今日は随分と部屋に帰るのが遅くなってしまった。最近はクリスマスパーティーの準備に気合いを入れているというのもあるけど、わたしたち一柳隊が担当の日に限って、こんな夜中にケイブが発生したのだからついてない。
そういうのを気にするようになれただけ、昔と比べたら余裕を持てるようになれたのかな。
「ねえ鶴紗、今日はもうこっちで入っちゃおうか?」
「そうね。流石に時間も厳しいか」
もう夜も遅いからと特別寮では珍しいのかもしれないルームメイトからのそんな提案に乗り、一柳隊の一年生の皆には『わたしたちはこっちの寮でお風呂入るから気にしないで』とメールを送ったら、何故か秒で楓から『どうぞごゆっくり~』などと訳の分からない内容が返って来た。
しかし後から来る梨璃たちからの返事も大体似たような文面だし、どういう事なんだ……?
「分からん……」
「どうしたの、鶴紗?」
「いや、今行く」
今日は寒いからゆっくり浸かって体を暖めろ。多分お節介焼きなレギオンの仲間たちはそういう事を言いたいんだろうなと、首を傾げる彼女を追うように部屋を出て浴場へ向かう。
流石にもう11時を過ぎているとなると、わたしたち以外には誰も特別寮備え付けの浴場を利用してはいなかった。
勿論まだ大浴場の方もギリギリ使えるからというのもあるだろうけど、何となく今日は誰かの根回しがあるのではと感じている。特別寮の皆は、下手なレギオンより結束力だとか情報伝達速度だとかが凄いから。
「相変わらず、洗うの早いね」
「鶴紗といる時間は、一分一秒たりとも無駄にしたくないからね」
元々が箱入りのお嬢様だったからか、彼女はよくこういう歯の浮くような事を平然な顔をして言ってくる。
楓といい神琳といい、世の上流階級の親御さんはもっと子供に常識的な振る舞いって物を教えるべきだと思う、うん。
「背中流そっか鶴紗?」
「……好きにして」
わたしが照れてそっぽを向いてもこんな反応なんだから、分かっているのか分かっていないのか。
まあ、彼女は梨璃に対する楓みたいに体を洗うだけで変な感情は混ぜてこないし、神琳みたいに隙を見せてもそこまで謎な事はして来ないから、付き合いの長さを抜きにしても一番安心して任せられるんだけど。
「鶴紗ー、シャワー行くよー?」
「ん、よろしく」
そうして一通り体を流し終え、冷えない内にと湯船に二人並んで浸かり、しばらく特に何を話すでもなく皆にメールで言われた通りゆっくりと浸かっていると、不意に肩に何かが当たる。
「これって……そっか。鶴紗、今日は冬至だよね?」
「忙しくて気にもしてなかったけど、言われてみれば」
それは奇遇にも向こうも同じだったらしく、湯船にいくつか浮かんでいたそれをひとつ手に取ると、こちらに見せ付けるように持ってくる。
「ねえ鶴紗、これなーんだ?」
「そ、それは……」
いや、こればっかりはわざとやってるな。そうに違いないとわたしの
「……
「せーかい。つまり今鶴紗はわたしと、柚子と柚子湯に入ってるってことよね?」
そんな確認わざわざする必要ないだろと言いたくなるが、後半を耳元で囁くように言われると、何故だかむず痒くて黙って頷くことしか出来なかった。
そこでイノチ感じたとか想いを螺旋のように巡らせたとかそういう話にならないのがわたし、
それが二人して心地良いから、下手に踏み込んで今の関係を壊して、お互いを傷付ける結末だけは避けたいから……今はまだ、それで良いのかもしれない。
けどいつかは、ちゃんと口にして伝えなきゃいけない言葉はあるのかもね……
──それはそれとして、翌日隣のクラスに乗り込んでそこの委員長である
─お前も踊れぇっ!─