日常の続きへ
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燃えている。
家が、草が、木が、人が、何もかもが。
視界に写るもの全てが炎に包まれ、崩れ落ち、そして全てが灰燼に帰す。
そんな地獄のような、もしくは地獄よりも遥かに残酷な世界の中心に私は、──私ではないワタシは立っている。
沸き上がるのは哀愁か、絶望か、それとも諦観か。
いや、全く違う。
今ワタシの中で暴れているこの感情は、憎悪だ。
この状況を生み、全てを焼き尽くし、そしてワタシから全てを奪った存在への強い憎悪。
──してやる
紅蓮に染まる空に手を伸ばす。たとえワタシが何十人いたとしても届くはずがないなんてこと、赤子であってもわかるであろう。
──殺してやる
ただ、それでも。
絶対に、許さない。絶対にこの手で、全員殺して
その時。
突如目の前が赤くなり、ワタシの意識はプツリと途絶えた。
2024/1/9 5:00:17
「──あ」
目が醒める。
さっきまで見ていた筈の夢にしてはあまりにも現実的すぎる地獄はもうなく、目の前にあるのはベッドから見える天井だけ。あれは一体なんだったのか。寝惚けた頭でどこかで見覚えはないのか記憶を辿る。そういえば、1週間程前にも同じような風景を寝ている間に見たことがあった筈だ。あの時は、たしか…
「──んむぅ……美琴ぉ、どうしたのぉ……?」
「はぁ……」
…
視点を下にずらすと、そこには1週間前と寸分違わぬ光景が広がっていた。
「…千智、なんで私のベッドにいるの」
私のベッドの上で無駄に実った果実を押し付けながら抱きついてきているこの少女──とは言っても同い年だが──は
「そこに美琴がいるから、かなぁ…」
「うるさい」
軽く頭を叩くと、「んみゅ…」などと訳のわからない擬音を発しながらやっと私の上から退く千智。私も人の温もりが離れていく感覚に若干の寂しさを抱きながらも起きる支度をするが、千智に止められる。
「今日は私が朝ごはんと弁当作るから美琴はゆっくりしてていいよ!」
普段は私が料理……というか殆ど家事全般を担い、千智には本当に忙しい時に買い物を頼む程度な筈だ。意気揚々と台所で作業をし始めているが、碌に料理もしたことのない千智に本当に朝ごはんと弁当なんて作れるのだろうか。
「わーっ!!鮭に火がついたぁぁっ!!!」
……頭が割れるように痛い。
2024/1/9 5:32:22
私はただ、目の前にいる子──名を、
美琴は村の人やお父さん、お母さんと違って私を"杜千智"として扱ってくれたたった1人の大切な人だった。それに、美琴と出逢ったからクラスメイトが話しかけてくれるようになった。美琴と出逢ったから初めて"友達"と呼べる存在が──勿論美琴は除いて──できた。
今ワタシが私として存在してるのは、全部美琴のおかげだ。美琴がいなければ私は何もできないし、誰にも必要とされない。……本当は知っている。私に話しかけてくれる人の殆どは、私ではなく美琴と関わりたいだけなんだってことも、みんなが"いつも美琴にくっついているだけの役立たず"としか私のことを認識していないことも。
だからこそ、ちょっとでも美琴の隣に立てるように、ちょっとでも美琴を助けれるようになりたいと思った。
…それなのに。
結果はこのザマ。
美琴なら余所見をしながらでもできるようなことすら私にはできない。
かつて両親から言われたことが朧気ながら思い出される。
──お前はこんなこ…もでき…か…
──こんな…がガ…の巫…だなんて、情け…い…
…私には何もできない。
"普通の人"ならどんなに簡単にできることでも。
…なんでこんな私が美琴と一緒に暮らしてるんだろう。
私なんかお荷物にしかなってないのに。
いつもいつも迷惑ばっかりかけて、手伝うこともできないで、本当に……
「…ごめんなさい」
「どうしたのよ急に。別に謝るようなことじゃないわよ。…そんなことより早く食べちゃわないと学校、遅れるわよ?」
美琴はまるで何も気にしていないかのように受け流した。
「…怒ってないの?」
「別に、こんなことで怒ってちゃキリがないでしょ?…慌てて抱き付いてきて胸押し付けやがった時は一瞬殺意で意識飛んだけど」
「ん?なんて?」
「なんでもない」
最後何か恐ろしい呟きをしていたような気がするが、それでも本当に(少なくとも鮭については)気にしていないのであろう。
私だったら絶対にもっと怒ってるか、機嫌が悪くなるかはするだろう。でも美琴はそんなことせずに許してくれる。
……あぁ、本当に。
「羨ましいなぁ」
怪訝そうに見てくる美琴になんでもない、と返しつつ残っていたご飯を掻き込んだ。
2024/1/9 06:30:00
食事をし、準備をし、そして学校に行く。そんなどこにでもある日常。この日常がもし、急に終わりを告げるとしたら。
一体何人がそんなことを真剣に考えるだろうか。
大多数の人間はそんなことなど考えず、自分が置かれた現状を謳歌しているか、あるいは必死に生き抜いているかだろう。
彼女らもまた、例外ではなかった。
──これは、やがて終わりを告げる世界で歪んでいく2人の少女の物語である。
あらすじ、あんな壮大に書いてるけど本当に書ききれるんやろか…?