ARMORED CORE Ⅵ Liberator 作:flagカスタム
コーラルと呼ばれる物質がある。
辺境の開発惑星「ルビコン3」で発見されたエネルギー物質であり情報導体としての側面を持つそれは、従来のエネルギーとは異なる新たなエネルギー物質として注目を浴びた。
新エネルギーの出現に人々が黙っているはずはなく、コーラルを巡る騒乱が巻き起こる。
だが、コーラルを手にした者はなく、「ルビコンの火」と呼ばれた大災禍により争いは幕を閉じる。
かくしてルビコン3は荒廃した惑星と成り果て、「惑星封鎖機構」によりその門を閉じる運びとなったのだった。
しかし、コーラルは潰えていない。
今もなお、残された新エネルギー体は密かに、だが確実に増殖を続けているのだった。
まるで空から吊るされた巨塔のような大型建造物に赤焼けた空が跳ね返る。
時折目の前を走り去る雪が、まるで進むべき道を塞ごうとするかのように警鐘を鳴らしている。
だが、そんなものでは誰の足も止められやしない。
「作戦空域に突入します。ルビコン解放戦線のMTに多数の被害を確認。なかなかの手練れのようです。」
「問題はないよシィナ。敵は単騎なのだろう?アーキバスやベイラムと言った群れた連中じゃない。おそらくはコーラルで一攫千金を狙った独立傭兵辺りか。」
部隊のオペレーター、シィナに応える。
「だと良いのですが。報告によれば目標は撃墜されたACからデータを抜き取っていると。情報屋の類でしょうか?」
「いや、目当てはライセンスだろう。この惑星で活動するなら必要なものだ。アーキバスやベイラムの後ろ盾を得るにもね。ならば尚更、金稼ぎに来た傭兵だと言えるだろうな。ここで消えてもらおうか。」
「べリング、無理はしないで。コンテナを開放します。ご武運を。」
━メインシステム、戦闘モード起動━
雪原を飛翔する大型の輸送ヘリから、1機のACが出撃した。
遥か彼方に無数の硝煙が確認できる。
時折上がる赤い光が、戦いの最中であることを知らせてくれる。
我々に依頼が入ったのは数刻前。ルビコン3を星外企業や封鎖機構から守らんとするルビコン解放戦線からのものであった。
依頼よりさらに数刻前、グリッド135付近に大気圏外より突入したコンテナを確認、封鎖機構の監視システム及び衛星砲による防衛も虚しく、何者かがまたしてもルビコン3にやってきたというのだ。
「まったく、封鎖機構は何をしているのか。」
グリッド135付近に展開していたルビコン解放戦線のMT部隊では太刀打ちできないと判断し、救援要請を出したというわけらしい。
AC「ブラゥゲベート」のブースターを最大点火し、目標へと近づく。
「見つけた...。」
撃破目標のACはパーツ構成を見ても、とてもではないが戦闘用にチューンされたものとは呼べなかった。
ちょうど、高台で撃墜されたであろうACのデータを吸い出そうとしている様子だった。
「お手並み拝見...ファイアッッ!」
ブラゥゲベートの左肩部に搭載された6連装ミサイルポッドが一斉に火を噴いた。
さながら獲物を見つけたピラニアの群れの如く複雑な軌道を描いて侵入者のACへとミサイルが襲う。
だが、そう簡単に事は進まない。
いち早くこちらの攻撃に気付いた敵ACは滑らかな動きで機体を旋回させ、腕部のアサルトライフルでこれを迎撃する。
「なかなかの反射神経だ。単騎でこの惑星にやってくるだけのことはある。」
動きの先を読んで右手のサブマシンガンを放ち、行動を抑制する。
次いで、アサルトブーストを吹かして一気に距離を縮めた。
重量機体ではないにしろ、この速度で体当たりを受けたら堪らず敵ACの態勢は大きく崩れる。
機体後方にすり抜け、感覚のみで左手のバーストハンドガンで追撃を見舞った。
「アサルトライフルを盾にしたか、見事だ。だが、もう一発!」
敵機は弾丸を受けひしゃげたアサルトライフルを投げ捨てた。これで武装を1つ潰せた。
距離を取り大きく旋回。
次で仕留めんとばかりに再度アサルトブーストを踏み込んだ。
「ッ!?」
だが、機体がぶつかる直前にパルスブレードを展開され、危うくこちらが両断されるところであった。
すんでのところで回避したものの、左腕にダメージ警告の鳴り響く。
同じ轍は踏まないと、なんという適応力だろう。
「この独立傭兵、やはり手練れか。」
「報告です。惑星封鎖機構の大型武装ヘリがそちらに向かっています。開幕早々ですが、撤退すべきかと。」
「そうか。解放戦線め、封鎖機構の巡回ルートくらい知っていただろうに。」
まだ戦いは始まったばかりだ。
だが、奴らの大型武装ヘリは並大抵の戦力では落とせない。
敵ACには悪いが、ここは生贄になってもらうしかない。
「作戦は失敗だ、撤退する。だがコイツはここで果てるさ。解放戦線には適当に報告しておけ。」
━強化人間C6 333、通常モード移行━
「お疲れ様でした。」
「ああ。ただの独立傭兵、というわけではなかったよ。あれは危険な存在となる。封鎖機構の介入はある意味で暁光だったかもしれん。」
「べリング、その件ですが。封鎖機構の武装ヘリは先の攻撃目標に撃墜されたようです。」
「...。そうか。」
「解放戦線から提供された戦闘ログ、及び周辺の偵察データを解析しました。目標は...傭兵部隊『ハウンズ』所属の可能性があります。」
傭兵部隊『ハウンズ』。
その名を聞いて心がスッと冷える感覚を覚えた。
「『奴ら』がルビコン3に来たというわけか。」
「そうですね。ハンドラー・ウォルターと、その友人たちの意思が。」
「ならば急ごう。奴らがこの惑星で成そうとする前に、手を打つ必要がある。」
目の前を走り去る雪が、一層強く凍てついた。
それでも我々は、止まるわけにはいかない。