「ごきげん、よう?」
ある休日の朝、一柳隊の控室にて持ち込んだ端末のキーボードを真剣な表情で叩いている二川二水の姿が、ドアを開け入ってきた一柳隊の隊長である一柳梨璃の目に映る光景。
「ふーみーちゃーん?」
「……………………」
何に熱中しているのか、再度呼び掛けても変わらず二水からの返事はない。
なら邪魔するのも悪いかなとは思いつつ、本当に大事なことなら学院の地下に用意されているというリリィ新聞の編集室なり寮の自室なりでやっているだろうと、結局梨璃の中では圧倒的支持の元興味が勝ってソファの後ろからその画面を覗いてしまう。
「えすてぃーえる?」
「STL、正式名称は〈スペリオル・タクティクス・リリィ特殊任務養成専門学校〉。埼玉県は熊谷に拠点を構え、その名の通り特殊環境下においての活動を行うことに特化したリリィを各地より集めてそれぞれの適性に合わせたレギオン──あ、この場合のレギオンは通常のガーデンで言う学部に該当し、通常の6レギオンの内主な活動を担う地水火風の4レギオンはそれぞれのカラーに合わせた妖精の名を冠しています!」
これスイッチ入ったパターンだ。と梨璃が口を挟む暇もなく、捲し立てる勢いのまま二水の語りは続く。
「そうして配属されたレギオン内でのトップメンバー、こちらが一般的な意味のレギオンに近いそれらによる各地への外征がメインの活動となる、大分軍隊気質なところの強いガーデンですね。設立から10年程度とその歴史こそ浅いですが、どんな技術だろうと積極的に取り入れるその姿勢から近年メキメキと力を付けてきており、中でも今年度から結成されたトップレギオンが結構な注目株でして!」
「へ、へぇー?」
反射的に呟いた言葉にいつものオタクトークが返ってきてはもう二水の勢いに飲まれるしかない梨璃だが、ページが切り替わり端末の画面に表示されているそのレギオンのものなのだろう金縁で彩られた名を、どこか惹かれるように読み上げる。
「〈オリジンバレット〉……?」
「直訳するなら『原初の弾丸』、その立場から少し捻って考えるなら『独自の弾丸』でしょうか? マディックなどリリィ以外の在籍者が多い陽のレギオン〈ソルハーミット〉を除く各レギオンから
スクロールされた画面に映る、STLの赤いブレザータイプな制服を纏うメンバーは五人。一柳隊の同盟レギオンである東京の〈ヘルヴォル〉や〈グラン・エプレ〉同様、オリジンバレットもまたノインヴェルト戦術の最少人数で構成された少数精鋭のレギオンのようだ。
「まずはこちら、一年生にしてリーダーを勤める
整った容姿ながら仏頂面気味な紫の長髪にツーサイドアップなリリィのプロフィールに並んで表示されるそれは、武器というより一種の芸術品のように梨璃には思えた。
それは翼を模した
「綺麗……」
「名を『ハバキリ』このCHARMは色々な事情があって正式な名前こそ与えられてはいませんが、これは正しく弥架さん専用に誂えられた彼女だけの翼!」
「翼?」
確かに翼のようだ、とは梨璃も思ったし他に例え方を知らないが──いや、よく見るとこのCHARMのブレード部分の背、いわゆる峰の側に何かがある。
「もしかして、このCHARMって……?」
「はい! この『マギウィングブースター』というハバキリ独自の機構により、弥架さんはなんと人の身でありながら空を自在に飛べるのです!」
「ほ、本当?」
リリィとはどこまで行っても兵科としては歩兵の延長線上だ。故にマギにより得た力で超人的な跳躍こそできても、空を主戦場として戦うとなると色々と用意が必要となる。
それをこのCHARMはたった一機で解決しているというのだと、開かれた画像で翼のようなCHARMを手に空を駆ける弥架の姿が証明していた。
「それ以外のCHARMとしての特性は弥架さんの得意とする接近戦を重視しブレードでの斬撃をメインに据え、射撃機構は最低限のかなり小型の物で済まされている強度と軽さを突き詰めた前衛特化型。そこに弥架さん自身のレアスキル『縮地』を組み合わせることで天地を自在に駆け回るオリジンバレットのスピードスター……いえもはや大地より駆け上がる流星、シューティングスターと言っても過言ではないでしょう!」
梨璃にとって身近な縮地持ちとなると同じレギオンの先輩な吉村・Thi・梅だが彼女とてそのスピードを発揮するのは主に地上であり、空中戦となると速度の差はあれどそれ以外は他のリリィ同様跳び上がっては落ちる、ないしマギの足場を出すことによる擬似的な滞空が限界だろう。
そう考えると『単独で自由に飛べる』なんてどれだけ凄いことなのか、実際に画像を見せられていても上手く言葉にできない。
「また、弥架さんは風のレギオン〈ウィルシルフィード〉一般的にいう工廠科にも籍を置いており、その中でも代々選ばれたアーセナルにのみ与えられる特別な工房をガーデンより与えられていることもあってハバキリも出撃の度そこへ持ち込みご自分で整備される徹底ぶりです!」
その上戦うアーセナルと来た。紹介の感じからハバキリは彼女の自作CHARMという訳ではないようだが、それでもこのような特異な機構を持つ機体の整備を行えるのだから、その方面はからっきしな梨璃としてはイメージが追い付かず、ぼやっとした感想になる。
「やっぱり、トップレギオンのリーダーになる人って凄いんだねー」
「ですです。しかも詳細は不明ですが弥架さんはなんらかの『異能』を持つのではないかとの噂もあり、今後が気になるところです」
「異能かぁ」
異能──例えばオーラのようにマギの『色』が見えたり、例えばヒュージの『声』が聞こえたり、例えば人の感情の揺らぎを『匂い』として感じ取ったりと、そういったリリィ基準でも突き抜けた超越感覚、あるいはレアスキルともまた違う特殊な力を一纏めにそう呼称するとは梨璃も知識では知っていても、前者と後者での違いどころかそれぞれの中でさえ傾向がバラバラなこともあって予想は難しい、としか分からない。
「そんな弥架さんは基本クールな優等生、それにご
二水がそう締め括ると弥架のページは閉じられ、次のリリィの紹介へ。
「では続いては二年生で副リーダーの
「この人もカリスマ持ちなんだ?」
梨璃としては二番手として画面に映される長身でスタイル抜群な桃色のポニーテールな二年生には自身と髪色が似ていてレアスキルまで同じことから少しシンパシーを感じるが、それらや強化リリィだということも全て吹き飛ぶのが、プロフィールに書いてある彼女の好物のひとつ。
「え、お酒って……あれ、智与子様まだ未成年だよね?」
「うーん、どうにもお父様がアメリカの方におられて数年前まで智与子様も一緒に暮らしていたとのことなので、その影響なんでしょうか?」
そういう問題なのだろうか、いやしかし何かしら問題があるのなら掲載前に訂正が入るはずだし、こうしてデータに載せられている以上恐らく大丈夫なのだろう。もっとも、このデータベースがどこの物か梨璃はまるで知らないが。
「コホン。ともかく智与子様ですが、一年生の時点でSTLの主力である火のレギオン〈フレアイフリート〉においてはトップメンバーの司令塔を任され、そのこともありオリジンバレットでもTZからの射撃戦が主な役目になりますが、デュエルにおいても目にも止まらぬ神速の居合い斬りによるカウンターを得意技とされており、ブーステッドスキルの『リジェネレーター』やカリスマによる自身の傷や味方のマギの回復は勿論、それらに頼らない持ち前の経験と技術に裏打ちされた地力が彼女のリリィとして最大の武器と言えます」
そこで映されるのは智与子が愛用するCHARM『クラウ・ソラス』を振り抜いており、相手のリリィが何をされたかも分からないと自身のCHARMを弾かれ空の手を見つめ呆けている姿。ガーデン内での模擬戦か何かなのだろうか。
「はぁー。でも、そんな強い人でも強化リリィにされちゃったんだ……」
ひときわ適性の高いリリィがゲヘナの策略によってヒュージに襲われ、そのまま死にたくなければ強化を受け入れろと選択肢のないそれを押し付け強化リリィとする。それが一般的な強化リリィの作り出される経緯だという──しかし続く二水の説明は、それとは違う物であった。
「その辺りは色々複雑みたいですね。智与子様は幼少期心臓が弱かったことからゲヘナの手で強化を施されましたが、医師であった智与子様のお父様がゲヘナに入り込むことで研究所から連れ出し、それから紆余曲折あって今は古くからのお付き合いだという理事長の協力もあり父娘別々に匿われているそうです」
「それじゃあ、STLって反ゲヘナ派のガーデンなの?」
「表向きは中立とボカしていても実質的には敵対している、という感じでしょうか。STLはゲヘナ側の技術を利用こそすれど、しょっちゅう諜報側の陰陽2レギオンによる妨害工作や実験施設への強襲などを行っているみたいですし、一部からはゲヘナの研究成果だけを掠め取って行くハイエナ呼ばわりすらされているとか」
「そ、そうなんだ?」
二水曰く特務レギオンによる襲撃くらいは百合ヶ丘も結構やっているらしいが、どちらにせよ梨璃にはピンと来ない世界の話だ。
「なんだか智与子様の話は脱線しがちだなぁ……ともかくその性格は底無しにポジティブでハイテンション、強化リリィであることを包み隠さず自身の生い立ちにも嘆くことなく、お酒を手に日々を生きておられます。ただ実力も才能もあるが故、時に他人とすれ違いぶつかってしまうこともあるみたいですね」
「出来すぎちゃうから……ってこと?」
「それでもお酒を嗜みこそすれ決してそれに逃げず溺れず甘えずに、自分の足でしっかりと歩み続けるのが智与子様の本当の強さなのかもしれません」
傷付きながらでも前に進む、ある意味では非常にリリィらしい人なのかもしれないと、智与子についてはそんな感想になる。彼女を語るのに毎度お酒が付いて回るのだけは、よく分からないが。
「では続けて
「……ってことは、この子のレアスキルってお姉様と同じ?」
梨璃自身レギオン内のフォーメーションでの配置は後衛、BZにはなるがとある理由によりシュッツエンゲルである白井夢結のいるAZの最前線まで飛び出すことはしょっちゅうだ。そしてその理由とは──
「はい、笑理さんのレアスキルは梨璃さんもお察しの通りの『ルナティックトランサー』、それに彼女のユニークCHARM『アルガリア』の破壊力を合わせた正面突破能力はオリジンバレット随一! ヒュージを一体一体確実に、いっそ確実過ぎるくらいに仕留めるその姿から中等部時代より〈狂戦車〉──バーサークチャリオットの異名を頂戴しています」
画面が切り替わり、三人目となる小柄ながらボリュームのある赤いツインテールを翻すリリィが、相対するテンタクル種のヒュージの脚を回転する四枚刃の槍のようなCHARMで以て立て続けに抉り取っている画像に。
その中の笑理は目からマギの残光を引いている様子から発動中なのだろうルナティックトランサーの影響もあってか、非常に獰猛かつどこか恍惚とした笑みを浮かべている。
「うわぁ……す、凄いね」
「二年程前にSTL中等部へ編入し、ガーデンの切り込み部隊である水のレギオン〈アクアウンディーネ〉に在籍していたこともあって彼女の戦闘スタイルは天性のセンスに任せた深く悩まず一直線な突撃型。そんな笑理さんの纏う狂気はいっそ猟奇的な程で、ルナティックトランサーの影響抜きでもヒュージに対し異常なまでの攻撃性を持ち、分かりやすく胴体と脚部の別れているタイプにはまずその破壊から入って、身動きが取れなくなったところを後からじっくり回転槍により破砕するそうです」
流石にその画像まではグロテスクが過ぎるからと流れては来ないが、続く解説はこの見慣れないCHARMについて。
「それで、このアルガリアですが〈ウィルシルフィードアーセナル〉──あ、これはSTLのアーセナルの俗称というか、ウィルシルフィード所属のアーセナルをそのまんまそう呼んでる感じです」
「なんか、響きが格好いいね!」
聞き慣れたアーセナルという言葉も別の単語と合わさるとまた違って聞こえると、梨璃の率直な感想に気分の乗った二水はそのまま解説を続ける。
「すなわちこのCHARMはSTL独自開発の最新モデルとなる先行量産機、笑理さんの機体はその中でも個人向けにチューンされた専用機となります!」
「はぁー、ガーデン側から用意されたんだ?」
梨璃たち一柳隊にも専用機持ち──こちらの場合は最初から個人専用に開発されたワンオフ機としてのそれらを持つメンバーは多いが、彼女らの場合は元から使っていた物を百合ヶ丘でも引き続き愛用しているだけなのだから、それをガーデンから、しかもわざわざ最新型を用意されたとは流石はトップレギオン入りしたメンバーということなのか。
「その形態はシンプルに二つ、ドリルのように回転し敵を粉砕する近接用のランスモードとその刃が外側に展開して移行する砲撃用のブラスターモードを有し、そちらの砲撃機構は一般的なレーザー・ビームの照射タイプではなく単発・大型のマギ弾を放つ一撃必殺型ですねー。その名は恐らく〈シャルルマーニュ伝説〉より、触れた相手を落馬させる槍を持っていたとある国の王子が由来でしょうか? 彼の槍は十二勇士が一人であるアストルフォの元に渡り、そこからまた他の騎士へ託されると数奇な運命を辿っています」
「シャルルマーニュ、ってあれだよね? 汐里さんたちの使ってる防御型CHARMの名前!」
「というよりグランギニョル社絡みのCHARMは同伝説をモチーフとしたCHARMが非常に多いですからねー、楓さんのジョワユーズなんてかのシャルルマーニュの持つ剣が由来ですし」
また話が脱線しそうだからとCHARMに関してはこんなものとして、今度は笑理自身のプロフィールに。
「笑理さんの性格は好奇心旺盛元気爆発、戦闘スタイル同様気になったことにはガンガン突っ込むタイプですねー。それ故他人の内情へ無遠慮にズバズバと踏み込み過ぎることもしょっちゅうで、時折相手の逆鱗に触れて幼なじみの先輩をハラハラさせている様子が」
ともかく何事にも全力全開なハチャメチャ系、いるだけで良くも悪くも場を賑やかにするタイプ。同じ一年生のルナティックトランサー持ちとしては普段と戦闘時とでテンションのオンオフが激しい強化リリィの面々ともまた少し違う個性派、という感想になるだろうか。
そして最後の付け足しから、梨璃にも話の流れは読めた。
「その先輩が、次の人?」
「はい! BZの片翼を固める一人、二年生の
四人目となるウェーブがかった緑の長髪のリリィ、優しそうというより全体的な顔色の悪さから元気の無さそうな印象になる彼女がその幼なじみらしい。
「幼なじみってことは、もしかしてリリィになったのも?」
「そうですね。数年前のある夏の日、アンブロシア女学苑の守備地域である山奥にて当時小学生だったおふたりはヒュージに襲われ、リリィによって救助されたのがきっかけでリリィを目指したとのことです」
「リリィに助けられてリリィに、かぁ」
この二人はそのリリィに対して何があったということはないのだろうが、どうしても梨璃はそういうエピソードを聞くと自身のそれを思い出してしまう。だが今はそれはいいかと、頭を振ると二水の解説に耳を傾ける。
「そんな蛙呂絵様のレアスキルは『レジスタ』で、彼女は俯瞰視野の扱いにも長けておりもう一人のBZの方の『鷹の目』と合わせることによってお互いがお互いの、そして仲間の位置を把握することによる的確な連携を見せます!」
「あ、最後の子鷹の目なんだ?」
「そうなんです! 大体必須のレジスタで済まされるから、トップレギオンにまで選ばれる鷹の目持ちのリリィって貴重なんで……おっと、今は蛙呂絵様蛙呂絵様」
自身と同じレアスキル持ちとあって最後のメンバーのことを先んじて語りたがる本能を抑え、まずは目の前の解説からと二水は意識を戻す。
「彼女は文武両道で尚且つ医療方面にも明るく、戦うお医者様を目指されており人呼んで〈ドクターリリィ〉! そこは苛烈な戦闘スタイルから生傷の絶えない笑理さんのことを思ってなところもあるんでしょうね」
「ルナティックトランサー使ってる時って、どうしても荒っぽくなっちゃうもんね……」
そうでなくともAZはレギオンの最前線、敵の攻撃は当然激しく味方の攻撃による余波も色々と受けやすいのだから、どうしても消耗は避けられない。
「そういった軍医的な立ち位置もあり笑理さんのルナティックトランサーによる大立ち回りに巻き込まれないよう、後方からのシューティングモードによる火力支援を基本戦術とされておられます。そんな蛙呂絵様の行動原理は非常にシンプル、笑理さんや他の誰かの助けになるため、そのために医療の道にも通ずるようになったとか」
「誰かのため、かぁ」
「それ故色々と無茶しがちな他のメンバーに対しては過保護気味ではありますが、普段の主張がそこまで強くない分、注意しても押し切れず少し溜め込みがちなところも」
それだけ振り回されているということなのだろうか。やっぱりお医者さんって苦労するんだなと、梨璃がそんな感想になっていると残る最後の一人、笑理よりさらに小柄でまだ幼さの残る短めの黒髪に肩から垂らす三つ編みが特徴的なリリィの解説に移るようだ。
「それではトリとなる一年生の
「あはは、二水ちゃんも何かやらかして追われてる時、しょっちゅう鷹の目使ってるもんね……あれ、瑠々川?」
会ったことのないリリィなはずなのに、初めて聞いた気がしない名字。その理由は単純明快、それはついさっき聞いたばかりの物だから。
「そうだ、STLの理事長も確か瑠々川って!」
「はい、瑠々川理事長は錫さんの後見人になりますね。彼が徳島のガーデンに赴かれた際孤児となっていた錫さんと出会い、そのまま引き取る形になったとか」
「徳島って……」
徳島県──というより四国はその半分以上がヒュージの手に落ち陥落指定となっている地方だ。そこでの孤児だなんてイメージが追い付かずとも、生半可な半生ではなかったのだろうとだけは想像できた。
「そんな錫さんのCHARMは噂では理事長からの贈り物と言われている、ウィルシルフィードアーセナル製の先行試作機『ピナーカ』! この機体はともすれば護身用とも取れるサイズながら機能面は過不足なく、鷹の目で得た俯瞰視野による位置把握と合わせた狙撃にも十分応えうる射程距離を確保しています!」
錫に並ぶように映し出されるのは黒いクロスボウ型のCHARM。小型で取り回しが良さそうだなんて印象になるそれは、曰く彼女の進級祝いに送られたとか。
「それだけ大事にしてもらってるんだね」
「ですね、お互いの立場もあってそう一緒にいられる時間は取れないみたいですが、おふたりの関係は良好だそうです。そんな彼女は一見無口で無愛想ですがむしろ心を許した相手へは結構グイグイ行くみたいですし、戦闘でも後衛として蛙呂絵様共々全体の戦況を把握しつつ的確な射撃を送ることで前衛の援護をこなしています!」
元が暗部の出身ということもあり自らの役割を全うする仕事人タイプ、なのだろうか。これにて五人、LGオリジンバレット所属メンバーの紹介が終わりになる。
「それで、二水ちゃんはこの中だと誰が一番気になってるの?」
「そうですねー「おーい、ごっきげんよー!」へ?」
そんな中聞き慣れた挨拶ながら百合ヶ丘の生徒ではない声と共に、知り合いではある真っ赤な制服の上からパステルカラーのパーカーを着たリリィが、控室のドアをバタンと音を立たせながら開けて飛び込んでくる。
「ヤッホー☆あれ、今日二人だけ? 他のみんなは~?」
「あ、灯莉さん? なんで百合ヶ丘に」
丹羽灯莉──東京の神庭女子藝術高校一年生にしてトップレギオングラン・エプレのメンバーで、二水たちとしても同盟レギオンの一員としてよく会ってはいるが、今日はレギオンの方での予定は特になかったはずだ。
「ちょっと百由さまに呼ばれてねー。で、さっきその用事も終わったから一柳隊のみんなに会いに来ちゃった☆」
「あはは、相変わらず自由なんだね灯莉ちゃんは」
ガーデンの違いを抜きにしてもまた珍しい組み合わせだが、確か灯莉もまた件の異能持ちの一人なのだからCHARMに限らずマギに関わる様々な研究に手を出す百由へ何かしらの話を聞きに呼ばれていた、というところなのだろう。
「それで、二人は何見てるのー?」
「えっと、埼玉の「あーっ!!」あ、灯莉さん?」
またもや二水の台詞の途中で遮るように上がる灯莉の声、その指は画面の中の──
「この子、神庭の試験で見たことある。へー、入学してから探してもいないなーって思ったら、よそのガーデンに行ってたんだー?」
──櫛田弥架、オリジンバレットのリーダーであるリリィを指差していた。
確かに彼女は東京のガーデンに行く予定だったと二水自身言っていたが、こんなところに情報源があったならばと早速メモを取り出し、色々と聞き始める。
「それで、やっぱり弥架さんは試験の時からハバキリを使っていらしたのでしょうか?」
「このきれーなCHARM? だと思うよ。なんかこの子の周りだけマギが面白い色になってたし☆」
「ふふっ」
そんな二水の食い付き具合から、灯莉が来たことにより有耶無耶になっていた「二水の気になるリリィは誰か」という質問の答えは出たも同然かなと梨璃がそんな二人の様子を優しく見守っていると、不意に臀部へさわさわとした感じがしたので慌てて後ろを振り向く。
「うわあっ! か、楓さん!?」
「うふふ、今日もいい触り心地ですわねー♪」
梨璃に対してそんなことをする人物など百合ヶ丘広しといえど楓・J・ヌーベルただ一人、振り向く前からそこだけは確かだった。
灯莉が入ってきたまま開けっ放しだったドアからスルリと入ってきたのだろう彼女はいつものように梨璃のお尻を撫でながらご満悦そうにしているのだから、梨璃の上げた悲鳴でそれに気付いた二水の視線も冷ややかな物になる。
「今日も相変わらずですね、楓さん」
「あれ、ヌーベルいたんだー?」
「灯莉さん? 今日はグラン・エプレと何がということもなかったと思いますが」
「それはねー──」
なんて繰り返しの説明になっていると次はミリアム、さらにその次は夢結に梅と続々他の一柳隊のメンバーもそれぞれ用事を終えて集まって来ては灯莉と二水とで現状の説明の連続となり、しばらくインタビューはお預けになりそうだとその様子を眺めると、梨璃の視線は端末の画面へ。
(オリジンバレットかぁ)
トップレギオンだというのなら、彼女たちの受け持つ任務は決して楽なものばかりではないのだろう。それでもその行き着く先に、少しでも幸があらんことを──
─迷いさえ 痛みさえ貫いた その先に 貴女はどんな夢を歌うのでしょう─
今回は貴重なタンパク源さんの小説
アサルトリリィ・オリジンバレット
https://www.pixiv.net/novel/series/8099285
のアレコレをプロフィールと一桁話数からの情報で二川に解説させてみた形になります。
オチは元の時期がデアラコラボ頃だったのと、向こうを読んでけば伝わったり伝わらなかったり…