結局、フェルズが『
なんでも第一級だと見回りにいないのがバレて目立つため不可らしい。憲兵としての人気が仇になった形だ。
(いやしかし、即座に回収命令を出して来たな)
どうやら『
そして四日後、成果である30階層の異変について報告を受けた
期日は
(片付け以前に、祭の最中にフレイヤがモンスターを逃がして、魔力に反応した食人花が現れてだろ。万が一にも犠牲者が出ないようにしたいし、地下水路の掃除だけでもさせてもらえんかな)
フレイヤが解き放ったモンスターは魅了で人を直接傷付けない程度に命じて暴れさせたと思うが、無関係な食人花はそうはいかない。折角の祭なのだから、死者はもちろん怪我人だって出したくない。民衆にとっては二者の違いなど分からないのだし。
しかしながら、介入の匙加減が中々に難しい。原作がベル育成RTAならば、外伝は立ち回りが巡り巡ってそれを助けるように働くメガトン構文の嵐である――そうご主人は言っていた。
例えばそろそろ起きるであろう遠征帰りにミノタウロスが逃げ出し上層まで進出する事故だが、実際に不自然の連続である。
遠征帰りで疲弊していた状態で長年ダンジョンに潜っていた【ロキ・ファミリア】にとっても初の
だが実際には逃がしてしまった――それも5階層まで。ミノタウロスの出現階層は確か15階層からなので、最低でも上り階段を十回も先回りされたのである。Lv.2相当のモンスター相手に。何百匹のミノタウロスが同時に逃走したら実現できるのか、トリビアの種に投稿してみたい。というかそれだけ全力で駆け抜けたはずなのに威圧的な演出と共に現れて大して消耗した風もなくベルに襲いかかる余裕があるとか、ミノタウロス側も体力お化けすぎる。ある意味で逃がしたのは仕方ないのだろうか。
精一杯好意的な解釈をすれば、絶対的な指揮官として君臨しているフィン頼りな体制の弱点が如実に現れたわけだが……それでも二階層以上逃げられてしまうのは同じ失敗を――あるいはそうだと気付きもせず――繰り返す無能としか言いようがない。しかも正史ではフィンの離脱により総崩れになる失敗は数ヶ月後にも起きるらしいので、再発防止の意識もない。背中に刻まれた
この件で何が一番酷いかと言えば、別にギャグ補正が働いてない真剣な空気でこれな点。恐らくベルなら優しさ、リリルカなら損得で提案するレベルの難易度でしかないのに、である。それができないとはどれだけ思い上がった独り善がりの寄り集まりなのかと、この世界における一般的な――むしろ優秀とされる――冒険者の本質に溜め息が止まらない一件だと言うより他ない。
余談だが、後天的な『
そして奇跡的に5階層まで逃げたミノタウロスは八つ当たりなのかプライドを取り戻すための儀式なのかベルを襲う事件を起こし、間一髪で追い付いたアイズによって倒される……のだが、ここでも魔石を狙わず細切れにしてベルを血塗れにしてしまい、発破となるベートのトマト野郎発言へと導く。どこからどう見ても誤解の余地がない立派な乱数調整だ。
もうね、何を遊んでいるのかと。モンスターへの復讐心が執拗な攻撃に繋がったのかも知れないが、それならばもっと手前でミノタウロスを襲って時間を無駄にしているはずで、アイズが真っ先に追い付けるのはおかしい。そして細切れにするという事は最高速度で駆け抜けずに立ち止まって姿勢を正して狙いを定める余裕まであるわけで、なんならベルに最初の一太刀による結果が視認できる程にゆっくりと念入りに斬っている。
この時の何よりも素晴らしい点は、胴なのだ。ミノタウロスが手にした斧を意地で振り下ろしたり手放して落下させるだけでも即死を狙える圏内にも関わらず、腕を切り落としたり魔石を砕いたりせずに、いの一番で剣を走らせた場所が胴体なのだ。ついでに言えば剣の動きは見えていたか知らないが、ミノタウロスの体に走る線は見える程度にゆっくりとした動き。
ベートも笑ってなどはいられない。憧れのアイズと仲良く並走できる喜びに千切れんばかりの勢いで尻尾を振ってる場合ではなく、かつて群れのリーダーだった経験から弱者を守る最善として最悪でも上層手前で階段封鎖に走らなくてはならなかったのだ。後から生えた設定だと言ってはいけない。
そもそも深層遠征の選抜メンバーなら中層如きで命を落とす可能性は限りなく低いので、その場で唯一のLv.6しかも索敵にも使える魔法持ちなリヴェリアこそ最前線を走るべきなのだが。設定以前に『これだから王族は』案件。
というかLv.2相当が十階層以上逃げる時間は割と長いはずで、それだけの時間を冷静になれないまま闇雲に動いて逃がし続けるLv.5という構図は常識的に考えて噴飯物だ。ギルド職員が聞いたなら卒倒物の、株式会社なら大暴落間違いなしなやらかしであり、それはもう秘匿に秘匿を重ねなければならない大失態だ。
それを酒の席で自慢気に吹聴するなど露出癖的な性的嗜好を勘繰られる行為であり、周りもミノタウロスの単語が聞こえた瞬間に総出で口より先に手を出して止めなければならない丁寧な恥の上塗りである。
そもそも、ただでさえ失敗した遠征のお疲れ様会などやってる場合ではない。予約してるからとか言ってる場合じゃない。
確かに気持ちの切り替えは大事ではあるが、どうせならばそれはミノタウロス逃走時に見せて欲しかった。
挙げ句の果てが
つまりアイズは誰彼構わず斬りたい超危険人物(ただしギャグ補正あり)だし、ベートは自分の失態を自覚していない
年齢と環境を考えれば等身大ではあるのかもしれないが、いずれにせよ酒を飲んで暴れるタイプの人間は我慢しなくてもいい相手――身内などが相手なら平気で暴力を振るったりするので是非とも付き合い方は上手にして欲しい。
ちなみに、これだけ扱き下ろしているが、第三者として客観視しているからこそな面がある事も補足しておく。
当事者になればパニックを起こして意味不明な行動を取る事は珍しくないし、逆に正常性バイアスで危険を危険と認識できない場合も考えられる。
ミノタウロスが逃げ出しても雑魚相手だからすぐ片付くと階段へ先回りせずに、普段通り手前から順に処理する馬鹿行動に走らせた可能性は、実はそこまで低いと言えないのだ。つまり、とても恐ろしい集団心理である。
(よく考えたら50階層のニアミスは危なかったんだな。タイミングずれたら帰り道のベル一目惚れが起きずに早熟スキルが生えないまま緩やかなバッドエンドルートもありそうだし。むしろ最悪はベル死亡とロキ派凋落まであるのか?)
話が恐ろしく明後日の方向に飛んだが、まとめると【ロキ・ファミリア】の動きも割と舞台装置なので手出しは最小限にした方が良さそうなのである。
しかしながら内容が割と紙一重だったりするらしいので、見守るだけや後々になって知るのは心臓に悪い――ウーズ形態に心臓はないが。なので事前に影響の薄い部分は剪定してしまいたいのが本音だ。
(祭だから武器を携帯してない奴が多くて倒すのに手間取る。素手でも魔法は使えるから後衛が活躍……と思いきや魔力に反応するから
Lv.5の攻撃を凌ぎきるLv.3相当はどうなんだとは言いたいが、街中で全力を出せなかったとか初見で様子見したとかイベントボス扱いでLv.4相当の強化種だったとか理由が重なった結果と考えるべきか。最後はレフィーヤが即死してないのは乱数に勝っただけの運ゲーになるので勘弁願いたい仮定だが。
(いやめっちゃ心配だわ。大丈夫だろうか? いっそ
かつて酔っ払ったレフィーヤ大明神に聞かされた
恐らくは第一級冒険者とのパーティープレイになるために【
つまり立ち直るきっかけとなる一件を取り上げてしまった場合、以後の場面で躓き、いずれは詰む可能性が高まる。原作の密度が高いという事は、外伝の密度も高いのだから。
(あかん、もう考えたくない。いっそ黒竜を含めて全てを滅ぼしたら駄目だろうか。私に取り込まれる形で世界は一つになったエンドで良くないかな、もう。ご主人が良く口にしていた黒ゴライアスの一件でヘルメス取り込むのを皮切りにしてさ。お腹壊しそうだからやっぱなしで)
ヘルメスってヘルペスに響きが似てるし。
考えれば考えるほどに、私が動かない方がチャートは安定する。原作万歳。ファッキン現実。だが私は好きに生きたいので、原作を壊しつつハッピーエンドを迎えたい。綱渡りするんじゃなく綱になる方向のクソゲーにしたい。
(せめて一周目みたいに暗黒期スタートなら色々と仕込めたのに……いや、原作に近いなら修正力もあるのか?)
考えていたら、ふと気になった。俗に言う修正力があるのなら、こちらの干渉が無駄に終わり規定路線を辿ってくれるので、ある意味では好き放題しても問題はなくなる。
つい先日『
目下の課題はレヴィスから【ガネーシャ・ファミリア】の第二級冒険者を守れるかなので、修正力の確認は
ところで
というか、24階層の騒ぎを考えれば、この段階で回収依頼の対象である卵を仕上げていたであろう30階層で異常発生の兆候が確認されていないのは不自然に思える。遠征帰りで疲弊しているとはいえ、ダンジョンに慣れている【ロキ・ファミリア】がモンスターの数を疑問に思わないとは思えない。ましてやフィンのいるグループだ、正常性バイアスに誤魔化されるとは考えたくない。
(まさか……精霊の卵はとっくに仕上がっていたのをレヴィスが落として『
私に考え付く、一番ありそうな可能性はそれだった。ところどころでガバってギャグ補正に任せるのは勘弁して欲しい。
メタ的に考えれば、原作者の中ではアリーゼボディ乗っ取りルートだったから肉体に引っ張られてボケもこなせる設定だったのだろうか。
(むしろ没設定が適用されているifルートの可能性もあるのか、会ってから時間は短いけど二周目に送り込んだ推定犯人達――あいつらの性格なら十分にあり得る)
我ながらなんとも恐ろしい想像をしてしまったものである。その場合、怪人化したアリーゼボディは本来のレヴィスより強いのか弱いのか。アイズとの因縁に加えてリューとの因縁も生まれてベルを巡るライバルから更に複雑な人間関係に発展するのか。むしろそのままレヴィスまで――あるいはアリーゼとして――ベルのヒロインに加入するのか。可能性は無限大である。爆発しろ。
そのうち私は、考えるのをやめた。『
そんなわけで
本物の食人花の数を減らして、何体かはモス・ヒュージの能力で生み出した分身を極細の糸で操作して代役をさせたらどうだろうか。打撃耐性ましましにして防御優先で動かせば危険は少なく時間を稼げそうだ。
しかし地下水路の食人花を早々に排除してしまうと、
ご主人には酷評されていたし、私も今しがた評価を下げたばかりだが、フィンは第三者目線であれば優秀なはずだ。あとロキも。適宜そっとヒントを流せばいい感じに事態を転がしてくれると私は信じている。
(さて、後はこの計画を他の私に伝えて動いてもらって……トマト野郎の見学したいなぁ。どんだけ血塗れだったんだろう)
後に私はこの時の判断を悔やむ事となる。まさかあんな事になるとは……読めなかった、このウーズのラピスの目をもってしても!