その血の物語に俺が7人目のスタンド使いとして俺ガイル   作:あいほん

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前回投稿したのはいつだったか…忘れてしまったけど続きを書かなくてはいけない。


スペシャルズ③ スペシャルな助言

承太郎の家に上がり込んで落ち着く時間ができた。

千葉から東京まで来たってのに観光すらしないでただ使命感に突き動かされるようにこの一件に首を突っ込んだ。

日も暮れてきて家族に電話を入れる。

人ん家に泊まるなんて初めての出来事だってもんだから驚かれたりもしたが二つ返事で了承されたのは信じてくれてるからだと俺も信じたい。

縁側に座り込んで物思いに耽る。

 

「吸うか?」

「……貰っとこうか」

 

いつの間にか近くにいた承太郎からタバコを貰う。花京院の事もあったんだ、今更タバコなんて驚きやしないよ、もう。

承太郎のzippoから火をもらい、煙を吸い込む。咽せそうになるのを我慢して紫煙を吐き出す。結構キツいの吸ってるんだね、君。

タバコは親父が吸ってたなぁ…妹の小町に臭いって言われるもんだから夜中の、それも深夜に月を眺めながら吸ってたんだっけ。俺は戦闘の傷が傷んだもんで居間に行こうとした時にたまたまそれを見た訳なんだがソレがどこか格好よく見えたんだよなぁ。親父、何考えてたんだろう。

 

「嫌になったか?」

「いんや、日常から離れるのは一年前からそうだった訳だし…慣れっこって言うとアレだけど今日は非日常の中でも特に良い部類…だと思う。なあ、空条承太郎」

「あん?」

「プロボッチの俺が言うのもなんなんだが…似た視線の味方がいるってのは…良いもんなんだなぁ」

「…そうだな。なぁ、八幡」

「ん?」

 

ボーッと見てた庭園から承太郎の方を見れば、静かにタバコの箱を取り出し、無造作に5本のタバコを口に咥えた。火を付け、ただ軽く唇で挟んだまま、器用にそれをゆっくりと前後に回転させる。タバコはくるりと向きを変え、再び元の形へと戻る。

 

その間、一切の無駄な動きはない。手はポケットに突っ込んだまま、視線すらブレることなく、その動作を淡々と続ける。そして、今度は片手を伸ばし、傍らのコーラを手に取ると、タバコをくわえたままプルタブを開けて一息に飲み干した。

 

ゴクリ、と喉が鳴る音だけが静寂を破る。咥えたタバコは1本も落ちることなく、その火が消える事もなくまるで何事もなかったかのように元の位置に収まっていた。

 

「クッハハハ…マジかよ。今日一番の驚きが更新されちまったな」

 

面白かった。と言うよりは嬉しかったのかもしれない。これまでの人生を振り返れば俺にこんな特技を見せてくれる人間なんてのはいなかったし現れる事も無いと思っていた。しかしどうだ、承太郎は今この場でその特技を()()見せてくれたのである。

その事実が俺をくすぐる。

 

「サンキューな、空条承太郎」

「かまわねーよ」

 

「おーい!承太郎、それに八幡君!飯の準備ができたぞー!」

 

「着いてきな」

「ご相伴に預かります…」

 

承太郎に案内されるままリビングに通される。一々豪勢な部屋だがテーブルの上に並ぶ料理も豪勢だ。そこらの高級店なんて目じゃ無いのでは?

 

「さ!遠慮しないでたーんと食べてちょうだい!男の子達の邪魔をしちゃあ悪いから私はあっちで家政婦さん達と食べてくるわ!」

 

頂きます、と言い料理を口に運ぶ。美味い、その一言に尽きる。箸はどんどん進むがどの位食べていいか困り、隣に座る花京院をチラ見して食べる目安を決める。うーん、花京院もガタイが良いのだがあまり箸が進んでないようにも見える。ま、状況が状況だしそりゃそうか。

 

「比企谷君、そんなに見たってデザートのチェリーはあげませんよ?」

「気を悪くしたならすまん、俺のさくらんぼあげるから許してくれ」

「そこまで怒ってはないんですが…頂きましょう」

 

いかんせん、こんなに人と食卓を囲んで食べるのは経験がないためこの場合は下手に出た方がいいだろう。こんな時、キザなセリフの一つや二つ吐けたら食事も盛り上がるのにな…まったくボッチはどこ行ってもボッチなのかな!?…涙が出そうだ。

 

「…………」

 

それにこの集まりで唯一異質なのが俺だ。なんだよ、夢でシルクハットのオッサンに促されて、会ったことも無いアヴゥドゥルさんにスタンドを占ってもらって、ラジオの中の人物にスタンド能力を目覚めさせてもらってって…おかしいだろ!?

いや待てよ?だったら花京院も異質なのでは?だってついぞ半日前までは“明確な敵”だったのだから、きっと花京院も気まずいのだろう。

 

「なぁ、花京院…ハイエロファント・グリーンの出すエメラルドってよ…どうやって出してるんだ?」

「…どういう意味です?」

「素朴な疑問なんだけどよ、エメラルドってのはマグマとかで岩石が熱せられて圧力がどうのこうのして出来るわけだろ?鉱物ってよ。でもお前のエメラルドスプラッシュには熱だとかそんな様子は一つもなかった。それが疑問でよ、聞いてみた」

「なるほど、比企谷君の疑問ももっともですね。確かに本物のエメラルドとは生成過程がまるで違う。しかし、これは”スタンド能力”の力です。本物のエメラルドを生み出しているわけではなく、“エメラルドのようなエネルギー弾”を撃ち出しているんですよ」

「だから、あのスプラッシュには圧力や熱が関係しているわけでもない。本質的には全く別物の”エネルギー”なんです」

「考えてみれば、JOJOのスタープラチナのパンチも、ただの肉体の延長ではなく異次元的なパワーを持っていますよね? それと同じで、スタンドの力は”物理法則”よりも”精神のイメージ”によって決定されている。エメラルドスプラッシュは、僕のスタンドの特性とイメージの結果生まれた攻撃というわけです」

「なるほどな。結局、スタンドの能力ってのは”理屈”より”イメージ”が先行するわけか。エメラルドスプラッシュが本物のエメラルドじゃなくて、エメラルドっぽいエネルギー弾……つまり、“お前の思うエメラルド”が形になったってことだよな」

 

「……じゃあさ、俺の”スペシャルズ”も、結局のところ”俺の思う兵隊”の集合体ってことになるのか?」

「いや、考えてみれば当然か……本物の兵隊なら戦術の訓練を受けて、個々の思考と判断力を持ってるはずだけど、俺のスペシャルズはそうじゃあない。ただの”俺の精神が形を変えたもの”に過ぎないんだよな」

 

「……はは、なんか納得したわ。俺のスタンドが”群体”ってのも、つまりは”俺の歪んだ自己イメージ”ってことか。チームワークとは無縁のボッチ野郎が、“俺を理解してくれる味方がいない”って意識した結果、自分で6人の兵隊を生み出した……って考えると、随分と皮肉な話だな」

 

「まぁ、ありがとな、花京院。おかげでちょっとだけ、自分のスタンドがどういうものかわかった気がするよ」

「……比企谷君は、スタンド能力だけじゃなくて、“自分自身”にも疑問を持っているんですね。でも、その考察は悪くない。むしろ、自分のスタンドと向き合おうとする姿勢は立派ですよ。“ボッチ野郎が軍隊を生み出した”って言いましたけど、それは”本当は誰かと共に戦いたい”って気持ちがあるってことじゃあないんですか?」

「……おいおい、そんなポジティブな解釈されると逆に居心地悪いんだが」

「ふふっ、そういう素直じゃないところも含めて、貴方のスタンドには意味があるんですよ」

 

花京院典明、肉の芽に操られてる時は極悪非道な人間に感じたりもしたが実際の所良い奴なのだろう。一言二言多いのは彼もまた人付き合いが苦手故なのだろう。

 

「なるほど……。“スタンドは精神の投影”とはよく言われるが、こうして言葉にされると改めて実感するな」

 

次に口を開いたのは占い師のアブドゥルさんだ。

 

「比企谷、君のスタンド『スペシャルズ』は、単なる”群体”ではなく”分裂しながらも一つの意志を持つ軍隊”とも言えるのかもしれん」

「まるで一つの精神が細かく分裂して、それぞれが独立しつつも同じ方向へ向かう……群体型スタンドとは、そういうものだ。……しかし、君はそれを”ギャップ”と捉えているようだな?」

 

アブドゥルさんの視線が真っ直ぐこちらを向く。

 

「おそらく、“君自身が分裂している”のだろう。成長する自分、変わらない自分、周囲との差、過去の自分……それらを整理しきれずに”分かれてしまっている”状態だ」

 

真剣を顔に書いて言い放っていたアブドゥルさんはその表情を崩して柔らかく微笑む。

 

「群体は”一つ”でありながら”バラバラ”だ。しかし、それは必ずしも悪いことではない。“分裂しながらも同じ方向を向ける”ならば、それは君の強さでもあるんじゃあないか?」

「さいですか…流石はプロの占い師。説得力がダンチだなぁ…」

 

アブドゥルさんとの話も終わった頃、それを聞いていたジョセフさんは口をへの字にして腕を組みながら言葉を紡ぎ出す。

 

「ほーん、またずいぶんと哲学的な話になってきたじゃあないか」

「エメラルドがエメラルドじゃないって話から、まさか”自分自身がどういう奴か”って話になるとはなぁ~」

「脱線しまくりッスね」

 

申し訳無さそうに返答するとニヤリとイタズラっ子のように笑ったジョセフさんは続ける。

 

「でもよォ、比企谷。お前さん、自分のこと”ボッチ野郎”だとか、“兵士を生み出すしかなかった”とか言ってたけどよォ~~~」

「ワシ達とこうして話してんじゃあないか?」

「!!」

 

ビシッと指を指す。

 

「スタンドってのは、時に持ち主の無意識を表すモンじゃ。お前さんのスペシャルズが群体型だってんなら……“お前さん自身が、本当は誰かと共に戦うのを望んでる”ってことなんじゃあないかの?」

 

「なぁに、心配すんな! ワシも昔はクセが強すぎてよォ~、ちょいと人付き合いが苦手だった時期もあったもんじゃ!結局のところ、誰かと戦うより、誰かと”共に戦う”ほうが面白いもんじゃ!」

 

そう笑うジョセフさんは肩をドンと叩いて笑う。クソいてーけど『誰かと“共に戦う”』という発言をした後にその目の奥にちょっぴり哀愁を感じた。

 

「だからよォ~、お前さんもこれから色々学んで、もっと良い男になるんじゃぞ!ワシみたいなナイスガイにのぉぉ! ワハハハ!」

 

お通夜みたいに静まり返っていた晩餐も賑わいを増していった。花京院も少しずつ馴染んでいってやがてお開きになった。

用意された部屋に通されて布団に転がる。

ぼんやりと知らない天井を見つめている。昼間の会話——花京院やアブドゥル、ジョセフ、承太郎の言葉が頭の中で反芻される。

 

そこに、いつものようにラジオからスティールの声が響く。

 

「やあ、比企谷。睡眠を愛する君が夜更かしとは珍しいな。何か考えごとか?」

 

小さく息をつきポケットからラジオを取り出す。

 

「……まあな。今日は、ちょっと話し込んじまったんでな」

「へえ、それは意外だな。君は”誰とも馴れ合う必要がない”男かと思ってたが?」

「……俺もそう思ってたよ。少なくとも、前まではな」

 

起き上がり窓の外に目をやる。反射する自分の顔——そして、群体型スタンド「スペシャルズ」が背後に淡く揺れるのが見える。

 

「俺のスタンド、“スペシャルズ”は群体型だ。SPが6人、俺の指示で動く。だけど……」

「“だけど”?」

「結局、“俺自身”がバラバラに分かれてるみたいな気分なんだよ。自分の考えが一つにまとまらない。何を信じりゃいいのか、どう動けばいいのか、全部ズレてる気がする」

「ほう、悩める少年らしいな。千葉での暴れっぷりが嘘のようだ」

「皮肉なもんだ。ボッチ野郎が”群体”のスタンド持ってんだからな。結局、誰かと一緒に戦うことを望んでたってことなのかもな」

「ふふ、“望んでた”とはまた素直なことを言うな。君は、“群体”であることを悪いことだと思ってるのか?」

「さあな。アブドゥルさんは”それも俺の強みだ”なんて言ってたけどよ……俺はまだ実感が湧かねぇな」

 

少しだけ口元が引き締まる。孤独には慣れていたんだ。1年と少し前、スペシャルズがこのラジオの男、スティールに引き出されてからもうそんなに経ったのだ。その間1人で戦い続けた訳だが今更ね…という訳でもある。

 

「……でも、考える余地はある。そう思えたのは確かだ」

「ほう、君が”考える余地がある”なんて言うとはな。少しは成長したか?」

「ハッ……あんた、なんで俺のことをそんなに知ってるんだ?」

「さあ、どうしてだろうな? それより、君はまだ”変わる”ことを怖がってるのか?」

「……わかんねぇよ。でも、“俺がどう在るか”ってのは、今の俺が決めるしかねぇんだろうな」

「——なるほど。なら、その答えが見える日が来るのを楽しみにしているよ、比企谷」

 

ラジオのノイズが混じり、スティールの声が途切れる。

所々確信的な発言をする当たりこのスティールという男、中々に観察眼(目なんてあるのか?)があるらしい。

 

でもまぁ、これからずっと一緒なんて事もないんだ。

今日分からない事は明日の俺に丸投げしよう。

 

━━━━━━━━

 

次の日、俺は4人と共にエジプトまで旅立つ事になった。

 




ラッシュが決まらねぇ…マジで決まらん。
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