆くんの手を取ってにぎにぎと握ってみる。ちょっとギョッとしたようにこちらを見る清隆くんにニッと笑うと、その手を頬に当ててみる。目を閉じて温い人の体温を感じた。清隆くんもやっぱ人間なんやな。

 清隆くんは少し戸惑っている。慣れてないんかな。そうやといいけど。

  

 次はその背中に抱きついてみようかなと思ったその時、やっと茶柱の声がした。

 

 「出て来い綾小路、禪院」

 

 めんどくさ。これで出て行ったらだるいことになるのは目に見えている。茶柱の意図は読めた。どうしても自分の低い評価を認められないプライドの高い堀北と共に、私たちに上を目指させたいのだろう。

 いや、知らんし。茶柱も、どうしてもAクラスに上がりたい理由があるのかもしれないが、正直どうでもええわ。勝手にやってろの一言に尽きるわな。

 

 「出てこないと退学にするぞ」

 

 こいつ、教師として失格やろ。教師がそんなに退学退学言っていいんか? 職業理念とかに反してるんとちゃうん?

 渋々私たちは薄い壁の向こうの指導室に戻る。堀北は驚き戸惑っていた。

 

 「私の話を……聞いてたの?」

 「おん、そりゃもうバッチリと」

 

 私は清隆くんの腕に捕まりながら、Vサインを作った。清隆くんは諦めたようで、なすがままだ。

 堀北はキッと険しい表情で茶柱を睨んだ。

 

 「……先生、何故このようなことを?」

 「必要なことと判断したからだ。さて綾小路、禪院。お前たちを指導室に呼んだワケを話そう」

 

 私は気怠く首に手をやると口を開く。

 

 「ま、言いたいことは大体わかってるけどな。要するに自分のクラスをAクラスに上げたいんやろ、あんさんは。そのために私たちを協力させたい。ちゃうか?」

 「……流石だな。お前の観察眼には感服するよ。禪院、お前も入試では高得点を叩き出している。結果は一年の中で4位。そして身体能力も非常に高く、測定したどれもが高校女子の公式記録を塗り替えるような数字だ」

 「そこまで褒めてくれると照れるなぁ。どうもおおきに」

 

 私はにっこりと笑った。

 

 「そこまでなら文武両道の優等生に聞こえるが、お前の問題点はここからだ。お前、中学では暴走族や不良と喧嘩に明け暮れていたらしいな。それも数えきれないほどの人数を病院送りにしたとか。Dクラスなのも納得できる」

 

 私は一切表情を変えずに「そんなこともあったなぁ」とのんびりと呟く。堀北は驚愕したようにこちらをみた。

 

 「あなた、そんなことしていたの」

 「まあな。強者を探すためと、強くなるためやね。雑魚をなぶるのはなかなか楽しくてストレス発散にもなったわ」

 

 堀北は「呆れた」と言わんばかりに額に眉を寄せてため息を吐いた。茶柱は口を開く。

 

 「そして、綾小路。お前もなかなか面白い生徒だ」

 「どうですかね、俺は直哉みたいに喧嘩ばっかりはしてないすよ」

 

 清隆くんは飄々と言葉を紡ぐがそれを聞き流して茶柱は続ける。

 

 「入試の結果を元に、個別の指導方法を思案していたんだが、お前のテスト結果を見て興味深いことに気が付いたんだ。最初は心底驚いたぞ」

 

 茶柱が持つクリップボードから、見覚えのある入試問題の解答用紙がゆっくりと並べられていく。私はそれを見て思わず声をあげて笑い出した。

 

 「国語50点、数学50点、英語50点、社会50点、理科50点……おまけに今回の小テストの結果も50点。これが意味する者が分かるか?」

 

 堀北が驚いたようにテスト用紙を食い入るように見て、清隆くんをみる。私は笑いすぎて出た涙を拭いながら、ニヤニヤと言う。

 

 「清隆くんって可愛いとこあるやん。半分の点取れば平凡になれると思っとったん? まだ平均もわからんもんなぁ」

 「誤解だ、直哉。これは全くの偶然だ」

 「ふふ、そう言うことにしといたるわ」

 

 私がまだニヤニヤしていると、茶柱が咳払いをして口を開く。

 

 「いいか? この数学の問5、この問題の正解率は学年で3%だった。が、お前は間の複雑な証明式も含め完璧に解いている。一方こっちの問10は正答率は76%。それを間違うか? 普通」

 「世間の普通なんて知りませんよ。偶然です、偶然」

 

 頑として認めない清隆くんに、諦めた茶柱が「どうだ?」と言わんばかりに堀北を見る。

 

 「あなたは……どうしてこんなわけのわからないことをしたの?」

 「いや、だから偶然だっての。隠れた天才とか、そんな設定はないぞ」

 「どうだかなぁ。ひょっとしたらお前よりも頭脳明晰かもしれないぞ堀北」

 

 ぴく、と堀北が反応した。私は頭の後ろで腕を組んでそのやりとりを眺める。そろそろ飽きてきたわ。

 

 「勉強好きじゃないですし、頑張るつもりないですし。だからこんな点なんですよ」

 「この学校を選んだ生徒がいうことじゃないな。もっとも、お前の場合、高円寺や禪院のように、DでもAでも良いと思えるような、他の生徒とは異なる理由があるのかも知れないが」

 

 この女……。私はふむと指を顎に持っていき思案する。まるで清隆くんの”秘密”を知っているような口ぶりだ。その目。私はそこに秘密を握っていることによる、いわば優位に立っていることへの余裕のようなものを感じた。このカードをきることも視野に入れているようだ。

 

 「私はもう行く。そろそろ職員会議の始まる時間だ。ここは閉めるから3人とも出ろ」

 

 

 

 

 

 

 

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