転生したらスライム(通称)だった件   作:夜月工房

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転生したら迷走中だった件

地上の私です。とりあえずギルド本部に向かい、冒険者になりたい旨を伝えたら、まずは【ファミリア】に加入するように言われました。一応、眷族募集中の貼り紙が並ぶ掲示板を紹介してくれたから、親切ではある。ちなみに、受付はエイナでもミイシャでもない知らん人だった。

 

(うーん、ぶっちゃけ聞いた事もねぇ名前がほとんどだわ)

 

掲示板を眺めての感想がこれだった。そもそもご主人が付き合いのある有名な派閥しか知らないのも理由ではあるけど。

 

(これは大人しくヘスティアを訪ねに行くべき、かなぁ)

 

しかし昨日の今日でノコノコと屋台でバイトする女神の前に出向き、やっぱり眷族にして下さいと頭を下げるのは、割と恥ずかしい。そして仮に入団したとして、だ。

 

(そもそも私に『神の恩恵(ファルナ)』は刻めるのか?)

 

そんな疑問にぶち当たった。擬人化した際は体内の魔石が一時的に消えるのは確認しているが、だからといって純粋な人間になっているとは到底思えない。そのままの姿でも各種能力を扱えるわけだし。

ライト・クオーツの能力で目からビームを実現できたのは感動だったな。熱線なせいで目が焼けて視力に影響が出る懐かしのパルス君式だったが。自己再生能力便利です。

(世界の危機だったらしいけど後日談で発覚したからチートを十全に扱えるご主人があっさり解決して関係者の心をバキバキに折った)オリンピアの例からすると、人間以外に刻める可能性はある。だが、その場合でも恩恵の効果が出るとは言ってない。

何故なら生まれた時から全能で零能を楽しめる神ならその状態から強くなる遊びも楽しめない理由はないのに、実践している神は知らないからな。それにプロメテウス子ちゃんは自らの落としたアレで零能部分を誤魔化していた可能性もありそうでなぁ。

あとは商会の馬車を引く馬に刻んでない事実が不可能だと言っているような物だろう。それとも恩恵を与えた結果やたら良い声の赤くて兎のように素早い馬と化して禁忌に指定されたのだろうか。

話はずれるが、人間に限定せず動物の兎に恩恵与えてヴォーパらせる方が娯楽としては面白い気もする。生態系ピラミッドを壊すって意味じゃモンスターが人間を淘汰する自然な流れに介入した神のワガママと変わらんし。私の心の中の古王もこう言っている……選んで殺すのが、そんなに上等かね?

色々と考えはしたが、ご主人であれば他の原作知識で例を挙げて推測できるのかも。途切れ途切れの情報を又聞きしただけの私では不可能だ。

そして確かめようにも、失敗時の危険性(リスク)が高い。ヘスティア相手なら素直に話しても――または誤魔化しながら勘違いさせても――いけそうな気はするが。

手段は問わずに恩恵問題を突破して加入できたとしても、今度は駆け出しの域を出ないベルとパーティーを組んだ場合にそれらしく振る舞えるだろうか、との疑問も浮かんできた。今更上層で傷を負うとか不可能では? 自傷しか思い付かんがネックは再生力ぅ…ですかねぇ…。

最早チュートリアルの如く少し進展がある度に新しい要素(もんだい)が出て来て通行止めを食らってしまい、軽い絶望を覚える。

 

(無理だ。いっそ人間に転生してから新しく始めたい……)

『……そうか、作ればいいのか』

 

しかし、私に電流走る――!

念能力の具現化系で人間を作り出してしまえば……それに操作系能力を使い、オーラを持たせるなら放出系も必要だったりするのかな……あれ、系統の相性図って強化と特質以外の配置どうだっけ。触れてた時期が昔すぎて忘れたぞ。

いっそ後天的な特質系で全系統が……えぇと、70%になる代わりにデメリットのない劣化絶対時間(エンペラータイム)みたいな能力とか。実現できそうなのが悩ましいというか、下手に考えたら勝手に作られそうだ。どうせなら合計値は一割増しになるくらいじゃないと旨味がない。

しかし思えばあの台詞縛りの能力は、オーラを本心ただしニュアンスに変化させて放出して相手に届けてたのか、具現化した本心を放出してたのか……わからん。念能力は奥が深すぎる。

もういっそリスクを最小限にするため地上のモンスターみたいに魔石分けた分身体を作って試させたら駄目かな? ん、あれ? 既に四つに増えた魔石を分け合ってる最中じゃん。

 

 

『と、言うわけで相談に来ました』

「行動的すぎる……!」

「ここまで誰にも気付かれずにやって来るとはな……道中には冒険者も少なくなかったであろうに」

 

考えてみたら失敗しても最悪は魔石一つを失うだけで、命に別状はないんだよな。分体が滅んだ時点で情報は自動共有されるし。

そう考えたら気が大きくなって、やって来たのはギルド本部最奥、祈祷の間だ。

 

「改めて目的を聞こう」

「ウラノス!」

『感謝する。私がここを訪ねた理由だけど――』

 

 

 

 

 

瞬間、フェルズの脳内に溢れ出した()()()()()()()

 

「ウラノス!! オラリオは『異端児(ゼノス)』をモンスターと判断するぞ!

……密猟者め! あんな巨大な個体を逃してしまうなど!」

 

眼晶(オクルス)に映るのは、オラリオの街を破壊する怪物――彼の巨獣(ベヒーモス)の系譜に連なる幼体であった。未成熟とはいえ、その体長は優に10M(メドル)に届く。一度は捕らえた時点ですげぇよ密猟者。

 

「やつらを責める事はできまい。『異端児(ゼノス)』の情報を伏せると決めたのは私たちだ」

 

密猟者の取り締まりに踏み切れなかったのは、捕縛するとそのまま『異端児(ゼノス)』――人と変わらぬ心を持った喋るモンスターの存在までもが広く周知されてしまう事に繋がるからだ。それは通常モンスターを前に躊躇してしまい逆に命を奪われる人間が出てしまい、関係に修復不可能な深い溝が入る事態に発展する可能性が濃厚なため、ウラノス達は表立っては動けなかった。結果、密猟者は今も野放しのまま闇に潜み蠢いている。

なお、街を破壊する怪物は、お気に入りの玩具であったウダイオスの上腕骨が行方不明になった悲しみに暮れながら駄々をこねているだけであった。

 

『わかっておっただろうに。のうウラノス』

「……(名前知らん……)」

 

そこにやって来たのは、ヒューマンの幼女、あるいは小人族(パルゥム)――いずれにせよ人間にしか見えない、自称ウーズの『異端児(ゼノス)』だった。台本にはボクオーンと書かれているが、打ち消し線を引かれているため名前は不明だ。

 

『あの心の弱い連中が人間と怪物(モンスター)が共生する事など認められるものか』

「では我々になんの手だてもないまま彼らを騙して戦わせ、死ねと言うのか!」

 

フェルズは激怒した。必ずや邪智暴虐の民を導かねばならぬと決意した。フェルズには政治がちょっとわかる。フェルズは、ウラノスの懐刀である。死者蘇生の魔法を発現し、一度と成功せんで嘆いて来た。けれども子供の死に対しては、人一倍敏感だった。

 

『そうじゃ。それが都市民の言う『正しい怪物の一生』じゃ』

 

そんな怒りを抱くフェルズに向かって、オラリオへの失望を隠さない調子で突き放すような言葉を突き付ける『異端児(ゼノス)』。

 

「自らは剣もとらずに冒険者を戦わせておいてか――」

 

ウラノスもまた嘆息していた。これにはフェルズも驚き、困惑してしまう。

 

「ちくわ大明神」

「ヨシ!」

 

もたらされた情報、各々の意見、その場にいた三人の誰のものでもない謎の声。それらを受け止め考えを纏めた上で、フェルズは決意した。何やら先帝の無念を晴らすとでも言いたそうなポーズも決めたが……何を聞いてヨシって言ったんですか。

 

『行くのか?』

「……死ぬなよ」

 

そこにどのような解釈があったのか、いつの間にかフェルズがどこかへ出発する流れができていた。しかも命の心配をされるような危険地帯へと。ダンジョンの深層辺りにでも送り出されるのだろうか。

 

「七英雄コラなど何万見たか知れないよ……待て、さっきのは誰だ……いや、そもそもこの流れはなんだ!?」

 

ここに来てようやく異常を自覚したフェルズ。しかし無情にも時間切れ、視界が眩しい光に包まれていき、やがては白一色に染まっていった――そんな白昼夢に似た何かを体験している間に、自称ウーズの『異端児(ゼノス)』の発言が今まさに締められようとしていた。フェルズはどう動けば違和感なく事態の把握ができるか必死に考え始める――。

 

 

 

 

『――と、いうわけなんだ』

「なるほどな。そういう事ならば手はなくもない」

「ウラノス、それは一体?」

 

私が説明を終えると、ウラノスは納得した上で手助けまでしてくれるようだった。ずっと黙って聞いてたフェルズは改めて説明しろとせっついてるが、これでも上下関係はしっかりしてるんだよな。不思議な関係だ……共犯だ

っけ?

 

「フェルズ、ガネーシャを呼べ」

「ガネーシャを……なるほど。わかった」

『……怪物祭(モンスターフィリア)、か?』

 

私の語った目的は、お前たちには任せてはおけぬと言ったかはさておいて、私自らが出(クラウス・パッヘルベ)る事で先行して『異端児(ゼノス)』を受け入れる下地を作る事。活用できる異常事態(イレギュラー)の証明。早い話、手っ取り早くオラリオで何らかの活躍をして名を上げてしまおうという話だ。

擬人化して冒険者をやるのが一番早いとは話したが、過去を辿れない実力者は不自然だと言われ却下されてしまった。

確かにその通りではあるのだが、地図に乗ってない小さな村とかがあるなら竜の谷付近に適応した超人集団の最後の生き残りとか設定は考えられると思う。天界にいた頃から小さな村とか探し当てるなんてできてなかっただろうし、全能を捨てた今はなおさらだ。

話では原作でも半年でLv.5にはなる明らかな異常性を持つベルの背景を知ろうとした――少なくとも成果を出した――者はいないそうだし。ヘルメスはゼウスの使い走りで最初から存在と背景を知っていたみたいが、あるいは彼ならば姿を隠す兜と空飛ぶサンダルで村を探り当てた可能性はあるか。

ところでエルフに発現しやすい魔法関連のスキルだとかで血筋が関係する可能性は広く知られているだろうに、ベルの血筋を気にしなかった理由はなんだろうか。どうにもオラリオの連中はデータの採集や蓄積が下手だ。

【ステイタス】の詮索が禁忌なせいもあるんだろうけど、そもそもあれはなんなのか。手札を知られると対策されるとは言うが、戦法からして脳筋な連中の想像力で警戒するなど片腹痛い。階層主相手に数を揃えて大真面目な力押しするとかやってる事はピクミン以下だぞ。せめて同じ脳筋でもゴライアスにわざと食われて体内から蹂躙する一寸法師の真似事くらいしてみせるべきだろうにお前の事だぞ勇気がどうこう口にする小人族(パルゥム)復興委員会会長殿。ダンジョンは生きているとか物の例え的に言ってその内部に潜るなら、応用して巨大な敵の体内から攻撃するアイデアくらい出ないものだろうか。野良ウーズでもできる戦法なのに。やられて有効なのを知ってるのに真似しないとかモンスター相手に特許侵害でも心配してるのかと。

 

話題が迷子になってたな。とりあえず擬人化のまま冒険者するのは認可されなかった。そして解決策に呼ばれたのがあのガネーシャ――オラリオで随一の調教(テイム)技術を持ち、地上でのモンスター所持を許可された【ファミリア】の主神だ。

ご主人はベルのオラリオ入りを原作に合わせたと言っていたし、そうなると直近のイベントである【ガネーシャ・ファミリア】主催の怪物祭(モンスターフィリア)も絡めると思って良いだろう。

 

「知っていたか」

『名前と概要くらいはね……モンスターの姿で活動すればいいのか?』

「その辺りはガネーシャが来てから話そう」

『それもそうか』

 

説明が二度手間になるのは面倒だものな。事前の打ち合わせをしても良い気がするけど。

さて、待ち時間で瞑想でもするか。念の修行って基本的には錬の持続時間を伸ばすんだっけ?

でも非能力者の近くでやるのはちょっとなぁ。威圧感のせいで祈祷の邪魔に………………なんか唐突に神威≒念能力説とか降って来たんだけど、これ直感さんの仕事なのか判断ができない。でも神威は受ける側の畏敬の念が行動を抑制して平伏するわけだから問答無用に非能力者を威圧する念能力とは違うよな。ここぞとばかりに追加で権能は発とか降りて来るのも止めるんだ!

くそっ、念能力の汎用性が高すぎるばっかりに全部説明できちゃいそうで怖い。瞑想したいのに視界を閉ざすと考えが浮かんで来て全然できん。

ガネーシャーー!!!! 早く来てくれーーっ!!!!

 

 

「待たせたな! 俺がガネーシャだ!」

『きゃー! ガネーシャー!』

「そう! 俺が! ガネーシャだ!

 

そうして数十分が経過し、待ちわびた瞬間がやって来た。象神のエントリーだ!

長かった……結局瞑想もできないから諦めて、モス・ヒュージから獲得した能力で分身体を作り出して飴細工ならぬスライム細工してたわ。無心になれるっていいよね。

テンション上げて歓迎した私に向けるウラノスの視線が冷たかったのは気のせいだと思いたい。

 

「すまないが話を進めたいので黙ってもらえるだろうか」

俺がガネーシャだ

 

フェルズの言葉に声量を下げて謝罪の代わりにするガネーシャまじガネーシャ。この神の世話になるのって楽しそうだけど、ワンパターンではあるから飽きるというか慣れるの早そうなんだよな。

ちなみに私がテンション上げたのは、単純にこれて話が進むという以外にも、ご主人の見る夢でスライムアーマーというかアーマードガネーシャみたいな感じでガネーシャが団員の調教(テイム)したモンスターと存分に触れ合う手助けをしたら感謝された記憶に起因する部分もある。まぁ世界が違う別神ではあるんだけど、性格は同一だからな。

 

「今回呼び出した理由はそこにいる者の処遇ついての相談でな」

「ほう?」

『端的に言えば『異端児(ゼノス)』だよ。そっちと協力関係にある集団とは別に個人で動いてる生まれたてだけど』

 

言いながら、擬人化状態を解除する。ああ~視点が低い~。幼女ボディだから大した違いじゃないけど。

はっ、これを悪用すれば事故を装ってスカートの中を覗けるのでは!? なんてお考えのあなた! そう、あなたです!

実はそんな事するまでもなく擬人化状態でも服とか体の一部扱いで伸ばしたりできるし、そこから視覚状態を得たりできる。つまり覗きたい放題。

覗いたところで反応するものがないとか言ってはいけない。君達も知っているはず……心はちゃんと『ここ』に在るのだ(哲学)。

 

「なるほど、つまりガネーシャになりたいのだな」

『擬態能力あるから洒落にならん言い方やめて?』

「それについてだが、先ほど見せていた工作といい、随分と多彩な能力を持っているようだな」

 

ある意味では本命とも言える質問に答えるため、私は擬人化形態に戻った上で首を縦に動かす。

 

『まぁね。モンスターのドロップアイテムやダンジョンの素材を取り込む事で、それに応じた能力を獲得できるんだ。数を取り込む事で強化もされる。回復薬や解毒薬なんかも出せるぞ』

「ほう、それはガネーシャだな」

「だが、それは……」

『言いたい事はわかるさ。危険すぎて人の中に置くのは難しいんだろ?』

 

素直に感心するガネーシャと、ためらうようなフェルズ。まぁ、会ったばかりで信用を重ねてるわけでもないからな。人間や神を食って成り代わる可能性とかあるし、見極めできなきゃ怖くて側に置けないってのはわかる。すごくわかる。ズゴックは狩る。こうしてまた一機、何の罪もない水陸両用MSが海の底に沈んでいくのであった……。

そんな妄想をしていたせいか、オペレーターから連絡される幻聴まで聞こえてきた。

 

「話の途中だがワイバーン(FF-08WR)だ!」

 

一旦戦闘(CM)入りまーす。

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