「調査は確実に行うが、処遇に関してはガネーシャと相談の上で決める。調合の真似事をするモンスターなど前代未聞だ、相応の知能があるものとして考え、こいつの前では下手に情報を漏らすなよ」
「「「はいっ!」」」
そういう事になった。
想定される中では一、二を争う軽い対応だ。最悪の場合でも分裂した私が一体消されて魔石を一つ失うだけだったが、決して軽い損害でもないので助かった。
「では非番以外の者は解散しろ!
「「「はいっ!」」」
いい返事だ。感動的だな。だが無意味だ……神の起こす馬鹿騒ぎを止められない的な意味で。
「……はぁ、全く油断も隙もない」
『キュウ?』
「チッ!」
団員が――恐らくは集まった中にいただろう非番の者も含め――去って行った後で、シャクティが短くも万感の思いが込められた溜め息と愚痴らしき言葉を溢す。
誤魔化しがてら首を傾げて鳴いてみたが、返って来たのは舌打ちだった。行儀の悪い真似に驚いたが、私以上に本人が驚いた顔をしていた。無意識に出るほど苛立たせたのだろうか……これは偉業では? ガネーシャを呼んで【ステイタス】の更新を試してみるべき。
ちなみに、この後ガネーシャが合流して説明をしたのだが、シャクティは夜中にこっそり調合をすると本気で思っていたらしい。あのガネーシャが真面目なトーンで「ちょっとそれは都合良く考えすぎだろう……」と駄目出しをする程だった。シャクティはこの世の終わりみたいな顔で落ち込んでいた。
調合するのは胃薬にするべきだったかと思いながらも、とりあえず体内で生成した
それはそれとして、ボディーランゲージと鳴き声でガネーシャにアピールして近付いてもらったところで赤髪の女
これで秘密裏の調査を諦めて巻き込む規模を大きくするなら良し。逆に秘密主義を拗らせて私に依頼が来るようならなお良しだ。
――地上組としての報告は以上。それっぽい
――こちら『
――何してくれてんの!? あー、こちら
――こちら極彩色組。忙しいからパス。以前の報告通り、精霊関連じゃないなら胎児の寄生を誘発する事なく回収できる事を確認してるから参考にしてくれ。いくつか現物がポーチに入っているけど取扱いには注意しろよ。しかし極彩色モンスター多すぎて無理矢理テンション上げんとやってられん。まだまだいけるぜ! メルツェェェル!
――そいじゃーすまんが頼む。許可が下りたらこっちも向かうし、情報が入るなら階層の詳細とかここに上げるわ
――了解
――りょ、乙
――りょつ
「――それで、どこまで知っている?」
『
「目的は?」
『さぁな。
「後半の情報が具体的すぎる!?」
『ただの予想だよ。現場は見てないし確証はないぞ』
「なんて白々しい……」
「だが、嘘は言っていない。あくまでも予想らしい」
そんなわけで場所は変わってギルド最奥である。
ガネーシャから「そういう事は直接伝えるべき」と実に真っ当なお言葉を賜り、気を遣って運んでくれた。時期的に
しかもそうするだけの理由――特別な事をするという
(
そもそも現物が一つあれば、解析して複製可能なのではなかろうか。鍵として成立する仕組みは知らないが、核となる材料は過去の偉人というか奇人であるダイダロスの血を引く者の眼球らしい事はご主人の一粒で二度おいしいという説明にドン引きした記憶が忘れさせてくれない。
つまり科学的な網膜パターンか、ファンタジー作品あるあるな魔力波形辺りだろう。計測できるなら模倣する事も……そもそも事実確認はできていないが、神が人を作ったと人は信じている世界だし、神秘持ちの錬金術師なら短期間でクローンを培養できそうな気がする。賢者の石の件からするに、神の御技判定で破棄されるだろうか?
さておき、攻略について別の視点から考えてみよう。
しかも随所に設置されている
おまけに大半が
現時点であれば
困った事に、その場合でもオッタルに防御魔法の一つでも与えてやればソロで解決してしまう気がしてならない。物語の都合と言ってしまえばそれまでだが、黒竜以外の出て来る敵が彼より劣っている問題は、現状が軽く詰んでいる証明に近いのだが。
というか『
レフィーヤ大明神やリューの成長速度が他種族に劣っていない以上、本来なら長命なエルフは数十年単位を現役で戦い続けてLv.10前後の者が複数人は出て来なければおかしいだろうに。実態は森に引きこもって周囲を見下す見た目は良い種族……戦わなければ生き残れない世界でこれは、消極的な人類の裏切り者とさえ言われかねない。ウドの大木とは正しく森の一部である連中のためにある言葉だ……ウドは山菜か。
もっとも、この世界の始祖エルフは霊峰アルヴ山脈に暮らす山の民だったらしいが。大穴と呼ばれていた頃のダンジョンから無限に湧いて来るモンスターに蹂躙され、人類の生存圏が狭まっていく一方な古代の話だとか。
他種族を精神的に見下すのも、かつて山から物理的に見下ろしていた環境が関係しているのだろうか。神時代に突入して『
好意的な解釈から予想するならば、外に出て戦う高潔なエルフであればあるほど、認めた仲間を優先して自分の身を盾または囮に使い命を散らした可能性はある。なおオラリオで見られる標準的なエルフの性格。
連中、性格がアレなので森にいたら若造扱いでいつまでも権利を認められないから新天地に逃げたという、流民の亜種にしか見えない。先祖も山から逃げたわけだし、多くは森に引きこもって現実から逃避しているし、基本的に逃げてばかりである。魔法が得意な種族特性的に引き撃ちさせるためすぐ逃げる性質も与えられているのだろうか。
そう罵ったところで「所詮獣の戯言、オレの心には響かない(キリッ」されるだけで成長が早まるわけではないし、不毛なので考えるのも止めよう。
オッタル突撃による解決は手段の一つだが、しかし原作は言ってしまえばベル育成RTAバグなしチャートらしいので、下手な介入はしない方が良さそうでもある。踏み台が高くなって越えられずゲームオーバーは中々に居たたまれない。
(【ガネーシャ・ファミリア】の世話になる事を拒否しなかったのは、憲兵で中立だからってのがあるもんな。
その意味では、ベルの壁が小刻みになるのも成長速度を緩めてしまう可能性がある。【ステイタス】や【
その割に千年間で土木工事による短縮の可能性を追求、実現できているのが
相対評価に関しては永遠に存在する神だからこそ
その意味では、恐らくは最初期に降り立ち君臨していたゼウス・ヘラに挑む神々という蟲毒環境が最適解として浸透していたのが不幸だったのかもしれない。というか蟲毒は近くに街を作ってやれと。ダンジョンで稼ぐ連中の邪魔をして可能性を無駄に食い荒らした馬鹿集団とかいう
結局は長生きなだけで計画性もなく刹那的に楽しむだけで満足できてしまう神々を、私は心底
思えば、一族を呪ってでも計画を遂行する
その間に犠牲となった人々など、神からすれば見分けのつく犬猫程度の価値しかないのだし、自分の飼った個体でもなければ欠片程度の愛着も持つまい。ゼウスやゴブニュの例はあるが。
どうせ黒竜を討つに至らない過渡期でしかないのだから、人類一丸となって推し進める事業にしていれば数百年で深層スタートも可能となりより多くのガチャを回す機会を得られたかもしれないのに、全知とは無知の知を意識できない連中の戯言に過ぎないではなかろうか。
(ていうか未知を求める全知とか何文字で矛盾すれば気が済むんだ。しかも実際に下界でそれを目の当たりにして喜んでいるし。ボーボボか?)
そんな無駄に終わった千年と微かな成果を残している千年を評価したところで後の祭ではあるため、話をベルの育成に戻そう。
とはいえ、こうなると彼に関しては放置安定かもしれない。いっそ発想の転換で私が天に立つルートを走って黒竜もダンジョンも攻略してしまう方が私個人の感情としては楽しいようにも思うのが何とも度し難い。考えるのは後にしよう。
『それで、解決にはどう動く予定だ?』
「ふむ……可能であれば【ガネーシャ・ファミリア】に動いてもらいたいが、時期が悪い」
「うむ、
フェルズの言葉に対して、ガネーシャが同意を返す。確かに丁度悪い時期ではあるのだ。
そんな目的とは関係なく、祭は街に経済効果をもたらす。開催時期を通知してしまっている以上、既に露店の配置も決まり、そこに向けた食材等の調達についても手配が済んでいる。時期を後にずらそうものなら、何軒かの店が畳まれ、数人が首を吊る話にまでなりかねないのだ。それを許容してはギルドの管理能力が疑われてしまう。
「ダンジョン内の異変であれば『
そう語るフェルズの背中は、どこか煤けて見えた。